ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
「クソ――T-80だッ」
16MCVの車内、照準器越しに「その姿」を確かに見た砲手は。思わず零れた声でその名を紡ぐ。
「行くぞッ、正面に立てるのは俺等だけだッ。やるしかないッ!」
しかし次には篠寺が、張り上げた声でそう社内各員へ、同時に通信にて他各車に訴える。
「チクショウッ」
「ドライバー、出せッ!」
また次には操縦手が悪態を吐き上げるが。その操縦手に篠寺は命令指示。
その指示が反映され、操縦手の手によりギアが入れ替えられた16MCVは、エンジンを唸らせて前進。
今に遮蔽した稜線を越えて押し出て、「敵」に向けての前進を開始した。
16MCVと、それに続く形で両24ICVは稜線を再度越え。遮蔽を解いてその先へ出て、隊形を組み作りながら前進開始を見せる。
「尾張23、当車と左へ。33は右へ回れッ」
《了解、23は常陸11に続くッ》
《33、右へ了解》
「敵」、T-80の姿を正面向こうに見て進みながら、篠寺は通信にて両24ICVに指示。
了解の返答が返されると同時に各車は進路を変え、左右方向へ2両と1両に分かれる。
「向こうも出て来たぞ」
その動きを行いながらも、篠寺は認めた動きを周りに伝える。
前方正面向こうに、T-80の側も踏み出て来て前進を始める姿が見える。
「ッ!」
その動きを見たのも束の間。
次には間髪入れぬ様子で、再び不気味に風を切るような嫌な音を伴い。T-80からの砲撃が襲い来た。
だがまだ向こうも照準が甘いのか。また幸いなことにそれは、先と同様にこちらの近くの宙空を飛び抜け、明後日の方向へと飛び去る。
「装填ッ」
今のそれに篠寺が微かに肝を冷やした所へ、砲塔内から声が上がり聞こえる。
装填手が105mmライフル砲の砲尾に、多目的対戦車りゅう弾を叩き込み終え、それを知らせるもの。
「丘里、撃てるなら撃て」
「了解、間もなく――発射ァ!」
篠寺は砲手に射撃のタイミングを任せ。砲手はそれに答え、そして一拍の照準のための間を置いた後に、張り上げるそしてトリガーを引いた。
105mmライフル砲が唸り、轟く音とともに砲弾が撃ち出される。
しかしT-80に目掛けて飛んだ砲弾は、急き発射されたせいか直撃角度が浅くなったか。
T-80の装甲傾斜に弾かれ退けられ、明後日に飛び消える様が見えた。
「クソッ」
「落ち着け。無暗に撃っても無意味だ、慎重に」
悪態を上げた砲手に、篠寺は落ち着き慎重になるよう声を降ろすが。
実の所、急き緊迫状態にあるのは篠寺も同じ。
《33、徹甲弾へ換装中》
《23、今完了した。射撃開始ッ》
その次には各車から無線での状況の知らせが届き聞こえ。
そして16MCVと行動をともにしている24IVCの「尾張23」が、その30mm機関砲を撃ち唸らせた。
しかし撃ち向けられた機関砲の砲撃投射は、またT-80の装甲に弾かれる様子を見せるのみで終わる。
「ッ、距離が遠い。もっと接近しないと通らないッ」
その様子を向こうに見て、舌打ち混じりの声にて、各車に通信にてその旨を伝える篠寺。
《33換装完了、射撃始める》
そのまた次には、右方へ分かれた24ICVの「尾張33」から知らせが寄越され。
そして側方の向こうに走行進行する姿を見せる「尾張33」が、すでに照準を完了させたその機関砲を撃ち唸らせる姿を見せた。
撃ち出し向けられた機関砲の砲火は、だがまたT-80の装甲に弾き退けられるが。
尾張33は有効弾の期待を、相手を少しでも損傷させることに望みを賭け、しつこく撃ち込みを続ける。
だが。まるそれを煩わしく思い、機嫌を損ねたかのように。
向こうのT-80がその砲塔の旋回の動きを見せ、砲身の向きを変えたのは直後。
その砲身に砲口が睨み捉えたのは、尾張33。
――ヒュゥ。
空気を不気味に切り裂く嫌な音が聞こえ。そして「物体」が飛び来る気配感覚を、周りの各車各員が覚えた、その直後。
――爆音が上がり聞こえ。
尾張33が、その車体が爆炎を生じ、そして衝撃に叩き退けられるような動き様子を見せた。
「33ッ!!」
その様を側方向こうに見た篠寺は、怒号の如き声を張り上げ、通信で尾張33に呼び掛ける。
その尾張33は、車体前部のシャーシに車輪周りが大きく破損し、沈み擱座する姿を見せている。
「33応答しろッ!」
《――生きてる、皆生きてる……!》
立て続けに向けた。張り上げた声での呼びかけに。
次にはノイズの混じる通信音声で、少なくとも向こうが皆生きている旨が返され来た。
《ゴホ……皆生きてるが、負傷者あり……!走行不能、砲塔も動かないッ》
「いい、ただちに脱出しろッ!ヤツはこちらで引き受けるッ」
続けて咳込み混じりの尾張33の車長の声で、向こうの状態を伝える声が寄越されるが。
それに篠寺は急く色で、向こうに脱出を指示する声を返す。
「ヤロォッ」
そして次には篠寺は、憎々しさを覚えての悪態と併せて、視線を正面に戻し。尖る眼で向こうの忌々しい存在であるT-80を見る。
《あァッ》
同時に、似たような状態感情なのであろう尾張23の車長の、唸る様に零された悪態が。通信が拾い篠寺の耳に届く
そして同時進行で、尾張23がまた唸らせた機関砲の音が響き届く。
「23、右へ行け!右へ行け!古時、俺等は左だッ」
篠寺は通信で声を向け、併せてキューポラ上から手振りを向けて指示。
16MCVと24ICVは、そこから左右へ分かれる。行動不可能になった尾張33をカバーし、そしてT-80の挟撃を試みるための動きだ。
その走行行動を続けながらも、尾張23はまた機関砲を撃ち放ち。その砲撃砲火で向こうのT-80の装甲を叩く。
だがその向こうで、T-80は機関砲火に装甲を叩かれしかし退けながらも。
その砲塔をまた動かす動きを見せた。
「ッ!23、そっちを狙ってるぞッ!」
その砲が向くは尾張23の方向。それに16MCV側から見て気づいた篠寺は、通信に警告の声を張り上げる。
だが直後、向こうで砲の唸る音が届き、そして空を切り裂くような嫌な音が聞こえ。
――ガゴンッ、と。
大きな衝撃音が上がり聞こえ。
そして向こうの尾張23の車体が、叩き殴られたかのような動きで大きく揺れ。
次には煙を上げ、歪な動きで停止する様子が見えた。
「23、状態知らせ!」
目を剥き、尾張23に向けて尋ねる声を張り上げ向ける篠寺。
《……ッォあ……皆無事ッ。だがエンジンに喰らった、やられた……ッ!》
次にはやや歪な通信音声で、苦く忌々し気な声色での回答が返り来る。
幸い乗員に被害は無かったようだが。回答とこちらからも見える姿から、尾張23が行動不可能に陥った事は明らかであった。
「脱出しろッ」
それを受け、篠寺は尾張23に脱出を指示。
「クッソ――俺等でやるしかないッ!」
そして。
最早唯一残った自分等が、T-80をなんとしてでも仕留めるしかないと。それを苦くも険しい色で発し上げた。