元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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投稿再開です。ぼちぼちやっていきます。


第16話 元Sランク冒険者と、道中の修行。

 ズドォォォォン!と、ゴーレムが放つ拳が轟音と共に地面を揺らす。ゴーレムの武器は、その圧倒的質量だ。巨大な土塊で出来た身体はそれだけで凶器。

 

「ッ!」

 

『!!!』

 

 動きは遅い。ミャゲルにとって、躱すことは造作もないが……。

 

「やぁぁぁあああ!」

 

 キィン!と。金属が硬いモノに打ち付けられる甲高い音が響く。……そう、ゴーレムは物理的に硬い。魔力で強化したダガーの斬撃はもちろん通らない。

 ミャゲルは猫の獣人だ。力はヒューマン(人間)よりもずっと強いし、魔力で身体能力とダガーを強化すればそれは顕著に現れる。

 だが、ゴーレムはそれだけでは倒せない。

 

「頑張れ頑張れー」

 

「呑気にお茶をすすらないでくださいうわっと!?」

 

 ズドォォォォン! 鈍い音が定期的に響く。土塊と、響く轟音、弟子の声。テツロウ心の一句。

 

「倒すのに何かヒントとかないんですか!?」

 

「ヒントねぇ……いつもやってる通り、良く観察しろよ。ゴーレムは物理に強いが、魔法には弱い。……が、お前に強力な魔法は使えない。さぁどうする?」

 

「それを聞いてるんじゃないですかぁ!?」

 

 答えはそれなりに存在する。教えてやることは簡単だが、こうして体験させて覚えさせる方が効率が良い。百聞は一見に如かずだ。

 

「観察……なら!」

 

 ミャゲルは攻撃を止めて、一旦逃げに徹した。攻撃を避け、ゴーレムの周囲を回るように動き始める。

 

「……!たぁっ!」

 

 その後、攻撃を搔い潜って背後へ。飛び上がってゴーレムの首へ一撃。

 

『……!!!』

 

 ゴーレムに、少しだが傷がついた。……何かに気が付いたな。

 

「やっぱり……この部分、少しだけヒビが入ってて脆い!」

 

 そう。ゴーレムの強度には“ムラ”がある。ゴーレムは、特別な方法で生成した魔石をコアとして、魔力を流し込んで作成する魔法生物だ。眠っているコアに魔力を流し込めば動き出し、コアを覆う身体を使って戦う魔物。

 しかし、年月が経った土製の身体は劣化し、強度も落ちる。それに気が付くことさえできれば破壊は可能。

 もちろん、出来立てのゴーレムだとそうはいかないが、こうして野生で出現するゴーレムの殆どは過去の遺物だ。まぁそれでも硬いんだけど。

 

「……そうだ!」

 

 そこから、ミャゲルは何度も同じ個所に攻撃を打ち込んだ。その度に、少しずつ、少しずつ傷がついていく。

 そして、ある程度傷がついた段階で……

 

「……ッ!」

 

 膝を曲げて、力を溜め……“高く飛んだ”

 ゴーレムよりも高く飛び、真上からゴーレムめがけて落下する。

 ここで物理的なお勉強。高い所から何かが落ちてくるということは、それだけエネルギーを持つことになる。

 ゴーレムの傷だらけの部分に、数十キロ+修行の錘つきのミャゲルが落下したらどうなるか……

 

「砕けろッ!!!」

 

『!!!!!』

 

 

 ドゴォッ!と物凄い音を立て、ゴーレムの首が砕けて落ちる。たまたまコアが首元にあったからか、露出したコアも砕けていて、バランスを崩したゴーレムはそのまま倒れ込んだ。ミャゲルの勝利だ。

 

「……た、倒せた!」

 

「お疲れさん」

 

 尻餅をついて息を整えるミャゲル。まぁ疲れただろうな。ミャゲルのスタイルは、俊敏性を活かしたものだ。観察して相手の隙を突いて、ダガーで急所を切り裂く……暗殺者染みてるな。

 獣人故、圧倒的な実力差はさておき、パワー不足を感じた経験も少ないだろう。だからゴーレムの相手をさせた。

 一撃で倒せない相手とどう戦うか?それを考えるきっかけくらいにはなったかな。

 ミャゲルのやったように、弱点を見つけて何度も攻撃を入れるのが一般的か?……まぁ中には、パワーだけで全部を破壊する脳筋もいるけど。

 最後の跳躍からの落下攻撃はリスキーだが悪くなかったな。ゴーレムは動き鈍いし、ミャゲルの速度にはついてこれない。体力が尽きる前に早期に決着をつけたのはグッドだ。

 ……やっぱ、バトルセンスの塊だなコイツ。

 

「今やったように、常に観察を忘れるな。余程の相性の悪さや実力差がなければ、案外なんとかなるモンだ。足りないモノは工夫しろ」

 

「は、はい……!……ところで師匠。お金になる魔物がゴーレムなら、一体どうやって……?」

 

「ん?あぁ。このゴーレムの土」

 

「!?」

 

「意外と知られていないが、魔力を程よく含んだ土は素材として優秀なんだよ……だからわざわざゴーレムを再起動させて魔力を循環させたんだ。ただ魔力をぶち込むだけじゃ調整難しいし、ゴーレムのコアを通す方が良いんだよ。この土、冒険者ギルドに卸すと買い取ってすら貰えないが、職人は高く買い取ってくれるしな……マイハウスを作った時の知識が役に立った……ははは……はぁ」

 

「思い出して落ち込まないで下さい!?」

 

 ……過ぎたことを気にしても仕方がない。仕方ないのはわかってるが……3年の努力をまた重ねないといけないのかと考えると……萎えるなぁ。

 

「……じゃ、次行くぞ」ズン!ズン!ズン!

 

「へ?」

「ゴーレムが1体~ゴーレムが2体、ゴーレムが3体~」

 

「ちょっ!?多い!!多いです師匠!!!」

 

「大丈夫大丈夫。個体ごとに脆い箇所とコアの場所が違うだけでさっきとおんなじだから」

 

「何も大丈夫じゃないですってうわあああああ!?」

 

『『『!!!!!!!!』』』

 

「お前が望んでた通り、次の段階だ。今度は高さを使わずに、パワーを集約させてコアを砕けよ~」

 

「どうやって!?もう!師匠のバカーッ!」

 

 今日1日やれば、ある程度モノになるだろ……多分。

 




修行とは、一筋縄では行かぬのだ……。
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