仮面ライダーPOLARIS   作:正気山脈

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 常治がデューラントに敗れて病院送りにされた、その二日後。
 無事に退院することになり、彼は恵と共に勤務地であるザナドゥー北東区にやって来た。
 北に近づくと町並みは明らかに東区よりも落書きやゴミが少なくなっており、バイクの騒音もほとんど聞こえず治安が多少マシになっていることが常治にも分かる。
 ここに、志を同じくする魔祓課の仲間たちがいる。少し遅れてしまったが、ようやく顔を合わせることができるのだ。
 胸を高鳴らせながら、恵の運転に任せ、目的地の警察署の前で車を降りると――。

「は?」

 そこにあるのは、明らかにコンビニを改築して作ったであろう外観の、控えめに見ても交番としか思えない建物があった。
 目をパチパチとさせつつ、同じく車を降りた恵の方に向き直る。

「あの……雪白先輩、場所間違えてますよ?」
「合ってるわよ。ここが魔祓課のある警察署、というより専用のオフィスね。本来のザナドゥーの警察署は北区にあるし」

 そう言われてもう一度、瞼を擦ってから建物を見た。
 駐車場には明らかに後から作ったであろう簡素な屋根と、パトカーと白バイが停まっているので、警察がいることは間違いない。
 だがやはり、そうだとしても警察署にしては施設が小さすぎるし、乗り物の数も少ない。

「えっ、冗談ですよね? っていうかこれ……良くて交番ぐらいですよね? はい? ウソでしょ?」
「マジも大マジよ、これがウチのオフィス」

 信じられない、とばかりに顔を青ざめさせた常治だが、立ち尽くしていても仕方ないので、恵に促されるまま警察署と思われる場所に向かう。
 流石にガラス張りの窓は全部壁に変わっており、自動ドアもオートロックの手動式、恵がパスコードを入力して中に入った。
 外から見た際の隠しきれないコンビニ感からは考えられないほどに、オフィスとしてしっかり整えられており、レジ部分は撤去されてデスクやホワイトボードなども用意されている。
 ただし、人数はかなり少ないようで、空いているデスクが三つ、既に人が座っているデスクが二つ。戸惑いながらも、常治は恵に問う。

「魔祓課のメンバーは、俺を合わせて四人だけってことですか?」
「いや、もう一人いるわ。多分後で会えるわよ」

 そうしている内に、最も奥のデスクの前に座っている女性が、紅茶を一口含みつつ常治たちに声をかけた。

「お疲れ様、雪白巡査。そして君が英警視正の言っていた新人だね?」

 その言葉を発した人物の横顔に、常治はハッと息を呑み、思わず見惚れてしまう。
 肩まで伸びたミルクティーブラウンの髪に、垂れ気味ながらも長い睫毛を際立たせる妖艶な目つき、そして淡いピンクの唇。
 視線が泳いでしまい、恵に肘で小突かれてようやく我に返ると、頬を赤らめながらも咳払いして自己紹介を始める。

「碧山 常治、巡査です! 二日前には到着していたのですが、挨拶が遅れて申し訳ありません!」
「事情は聞いている。デューラントと戦ったんだろう、大変だったね」

 常治に労いの言葉をかけ、フッと柔和な笑みを浮かべる。

「名乗るのが遅れたね。私は紅 花胡(クレナイ カナン)、警部だ。ザナドゥー警察署魔祓課の課長を務めている。会えて嬉しいよ」
「よろしくお願いします、紅課長」

 ずっと顔の左側しか見せずに横目で微笑んで左手を差し出す花胡と、まだ頬が赤いままその握手を受ける常治。
 少し落ち着いたところで、常治は疑問を口に出す。

「あの……ちょっと気になったんですけど、課長はどうして左半身だけ向けてらっしゃるんです?」
「あぁ、すまないね」

 キィ、と椅子が鳴り、花胡が正面を向く。
 その瞬間、常治の目が見開かれた。

「……え!?」
「なにせ()()()()()()()()()()()()、あまり見せないようにしているんだ。ここに来た住民が怖がるといけないだろう?」

 常治と向き合った彼女の顔の右半分は、無機質な黒い仮面で覆われており、さらに右腕は機械製の冷たく黒い義手となっている。

「昔、ちょっとね。仮面で傷を隠している。右足も義足だ」

 これでも運が良い状態だが、と付け加えて、花胡は微笑む。そんな平然とした彼女の様子に、常治は戦慄するばかりだった。
 続いて、手前のデスクで作業している中年の男が話しかけて来る。

「お前さんが噂の新人かい。来て早々デューラントを倒そうとするなんて、随分活きの良いヤツだな。熱血刑事なんざ流行んねぇだろうに。それともクソ真面目なだけか?」
「えぇと……あなたは?」
上島 金人(ウエシマ カネヒト)、巡査部長だ」

