ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
第101前進観測隊の登場、そしてその戦闘行動・火力投入の開始により。
戦場の攻守は入れ替わり、自衛隊とエリエン王国側の攻勢に状況は傾いた。
現在は前進観測隊が戦闘ラインを支え、少しづつ押し上げつつ。
エリオン王国の騎士団の負傷後退、再編成を援護している状態だ。
「少なくとも、敵の攻撃は止めて押し返したか」
その戦場のおおよそ真ん中に位置する一点。そこにて一旦停止し、そこを配置としつつ警戒態勢にあるのは16MCV。
その車上、キューポラ上に身を置く16MCVの車長であり、機動戦闘車班の長でもある
戦場の様子、状況を観察しながら一声を零す。
《次は?》
「隊長が突っ込んでったからな、これを追いかけるべきだな」
次にヘッドセットに聞こえたのは、車内砲塔内の砲手からの尋ねる声。
それにそう答える篠寺。
須藤が「お姫様」を回収するために、先行して敵後方に突っ込んでいった事はすでに報として各隊に共有されていた。
それを援護のために追いかける必要があると考えての篠寺の言葉。
そして次には、その行動の開始指示の声を発そうとした篠寺。
しかし、
ヒュゥゥッ――と。
何か不気味な、嫌な空気を切るような音が聞こえたのは瞬間。
そして、
――爆音が、そして爆炎が。篠寺の、16MCVの後ろ側方の近くで上がり響いた。
「ッォ!?」
驚愕に襲われ事態が分からないまま、しかし篠寺はまず振り向き。
そして後ろ側方に「その光景」を目撃する。
16MCVから近くに停車配置していた普通科小隊の共通軽装甲車の一輛。
それが炎に包まれながら宙に舞い吹っ飛び、そして次には逆さまになって地面にグシャリと落ちる光景が見えた。
「ッ!――左だァッ!ドライバーッ、左に正面向けて下がれェッ!」
そして次には本能直感からの反応に近いそれで、ヘッドセットに、いや肉声でも届く大きさで16MCVのドライバーに向けて発進後退の指示を張り上げる。
「後進だッ、頭を10時方向に後進ッ!」
立て続けにその向き、方向関係を再度伝える声を張り上げる篠寺。
そして今のそれ等を聞くが早いかのタイミングで。16MCVはドライバーの操作によって、信地旋回による方向転換を行いながらの急速後進を開始。
「各車見えたかッ、10時方向ッ!下がれッ、下がれッ!」
《向けろ向けろ向けろッ!》
《下がれ下がれ、行け行けッ!散会しながら下がれッ!》
その荒く急かしく動き出した16MCV上で、篠寺は「それ」が、今の「攻撃」が来た方向に視線を向けながら。
同時に各車、周囲で同じく展開配置していた普通科小隊の24ICVの二輛両車に張り上げ伝え。
通信には同じく大変に急く色で張り上げる各車車長の声が上がり聞こえ。
篠寺が一瞬見れば、各24ICVが同じく旋回から急速後進に入る姿が見える。
「傾斜遮蔽まで下がれッ!周辺各隊、隠れろ身を晒すなッ!」
その各車からの通信に上がり交錯する音声を聞きつつ、しかし構わず篠寺もさらに各隊各所への指示の声を張り上げる。
16MCVに24ICVの各車は、その頭を同じ方向に向けて散会隊形を徐々に形作りながらも、一秒をも惜しむ様で後進。
またさらに近く周囲では、また配置していた普通科小隊の各分隊各員が、慌て近場の遮蔽の飛び込む姿が見える。
「ッ!?」
その最中に、再びの攻撃が襲来。
「それ」が向こうよりヒュォと空気を切り裂き飛び来る。幸い今度はそれは頭上向こうを掠めて明後日の方向に飛び去るが、しかし肝を冷やすそれに篠寺は顔を険しくする。
「誰か、見えるかッ!?」
《向こうの稜線からしか分からない、姿が見えないッ。さらに索敵中ッ!》
「いやいいッ、先にスモーク展開しろッ!」
篠寺はすぐに「攻撃」が来た向こう正面に視線を戻し、目を凝らしながら同時に通信にて他車に尋ねる。
しかし別車からもその「敵」の姿は見えていなかった。
篠寺は次には索敵を一旦止め、自車及び各車に発煙弾の発射展開を指示。
それに砲手が操作で答え、次には16MCVのスモーク・ディスチャージャーが発煙弾を発射。正面向こうに煙幕を撃ち込み広げた。
《23、発煙弾発射ァッ!》
《時間稼ぎだ、一旦身を隠すんだッ》
さらに続けて、24ICVの両車も後進行動の最中に同時に発煙弾を立て続けに発射。
続けざまに撃ち込まれた多数発の発煙弾が、各車の向こう正面に煙幕のカーテンを作る。
「ヨシッ、一旦止まれ、止まれッ」
間もなく各車は緩やかな傾斜地形の稜線を越え、その傾斜遮蔽を可能な限り利用する形で停止。
「普通科小隊に各隊、被害はッ?」
《尾張11から、人的被害はナシッ。現状LAVが一台大破損失のみッ》
停車から次に、篠寺は各隊に被害状況を尋ね。それに第1分隊の伊国の声で知らせが返され来る。
不幸中の幸いか、今程に被弾撃破された共通軽装甲車は無人だったようだ。
「その件了解――ッー」
それに安堵したのも束の間。
篠寺は今しがたの攻撃を寄越した「敵」が居る方向に、正面向こう尖らせた視線を向ける。
周辺は現在それなりの風があり、今に撃ち込み展開した煙幕のカーテンは。しかし次第に解けて晴れていく。
そしてその晴れつつある煙幕の向こうに、その「敵」を見つけるべく篠寺はその眼を一層凝らす。
「――ッ!」
そして篠寺は次には。
正面向こう遠くの緩やかな丘の稜線に。そこを越えて姿を現した、「鋼鉄」の姿を見た――
「――ドライバー、用意」
その「鋼鉄」は。
指揮を預かる車長の合図で、その体内に抱えるエンジンを唸らせる。
「目標、敵装甲車輛。対戦車弾装填」
さらに続く車長の指示で、「鋼鉄」は携えるその得物に――「主砲」に砲弾を飲み込み備える。
そしてその巨体を隠していた稜線を越え、鈍くも堂々とした動きでゆっくりとその姿を「敵」の前へと表す。
その「鋼鉄」は――T-80と呼ばれた。