隠最強の男   作:ケツアゴ

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柱合会議

「え? もうバテちまった? なら背負ってやろうか?」

 

「俺はバテてねぇ! こんなん楽勝に決まってんだろうが!」

 

 伊之助を鍛えるには何が必要かって問われたら煽りだと答える。だって煽ってたらムキになって気合いが入るから。

 

 自力で呼吸を身に付けてたから俺が鍛えている伊之助だが、最近は上弦とも遭遇したし忙しくなりそうだ。それに俺じゃ剣術の基本は教えてやれねえし、他の隠じゃ強さ第一の此奴に言う事を聞かせるのは難しい。

 だから最終選別前に何処かに預けたいんだが、決まった型を持たないのが強みの此奴を鍛えられそうな知り合いとして元水柱の鱗滝さんが住む狭霧山を目指す事にした。

 

 俺と縄で繋いで全集中の呼吸さえ続けていれば着いていける程度に遅く走って山道や川の中を進む。途中通報されたが逃げ切って、漸く半分ってところだ。

 

 その辺で限界を迎えた伊之助を挑発すればぶっ倒れた状態から飛び起きて虚勢を張るし、向上心があって単純な奴って良いねぇ。

 

「常に呼吸を継続するのを忘れるなよ、伊之助。本当に強い奴は寝ている間も可能だからな。まあ、お前には数年早いか?」

 

「んなの楽勝に決まってんだろうがっ! やってやんよ、こら!!」

 

 こうやって訓練で呼吸の技術や基礎体力は身に付けさせてるし、後は鱗滝さんに……あっ、事前連絡してねえな。急に此奴連れて来て鍛えてやってくれって言ったら小言確実だな、おい。

 

 でも俺の鎹鴉の轟天丸(隠の頭って事で支給された)は点在している拠点に向けて飛び回ってるから今居ないし……。

 

 ぶっちゃけ最近は隊士の質が落ちて来ている。育ち切る前に死ぬのか、それとも才能ある奴が入って来ないのか迄は断言出来ねえが、あの人の手腕と山の環境なら伊之助を選別まで預けるのには十分だ。

 あの人の弟子ばっか狙う想定外に強かった異形の鬼はもう居ないし、俺が小言言われたら良いだけか……。

 

「おい、伊之助。お前なら将来的に十二鬼月だって倒せる剣士になれるだろうよ。だから気合い入れて鍛えろ」

 

「おうよ! 絶対大親分もぶっ倒せる様になってみせるぜ!」

 

「そうか。じゃあ、残り半分はもうちっと厳し目で行くぞ」

 

「お、おう」

 

 先ずは湿らせた手拭いを口元に巻いて、山道は目隠しして感覚の強化訓練にして崖も手で登るか? 俺も武器が使えないからって必死に鍛えたからなあ。

 さてと、伊之助はどれだけ付いて来れるか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

「それで急にやって来たと。相変わらずだな、お前も。そうだから嫁が居らぬのだ」

 

「嫁どころか血縁の親戚とも不仲だぜ? まあ、そっちは金絡みで親父が揉めたせいだが。そのせいで親戚の娘が鬼殺隊に入ったのも最近知ったし」

 

 あの酒馬鹿に喧嘩売りに行ったら見覚えのある妙ちくりんな髪色のが居たのは驚いたわ、マジで。

 

 狭霧山の麓の小屋前で俺達を出迎えた鱗滝さんだったが、流石に連絡無しだったせいで小言を言われてる。でも嫁さん居ないのはそっちもだろ。

 

「堂々と言う事では無いだろうに。それとその小僧を鍛えてくれとの事だが、生憎既に一人鍛えている最中でな……」

 

 一度の複数人育てた実績のある鱗滝さんにしては妙な事に伊之助を鍛えるのには消極的だ。それに普段なら家で茶でも出してくれてるってのに今日は家の前での立ち話。

 寧ろ家に入れたくない何かが……。

 

「おう。じゃあ三ヶ月だけ修行場を貸してくれれば良い。ガサツな奴だし迷惑掛けるだろうから飯と寝床は近所(数里離れた場所)にある隠の拠点から通わせるからよ」

 

 この人が家に入れたくないってんだから俺は深入りしねえし、伊之助にもさせねえ。それならば別に構わないし今鍛えている奴にも良い刺激になりそうだって言ってくれているしな。

 

 

 

「しかし出会い頭に“天狗だな、ぶっ倒す”と向かって来るとは随分と威勢が良い小僧だな。お前と出会った事を思い出す。あの小僧がまさか上弦の参……五十年前の水柱を殺した鬼を退ける程になるとはな」

 

「だろ? 出会って三ヶ月程度だし構ってやる時間も少ねえが気に入ってんだ。叩きのめしがいがあるからよ」

 

 じゃあ返り討ちにあって気絶している内に得意の暗示使って家には入らないようにしておいてもらうか。にしても小屋の中にいるのって……鬼か? にしては気配が妙だ。

 

 ああ、それと勝機はあったのに取り逃しちまった彼奴の事は言わないでくれ。ハラワタが煮え繰り返りそうだからよ。

 

 

 

 

「じゃあ偶に様子を見に来るって伝えておいてくれ」

 

 鬼の調査に新米の訓練とか色々やる事が多いからな。あっ、桑島さんの所にも顔出すか。あの人って今二人育ててるんだっけか?

