ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
地球と異世界のこの惑星を繋いだ「接続」の生成源であり、そして異世界に存在する未知であったエネルギー――すなわち『魔法』を、地球側で命名したのが特性現象という呼称。
そしてそれの理論解明、研究の最中に同時に見つけ出され、確立された現象であり技術。
それが――「反特性現象効果」だ。
それはシンプルに言えば「魔法」を妨害、効果程度によっては無力化を可能としうるもの。
そしてどうやらこの「反特性現象効果」は今まで観測こそされていなかったが、元より地球、いや元世界の宇宙に存在していたようであり。
特性現象、『魔法』がこの宇宙に流入し現れると同時に。それと反応現象を見せたことでその存在が観測発見された。
そしてだ。
自衛隊では化学科職種であり、関係研究機関などに立場都合から出入りしていた故に、早い段階でその「反特性現象効果」の研究に携わっていた須藤は。
また都合から、そして変な所で思い切りの良さがある本人の気質もあり。
その有効性実験の際に――リスクは低いものと一応は計算されていたとはいえ、無ではないそれに――自分自身をその被検体として利用したのだ。
その結果の一端が、今に見えたもの。
須藤は、異世界の魔法現象を退ける体質となっていたのだ。
補足するとその実験が功を奏し、その反特性現象効果の技術はまだ改良発展の必要はあるものの形となり。
数は少ないが、装備機器としてまた形を成し。自衛隊各部隊にも少しづつ配備が始まっていた。
物語の始めで触れた『魔法』に抗いうる「術」、目途とは。この「反特性現象効果」と、それを形にした技術のことであった。
「失念していた」
そんな経緯理由を、須藤はおおよそを搔い摘んでクィーシェに伝えた後。胸元ポケットに入れていた携帯電話サイズの何かの装置機器を取り出し弄る。
明かせばこれは、その反特性現象効果の影響を「中和」するもの。
反特性現象効果の研究の延長でまた確立されたものであり。
魔法の産物である地球と異世界の「接続」を通過する際などに、その形成に支障をきたさないために利用されるものだ。
今にその効果が有効となったおかげか。
次には姿を消していた『風のマナ』たちが、またクィーシェの周りにポンと現れるが。
しかしそのマナたちは同時に何かおっかなびっくりといった様子で、クィーシェの背後に隠れるように周ってしまった。
「嫌われたな」
「ご、ごめん……っ」
「君たちが悪く感じることはない」
そんな様を見て、須藤は次には自嘲する皮肉気な言葉で表現。
方や悪いと思ったクィーシェは、マナたちに代わるように謝罪を紡ぐが。須藤はまたそれに断りを入れる。
「……気を悪くしたらゴメンね。正直キミたちのこと……特にキミは異質で、微かに恐ろしいものを感じてしまう所があるんだ……」
そんな須藤の言葉を受けたクィーシェは、少しの間を置いた後。そんな思い潜めていた正直なところを暴露して見せた。
「こんな陰険な顔の男だからな」
「か、揶揄わないでよ……」
そんなクィーシェに須藤は、実際凹凸が顕著でやや尖る造形で、正直陰険な悪人面にも見える自身の顔をまた自嘲してみせ。
それにクィーシェは、その顔を愛らしくも困った色に変えて返す。
「もちろん分かってる、キミたちは強く、でも優しく慈悲深い人たち。それはただ武器の力だけじゃなくて、キミたちの気質に思える」
「あまり買い被ってくれるな。良識常識に努めてはいるつもりだが、所詮は難儀な人類の集まりで武力組織だ。薩摩とか見てれば察せるだろう?」
次に紡がれたクィーシェの評する言葉。それに須藤はやんわりとだが忠告の言葉で返す。
「ぶィエェァーーッくシィョーーォぃィッッ!!!――ばぁァーッ」
同タイミングで、フレンクィの町で宿を借りている薩摩が。洗顔歯磨きの最中に大音量のくしゃみをかました。
「なんつークシャミだよ、大丈夫か風邪か?」
それに近くで身支度をしていた隊員が突っ込み、同時に一応案じてやる。
「いんや、誰か噂してやがるッ。人気者はつれェことだぜェッ――」
「言ってろ」
「ちょっと押しつけがましかったね。でも僕も人を見る目はあるつもりだから」
須藤からの忠告に、詫びる意味での言葉を向けつつも。しかし併せてそう自身の考えも通すクィーシェ。
そして、ちょうどそんな話の合間に温度の丁度よくなったお湯を。可愛らしく口にする。
「特に君は、淡々としていながらも果敢で強靭……だから抱いているのは、畏怖?憧れ、嫉妬なのかも……?」
次には独白するように、クィーシェはそんな言葉を紡ぐ。
彼も戦いに携わる冒険者だ。それが先日の挫折から、須藤を筆頭に自衛隊という強力な存在を見せつけられてのカルチャーショック。
複雑な思いを抱いていることは須藤も察し、そして理解できた。
「すまないがアドバイスは難しい。自分も、自分ができる限りで立ち回っているに過ぎない」
「あははっ、そんなの聞かされたらよけい嫉妬しちゃうな」
そんなクィーシェの独白に、そう回答を返した須藤に。クィーシェはしかしその真面目さを揶揄うように愛らしい笑みで笑って見せた。
「ゴメンね、変な話になっちゃって。助けてもらって以来なかなか機会がなかったし、キミと理由を付けて少し話したかっただけだったんだ」
「なら、期待外れもいいトコだっただろう?」
「もう、すぐ皮肉で返すんだから……そういう感じとか、キミのことがちょっと知れた気がするかも」
締め括るように、詫びる言葉と併せて訪問の理由を明かして見せたクィーシェに。
須藤はまた微かな皮肉で返し、それにクィーシェは一度口を尖らせたが、次には表情を柔らかくしてそう答えた。
「くぁ……」
話が区切りを迎え、会話での疲れも助けてか。次にはクィーシェはまた可愛らしい様で小さな欠伸を見せる。
「眠気が来たな、そろそろ眠って置くんだ。明日も早い」
それを見て、須藤はクィーシェに促す。クィーシェたちパーティは本人たちの希望も変わらずのことから引き続き、案内人として前進観測隊に同行してもらうこととなっていた。
「うん、そうする……」
促しを受け、クィーシェは簡易ベッドから立ち上がり。少しふわふわした足取りで天幕の出入り口に向かって手を掛ける。
「話に付き合ってくれてありがとう。スドウもちゃんと休んでね?お休み」
「あぁ、ありがとう。お休み」
そして就寝前の挨拶を交わし、クィーシェは天幕を後にして自分に当てられた寝床に戻って行き。
間もなく須藤も仕事を区切り切り上げ、明日に備えて床に着いた。
結局こういう対魔法特効的な要素は出したがる悪癖。