ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
場所はエリエナ王国軍残党の側、その陣頭指揮の場が置かれる小さな砦へ。
そこはほぼ敗走のそれで後退して来た王国軍の残党の一つの騎士団が、偶然見つけた打ち捨てられた古砦。
残党の騎士団は縋り逃げ込むにも近い形でそこを防御の拠点と定め。心もとない残兵力にて周辺に布陣。
そして今、必死の戦いの最中にあった。
「……団長、やはりどんどん押されています……!我々の戦力だけではとても……!」
「弱音を吐くな!まだ護る民が居るのだ、我々にはその盾となる使命がある!」
砦の屋上にて一人の美麗な女騎士が、部下の女兵から報告を受ける様子がある。
併せて女兵が吐いた弱音に、女騎士は一括する言葉で返す。
今に布陣して防御線を行っているのは、エリエナ王国の一つの騎士団と、近衛騎士団の一部からなる戦力。
女騎士はその一つの騎士団の騎士団長であり、名をフィオンと言った。
そのフィオンが今に言葉にしたように。今砦には騎士団と共に逃げて来たエリエナ王国の民が匿われていた。
それが故に部下に一喝の言葉を張り上げたフィオンであったが、
しかし状況の劣勢は明らかであり、彼女のその顔もまた苦いものであった。
「ですが……!騎士団長、あれを!」
それでも意義を唱えようとした女兵だが、しかしその女兵は次には『あるもの』に気づき。
砦の向こう、戦場の上空を声を上げて指し示した。
「!……な!?」
それにはフィオンもすぐに気づいた。
戦場、エリエン王国の布陣する側の真上。その宙空に浮かぶ形でボワと形作られ現れたのは、大きな半透明の球体。
それは『魔法投影術』と言われる、この世界の一種の映像技術であり。フィオンもその存在は知っていた。
しかし問題はその魔法投影術そのものでは無く、そこに映し出された光景。おそらく映るそこは、敵帝国軍の後方陣地のどこか。
そこで台の上に並び立たされ、そして一糸纏わぬ姿で首輪のみを嵌められる姿にされた。
エリオン王国の王女であるクラリオン、侍女のヒューネ。そして近衛団長であるカルンの姿が映し出されたのだ。
三人とも当たり前だが、その顔は悔しく恥ずかしくて堪らなそうな色に染まっていた。
「王女様……!侍女長に、近衛団長殿まで……!?」
その信じがたい光景に、フィオンは驚愕の言葉を漏らす。
『――エリオン王国の残党諸君、見えているかね?』
そんなフィオンに、そして驚愕する砦の騎士に兵たちに聞こえたのは。魔法投影に伴う音声伝達からの声。
明かせばそれは、帝国将軍のシュベレヒュのもの。
『御覧の通り、諸君の王国の象徴はすでに我ら帝国の手に落ちている。諸君の可愛らしい逆らいは、無意味なものだとこれで分かるかね?』
次に紡がれ聞こえるそれは、その驚愕の光景をエリオン王国の騎士に兵たちに見せつけながら。その希望を絶とうとする言葉。
『今からでも屈すれば、帝国の労奴か、王女様たちと同じくの愛玩具くらいにはしてもらえる慈悲はあるだろう。でなければ、狩りの獲物を演じ儚く散ってくれたまえ』
その次に紡がれたのはそんな言葉。
それは交渉のような口調をしているが、その実はただ『お前たちにはその末路しかない』と示すそれ。
シュベレヒュのそれは策など二の次の、相手を絶望の光景と加虐の言葉で痛めつけることだけが目的のそれ。
見目麗しいクラリオン王女に侍女長のヒューネに、美青年のカルンをただ晒し見せつけ絶望を与える。
シュベレヒュが己が手隙を満たすためだけの『余興』。
そんな『余興』はシュベレヒュが悪趣味な言葉を残し、そして魔導投影するとともに終了した。
「あ……ぁ……」
「っ!……狼狽えるな!敵の卑劣な策に飲まれるな……!我々の手で、なんとしてもお助けを……っ」
見せつけられた今の物に、狼狽し声を漏らすだけの女兵始め兵たちに。
同じく驚愕に飲まれていたフィオンは、しかし顔を振るいそして周りにまた一喝。訴えの声を張り上げる。
しかし、今のは致命的であった。
己が国の象徴が、敵の手に堕ちてあのような様となった光景を見せつけられたショックは大き過ぎ。
防御の布陣の方では、一部には憤り最後まで戦うことを訴える者もいたものの。
ほとんどの騎士に兵たちは狼狽混乱を起こし、戦意を失い。
防御の布陣は綻び瓦解を見せ始めた。
「狼狽えるな!踏ん張るんだ……!」
それに向けて最早我武者羅の、懇願にも近いそれで声を飛ばすフィオンだが、その声も届かない。
「くぅ……」
ついにはフィオンも泣きそうな顔を浮かべ、悔しそうな声を漏らしてしまった。
「……しょ、将軍!あの、ほ、訪問者です!」
しかしそんな所へ次に、背後の砦下階からの声が届いた。
