ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
「これは……!あなた方は……!?」
一方、後方の古砦の屋上。
そこでは騎士団長のフィオンがまた、戦場の様子を。絶望の淵にあった状況が、驚きと併せて引っくり返った光景を見て。
次にはまた驚愕の顔で、横後ろの立つ御邸へと向く。
「今一度名乗りましょう、我々は日本国の自衛隊。あなた方を助けに来た者です」
それに御邸は、少し意識した口調で「決め」て。改めて名乗り、そして表す言葉を紡いで見せた。
「押し止めることは成功したようね。さて、ここからだけど……」
そして御邸はまずは帝国軍の攻撃の手を止められたことを言葉にして。それから普通科小隊長として次の行動を考えながら、向こうの戦場へと視線を向ける。
「――ん?」
だが次に御邸は。その戦場の中に妙な姿を。
展開した前進観測隊の各隊が形成するラインから。しかしさらに妙に突出して進む、目立つ二輛の車輛を認めた。
「うそ、ちょっと待って……――尾張03より武蔵10、隊長応答してください。あなたの現在位置に状況は?」
そして次には御邸には微妙に嫌な予感が浮かび。
今程に「決めた」姿を、しかし苦い顔に変えて崩し。また嫌な予感から無意識に崩れた口調で、ヘッドセットに言葉を紡いで通信にて呼びかける。
その相手は、他ならぬ須藤。
《――こちら武蔵10、本部班の13も一緒だ。こちらは交戦ラインを先んじて越え、今は敵中を突っ切っている》
その呼びかけに返され来たのは、その須藤の淡々とシレっとしたまでの口調での。
向こうが前進観測隊主力より先行し、敵中への突入進行行動を開始したことを伝える旨。
そう、隊長自身が。それも「また」だ。
「えぇ……」
その知らせを聞かされ思わず御邸が零したのは、最早驚きではなくゲンナリした色の声。
「隊長……!」
「人質にずっと敵後方に居られては火力投入上で面倒だ。少し無理をしてでも回収する」
次には苦言抗議を向けようと、御邸は須藤に向けて発し掛けたが。
しかし先回りするように、須藤からはそう考えを伝える旨が返って来る。
「っー……」
次には苦い思いから口を鳴らす御邸。
考えは分からなくは無く。
支給されている各種端末機器のおかげで、指揮官・隊長はどこに居ようとある程度の指揮は可能なため作戦戦闘上の支障もそう無い。
しかしそれとして、指揮官・隊長が自ら突っ込んでいく真似は控えて欲しい所があるのだが。
須藤はどうにも自身を、書類上置かれたお飾りの指揮官だと思っている節があった。
そして前進観測隊はもしもの際は、他各幹部も指揮を代行できるよう体制が整えられている。
しかしそれが助けて余計にか。
須藤は自身が矢面に立ち、「お飾り」として立ち回り演じることを意識しているようであった。
隊の士気向上などの効果を考えれば、指揮官としての一つの形・あり方ではあるのだが。
防衛大学主席の御邸としては、須藤を資格技術者入隊の異質者と色眼鏡で見ている所はあれど。
同時に心配し、そして危なっかしく思いヒヤヒヤしていたのであった。
《御邸、そちらは任せるぞ》
そんな思いを知ってか知らずか、続けて須藤が寄越したのはまた端的な色でのそんな任せる言葉。
「了解……」
それに、内心で。いや最早言葉色にゲンナリとした色を出しつつも。
御邸は承諾し了解の声を返す。
「騎士団長さん、ご安心?……を。あなた方の姫様も、これより救出を行います」
そして次には御邸はまたフィオンたちへと向き。
しかし先の「決めた」ものとは出来なかったぎこちない表情で、そう紡ぎ伝えた。
その、救助回収行動のために先行突入した須藤等。
詳細には隊長である須藤とお守りの陸士三名、そして本部班からの一部。共通軽装甲車一輛と高機動車一輛の二輛からなる編成隊形は。
敵、帝国軍団が広く布陣したそのど真ん中を、爆走に近いそれで突っ切っていた。
「――一つダウンッ」
「進路上を優先しろ、他は二の次でいいッ」
敵中を突っ切る関係で、速度が出てそして荒い走りとなっている共通軽装甲車の上で。
後席から狙撃を行う越生がちょうどまた、遭遇した陸竜騎兵の騎手を撃ち抜き無力化。
それに須藤はさらにの指示要求で返し、自身も10.9mm拳銃――大口径リボルバーを外へと向け撃ち放つ。
「ッ」
その最中に、共通軽装甲車は浅い窪みを通過し。しかし速度の影響からか少なからず跳ね揺れる。
「べッ!?加納ッ、もっと丁寧に運転できねェのかッ!?」
「この状況で文句を言うな!不満なら自分でハンドルを扱え!」
そのことにターレット上から薩摩が悪態苦言にて注文を吐き降ろし。しかし加納がその透る声をしかし荒げて返す応酬が交わされる。
しかしそんな応酬を交わしながらも、加納は運転への集中を欠かすことは無く。
薩摩はまたターレット上で、M240Gを疎かにすることなく敵に唸らせ撃ち続ける。
「13、そちらは支障無いかッ?」
《損害は現状ナシですがッ、なんとかくっ付いて行ってる状態ですッ》
その加納と薩摩の応酬を車内に聞き、しかしいつもの事と流し。
須藤は後続する高機動車に通信にて尋ねる声を送り、同時にチラと振り向きその状態を確認。
その後続の高機動車からは、そう張り上げ答える言葉が寄越され。
