元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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第13話 元Sランク冒険者と、その弟子と、新たなる旅立ち。

 どうも!元Sランク冒険者、拳王テツロウ様の一番弟子、ミャゲルです!

 色々ひと段落して山へ戻った私たちを出迎えてくれたのは……家や畑があった場所にできていた、クレーターでした。

 

「……」

 

「思ったより、ショックを受けておるの……」

 

「あは、あはは……」

 

「……これが、あのレジェンダリーオーガを殴り飛ばした元Sランクなのよね。はぁ……」

 

 結局、町に戻って宿を取りました。……残念ですが、サリーナちゃんとミランダ様は王都へ用事があるそうなので、お別れすることになってしまいます。

 

「……ミャゲル。あなたとパーティーを組めないことは残念だけど……お互い、目標のために頑張りましょう」

 

「はい!サリーナちゃんもお気をつけて!」

 

「……その」

 

 サリーナちゃんが、もじもじしながらこちらを見ます。……一体なんでしょう?

 

「その、ちゃんっていうのはやめてくれない?……呼び捨てでいいし、あまり堅苦しく無くていいから……」

 

「……!はい!じゃない……うん!サリーナ!」

 

「……うん、またね!ミャゲル!」

 

 サリーナちゃん……いえ、サリーナとはちょっとひと悶着ありましたけど、こうしてお友達になれて嬉しいです!

 

「……アンタもね、テツロウ。腐ってないで、ちゃんとミャゲルを強くしなさいよ」

 

「……うるせぇよ」

 

「もう!……何があったかは知らないけど、今回の件で少し見直したわ。しっかりしなさいよ」

 

 サリーナも、師匠に思うことがあったみたいですけど……なんとか、見直してくれたのかも?

 

「テツロウよ。また会おうぞ……できれば、今度はもう少し社会復帰しておくのじゃぞ」

 

「……人をニートか何かみたいに言うな」

 

「似たようなもんじゃろ……息災でな」

 

 2人は、こうして去っていきました。またどこかで会えると嬉しいなぁ……。

 その日から3日……師匠はまだ落ち込んでいます。

 師匠は、3年前にあの山と周囲の土地を大金はたいて買ったそうです。家も畑も、何もかも手作りしていた師匠のショックは、それはもうすごいもので……。

 

「はぁ……」

 

「師匠……」

 

 この3日間、ずっとこの状態が続いています。……それでいて、修行は手を抜いてくれないのですが!

 

「……はぁ」

 

 師匠がこんなに落ち込んでいるところは、初めて見ました。だいたいいつも無気力な返事をするか、時々荒っぽい言葉遣いや振る舞いを見せている師匠が……こんなことになってしまうなんて、よっぽど愛着があったんですね……!

 

「……仕方ない。行ってくるか」

 

 ふと、師匠が立ち上がります。……一体何をしようというんでしょう?

 

「師匠、どちらへ……」

 

「……ここら辺を治める領主のトコ」

 

「ふぇ?」

 

 領主って、あの領主ですよね?土地を管理している……。

 

「……あの山。もう魔物とか近づかなくなっちまったしな。狩猟もできないし……住んでもしかたないし、引き払うための手続きをしに行くんだよ」

 

「でもあの土地って買ったって言ってましたよね?」

 

「買ったけど、税金とかは納めないといけないしな……使えなくなっちまった土地の税金払ったってしかたないだろ……」

 

 あ、確かに。土地を借りている分の税金はかかりませんが、所有してる分の税金は別なんですね……。

 

「では、お供します!」

 

「どうしてお前が……」

 

「正直、今の状態の師匠をそのまま偉い人に会わせるのが怖いです!」

 

「……好きにしろ」

 

 というわけで、領主様のところへ行くことになりそうです!……あれ?でも師匠って正体を隠していましたよね?大丈夫なんでしょうか……。

 

 

「ふわぁ……大きいですねぇ……」

 

「そりゃそうだろ。領主の屋敷だぞ……」

 

 というわけで、領主様のお屋敷にやって来ました!とんでもない大きさです……!

 師匠は、そのままお屋敷に入って行こうとしますが…… 

 

「待て!何者だ?領主様の許可は?」

 

 ですよね……!なんの許可も無い状態で会うことはできませんよね……!

 

「許可……それでマイホームが帰ってくるのか……?」

 

「マイホーム……?何を言っている?ともかく、許可がないなら帰った帰った!」

 

 やっぱりこうなった!もー!

 

「あ、あの!この方……テツロ……ん゛ん゛!ウロウさんが所有する山の件についてのお話のため、領主様にお会いしたく……!」

 

「土地の関連なら役所に行けば良いだろう。直接会ってまで話す要件じゃない!帰った帰った!」

 

 良く考えればそうです!?師匠、それほどまでに家とか無くなったショックで……!

 

「その者は問題ない。通せ」

 

 衛兵さんとやり取りをしていると、屋敷の方から立派な服装をした男の人が出てきます。金髪は整えられ、とても清潔感がある方です……まさか!