そして一人の兵が慌てた様子で駆けあがって来て、そのような知らせの言葉を伝えた。
「……なに……?」
今の状況から思ってもいなかったそんな知らせ、ワードに。フィオンは苦い顔のままに振り向き、漏らすように声を返す。
そんな彼女の目に、次にはその報告の兵に続くように、人影が砦の階段から上がり現れた。
「――何今の、魔法のスクリーン?それとして悪趣味な演出ね」
現れたのは、緑を基調とする異質な服装格好に身を包んだ一人の女。
――明かしてしまえば、それは他ならぬ御邸だ。
被る鉄帽の下に見える可憐な顔に、しかし今の状況光景の一部を見ていた彼女は嫌そうな顔を作りながらも。そんな考察に感想の言葉を零す。
「な……な、なんだ貴様は……!?」
方やのフィオンは、よりにもよってこんな深刻な状況下で。突然現れた得体の知れない乱入者に、思わずのそんな言葉を上げてぶつける。
「すみません、驚かせてしまい。我々は日本国の陸上自衛隊、敵ではありません。皆さんはエリエナ王国の方々ですね?」
そんなフィオンの前に、御邸は慣れた色で軽く居住まいを正して立つと。
まずはと言うように謝罪と併せて己の身分正体を明かし。併せてフィオンたちに尋ねる声を向ける。
そんな最中に同時に背後の砦の階段からは、御邸に続いて数名の隊員が上がって来て現れ。
そして簡単な断りの言葉にジェスチャーを一応、騎士に兵たちに向けるが。ほとんど勝手に砦上に配置していく。
さらにまた続けて、隊員等とは姿様子の違う者が三名ほど続いて現れる。
それは冒険者パーティのクィーシェたち三人であった。
「に、ニホン……?ジエイ……?」
その御邸の名乗りと説明、そして現れ勝手に動く周りの者等に状況に。フィオンはしかしより困惑に陥り、聞かされたワードだけを漏らし反復。
「疑問に困惑など多々あると思いますが、今は後で。皆さんはエリオン王国の方で、相手はドゥリオルン幻龍帝国ですね?そしてあなた方は国に侵略され、今も攻撃を受けている状況にある」
そんなフィオンに御邸は断りの言葉を挟み。そして今一度、少し急き求める色で尋ねる言葉を向ける。
「あ、あぁ……そうだが……」
それに今度は困惑混じりに答えるフィオン。
「ありがとうございます――隊長、確認取れました。こちら側はエリオン王国の人々、向こう敵側が幻龍帝国です」
《了解。こちらは各隊展開中、間もなく前に出る》
次には御邸はヘッドセットに言葉を紡いで通信に上げる。向ける相手は他ならぬ須藤。
突然一人で喋り出した御邸にフィオンは訝しむ色を見せるが、それに気づきつつも御邸は須藤の返答を聞く。
「あれは、離れた味方と話してるんだよ」
「!」
そこへ御邸を肩代わりするように、フィオンの横に立って説明の言葉を紡いだのはクィーシェだ。
「皆、お願い」
それと同時にクィーシェは腕を翳し振るい、次には『風のマナ』が呼び出されて現れ周りに飛び漂う。それは周囲に『矢避け』の効果を張る行為だ。
(エルフ……!)
その行為とそしてクィーシェの容姿から、フィオンはその彼がエルフ種族であることに気づく。
「矢避けの効果をマナたちにお願いしたから、少しは護りの足しになると思う」
そのクィーシェは、少しでもフィオンたちを安心させるためもあってそう紡ぎ伝える。
「隊長。併せて、今のは見ました?」
《展開移行中だったから少しだけだが、気持ちの悪い演出を見たな》
その傍ら、須藤と御邸は続け通信にて言葉を交わしている。
少し嫌な顔色を作りながら聞き尋ねた御邸の声に。須藤から返されたのは同じく不快なものを見たと述べる、しかし変わらぬ淡々とした声色。
《状況の進捗具合で、今のアレも対処を考える。これからぶつかるから一度切るぞ》
「了解」
また後に対処を講じる旨を伝え、そして断りの言葉を沿え。それに御邸も返して両者は通信を終えた。
「――皆さん、状況が切迫してるので端的に。我々は、これより皆さんの側に加勢いたします」
「え……? 」
通信を終え、御邸は改めてフィオンに向き直り。自身等の立場を明確とする言葉を紡ぎ伝える。
そして同時に視線を砦の屋上から向こうの戦場に向け、それに導かれるようにフィオンもその視線を追う。
「……な!?」
そしてフィオンは、またここまでとは全く別種の驚愕の光景を見る。
それは、いくつもの緑を基調とする何かの物体、それにシルエットが。砦の両側から越えて現れ、前へと進み出ていく光景。
それは展開押し上げ行動を開始した、前進観測隊の装甲車輛始め各車輛。そして付随随伴する各隊各班の隊員等の姿だ。
「あ、あれは……?」
「大丈夫、彼等はとても強力な存在。だから信じて」
驚愕困惑しつつそれに目を引かれるフィオンに。
隣に立つクィーシェが、落ち着きを促す言葉色で伝え紡いだ。