 黒い短髪に三白眼、やや無精髭が目立つ頬の痩けたその男は、名乗った直後に腕を組んでキャスター付きの椅子の背にもたれかかった。

「今の内に忠告しとくがな、これからは怪我するようなことはやめとけ。命保たねぇぞ。どうせこの町の住民なんてクズの集まりなんだ、放っとけば良いんだよ」
「なっ……それ、警官の言う事ですか!? 怪人や犯罪者に殺される人たちを見殺しにして良いとでも!?」
「やっぱクソ真面目だな。でもな、お前さんはここがどういう場所かまだ分かってねぇよ。だからそんな綺麗事が言える。ひとつ、例を聞かせてやろう。北区に向かってくるデューラントの相手をすることになった時の話だ」

 両肘をデスクについて指を組みながら、金人は常治を睨むように目を細める。

「ヤツらが北東区まで上ってくるのは珍しいことでな、必死に抵抗して食い止めて、なんとかボブルヘッズだけは倒せた。デューラントの方はスターライダーが消滅させたが……その時、なんて言われたか分かるか?」
「……普通は、感謝されるでしょう」
「住民からは『スターライダーの邪魔をするな』で、スターライダーからは『手柄を横取りするな』だとよ。そんで後輩が一人スターライダーにブン殴られて、ポックリ逝って、相手の方はお咎めナシ。逆に邪魔者を消したヒーロー扱いさ」

 あまりの衝撃的な内容に、常治は思わず言葉を詰まらせてしまう。
 金人は溜め息と共に、肩を竦めた。

「笑えないだろ? ザナドゥーじゃ外の常識なんざ通じねぇのさ、俺らが必死に怪人から人を助けたところで、返って来るのは罵声と嘲笑と暴力。俺はここで働く中でそういう場面を見た、何度もな」
「で、でも……少なくとも警察関係者なら、働きを認めてくれるはずでは……?」
「オフィスの現状を見れば分かんだろ。本当は北区にもっとちゃんとした警察署があんのさ、魔祓課(俺ら)だけ隔離されてんの。誰も俺らを求めてない、上の連中すらもな。本当にクソだぜ、ここは」

 今度こそ常治は絶句してしまう。同じ警察なのに、いやそれ以前に同じ人間であるはずなのに、なぜこんな扱いを受けなければならないのか。衝撃と疑問は尽きない。
 恵はそんな二人を見て「ちょっと」と割り込み、金人をじっと睨めつける。

「上島先輩、あんまり新人を脅さないであげて下さいよ」
「こんなんでビビるようなヤツなら、どの道ここじゃやって行けねェよ。だからって気張り過ぎても命を落とすだけなんだけどな。とにかく、まずは適当にやり過ごすって事を覚えな、新人」

 金人はそう言うが、常治の方は唸るだけで、明確な返事をしない。
 代わりに、花胡たちに質問を投げかける。

「このことを、英警視正は……?」
「まぁ知らないだろうね。外部への情報発信は規制されているし、逆に向こうが知る術もないんだ」
「そんな……」

 同じ日本と思えないような、想像を超えた悲惨な状況に、常治は圧倒されていた。もはや警察が警察として機能していない。
 だがそれでも常治は頭を振り、気を強く持つ。こんな状況だからこそ、自分が先輩たちのやる気を起こさせなければならない、と。
 花胡はそんな彼の様子を眺めつつ、パチンと自らの両手を叩いた。

「では雪白くん、そろそろ彼にこの施設を案内してあげてくれ。まぁ、それほど広い場所ではないのだが」
「はいは~い」

 案内と言われて、常治は首を傾げる。
 コンビニの間取りをほぼそのまま使い、入ってすぐオフィスになっている以上、何かあるとすれば事務室やバックヤード、あとは調理場くらいのものだろう。わざわざ案内の必要などあるのだろうか。
 そう思いながらもついていくと、やはりバックヤードに通される。だがそこで別の場所に向かわず、恵はさらに奥へ進んでいく。

「……どこに行くんです?」
「良いから良いから」

 彼女に促されるまま倉庫の奥を覗き込んでみると、室内の隅の床に戸が付いているのが見える。
 恵が戸を開けば、そこにはハシゴが取り付けられていた。

「地下室!? コンビニに!?」
「だから警察署だって……いや、確かにコンビニを改築したんだけどね」

 彼女の後に続き、ハシゴを降りていく。
 そこには上階とほぼ変わらない広さの白い壁に囲まれたスペースがあり、多様な数多く機材が並んでいる。どうやら研究施設のようであった。
 さらによく目を凝らすと、やや小柄で童顔なボサボサの黒髪の、丸い眼鏡をかけた白衣姿の女性が立っている。
 恵から声をかけられて、白衣の女は眠たげな目で振り返った。

「お、恵ぃ。そっちの子が新人くん~?」
「初めまして。帝久乃市から来た碧山 常治、巡査です」
「どもぉ。わたしぃ、技術開発担当の星馬(ホシバ) モカだよぉ。よろしくぅ~」

