「――報告しろ」
須導は共通軽装甲車より降りつつ。周囲四周へ10.9mm拳銃を走らせ、併せて視線を流して回し。
見える範囲の敵影が無力化された事実を確認し。同時に指揮下の各員に状況報告を寄越すよう訴える。
「クリアッ」
「あぁッ、キレイんなったンじゃねェのッ?」
それに。須導の反対側をクリアした加納に、車上でターレットの汎用機関銃を回しながら周囲を流す薩摩から。
それぞれ同じく無力化を確認しての、報告の声が寄越され来る。
「了――加納、その子たちを」
「えぇ……ッ!」
周囲の無力化が確認され、ならば次に続く優先事項にと。
須導は、庇うように留めた共通軽装甲車の向こう傍で。寄り添い合い、しかし驚きや恐怖よりも前に呆けてしまっている子供達を見つけ。
加納にその保護を指示する。
「君たちっ!」
加納は運転席より降り、そしてすぐ傍で抱き合う子供たちに。少し急く色で近寄り、そしてその前に屈んで視線を合わせる。
「大丈夫かいっ?怪我はっ……!……あっ」
まずともかくは子供達の身体、容体を確認しようとした加納だったが。子供たちの身に手を伸ばそうとした所で、しかし気づく。
子供たちは抱き合い、そして子供ながらに少し鋭い眼で加納を見上げて来る。
警戒の色。
危害を加えて来た野盗を排除してみせた存在とはいえ。子供たちからすれば自衛隊もまた、得体の知れぬ油断ならない相手。
「あぁ、ええと――ダイジョブ。ワタシタチはタスケ、ワルいはシナイ……っ」
そのことに気付いた加納は、戸惑いつつも説明にてその警戒を解くべく。自らが危害を加える存在では無い事を伝えようとするが。
生憎、加納はこの異世界の地の言語の習得に苦戦しており、まだたどたどしい所がある身。
「ダイジョブ……ええと……っ」
なんとか習得できている言葉から、子供たちを安心させる文脈を組み立てようとするが。
しかし思うように行かず、台詞を詰まらせてしまう。
幸か不幸か、加納はその可憐な外見が助けてか。その彼女が戸惑う様子が逆に子供たちに、「害は無さそう」という所だけは伝えたが。
しかしコミュニケーションがそれ以上繋がらず。子供たちは引き続き、「変なお姉ちゃん」を見る目で加納を見上げている。
「ぁぅ……薩摩っ……手を貸してくれ……!」
やり取りを繋ぐ糸口が見れず。そしてそんな子供たちの目に、いたたまれなくなった加納は。
振り向き、共通軽装甲車の上で引き続き警戒に着いて居た薩摩に。助けを求める声を掛けた。
「ったく、ガワだけ王子様よぉッ――しゃぁねぇッ」
それに薩摩は、隠さぬ溜息交じりの悪態で答え。ターレットを這い出て車上から飛び降りて、加納を肩代わりするように子供たちの前に割って入る。
〈あァ、坊主、ちびっ子ズ。チト無理言うが心配すんな、俺等は悪モンじゃぁねぇ〉
そして、大分習得の進んでいる異世界の言語で。砕けた流暢な言葉を紡ぎ、子供たちに言葉を紡ぎ始める。
〈おっかねぇ思いさせたな、ちょいとおいちゃんズの話を聞いてくれっか?〉
前に述べた通り。習得の進んだ流暢な異世界言語は、しかしそのまま薩摩の癖の悪いキャラまで反映してしまったが。
しかし砕けた伝わりやすい言葉に。併せての身振り手振りを交えての訴え方をする薩摩の姿には。
「人相は悪いが、たぶん悪人では無いニーチャン」感が、図ってかたまたまかは知らないが演出できていた。
薩摩は普段の態度に口こそ悪いが、こういう所がまた上手かった。
〈……おじちゃんたち、どういう人なの……?助けてくれたの……?〉
次に、薩摩のそれが功を奏してか、子供たちの警戒に少しの緩和が見え。
そして内の男の子のほうが、こちらの「話を聞いて欲しい」というお願いへ、その肯定を兼ねてのように。
こちらの身分に行動理由を尋ねる言葉を、おそるおそる向けて来た。
〈おれ等はニホンのジエイタイ――あァー、遠くの国から来た軍みたいなモンだ〉
それにまず、薩摩は自分等の身分を噛み砕いて一応説明。
〈ちびっ子ズが酷い連中に襲われてんのを見つけて、チトお節介でレスキューに首突っ込んだってワケだ〉
そして助けである旨を肯定。加えて二人を安心させるように、男の子の方の肩をポフポフと撫で叩いてやって見せた。
ついでに加納に目配せをして促し。加納は同調するように。その可憐な顔にしかしぎこちない笑顔を浮かべで頷いて見せる。
そんな薩摩に加納、それぞれの言葉に姿様子から。
子供たちは、現れた自衛隊が敵では無いとひとまず信じてくれたようであった。
〈ちびっ子ズはあの村に住んでんだろ?何があった?〉
〈う、うんっ!村が……っ!〉
そこからさらに尋ねて話を進め。
同時に、ちょうど駆け着けて衛生班の衛生科隊員によっての。子供たちの怪我、容態の確認が並行して始められながら。
薩摩等は二人に、そして向こうで煙を見える集落に何があったのかを聞き始めた。