 

 

 その前に柱合会議に呼ばれてるんだったな。やれやれ、気が重い。

 

 

 

 

 

「……まあ、上弦の参はそんな感じだ。正直言って正面からサシで戦って勝てる可能性があんのは行冥と……」

 

 半年に一度の柱合会議に本来は頭だろうと隠の俺は参加しない。どれだけ強かろうと役割は補助だ。活動方針にまで口を出すのは混乱を生むだけだが、流石に今回ばかりは話が別だと参加していた。

 報告はしたが上弦二体と遭遇している俺が意見を述べるべきだとなってな。

 

 俺が勝てる可能性が低くてもあると思ったのは行冥と杏寿郎……後は女って事で胡蝶か。それでも勝率は芳しくないんだろうが。

 

「おいおい、上弦ってのはそんなに派手に強いのかよ、七篠さん。今の所分かってんのは分身に任せて自分は小さい体で逃げ回るのとアンタと同じ流派と……花柱を殺した奴か」

 

 宇髄の言葉に姉の空席を埋めた胡蝶が拳を握り締める。なーんか危うい感じがするんだよな。あのじゃじゃ馬娘が姉の真似を始めちまうし、何処か違和感もある。内臓も少し悪いみたいだしな。

 

「まあ参に関しちゃ伝えてる揺さ振りを試すとして、俺から素流の門下生を紹介するから彼奴を想定して訓練してくれや。問題は……弍か壱がお前ら以上の呼吸の使い手の可能性が高いぞ」

 

 驚く一同の前に出したのは御館様から借りた昔の記録。無惨を追い詰めたってされている始まりの呼吸の使い手の世代なんだが。その中の一人が裏切ったらしい。

 

「参の野郎が透き通る世界を使った俺を見て至高の領域とか見知った感じだったからな。弍が剣士だって情報は無かったから壱が返り忠の恥知らず犬座右衛門と見て良いだろう」

 

「えっと、七篠さん? その犬座右衛門ってのは……?」

 

「どうも命惜しさに寝返ったみたいだからな。立場からして部下には命捨ててでもとか言っておいて、自分は鬼になって生き永らえる代わりに犬の真似して無惨に尻尾を振る恥知らずを元の名前で呼んだら親に悪いだろ? それでどうするんだ?」

 

 予想通りなら戦いになるのは俺だけだが、俺だっていつ衰えが出始めるか分からない、と告げれば場が重くなる。ああ、俺が一番もどかしい。どうして俺には武器が振るえないかねぇ。

 

「成る程。つまり俺達が権兵衛殿が使う透き通る世界にまで辿り着ける程に強くなるしかないのだな! ならば今まで以上に鍛錬に励むだけだ!」

 

「あの馬鹿がちゃんとお前の指導してくれてりゃあ今の時点でも参との勝率が高まってたんだがな」

 

 杏寿郎は天才、あの酒馬鹿が指導を投げ出してから独学で学んだが行冥の次には強いだろうし、これでちゃんと鍛えていればな。

 鍛えるといえば柱ってのは担当地区の見回りがあるせいで鍛錬の時間の確保が難しい。それはこっちでどうにかするしか無いが….。

 

 

「取り敢えず選抜で落ちたか任務中に脱落して隠になったが居るから俺が同行して首を切らせるし、最近作られた銃も雑魚鬼なら殺せるから鍛錬の時間を少し確保出来ないかやってやるよ」

 

 銃の扱いが上手い奴が見付かればこっちの訓練も捗るんだがな。本当は痣を出す方法が分かれば良いんだが、無惨の拠点の場所が分からないと時間制限に追われて終わりになりそうだからな。

 

 あと、例外の俺が寿命縮めて強くなれとか言っても説得力無いし、痣に関しては口止めされてるからな。

 

 

「取り敢えず鱗滝さんや伊之助みてぇに索敵能力が高い隊士を増やさないとな……」

 

 あー、命と引き換えに無惨を殴り殺せれる様になってくれたら良いのにな。

 

 

 

 

 

 

 

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