 やや袖の余った白衣から手を伸ばし、モカはひらひらと手を振る。

「技術開発、というのは?」
「まぁ、ぶっちゃけ新しいライダーシステムの開発だよぉ」

 それを聞き、常治は目の色を変えて身を乗り出す。

「作れるんですか!? その……仮面ライダーになれるんですか!?」
「ちょっ、落ち着いて落ち着いてぇ。まだ開発中の段階だからさぁ、今すぐじゃないのぉ」

 慌てふためくモカと、常治を羽交い締めにして落ち着かせる恵。
 彼が一旦落ち着いたのを見計らってから、モカは「にしても」と切り出した。

「キミもその呼び方をするんだぁ、スターライダーじゃなくってぇ?」
「俺……も?」
「あぁ、まだ知らないのぉ? 紅課長のことなんだけどねぇ。あの人、昔ザナドゥーの外で働いてた時に、ライダーに会ったことがあるんだってぇ」
「え!?」
「まぁわたしもそんなに詳しく知ってるってワケじゃないからぁ、機会があったら本人に直接確かめてみたら良いと思うよぉ」

 常治は頷き、その話を心に留める。
 そして案内が終わって地上に戻る前に、モカが思い出したように「あっ」と声を上げた。

「恵ぃ~、お昼は碧山くんと一緒にトレミーでハンバーガー買って来てくれない~?」
「別に良いけどさぁ。たまには自分で買いに行きなさいよ、運動不足になっちゃうわよ」
「地下に引きこもってるみたいに言わないでよぉ~。ちゃんと散歩くらいしてるし、四日に一回はお風呂入ってるもん」
「いや風呂は毎日入れ、臭いし」
「臭くないもん!! 紅課長からチーズの香りするって言われたしぃ!!」
「それ褒められてないのよ」

 必死に自分の体臭について否定するモカの姿を尻目に、恵はハシゴに足をかけ、常治は首を傾げながらその後を追う。

「トレミーって何スか?」
「私たちの行きつけのお店みたいなもんよ、あとで案内してあげる」
「って、そっちが先に上がったらスカートの中見え――ぁ痛っ!!」


ROUND.02[Shoot the Arrow(シュート・ザ・アロー)]

 そして、現在。

 

「……いらっしゃいませ?」

 

 トレミーで店の準備をしていた最星は、食事を受け取りに来た常治と恵に出会った。

 茅英璃もすぐに応対のために現れ、短い挨拶を交わす。

 

「電話で予約注文していた、魔祓課です」

「あぁ、あなた雪白さんのお連れさんなのね。初めまして、店主の葉賀瀬よ」

 

 常治も簡単に自己紹介をし済ませて、恵がラジカセから流れる音楽を聴きながらチラリと最星の方に目をやった。

 

「あなたたちのところの新人の……神浦くんも、最近外から来たのよね?」

「そうそう、しかも色々あったみたいでさ、記憶喪失なのよ。碧山さんが外から来たんなら、こいつの顔に見覚えとかないかしら? 行方不明者とかさ」

 

 茅英璃に問われた常治は改めて彼の顔をまじまじと見つめて、しばらく考え込んだ後、頭を振る。

 

「悪いけど心当たりがないですね」

「そうか……」

「すいませんね、大変なのに力になれなくて」

「気にしないでくれ。街の外はここよりずっと広いことは俺も聞いている、そう簡単に済む話じゃないのは分かっていた。地道に手がかりを探すさ」

「それなら良いんですが……あ、俺の方からもちょっと聞きたいことが」

 

 メモとペンを取り出しつつ、常治は茅英璃や環たちの方を見て質問を投げかけた。

 

「ポラリスという仮面ライダーについて何かご存知ですか? 少し前に命を助けて貰ったことがあって、その礼がしたくて探してるんです」

 

 それを聞いて最星と環はグッと息を呑み顔を見合わせ、一瞬答えに詰まる。

 が、そこで素早く茅英璃がフォローに入った。

 

「いやぁごめんなさい、そのスターライダーのことは私たちも名前くらいしか知らないのよ。そもそも匿名ライダーみたいだし?」

「匿名ライダー? なんですそれ?」

 

 気になるワードに関心が移ったところで、今度は恵が補足する。

 

「実名を伏せて、正体を隠しながらスターライダーをやってる連中のこと。大体のライダーはスポンサーに保護して貰って援助を受ける目的で名前を出してるんだけど、そうじゃないのもいるってこと」

「名前を出さないことに何か意味が……?」

「極端な話、名前出してたら住所特定されて暗殺なり奇襲なりされる。自宅に爆弾投げ込まれて死んだってニュースも何回か聞いたことあるし」

 

 富裕層が住めるような北区は警備が厳重なのでそのようなことは起こらないが、東区や南区はそうではない。西区などはデューラントがかなり多く、そもそも治安どうこうのレベルではない。

 それらを聞かされた常治は顔を引き攣らせつつも、知っておかなくてはとメモを取り、続きを促した。

 

「かと言って、スポンサーが付かなかったら資金面で苦労するんでしょうね。他にも、匿名で活動しているスターライダーには犯罪者も多いわ」

「ポラリスは絶対犯罪者なんかじゃないですよ。俺を助けてくれた、本物の仮面ライダーなんですから」

 

