ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
Part38:「囚われ堕とされた王女たち」
第101前進観測隊は任務行程を再開、早朝にフレンクィの町を出発。
しばらく「目的・標的」を目指して行程を進め、その途中で国境を越えて別の国の領地へと入り。
そして今はその目的が間もなくとなった所で、いやその詳細な位置の情報が入ったからこそ。
その行動を一時停止していた。
「――大規模だな」
一時停止した前進観測隊の車列隊形の先頭付近、その内の一輛の高機動車の傍。
複数名の隊員の集まる姿があるそこで、須藤の声が零れ上がる。
集まるは須藤を筆頭に、御邸や各隊幹部に主要陸曹。そしてお守りついでに首を突っ込み聞いている加納に薩摩に越生他。
各員が視線を集めるは、高機動車のボンネットに置かれたノートパソコンの画面。
画面に映っているのは上空から地上を移した映像。それは空自の無人偵察機が送って来る、現在地より数km先にある土地のもの。
そこは、なだらかな傾斜や少しの岩場崖場など、多少の起伏などはあるものの開けた広い土地。
そしてその上に見えるは、広くに広がり存在する集団。それは「布陣」した二つの集団が、攻撃側と防御側でそれぞれ戦う姿。
見えるそこは、戦の場であった。
片方、防御側が一つの小さな砦を背後にして、その先にて傾斜地形や岩場崖場などを利用して防御の布陣を敷いているが。それはまばらで薄いと言わざるを得ないもの。
そしてそれにぶつかる攻撃側の数、戦力はざっと見ても三倍を越えるそれ。
防御側の不利は、目に見えて明らかであった。
「攻めている側は、移動が確認された帝国軍団のものと同一と見ていいな」
その今に見える映像と、パソコン画面上に別ウィンドウで開いている以前の航空偵察画像を見比べ。見える特徴から須藤はそう結論付ける言葉を紡ぐ。
「防御側は……この国、エリエナ王国の軍と見て良いでしょう」
次いで、御邸が発する。
国境を越えて入ったこの国は、エリエナ王国という名称。
そのエリエナ王国にいくらか前に、幻龍帝国の侵略の手がついに及んだという情報は自衛隊にも入っており。
その事実詳細の確認のために自衛隊は偵察活動を活発にし、そして第101前進観測隊も現地入り、接触からの状況確認のために行程を急いでいたのだが。
その国境を越えた早々に航空偵察から入った報、そして見つけた状況が今に見るものであった。
「これよりこれに接触、介入する。各隊準備を」
そして次には各員に向けて、須藤は発する。
この異世界における自衛隊の目的は、この異世界で侵略を続け、そして高確率で地球での数々の異常現象の原因とも見られる幻龍帝国の。
その脅威の排除無力化。
直近の脅威としても、大きくの影響から見ても。見つけたこの戦場に介入しない選択は無かった。
「砦がおそらく指揮所か?御邸、防御側の軍と接触ができないか向かってくれ。前方への展開は自分が指揮する」
「了解」
「他、各隊各員。掛かってくれ」
それから各行動の調整を交わし、集った幹部陸曹他各員は指示を受けて行動に取り掛かった。
広い戦場の攻撃側の後方。そこに設けられているのは、幻龍帝国側の軍団の指揮所を兼ねる幕営地。
「ふん、残党風情が粘るな。煩わしい」
幕営地の内にある軍団長用の天幕、その中で座して零す一人の男が居る。
鋭利さを感じさせる容姿顔立ちで、その顔に加虐的な笑みを浮かべているその男こそ。
現在戦場にて攻撃側にある帝国軍団、『勇獅子軍団』の軍団長であるシュベレヒュ将軍だ。
「ぅぅ……」
「姫様……」
そんな座すシュベレヒュの席の隣。そこには地面に座り込み体を縮める、二つの女の姿があった。
それは十代半ば程の可憐な美少女と、二十代ほどの凛とした気の強そうな美女。
その二人は今はなんと、共に一糸纏わぬ姿に首輪のみを嵌められ、そして鎖につながれると言う姿であった。
互いに憂う表情で体を寄せ合っているその二人の正体は。少女はエリエナ王国の王女であるクラリオン、そして美女はそのお付きの侍女長であるヒューネ。
しかし今、二人は共にその身分を剥奪されていた。
数日前、エリエナの王都は陥落。
二人は帝国に囚われ、そして身分を剥奪され。王都陥落の功績を立てたシュベレヒュに褒美として『くれてやられ』。
