元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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今回で第1章的なものが終了です。
次回から第2章!こうご期待!


第14話 現役Sランク魔法使いと、その弟子。

 アタシはサリーナ。Sランク冒険者、“魔法妃”ミランダ先生の弟子で、現在Dランクの冒険者。

 王都へと向かう旅の途中で、奇妙な出会いがあった。

 まずは、アタシと同い年でDランク冒険者のミャゲル。少し天然が入っているけど、とても素直でバトルセンスの塊みたいな猫獣人の女の子。

 ……そしてその師匠である、“元”Sランク冒険者テツロウ。ミランダ先生が所属していたパーティー“マスターアーツ”が解散する原因となった、いけ好かない男。

 でも、その実力は本物だった。Sランク魔物である“金色鬼”レジェンダリーオーガを1人で、大した怪我もなく倒していた。

 なぜ、あれ程までの力がありながら、パーティーを抜けて冒険者を辞めたのか……直接会った今でもよくわからない。

 

「どうしたのじゃサリーナ。何かを考えておるのか?」

 

「先生……」

 

 現在は王都へと向かっている。ミランダ先生が王都の研究者に呼び出されたからだ。ここ2年ほど、世界各地で、生態系を無視した魔物が現れる事象が確認されている。雪山に生息しているホワイトベアーが砂漠で発見されたり、火山に生息するファイアリザードが氷河で発見されたりなどだ。

 そして、つい先日まで滞在していた町でも、本来生息しているはずのないオーガが大量に押し寄せるという現象が起こった。

 明らかな異常だ。それについての調査をミランダ先生は行っていて、その成果を研究者とすり合わせにいくことになっている。

 

「……先生、1つお聞きしても良いですか?」

 

「構わんよ」

 

「どうして、テツロウは冒険者を辞めてパーティーを抜けたんですか?」

 

 アタシは、一度気になったことはどうしても確かめたい性分だ。町に居たときはオーガの襲撃もあり聞くどころではなかったけれど、こうして眼の前に当事者が居るなら聞いてしまうのが一番だ。

 

「ふむ……あまり面白い話ではないが、良いかの?」

 

「教えて下さるんですか?」

 

「流石に全てを語るわけにはいかぬ。……個々の様々な思いとすれ違いが生んだ出来事じゃ。お主が気になる部分に対して、答えられるところのみで良いのならば答えよう」

 

 意外だ。ミランダ先生は、あまりマスターアーツの話をしたがらない。理由をつけてはぐらかされてしまうばかりだったのに……。

 

「そうですね……では、世間一般で言われている噂は本当なんですか?」

 

「パーティーが解散した原因が、テツロウが足手まといであることが原因という噂はデマじゃ。テツロウがパーティーを抜けたことを原因と考えた者たちが広めたものに尾ひれがついた、という認識が正しいじゃろうな」

 

 それはそうだろう。性格に難はありそうだけれど、あの強さ自体は本物だ。

 他に原因があるとすれば……

 

「……パーティーの中でぼっちだったとか?」

 

「はっはっは!確かに浮くことはあったが、パーティーの仲は良好じゃった。テツロウはいじられやすいムードメーカー的な存在じゃったのう」

 

「あんなにぶっきらぼうなのに……」

 

「そうじゃのう……思えば、今のあのぶっきらぼうな姿が素だったのかもしれん。……転移者として世界に現れ、頼ることができたのは、パーティーの仲間くらいのものじゃったろううしの。当時は何とか仲良くしようと必死だったのじゃろう」

 

 お世辞にも、アタシが出会ったテツロウからはムードメーカーのような雰囲気は感じられない。

 ……この世界に時々現れる、転移者と呼ばれる異界の存在。テツロウや、マスターアーツのメンバーは半数がこの転移者と呼ばれる存在だそうだ。

 

「話によれば、転移者と呼ばれる存在は前触れなくこの世界に転移するという。……突如として、常識も何もかも違うこの世界に転移した時の心境は……計り知れんものがあるかものう」

 

「……ますますわかりません。半数以上が転移者であるというならば、尚更テツロウがパーティーを抜ける理由がないと思うのですが……」

 

「……ひとつだけ、言えるとするならば……当時のメンバーは、互いのことを知らず、考えが若く、儂もその考えに至ることができなかった。というところかのう」

 

 ……考えが、若い?テツロウはアラサーで、マスターアーツのメンバーもミランダ先生を除けば大差ない年齢だって話の筈だ。

 

「……にしても、サリーナ。それほどまでにテツロウのことを気にするとは、惚れでもしたかの?」

 

「あ、それは無いです。年も離れてるし、タイプじゃありません。アタシの理想は、魔法を語り合って頼りがいがある美少年なので」

 

「バッサリじゃのう……理想も高いし」

 

 テツロウは、確かに強い。それだけは認めるけれど……こう、しっかりしていないというか、なんというか……。

 アレに弟子入りするミャゲルもミャゲルだ。あんな男のどこが良いのやら……。

 

「はぁ……ミャゲルはどうしてあんなヤツに……」

 

「なぁに。テツロウはあぁ見えて世話焼きのお人好しじゃ。心配せんでもミャゲルはちゃんと育つわい」

 

「そうだと良いですけど……」

 

 模擬戦や、一緒にオーガを倒したからわかるけど、ミャゲルは現時点でも相当な強さを持っている。それが、テツロウとの修行の成果だとしたら、確かにテツロウは指導者として優秀……?

 

「……サリーナ。魔物じゃ」

 

「っと、はい。迎撃します!」

 

 きっと、ミャゲルは次会う時までにはもっと強くなっている筈!なら、アタシはそれ以上に強くならないと!

 

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