 恵はその発言を聞き怪訝そうに眉をしかめ、出会った時から気になっていたことを尋ねる。

 

「その『本物の』って何なの? スターライダーと仮面ライダーってどう違うワケ?」

「本物は本物ですよ、仮面ライダーは打算じゃなくて真っ当に人を守る正義の味方です。俺は帝久乃市でも助けられました。スターライダーは彼らと違って自分のためだけに平気で人を傷つけ略奪する、俺はそんなのを仮面ライダーとは認めない」

 

 火の点いたような眼差しで真っ直ぐに言い放ち、だが恵にはいまいち熱意が伝わっておらず、肩を竦められてしまった。

 

「言いたいことは分かるんだけどさ。ポラリスだって別に打算で戦っててもおかしくないんじゃないの? だって、彼も願いを叶えたいからスターライダーになってるんでしょ?」

「それは……っ!」

 

 今までに人から聞いたスターライダーたちの話もあり、常治は言葉を詰まらせてしまう。特に、自分が同じ職に就いている以上、警官が殴り殺されたという事実は重大だ。

 そうしてしばし二人が睨み合っていると、最星が袋を手に間に割って入る。

 

「注文のハンバーガー、冷めない内に持っていった方が良いんじゃないか」

 

 常治はそれを聞いてハッとして頷き、礼を述べた後に恵と共にその場から去っていく。

 道の途中でまだ言い合っている二人の背中を見送りつつ、環が深く長い溜め息を吐き出した。

 

「……ちょっとヒヤッとした、最星がポラリスだって勘付かれるんじゃないかって……」

「あはは、環ちゃんビビりすぎ~」

「び、ビビってないよ!? ボクら、別に悪いことしてないんだし!?」

 

 慌てて未来に釈明する環に対し、茅英璃は二人に落ち着くよう促した後、予約注文された分のハンバーガー作りの作業を進めていく。

 

「少なくともスターライダーって知られたら絶対良い顔はされないでしょうね、アタシたちとしては警察を敵に回したくはないわ」

「ああ、できる限りバレないように立ち回らないと……気が抜けないな」

 

 話していると、未来の持つ端末からアラームが鳴り、次いで町中でも警報音が響いた。

 デューラントの出現情報を受信したのだ。

 

「うわ~っ、かなり近い……っていうかこれヤバいって、もう東区まで来ちゃってる!」

「んもぅ! これから人が来そうって時に!」

「最星、悪いけど行ってくれる?」

 

 環に言われるよりも速く、既に最星はジュラルミンケースを持ってグラスプドライバーを装着し、ガジェットタイプのハンドリンクを手に取っている。

 ラベル部がオレンジ色の缶型で、表面にはMETRO STREAM(メトロストリーム)と書かれており、プルタブを倒すと同時に変形を始めた。

 

「準備ならもうできた」

CAN DE CHANGE(カン・デ・チェンジ)! METRO STREAMER(メトロストリーマー)!》

「すぐ済ませて帰る」

 

 カシュッと音がして缶が縦に割れて分離し、左半分がメトロストリームのロゴと共にオレンジ色の道着を着たサルがプリントされた大きなボードに。

 残りの半分はさらに横に分割されてボードの左右に取り付けられ、スラスターとなる。

 メトロストリーマー。マシンスプライダーほどスピードは出ず攻撃への耐久性は高くないが、小回りが利く上に空中にも対応している乗り物だ。

 最星はそのままワンダーコーラハンドリンクを手に取り、ベルトに装着。メトロストリーマーの底面が展開して車輪が現れ、疾走しながら変身へと移る。

 

HOLD ON(ホールド・オン)! OPEN THE BOTTLE(オープン・ザ・ボトル)!》

「変身」

AWAKENING SURPRISE(アウェイクニング・サプライズ)! WONDER COLA(ワンダーコーラ)! OPEN THE BATTLE(オープン・ザ・バトル)!》

 

 地上を素早く駆け抜けながらアンダースーツとアーマーを纏い、スターライダーポラリスとなった最星は、すぐに現場へと到着した。

 既に戦いは始まっており、先日のスハイルや他のライダーの姿が数名確認できる。中には、負傷してグラスプドライバーを着けたまま倒れている者も。

 

「うおらっ!!」

「この野郎ォー!!」

 

 サルピシウムフレーバーのスハイルと、ムギムギダンダンフレーバーのシマウマのライダー、さらにワンダーコーラフレーバーのラクダのライダーが飛びかかる。

 その先にいるのは、複数個の破れた麻袋を縫い合わせて無理矢理人の形を作ったような、カカシの如き異形の怪人。

 肩甲骨の辺りからはビールめいた液体が詰まった瓶が伸びており、さらによく見れば袋の一部に開いた穴からは金貨や銀貨が確認できる。

 麻袋が皮なのだとすれば、それらは骨や肉のような役割を担っているのだろうとポラリスは予測した。

 

