元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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新章開幕。

新天地に向かう前に立ちはだかる問題とは……?


第2章 元Sランク冒険者と、港町のダンジョン。
第15話 元Sランク冒険者と、新たなる問題。


 山を引き払ってからおよそ1週間が過ぎた。元居た町の領主から紹介状も貰ったし、行く宛も無いから仕方なく、新しい住居を求めダコテという港町を目指して、弟子(不本意)のミャゲルと旅をすることになった俺は、これまた仕方なくミャゲルに修行をつけている。

 

「師匠ーーー!流石に両手両足に重りをつけながらコボルトの群れの戦うのは無理がありますーーー!!!」

 

「「「「ガウルルルル!」」」

 

 現在は、ダコテの町に向かう途中の林道で交戦中だ。コボルトはDランク魔物で、犬のような顔をした人型をしている。まぁファンタジーだと定番だな。

 特徴としては、群れで動くこと、そして道具を活用する知識があることだ。今目の前には、10匹くらいのコボルトが、剣やら斧やらを持ってミャゲルに攻撃を仕掛けている。

 いつものミャゲルなら楽勝だろうが、最近は両手両足に薄くて重たい金属で出来た板を巻き付けている。大体自重の2倍くらいの重さで調節したものだ。

 

「というか師匠はこんな至近距離で、なんでコボルトたちに気づかれないんですか!?」

 

「気配を消してるからな。認識阻害のマントと併用すれば、よほどの手練じゃないと気づかれないんだよ」

 

「へー便利……じゃない!」ザシュッ

 

「ガウルァ!?」

 

 ミャゲルは慌ててこそいるが、冷静に近づくコボルトを牽制しつつ、ダガーで仕留めていく。動きが鈍化している以上、最小最低限の動きで敵を仕留めるしかない。それを少しずつ理解していた。

 なんだかんだ才能はあるし、強くなることに貪欲だ。猫獣人の身体能力も相まって、成長の速度は俺よりもずっと早いな。

 

「という、か!修行を始めてか、ら!まだ基礎的な!ことしか教わってない気が!しま、す!」

 

「「「ガガウルァ!?」」」

 

「基礎的なことしか教えてないからな。基礎をおろそかにした奴に明日はねぇよ。文字通りな」

 

「それは!わかり!ますけ!ど!」

 

 無傷とまでは行かないが、少しずつ動きが洗練されていくな……スタミナもついて来たし、そろそろ何か技でも教えて良い頃かもしれない。

 ……というか、俺はなんで普通に師匠やってるんだろうか。若さの熱に充てられたのか……それは否定しきれないかもしれない。

「ぜぇ……ぜぇ……あと1匹!」

 

「ガ、ガルゥア!!!」

 

 ミャゲルもミャゲルで、良くもまぁ逃げ出さずに弟子をやっているものだ。文句は常に言ってはいるが、逃げ出す素振りは一切見せない。

 俺を憧れだと言っていたが、それだけではここまで続かないだろう。ミャゲルの中で、具体的な目標があるのだろうか。

 

「やぁぁぁあああ!」

 

「ガルゥア!?」

 

 まぁどうでも良いことか。俺は変わらずに、逃げ出したくなるような修行をミャゲルにつけるだけだ。技を教えるってなると今までの修行の比じゃないしな。泣いて逃げ出すことだろう。そして俺の1人暮らしスローライフ再開だな!

 

「し、師匠……な、なんとか倒しました!少し休憩を……!」

 

「え、あぁうん。死体処理終わったら飯にするか」

 

「やったぁ!……ってちゃんと見てたんですか!?もう!」

 

 それまでは……まぁこれが俺の、日常になるわけか。

 

 

 陽が落ちた頃。焚火を囲いながらミャゲルと夕食を摂る。今日のメニューはシチュー。Eランク魔物、ミルクカウという魔物から摂れる牛乳を使用したこだわりの逸品である。

 アイテム袋……空間魔法が付与された袋に入れておけば、食材が腐る心配も無い。希少品だし、容量も無限というわけにはいかないけどな。

 

「うーん……師匠。私って強くなってるんでしょうか?」

 

「……さぁ?」

 

「師匠!?」

 

 基本的な筋力や、魔力を武器に纏わせたり、刃として飛ばす技……意外と疎かにされがちな、“俺の師匠が言うところの基礎”は着実に身についているだろう。実力だけならCランクの中~上位くらいはある。

 オーガとの戦いのお陰か、ミャゲルの観察眼にも磨きがかかった。危機的な状況を乗り越えると伸びが良いのはお約束か。

 

「もー……そういえば師匠。ダコテの町に着いたらすぐに土地を買うんですか?」

 

「実際に見てみないことには何とも言えないな。紹介状は貰ったが、金額の問題もあるし……」

 

「そうですよね……気にいる場所だと良いですね!」

 

 土地を買ったとしても、家も地力で建てたいし、ダコテの町付近ではどんな植物が育つかも知らない。畑を作るのも一筋縄では行かなそうだ。

 色々と金もかかるが、まぁ蓄えがあるから何とかなるか。

 いや……何か大事なことを忘れているような。

 

「……!しまった!」

 

「師匠!?アイテム袋をひっくり返して何を……!?」

 

 そうだ……俺は(恐らく)レジェンダリーオーガによって住居を文字通り失った……冒険者時代の蓄えを入れていた大容量のアイテム袋は、持ち歩いているこの袋と歯もちろん別に保管していた訳で……!

 

「……ぇ」

 

「どうしたんですか……?」

 

「金が!無えぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 つまり何が言いたいかと言えば……町で数日宿暮らしをするならともかく、土地を買うための蓄えが一切合切消え去ってしまったということだ!

 あの金ぴかオーガめ……!マイホームどころか貯金まで吹き飛ばしていきやがって……!取り立て家だってもうちょっと手心があるぞ!

 だが迂闊だった!一応ミャゲルのオーガ討伐分の報酬もあるが、そんな金額じゃ恐らく足りない!

 ……つまりだ。ダコテの町に着く前にすることは、アレしかない。

 

「……金策だ」

 

「え?」

 

「金策じゃぁああああああ!」

 

「ほ、本当にどうしちゃったんですか師匠ー!?」

 

 稼ぐしかない!金目のモノを探しながら、魔物を倒しまくって金を手に入れるんだ!

 それをダコテの町で換金して、土地を買う費用にする!

 俺は冒険者じゃないし、もう冒険者ギルドで依頼を受けて稼ぐってことができないからな!初めて冒険者を辞めて後悔したかもしれねぇ!

 

「ミャゲルゥ!」

 

「は、はいっ!?」

 

「……明日から、修行を次の段階に進める」

 

「……!」

 

「ダコテの町に行く前に、寄り道するぞ……!行先は」

 

 林道から見えていた、それなりにデカい山を指さす。ミャゲルの修行も出来るし、金策も出来る一石二鳥なその場所は……。

 

「トムラ山だ……!逃げ出すなら今のうちだぞ……!」

 

「逃げません!私は、もっと強くなりますっ!」

 




投稿始めてから月末まで毎日投稿できました。やったぜ。

次回以降は、書き溜めを作ってから少しずつ放出していこうと思います。
多分10月第2週までには、また毎日投稿し始めるかも。
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