今に見える、まるで愛玩動物のような惨い扱いの立場に堕とされていたのだ。
幻龍帝国は国際感情など考えはせず、そして逆らった者たちへの人権・扱いの保障などもしない。
恭順を示さなかった国々には、このような容赦の無い扱いに仕打ちを平気で行った。
「クラリオン、お前の元配下たちはいじらしく戦っているようだ。まぁ、それもいつまで持つかだが」
「っ……」
そんな惨い姿とされているクラリオンに、シュベレヒュが今の戦場の様子を揶揄い煽るような色で伝える。
今に帝国の勇獅子軍団が相手をしているのは、王国軍、いやその一部の残党。シュベレヒュの言葉はその王国軍残党の劣勢を伝えるもの。
知らされたそれにクラリオンはその顔を暗くし。侍女長のヒューネはそんなクラリオンを抱き庇い、代わりにシュベレヒュを睨むが。
シュベレヒュはそんな二人のそれをまた面白がるように、加虐的な笑みで蔑み返すのみだ。
「将軍!よろしいですかっ」
「?、なんだ、入れ」
そんな所へ、天幕の外から声が飛び込み聞こえた。
シュベレヒュが許可の声を返すと、次には天幕の出入り口が開かれて三人ほどの人影が荒々しい様子入って来る。
正しくはそれは、二人の帝国兵に捕まえられて一人の青年が連れて来られた姿だ。
「くっ……」
連れて来られたその青年は、帝国兵の手でシュベレシュの前に乱暴に膝まづかされる。
そして帝国兵に髪を掴まれ顔を上げさせられ。そこに女と見紛うほどの美麗で中性的な顔が、シュベレヒュを睨む表情と併せて露わになった。
「!……カルンっ!」
「近衛団長……!」
その青年の顔、正体にまず気づいて声を上げたのはクラリオン、そしてヒューネ。
美麗な青年はエリエナ王国の近衛騎士団の団長であり、名をカルンと言った。
「!、姫様!?」
そのカルンも二人に存在に気づき、併せて二人のその有様に驚いて目を剥く。
「な、なんという……貴様ぁっ!姫様になんという……ぐぁっ……!?」
「この!許可なく喋るな!それも将軍に無礼を!」
二人の有様、そしてその隣にまるで主人のように座すシュベレヒュの姿から。カルンはすぐに状況を理解。
護るべき王女をそのような様に陥れたのであろうシュベレヒュに、激昂し掴み掛かろうとしたが。
だがそれは叶わず、カルンは帝国兵に地面に押し付け沈められ、その動きを封じられてしまった。
「はは、あまり乱暴にしてやるな。その坊やは?」
「は、申し訳ありません……隊形構築の隙を突かれて敵の一隊が切り込んで来まして……排除して一部を捉えましたが、どうやら王国近衛騎士団の団長であるようです」
そんな様子に向けて、シュベレヒュは戯れ程度というように容赦を促す言葉を沿えてやり、併せて尋ね。それに帝国兵は経緯を答える。
「ほほう、近衛の騎士団長か。美麗な騎士様が、可憐な姫様を救いに現れたというところかっ?」
その経緯を聞き、また面白可笑しく揶揄うように言葉を向けるシュベレヒュ。
「ぐ……貴様ぁ……ぐぁぁ……!」
「カルン……!やめて……!」
そんなシュベレヒュに、尚も激昂し荒く身じろぎをするカルンは、しかしより強く乱暴に帝国兵たちに押さえつけられ。
苦し気な色を見せるカルンに、クラリオンが懇願の声を発する。
「憤慨の気持ちも分からなくは無いが、あまり逆らう事はおすすめしないぞ。互いの身のためにもな」
「「!……」」
そんな二人の姿を面白がるようにしながら、シュベレヒュが次に紡いだのはやはり嘲る声色でのそんな忠告。
それはクラリオンもカルンも共に帝国の、シュベレヒュの手中にあり。互いが人質なのだと知らしめる言葉。
それを聞いた二人は、悔しく、あるいは苦しそうな表情を見せながら。逆らう気配を収め封じた。
「失礼しました……!ご報告をと思ったのですがご不快な思いを……今すぐ連れて行きます……!」
「まぁ待て」
次には帝国兵が少し慌て焦った色で謝罪の言葉を発し。カルンの体を乱暴に引き摺り連れ出そうとしたが。
しかしシュベレヒュはそれを差し止めた。
「ふふん」
シュベレヒュは、カルンのその女と見紛う美麗な顔に容姿を覗き伺い。そして何かよからぬ企みを思いついた顔を浮かべる。
「どうやらまだ王国騎士団の残党諸君には、感心しない反恭順の心があるようだな。これを挫く、良い余興を思いついた」
そして次にはシュベレヒュはそう言葉を紡ぐと。またクラリオンにカルンたちを、何らかの企みを考えながらの加虐的な表情で見下ろした。