「はぁ、はぁ……クソッ! 一体何なんだこいつ!?」

 

 スハイルがトゲ付きの盾をブーメランのように投擲して攻撃を仕掛けるが、金銭の怪人であるノイミー・デューラントはそれを容易く弾いて逸らし、攻撃を凌いだ。

 さらにまだ盾が戻って来ていないスハイルに対して右腕を突き出し、金貨の詰まった麻袋の拳を自ら切り離して高速で撃ち出す。

 

「ぐ!?」

 

 カネの拳が鳩尾へと直撃し、よろめいて膝をつくリスの戦士。

 さらに分離した麻袋がそのまま宙を漂い、ノイミーの全身も七袋に分割されてシマウマやラクダのライダーを取り囲む。

 

「うげっ!? ま、マズい!!」

「に、逃げ……」

 

 咄嗟にスハイルが伏せ、直後に四方八方を浮遊する麻袋から無数の硬貨が勢い良く飛び交い、二人の男たちを襲った。

 

「ぐあぁーっ!?」

「ギャッ!?」

 

 硬貨の側面には爪や牙に似た鋭利な器官が備わっており、スターライダーたちは少しずつ装甲を抉られ、細かいながら何度も何度も傷を負う。

 胸にLUSITANIA(ルシタニア)と書かれたシマウマの戦士と、NIHAL(ニハル)というらしいラクダのスターライダーの変身が解除され、ベルトのホルダーから飛び出したハンドリンクがスハイルとポラリスの足元に転がる。

 ニハルが落としたのは、『DELTA CIDER(デルタサイダー)』とラベルに書かれたハンドリンク。射撃の的に三本の矢が刺さったイラストが特徴的だ。

 ポラリスはそれをホルダーにセットしつつ、通信相手の茅英璃の声に耳を傾ける。

 

『スターライダーを二人纏めて倒すなんて……他にも負傷者がいるみたいだし、見かけによらず強敵ね』

「ああ。まぁ、それでも倒すがな」

POLAR SAZER(ポーラセイザー)! AXE MODE(アックスモード)!》

 

 そう答え、斧形態のポーラセイザーを手にメトロストリーマーで駆け、全身が再構築されたノイミーの背後から袈裟に斬りかかった。

 しかし、次の瞬間には金貨袋のカカシは自ら左右に割れてしまい、攻撃は空振りに終わる。

 

「今のが見えていたのか?」

 

 やや驚きつつも車輪を格納し、スラスターを噴射してサーフィンする要領で空中を舞って、反撃される前に距離を取った。

 続いて立ち直ったスハイルが盾を構えて突進、だがそれも肉体をさらに散らしたノイミーに避けられてしまう。

 

「あぁもう! こんなヤツどうすりゃ倒せるんだよ!?」

 

 彼女は悪態をつきながらも、続いて襲いかかってくる金貨の群れを盾で防ぐ。

 その様子を空中でサーフィンしつつ眺め、ポラリスはホルダーからワンダーレモンハンドリンクを手に取る。

 

「あの金貨の中にコアが紛れ込んでるのか……?」

HOLD ON(ホールド・オン)!》

「こいつを試してみるか」

OPEN THE BOTTLE(オープン・ザ・ボトル)!》

 

 ワンダーコーラとワンダーレモンを入れ替え、ドライバーを操作。

 するとコーラのような液体が周囲のボトルから噴出され、エネルギーラインが黄色に変わり、両腕に拳を覆う大振りな装甲が合着する。

 

FIZZY MUSCLE(フィジー・マッスル)! WONDER LEMON(ワンダーレモン)! OPEN THE BATTLE(オープン・ザ・バトル)!》

「ハッ!」

 

 拳を大きく振り抜くと、腕のアーマーが黄色く光り、拡張された拳打がノイミーを叩かんと迫った。

 しかしそれさえも、金貨の体が四方に散って麻袋が地面に落ちるという形で避けられ、滑り込むようにしてスハイルの股の間をくぐり抜けた後、その背後でコインが肉体を再構成する。

 

「これでも当たらない……!」

「キキィッ!」

「く!」

 

 反撃の金貨の拳が飛来すると、ポラリスはメトロストリーマーのスラスター噴射で素早く空中回転し、回避に成功する。

 だが直後にその金貨が空中で静止、さらに元の方角に向かって散らばり、ポラリスを背後から襲う。

 

「うっ!?」

 

 寸前のところで不意打ちに気付いたポラリスは、咄嗟に裏拳を繰り出し金貨を弾く。

 このままでは埒が明かない。ならば、とポラリスがレバーを回し、必殺技に打って出る。

 

WONDER LEMON(ワンダーレモン) ()FLAVOUR STRIKE(フレーバーストライク)!》

「喰らえ……!」

 

