ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録   作:えぴっくにごつ

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Part9:「面倒な対立」

 傍に、薩摩と加納が子供たちより話を聞き始めるのを見守りつつ。しかしひとまず任せて良いと判断しつつ。

 須導は周囲に展開した各班各員より上がって来る、各方向の無力化、他事項の報告を受け取り。自身もまた続く指示を飛ばし返している。

 

「ん?」

 

 そんな所へ、後方向こうより気配が。そして複数のエンジン音が新たに増えて、聞こえて来たのは直後。

 それを辿って振り向くと同時。場に、三台の車両がちょうど走り込んで来て到着、周囲の各所に展開して停止した。

 

 一輛の1/2トラックと、二輛の共通軽装甲車。到着したそれぞれから隊員が降車し、先着の各班をカバーし、警戒をより密にするために展開して行く。

 到着したそれ等は、第101前進観測隊に戦闘主力として組み込まれる普通科小隊。その本部班及び第1分隊だ。

 

「須導三佐ッ」

 

 そして内の1/2トラックより、透る声をこちらに掛けるのと併せて。一人の隊員が須導に向かって駆け寄って来た。

 

 程なく須導の前に現れ立ったのは、20代前半程の若い女隊員。

 その彼女こそ今に到着した、普通科小隊の小隊長であった。

 

 御邸(みやしき) 梨花(りか) 二等陸尉。

 

 まだ美少女のあどけなさが残る端麗な顔立ちの、凛とした大変な美人。

 鉄帽から覗くはセミロングに届く長さの、濃くも明るい色合いの茶髪。以前聞いた所、地毛とのこと。

 表現すれば、「できる女社長」といった雰囲気の幹部隊員だ。

 

「ハァ、またですか――初動行動に、普通科を使わず自ら突っ込むマネは、控えてと言ったハズですが?」

 

 その御邸が歩み寄ってきて周囲を見渡しながら、しかし次に寄越したのは。そんな呆れ交じりの要求の言葉。

 いや。その凛とした釣り目で軽くこちらを睨んでのそれは、詰問に近いそれ。

 訴える旨は言葉通り、主力の普通科小隊を用いずに、指揮官自ら突入していった行動を咎めるもの。

 

「あぁ、すまない。事が急だったものでな」

 

 その少し気圧されそうなまでの御邸のそれに、しかし須導はと言えば。

 受け取り言葉では詫びつつも。しかしたじろぎも臆しもせず、端的な声色で事実についてを返す。

 

 実の所は。確かに戦闘行動の際には普通科小隊を前に展開させるのが、ベースの想定とはなっていたが。

 何も須導始め本部も丸腰では無い。須導等が直接突入したのも、一つ手だ。

 

「……シンプルな手段を、相変わらずお好みで」

 

 だが、それにまた御邸が返して来たのは、一度面白くなさそうな色を見せてからの。そこから変えての嘲るような言葉。

 まるで「優雅さの欠片も無い」とでも言いたげなそれは。言ってしまえば一種の「いびり」だ。

 

 彼女、御邸は経歴を明かせば、防衛大学主席のエリート。しかし、いやそれ故か、はたまた元よりか少なからず気位が高い人柄であった。

 そしてだ。

 技術者としての経験からの、技術資格枠での入隊で幹部となった須導の。その指揮下となった事は、どうにもあまり面白く思っていない様子があり。

 こうして、上官である須導相手にも、隠さぬ嫌味を向けてくることが。第101前進観測隊の編成完結から任務開始以来、時折見受けられたのだ。

 

「必要に迫られない限り、小手先は不要と考えている」

 

 しかし御邸のそんな言及に。須導が返したのは、まずはそんな自身の考えを示す言葉。

 

「自信を演じて飾るような、イキりも無用だ」

 

 そしてさらに、今の御邸の嘲りに叩き返すかのように。そんな言葉を紡ぎ向けて見せた。

 

「っ……」

 

 御邸は、技術者入隊の幹部が「本物」からの批評の前にたじろぐ色でも期待していたか。

 だがそれが外れ、堂々と叩き返された言葉に、その可憐な顔をしかし微かに険しくする。

 

 この二人の対立は、第101前進観測隊の一部の隊員にも影響を及ぼしており。

 一種のカリスマ溢れる御邸に賛同し、取り巻く者がちらほらいる一方。

 

 そんな彼女を煙たがり、訝しみ。

 それより、自ら矢面に立つことにも臆さず。そして自身は謙遜するが、徐々に隊長としてのスキルも伴いつつある須導に、一目置く者がまた増え始めている。

 

 よくないのだが、御邸が指揮官である普通科小隊にも。その指揮系統を越えて須導に直接指示に意見を求める者も出始めている状況だ。

 

 そんな背景も伴っての今の「衝突」から。一瞬、尖る視線をぶつけあう二人。

 

「――もしィッ?よろしくてアソバセェ、お幹部サマ方ァッ?」

 

 しかしそんな所を、空気を敢えて読まずの嫌味前回の台詞を引っ提げて。薩摩が間に強引に割り入って来た。

 両者の関係に徹底した中立、なんならどっちもウザく思ってる薩摩にあっては。

 「ウゼェことしてらっしゃんなッ」と顔面一杯に訴えながら、その半身を両者の間に割り入れ、二人の「衝突」を阻む。

 

「っ」

 

 御邸はその不躾な薩摩を睨むが。薩摩はそれにもまたウザそうな顔を返すだけで、そしてどこ吹く風で言葉を続ける。

 

「ちびっ子ズは身に大事は無ェ様子。お幹部サマ方も、直にお話されたほうがよろしいんでなくてですゥッ?」

 

 捲し立てられたのは、今に任せていた子供たちに関する報告。

 どちらもその身に大事は無かったようであり。そして詳しく話せる状態まで回復したのだろう、須導の御邸の二人に、そう意見具申する言葉が投げられた。

 

「あぁ、ありがとう。ならあの子たちに話を聞こうか」

 

 それを受け、須導は提案を受け取り。

 

「御邸二尉、やり方に思う所はあるだろうが、協調して欲しい――集落に展開する事になる、普通科小隊の準備を」

 

 そして御邸に、一応の汲み取る言葉を添えつつも。これ以上ここで諍いを続ける気はないと言うように、隊長としての指示命令を伝え。

 

「……了解しました」

 

 御邸は不服気ながらも、上官のそれを了解。

 

「仲良くせェとは言いませんが、面倒はホドホドに願いますねェッ――ホレ掛かるでごェますよ、お偉方ッ」

 

 そんな二人を薩摩は最早、慇懃無礼すら保たぬ遠慮せぬ物言いで。腕を翳し上げながら捲し立て。

 各々はそれぞれの行動に掛かった。

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