 

「領主様!?しょ、承知しました!」

 

「……やっと出て来たか、遅いぞ」

 

「これでも忙しい身なのだがね……行くぞ。そちらのお嬢さんも」

 

「は、はい!」

 

 もしかして、領主様とお知り合いなのでしょうか……!

 そうして立派な客間に通され、領主様と向かい合うように座ります。

 

「お前が来るのは税金を納める時以来だなウロウ。……いや、テツロウと呼ぼうか?」

 

「え!?領主様は師匠の正体をご存知なのですか!?」

 

「まぁな。ある時、魔物に襲われているところを助けてもらったことがある」

 

「……え?でも師匠のローブって認識阻害の魔法がかかってる筈じゃ?」

 

「それが、爆発の魔法を使うオークメイジにローブを吹き飛ばされていたのだ!間抜けよな!はっはっは!」

 

「うるせぇ!」

 

 し、師匠……。意外とツメが甘いのか何なのか……ちょっとお茶目というか……。

 

「一体何用だ?納税の時期はまだ先だが……」

 

「…………」

 

「そ、それが………」

 

 

「はっはっはっは!!!住居が吹き飛んだ!?愉快だなテツロウ!」

 

「……だから来たくなかったんだ」

 

「え、えーと……笑いごとではないというか……」

 

 一通り事情を話すと、領主様は大爆笑してしまいました……。

 ……にしても、この方は不思議です。師匠の……拳王テツロウの評判は決して良いとは言えません。ですが、この方はまるで師匠を友人のように接しています。

 

「不思議か?テツロウとこうして話していることが」

 

「え!?」

 

「俺を病原菌みたいに言うなよ……まぁ間違ってはいないか」

 

「考えてもみろ少女よ。……こんなマヌケで、お人好しな奴が噂通りの奴なわけはないだろう?」

 

「おい、さっきから誰がマヌケだ誰が」

 

「友人だから許しているが、領主相手に最低限の敬語すら使えない奴が何を言うか」

 

「お前が良いって言ったから良いだろうが。……それに、友人じゃない。契約関係だ。土地関連とかのな」

 

「わかったわかった……」

 

 ……この人は、ちゃんと人の本質を見て下さる方です。そういえば、この町の人々はとても楽しそうに暮らしています。とても素晴らしいお方なのですね……!

 

「しかし、そうか……一時的だとは思うが、生態系が変わってしまう程か……オーガの件は聞いている。……感謝するぞ、テツロウとその弟子よ」

 

「……!はい!」

 

「俺はなにもしてないからな……ったく」

 

「さて、土地の権利を手放すことは承知した。この状況なら仕方ないだろう……だが、別の土地は提供できない」

 

「え!?どうしてですか!?」

 

「単純に土地が無い。テツロウの願いは、ひっそりと暮らすことなのだろう?私の領内で、該当する土地はあの山くらいなのだ」

 

「……そうか」

 

 師匠の顔が、寂しそうに見えました。……3年。師匠は、ここに来て3年と言っていました。……人と関わることをしたくない師匠にとって、あの家は安住の地だったのかもしれません。

 

「その代わり、と言っては何だが」

 

 と、領主様が紙を取り出して何かを書き始めました。

 

「それは……?」

 

「紹介状だ。ここから遙か東に、ダコテという港町がある。その周辺を管轄する領主とは知り合いでな。この書状を見せれば、ある程度取り計らってくれるだろう。確か、前に管理に困る土地があると言っていたしな。機会があれば行ってみるといい」

 

「そんな……良いんですか?」

 

「勿論、この町にとどまってくれるならそれが一番良いが……」

 

「宿暮らしは落ち着かないんだ。準備が出来たらこの町を出て行くさ」

 

「……寂しくなるな」

 

 ……師匠はさっきああ言ってましたけど、この2人の間には間違いなく絆があった筈です。なんだかんだ、師匠は優しい人ですから……。

 

「君が納めてくれる大量の税金が無くて懐が寂しくなるな!はっはっは!」

 

「うるせぇ!……ったく、行くぞミャゲル」

 

「あ、はい!ありがとうございました!」

 

 ……きっと領主様は、テツロウ様が気負わないように、最後にああ言ったのだと思います。

 

「……師匠!ダコテの町に行くんですね!」

 

「あぁ。さっさと行くぞ……あ、逃げ出しても良いからな?」

 

「逃げませんよ!……私の憧れは、いつだって師匠ですから!」

 

 師匠は、この言葉には何も返しませんでした。ですが、少しだけ、ほんの少しだけ笑ってくれたような……そんな気がしたんです。

 

「じゃあ修行再開だな」

 

「師匠?両手両足の重りがいつもの1.5倍くらいあるんですけど……?」

 

「今日からそれで過ごせよ。じゃあ俺は旅支度してくるから」

 

「ちょっと!?師匠!ししょーーーっ!!!」

 

 私の弟子ライフは……どうやら師匠のせいで滅茶苦茶なものになりそうです……!

 




旅の先で、新天地を見つけられるのか……?
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