 すると、背後にコーラ色の液体が入ったボトルがいくつも出現、ポラリスはそれを伴って高く空に飛び上がって、両腕を地上に向かって突き出す。

 瞬間、その勢いに合わせてボトルから拳を象ったエネルギー体が飛び出し、黄色い閃光と共にノイミーへ攻撃する。

 その近くにいるスハイルは慌てて盾を構え、パリンッという音の直後に攻撃が着弾。広範囲に幾度も光の拳が叩き込まれ、地面に浅くクレーターが出来上がった。

 

「や、やったのか!?」

 

 土煙が立ち込める中、手を焼いていた敵の気配がなくなったことを感じ取って、スハイルが顔を上げる。

 それとほぼ同時にポラリスがワンダーコーラフレーバーに戻って、地上に降りて彼女と同じく周囲に目をやると、二人は薄れていく砂塵の向こう側に奇妙な形の人影を捉えた。

 それは、頭にグラスジョッキのようなものを逆さまに被った怪人だった。不可解なことに、全身に線状の穴が無数に付いている。

 

「ボブルヘッズ? いつの間に……?」

 

 そう口に出した時、ポラリスはハッと思い出す。

 必殺技を繰り出した瞬間、何かが割れる音が聞こえたことを。

 デューラントは体の一部に生えている瓶を砕いて、戦闘員たるボブルヘッズを生み出すことができる。

 しかし戦闘能力が低いにも関わらず、ポラリスが必殺技を放った瞬間にそれを行ったのはなぜか。そして、複数体作ることができるはずなのに()()()()()()()()()

 

「スハイル! 防げ!」

「へっ?」

 

 咄嗟にメトロストリーマーを盾代わりに防御姿勢を取り、スハイルにも呼びかける。

 直後、ボブルヘッズの体に開いている穴から無数のコインが爆発的な勢いで飛び出し、二人に襲いかかった。

 

「く……がっ!?」

「うわぁぁぁっ!?」

 

 メトロストリーマーが砕け、スハイルの手から盾が落ちる。さらに、度重なるダメージの蓄積によってハンドリンクがエネルギーを失い、二人ともエンプティフレーバーになってしまった。

 

「そういう、ことかよ……こいつ、ボブルヘッズの体内に身を隠して……!?」

 

 ノイミー・デューラントはボブルヘッズを何体か生み出した後、その内の一体の体内に無理矢理入り込んで潜み、残りはその上に覆い被さる形で肉壁としたのだ。

 そうして消滅を免れた一体が、たった今二人に不意打ちを食らわせた。直前でポラリスが気付いたため変身解除までは至らなかったが、それでも甚大な被害を被ることとなった。

 さらに、二人はこのデューラントの真の特性に気づく。

 

「こいつは本体がどこかにあるとかではない。コインの一枚一枚がデューラントそのもの、統率の取れた群体タイプだ」

「チマチマと一匹ずつブッ倒すしかねぇってか、クソ面倒臭ぇ!」

HOLD ON(ホールド・オン)! OPEN THE BOTTLE(オープン・ザ・ボトル)! DYNAMIC MINERAL(ダイナミック・ミネラル)! MUGIMUGI DANDAN(ムギムギダンダン)! OPEN THE BATTLE(オープン・ザ・バトル)!》

 

 ムギムギダンダンフレーバーになったスハイルの悪態を聞きつつ、ポラリスは仮面の奥で眉を寄せる。

 目の前で集結していくコインの数が、最初に見たときよりも明らかに少ない。これはどういうことなのか。

 そう思って周囲に目をやると、不意にチャリチャリという金属の擦れるような音が耳に入った。

 音のした方向を振り返ってみれば、そこにはキャッシュボックス部に穴が空いたキャップコイン用の自販機であるオートバイヤーと、そこから湧き出る膨大な数のノイミー・デューラントがいる。

 よく見れば、キャップコインをかじっているようであった。

 

「ウソだろッ!?」

「そうか、ヤツらはキャップコインを捕食することで数を増やせるのか……俺が必殺技を使った時、事前に別働隊を送り込んておいたんだな。なるほど、思ったより厄介な相手だ」

「感心してる場合かよ!?」

 

 最初に戦った時の倍以上の金貨の巨体となったノイミーに萎縮するスハイルだが、ポラリスはそんな彼女にひとつ提案を投げかける。

 

「スハイル、ここは協力してくれ。あいつを放っておいたら街のオートバイヤーが全部使えなくなるぞ」

「……トドメはアタシが貰うからな!」

「それでいい」

「ならやってやる!! で、どうすりゃいいんだ!?」

 

 小気味いい返事に頷いてポラリスが見せたのは、先程拾った白と緑のカラーリングのハンドリンクだった。

 

「このハンドリンクはヤツとの相性が良い、ある程度数を減らした後はお前が決めろ」

「ヘヘッ、任せな!」

「よし……さぁ、ハジケようか」

HOLD ON(ホールド・オン)! OPEN THE BOTTLE(オープン・ザ・ボトル)!》

 

 エネルギーの切れたボトルとデルタサイダーハンドリンクを入れ替え、レバーを回してスイッチを押し込む。

 すると周りを透明な液体の詰まったボトルが囲み、ポラリスに向かって噴射。液体がアーマーを構築し、白く流線型の鋭いボディに緑のエネルギーラインが走る姿に変わる。

 