同時にその言葉の通り、車上で各員が装備火器を苛烈に唸らせ、各方の敵と交戦しながら。なんとか共通軽装甲車に追従している様子の高機動車の姿が見えた。
「ッ、正面!突っ込みます!」
その次には運転席の加納の張り上げる声が響き、須藤は前に視線を戻す。
瞬間、ちょうど共通軽装甲車の進路上に、図ったか否かは不明だが飛び出た陸竜騎兵が見え。
そして同時に、ドギャッ!と。
共通軽装甲車の正面鼻面が、陸竜騎兵のどてっ腹に突っ込む形で衝突。
「のォわッ!?」
ターレット上で薩摩が上げた驚く声が聞こえ。
そして同時に、その陸竜騎兵は跳ね飛ばされて退けられ。共通軽装甲車の斜め上から側方を抜けて、地面に叩きつけられ転がって行った。
「ッォ――カンベンだぜッ!ったく!」
今の起こりに冷や汗混じりに薩摩は悪態を吐いたが。しかし次にはM240Gに着き構え直し、射撃行動を苛烈なそれで再開。
「踏ん張れ、見えて来た」
そんな薩摩に教え答えてやるように、須藤が次には言葉を発する。
車輛隊形の進行方向の向こう。
敵、帝国軍団の後方陣地であろう幕営地が、もうすぐのところまで迫っていた。
一方、場所は帝国軍団の後方幕営地。その内の一ヵ所にある一つの見張り台。
そこに立つシュベレヒュは、向こうの光景を今も見ながら。焦れて苛立ち、大変に面白くない感情に苛まれていた。
「一体……!どういうことだ!」
次には苛立ちに任せて荒げた声を上げるシュベレヒュ。
それに周りの配下の帝国兵たちが慄き跳ね。そして側に『繋がれ引かれて』いるクラリオンにカルンにヒューネたちも体を強張らせる。
「わ、わかりせぬ……」
「分からんで済むか!ヤツ等は何者で、この様は一体……!」
しかし配下の帝国兵の一人が返したのは、狼狽えながらのそんな返答。
それにシュベレヒュはさらに機嫌を損ね、しかし本人も狼狽の混じる声でまた言葉を荒げる。
その原因は、つい今程より一変した戦場の状況にあった。
勝ち戦、一方的な狩りとなるはずであった戦場。しかしそれは突如として現れた得体の知れぬ一団によって引っ繰り返された。
正体不明の攻撃に、押していたはずの帝国軍団の各部隊は次に次にと撃破され。
現在帝国軍団は一転して、逃げるにも近い防御後退を余儀なくされていた。
そしてそんな今も、見張り台に立つシュベレヒュから見えるのは、ほぼ敗走のそれで後退してくる己が軍団の部隊の数々。
そして向こうの景色で得体の知れぬ「敵」が動き、いくつもまた得体の知れぬ攻撃と思しき現象を起こして寄越す状況。
そして飛び込んで来るのは、こちらの劣勢を伝える報告の数々。
それがシュベレヒュを、焦れ、苛立ち怒らせ、そして困惑させる原因であった。
「――配下にあたるのは、感心しませんね」
そんな所へ、シュベレヒュの背後から声が掛かった。
シュベレヒュに周りの帝国兵たちがその方向に視線を向けて集めれば。
そこにはちょうど見張り台の階段を昇り現れた、一人の男が立っていた。
どこか鋭利な印象を思わせる顔立ちに体のその男は、帝国兵たちとは違う「軍服」を。「ロシア軍」のものであるそれを纏う格好。
明かせばその彼は、フェーメフという少尉階級の軍人。
ロシア軍、正しくはエレーナの元よりこの戦場へと向かわされた者であった。
「貴様か……」
そんな現れたフェーメフに、シュベレヒュは隠さぬ忌々し気な色の一言で凄み返す。
フェーメフが「ロシア軍」からの、帝国から食客扱いを受ける一団からの存在とは聞いており、それ故にシュベレヒュはその得体の知れぬ男を軍団に迎え入れてはいたのだが。
だが同時にシュベレヒュは、終始その存在を気に入らぬものと思い、懐疑の目で見ていた。
「警告はしたではないですか、「力」を持つ者等が近づいていると。それをあなたは戯言と聞き入れませんでしたが」
方や、帝国兵たちが恐れるシュベレヒュを前に。
しかしフェーメフにあっては臆する色などまるで見せず、呆れを隠さぬ色でそんな言葉を続ける。
「偉そうに言うが、貴様は今までどこに消えていた……?」
「我々は、準備を疎かにできないもので」
フェーメフは少し前から今まで、よりにもよって軍団が劣勢に陥り始めたタイミングに、その姿を見せていなかった。
そんな彼にまた凄み聞き尋ねるシュベレヒュだが、それにフェーメフはやはり恐れも気にもしない様子で、静かにそんな言葉だけを返す。
「さておきお困りの様子、お力添えしましょう。一応帝国には、食客として迎えてもらっている義理があるので」
そしてしかし次にはフェーメフは、「これが欲している返事だろう」とでも言う様子で。
シュベレヒュに対してそんな申し出の一言を紡いだ。
「貴様に……アレ等がなんとかできると?」
「はっきり申しますと、私か預かってきた部隊は一部なので大きい事は言えません。しかし向こうを脅かし混乱させ、時間を稼ぐくらいはできるでしょう」
そんなフェーメフからの申し出に、やはり懐疑を隠さぬ色で探り尋ねたシュベレヒュ。
それにフェーメフはそこにあってははぐらかさず、戦力分析からの正直なところを答える。
「その「機会」をどう利用するかは、将軍の采配次第です。では我々は、やれる限りをやりますので」
そしてフェーメフは最後に、シュベレヒュを試すようなそんな言葉を残すと。
言葉の通り、己たちの最低限のことはすると約束。そして身を翻して見張り台を降りて去って行く。
それをシュベレヒュは、恨めし気な顔色で見送った。