元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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圧倒的な力……!


第10話 元Sランク冒険者と、Sランク魔物。

「……おい、ミランダ」

 

「わかっておる……ちと不味いの」

 

 奴の姿には覚えがある。……Sランク魔物、“金色鬼”レジェンダリーオーガ。オーガの最上位種。

 

「な、なんだコイツは……!」

 

「敵なことには違ぇねぇ!やっちまえ!」

 

 冒険者がレジェンダリーオーガに斬りかかる。振り下ろされた剣は……レジェンダリーオーガの肉体に当たった瞬間、まるでガラスのように剣が粉砕した。

 

「な……っ」

 

「……」

 

 レジェンダリーオーガが、塵をどかすように右手を掃う。

 

「ッ!ぐわああああああ」

 

 暴風が吹き荒れ、周囲の冒険者やオーガが吹き飛ばされた。

 レジェンダリーオーガの特徴、それは金色の肉体と……圧倒的な身体能力。

 ただ右手を掃うだけの動作が、“災害”となる。

 

「ミランダ。手加減してる場合じゃないだろ。……死ぬぞ、アイツら」

 

「全力を出したいのは山々なんじゃが……ッ!」

 

 ミランダが、キャッチリングでレジェンダリーオーガを拘束する。

 

「……ォオ?……ォォオオオオオオオ!!!」

 

 本来、ミランダのあの魔法は力づくで破れるものではない。無理に破ろうとすれば、筋肉が千切れ飛ぶ。

 ……筈なんだが、

 

「オォォオオオオオ!!!」

 

 千切れ飛んだのは、キャッチリングの方だった。……妙だ。Sランクの魔物といえどミランダのあの魔法が破られるとは思えない。

 

「……お前まさか」

 

「……ワケあっての、今の儂の魔力総量は、せいぜいAランク上位といったところじゃ」

 

「はぁ!?一体何してんだよ!?」

 

「ワケあってと言っておろうが!……あのランク相手だと、儂が今の全力を尽くせば時間稼ぎができるかどうかというところじゃな」

 

 まだ、ブラッドオーガも残ってる。

 

「ゴアガアアアアアア!!!」

 

「グオオオオオオオ!!!!」 

 

 次々と倒され、士気が落ちて来たオーガたちも、最上位種の登場で再起してきた。反対に、冒険者たちの士気は落ちている。

 圧倒的な魔物の襲来。冒険者たちの唯一の希望は、Sランク冒険者のミランダだが……事情があるらしく、本来の実力を発揮できていない。

 

「……オォ」

 

 レジェンダリーオーガが、気まぐれで拳を地面に放つ。

 

 怒ッ!!!

 

 地面が、爆ぜる

 拳状のクレーターが、その場に形成される。

 冒険者も、オーガも、平等に吹き飛んだ。

 

「っ、ああああああ!!!」

 

「っ!!先生ぇ……っ!」 

 

 その中には、ミャゲルやサリーナも含まれていた。

 ……あいつらは、優秀だ。優秀だからこそ肌で感じただろう。圧倒的な力の差を。

 ミランダが、拘束魔法で、攻撃魔法で、崩れた戦線を立て直そうとするが……押されている。レジェンダリーオーガがあまり動いていないからこそまだ皆生きているが、あいつが本気を出せば全員お陀仏だ。

 ……それなのに、

 

「……まだ、まだ!」

 

「えぇ……!まだ、魔力は残ってる……!」

 

 挫けない。何人かは、既に戦意を喪失している。もうだめだ、おしまいだ。膝をつき、立ち上がれない者もいた。

 だが、ミャゲルは、サリーナは諦めていない。

 

「……師匠なら、きっと立つ」

 

「先生が、まだ戦ってる!」

 

「「叶えたい願いの為に、絶対に諦めない!」」  

 

 力の差は明らかだ。レジェンダリーオーガは、触れずとも皆を滅ぼすことができる。それが分からない奴らでもない。

 ……あぁ、違うな。そういうことじゃないんだ。冒険者になるような連中には2種類いる。身寄りがないとか、腕っぷししか取り柄がないとかで、冒険者しか選択肢がない奴。

 ……もう1つは、どうしても叶えたい願いとか夢とかがある奴。

 人っていうのは、最初叶えたい何かを持っていた筈で、時間が経つとそれを諦めてしまう。年齢とか才能とか、現実が見えた瞬間擦れていく。

 ……俺だって、そういう時期があったな。

 

「……そ、そうだ」

 

「ガキ共が諦めてねぇんだ!」

 

「こっちにはミランダさんだっている!諦めるなぁ!」

 

 ああいう熱にアテられると、皆思い出すんだ。自分が冒険者だってことを。危険を冒してまでも、求めるモノがある愚か者だということを。

 ……そういえば、俺も思い出した。

 オーガ共の進行方向は町だったな。……調味料が買えなくなるのは困る。

 山暮らしオンリーでも生活できないことはないが、美味いものが食べられなくなるのはいただけない。あそこの酒場のビールと唐揚げも、また食べたい。

 ……そうだ、本当にそれだけだ。

 ……っていうか!そういえばそうだった!あのレジェンダリーオーガが飛来してきた方角って!

 

「っ……このままでは……!」

 

「……おい、ミランダ」

 

「……!」

 

 ……俺は、キャッチリングを“破壊”する。立ち上がり、集中してレジェンダリーオーガを見る。

 

「ここから北東に10キロ先……開けた盆地がある。“俺とレジェンダリーオーガを飛ばせ”」

 

「……よいのか、お主はもう冒険者ではないのじゃろう?」

 

「別にアイツらを助けるわけじゃない。俺がなんとかしなきゃいけないだろ……それに」

 

「それに?」

 

「……あの金ぴかオーガが飛んできた方角。俺の家がある方角なんだよ……!」

 

「えぇ……」

 




テツロウ、動く。
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