DECISIVE ARROWS(ディサイシブ・アローズ)! DELTA CIDER(デルタサイダー)!》

「いくぞ」

OPEN THE BATTLE(オープン・ザ・バトル)!》

 

 パチンッと指を弾いた後、右手に白い洋弓のシュートサイダーが握られ、白熊の戦士はそれを構えて緑色のレバーを引き、光の矢を放つ。

 ノイミーの軍勢は散らばって攻撃から逃れようとするものの、回避行動に移った瞬間に矢が()()、三本の閃光となって数枚の硬貨を貫いた。

 

「キィッ!?」

「どんなにバラけても、デルタサイダーの矢からは逃げられない。このまま地道に削り続けてやる」

 

 宣言通り、ポラリスが弓を引く度にコインの数は少しずつ、しかし確実に減っていく。

 すると、ノイミーの一部がスハイルの背後に回り込み、不意打ちを仕掛けようと動き出す。

 だが。

 

「バレてんだよ、オラァッ!」

 

 動く気配を背中で感じ取っていたスハイルは、振り向きざまにヤカン鉄球をぶつけ、逆に不意打ちを食らわせることに成功。

 背後にいたノイミーは全て砕け、想定外の事態だったのか統率が崩れ始める。

 

「焦っているようだな? なら、そろそろ」

DELTA CIDER(デルタサイダー) ()FLAVOUR STRIKE(フレーバーストライク)!》

「刺激的に決めるぞ」

 

 レバーを回転させて天面のボタンを押すと、ポラリスの足元から大きなキャップの形状をしたエネルギー体が出現し、彼はそれを蹴りつけてノイミーの方に飛ばす。

 直後、ノイミーたちの目の前でキャップが空中静止、回転し、巨大なボトルが形成されて金貨のほぼ全てを閉じ込める。

 

「キィッ!?」

「ギギィーッ!?」

 

 キャップの中心にはアーチェリーの的のような円形模様が描かれており、その中心に狙いを定めて弓のレバーを引き絞る。

 すると、先程までは緑だった矢が、徐々に赤い光へと変化し、発射口に形成されていく。

 

「終わりだ」

 

 直後、解き放たれた矢が稲妻のようにキャップを射貫き、ボトル内で赤い矢が駆け巡って全てのコインを破壊した。

 9割ほどの戦力を奪われた残存のノイミーは、狼狽えつつも逃走を図るが、その退路をヤカンが塞いだ。

 

MUGIMUGI DANDAN(ムギムギダンダン) ()FLAVOUR STRIKE(フレーバーストライク)!》

「せぇ、のォォォッ!!」

 

 振り抜かれた鉄球が容赦なく残りのコインを破壊し、完全消滅。

 その瞬間に、最初にノイミーが入っていた麻袋が大きく膨れ上がったかと思うと、中から大量のキャップコインが湯水の如く溢れ出した。

 スハイルは再びエンプティになりつつも「うっひょぉ!」と歓声を上げて飛び上がり、すぐにキャップを掻き集め始める。

 

「さっきオートバイヤーから取り込んだ分の倍以上はあるな……強力な分、見返りも多いワケか」

「おい何してんだポラリス! アタシが全部貰っちまうぞ!」

 

 持参したらしい大きなスポーツバッグの中に詰め込めるだけ詰め込んでいるスハイルに声をかけられ、ポラリスもまたジュラルミンケースの中に大量のキャップを収容していく。

 だが、その時だった。

 

「両手を上げて跪け!」

「大人しくしろスターライダーども!」

 

 赤と黒を基調としたカラーリングの警備服を身に着けた、男女入り混じった10人近い集団がその場に駆けつける。

 そして腰に下げた拳銃を突きつけて、威圧的にそう言い放った。

 彼らの姿を見て、スハイルは静かに舌打ちする。

 

VINCI(ヴィンチ)かよ……今更来やがって」

 

 私設武装警備軍隊『VINCI』。富裕層が多く住む北区に本拠地とする、ザナドゥーの市長が設立した治安維持組織で、デューラントやスターライダー犯罪対策において警察以上に市民からの信頼を寄せられている者たち。

 ただし彼らは戦闘行動する範囲を主に北西・北・北東区のみに限定しており、しかも西区から北西区に怪人が近付いている場合や東区から押し寄せる暴徒鎮圧のため以外ではほぼ動かないので、それら三区画を除く場所に住む者たちからは目の敵にされている。

 さらにVINCIは警備用の備品としてグラスプドライバーとハンドリンクを購入・配備しているため、所属していないスターライダーも煙たがっているのだ。

 

「なんだ女ァ? 文句でもあるのか?」

「これだけの人数を相手にして、無事で済むと思うのか?」

「血を見たくないならさっさと手を引け。それとも、お前たちが無様に負ける映像を北区の皆様にお届けしてやろうか?」

 

 警備隊員らはそう言いながらニヤニヤと笑い、スハイルを挑発する。

 すると、ポラリスはそんな彼女の腕を取り立ち上がらせ、VINCIの面々を睨む。

 

「用事は済んだ、もう帰らせて貰う。それで良いだろう」

「お前……」

 

 スハイルは一瞬戸惑いつつもフンと鼻を鳴らし、ポラリスと共に立ち去ろうとする。

 が、その背に数人の警備隊が素早く銃口を突きつけた。

 

「おい! 俺たちは跪けと言ったはずだぞ! 言う通りにしろ、撃ち殺されたいのか!」

 

 スハイルが舌打ちし、ポラリスは沈黙するが面の内側で眉をひそめる。

 そして、二人がホルダーのハンドリンクに手を伸ばそうとした、次の瞬間。

 

「何をしている」

 

 警備隊の中でもリーダー格らしい、勲章のようなものを胸に付けている軍帽を被った男が、他の隊員たちを静まらせた。

 腰にかかるほどのサラサラとした長い黒髪に、三白眼で猛禽のような鋭い眼差し。さらに感情の一切を排したような冷酷な表情は、ポラリスたちにも圧を感じさせる。

 

「ここでスターライダーの相手をして、時間を浪費するのが我々のすべき仕事だと思っているのか? 違うだろう。これ以上もたつくようなら、この私が――」

「も、申し訳ありませんでしたスピリタウス様!」

 

 警備隊員たちがそう言って敬礼すると、スピリタウスと呼ばれた男はポラリスたちには目もくれず、周囲の警戒と戦闘の後処理の作業に取り掛かった。

 スハイルは彼らの気が変わらない内にと言わんばかりに、ポラリスの腕を引きながらそそくさとその場を離れていく。

 

「この借りはいずれ返すからな、覚悟しとけよ」

「いつでも来い」

 

 二人は言い合って、VINCIの者たちの目に留まらないようにしながら、道を分かれる。

 その途中、ふとポラリスは自分が来る前に戦っていたスターライダーたちの様子が気になり、振り返った。

 するとそこには、警備隊の面々が倒れたスターライダーを持ち上げつつ、担架に載せている様子が見て取れる。

 

「……アイツら、人命救助も請け負ってたのか……?」

 

 首を傾げつつも人目につかない場所に移動し、変身を解いて、最星はトレミーの三人が待つ帰路につくのであった。

 




 その日の夜、ザナドゥー南西区にて。

「フゥー、沁みるゥ!」

 スターライダースハイルの変身者である蘇芳田(スオウタ) ヒカルは、痩せ細った草木や乾いた土が広がる荒野となっているその地区の酒場で、ビールを呷っていた。
 キャップコインは戦力を得るために自分で確保しておくのも良いが、売ればかなりの高額になる。今回得た大量のコインのお陰で、彼女はこうして気持ち良く呑むことができているのだ。
 何よりも、ランクが上がったことが大きい。最上位まで行くのはまだ無理でも、ザナドゥー内で名が知れ渡れば仕事を任されることもある。そうすれば、もっとカネが入るはず。

「あら。ご機嫌よう、蘇芳田さん」

 痛快な未来を思い描きながら飲み食いしていると、突然に背後から声がかかった。
 よく通る、まだ若い女子の高音の声だ。
 ハッとして振り返れば、そこには赤く伸びた長髪にいくつもの縦ロールを作っている、青いドレスに身を包んでいる麗しい目鼻立ちの女が立っていた。
 真っ直ぐピンと背筋を立てて、貴族然とした所作で、ヒカルを見下ろしている。
 1()9()0()c()m()()()()()()()で。
 屈強かつ頑強さを感じさせる肩に、大きく盛り上がった胸部とドレス越しでも分かる彫刻めいて割れた腹筋、野太く強靭な腿部など力強さが際立っている。
 また彼女の背後には、彼女よりは細身ながらも筋肉質な体型で、鋭く冷たい目付きで威圧感を放つ、腰にレイピアを帯びた執事服姿の金髪の美丈夫が佇む。
 客は青褪めて一斉に彼らのために道を開き、ヒカルも思わず、といった様子で立ち上がり一礼する。

「あ、姐さん!? お久し振りッス!!」
「あらあら。いつも言っていると思いますが、ワタクシの方が年下ですのよ?」
「そ、そうでした……ハハハ……」

 完全に酔いが覚めたのか、ペコペコと頭を下げるヒカル。
 それに構わず、赤髪の女は続けた。

「活躍したそうですわね。なんでも、他のスターライダーと一緒に新種を討伐したとか」
「ど、どうも」
「それで。少し気になってしまいましたの。あのシロクマの方……ポラリス、だったかしら。近い内に会ってみたくて」

 朗らかな笑みを浮かべながら彼女が発したその一言を聞き、ヒカルは背筋をゾッと震わせる。
 彼女の名は丹羽 汐(タンバ ウシオ)、またの名を――スターライダーアルデバラン。

「情報提供、してくださる?」
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