元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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ようやく動き始めていきます。


第21話 元Sランク冒険者と、ダンジョン攻略依頼。

「……ごめん、もう大丈夫」

 

 タビトが落ち着いて、顔を上げる。涙で目が腫れている。……コイツの泣き顔を見たのは、数年ぶりだ。

 

「……お師様」

 

「ごめんねスーザン。情けない姿を見せて」

 

「……いいえ~。お師様、なんだかスッキリした顔をしています~」

 

「若いっていいぇ~」

 

 ……さて、

 

「ミャゲル、なんでお前がタビト以上に泣いてるんだよ……」

 

「た゛っ゛て゛ぇ゛……!」

 

「……あー……タビトから何か聞いたのか」

 

「グスッ……すみません。……師匠の昔のことを、少し……」

 

 ……まぁ、隠していたわけじゃないが。気恥ずかしさがあるな。……今でも、あの時のことは乗り越えられたわけじゃない。

 だが……きっと向き合わなければいけない日は来るんだろう。

 ミャゲルと出会って弟子になったのは、何かの予兆だったのかもしれないな。

 

「ところで……テツロウはどうしてダコテの街に?」

 

「……そうだ!そうだった!俺は領主に用があって来たんだよ!」

 

 前の街の領主から貰った紹介状を、領主の婆さん……ラソラへと渡す。

 うまいこと土地を融通してくれれば良いが……。

 

「ほぅ……クルナーの町の小僧からだのだぇ~。土地が欲しいとな?」

 

 クルナーの町というのは、以前オーガが襲撃した町のことだ。

 

「あぁ、人気が少なくて、自給自足ができるような場所があれば是非譲ってもらいたいんだが……」

 

「……丁度、魔物がそれなりに生息していて、扱いに困ってる土地があったぇ。譲ってやっても良いぇ~」

 

「マジか!?……で、お値段は……」

 

 ラソラ婆さんに、耳打ちされた金額は……うん!所持金とゴーレムの土とかの素材を売って得られるであろう金を合わせても全然足りないな!がはは!

 

「……やっぱ金策するしかねぇか」

 

「なんだぇ。金に困ってるなら、代わりにお願いを聞いてくれたら土地を譲ってやらんでもないぇ」

 

「マジでか!?……と言いたいところだが、俺はもう冒険者じゃねぇしな」

 

 依頼を受けられる立場に無いしな……。

 

「心配いらんぇ。ワシはただ、“友人に土地の管理を任せる”だけだぇ~」

 

「……なるほどな、その形なら何とか」

 

「あのー……お願いしたいことって何でしょう?」

 

「その説明はワタシから~」

 

 スーザンとかいう、タビトの弟子が名乗り出る。……そういえば、タビトを探してたみたいだったな。関係しているのだろうか。

 

「現在、この街の近くにダンジョンが発生しているんです~。発生したばかりなのに、妙に強い魔物たちが闊歩していて、攻略が難航しているんですよ~」

 

「……あぁ、酒場で冒険者が何か言ってたな」

 

「問題はそれだけではなくて~。ダンジョンが発生してから、海の魔物たちの数も増えてて~……関連性に確証は無いんですが~」

 

「可能性は充分にある、ということですね……!」

 

 ……それだけなら、タビトが居れば解決しそうなものだけどな。

 

「……テツロウ。新しく発生したダンジョンに、強力な魔物が出現して……尚且つ、少なからずダンジョン外に影響を与えているんだ。……マグナアビスを思い出さないかい?」

 

「……!確かにな……。偶然、なら良いが……」

 

 タビトに言われてハッっとする。……あまり迂闊には動きたくないか。

 

「本当なら、ボクとスーザンだけでダンジョンへ行く予定だったんだ。……油断はできないから、ボクも入念に準備をしていたんだけど……テツロウが来てくれるなら、心強い、かな」

 

「私も!私も行きます!師匠の一番弟子なので!」

 

 ……仮に、マグナアビスに関連することだったとしたら……放置しておいて良いことはないか。

 土地もくれるって言ってたしな……ミャゲルの修行にもなるし、金を稼ぐよりはマシか。

 

「……わかった。協力する」

 

「……!本当かい!?」

 

「土地が貰えるっていうからな……断る理由もないだろ」

 

「ありがとう……本当に……!」

 

「それなら、ミャゲルさんたちの準備もしないとですね~。町を案内します~」

 

「スーザン。ミャゲルちゃんを連れて先に行っておいてくれ。ボクは神父に挨拶してから行くよ」

 

「わかりました~」

 

 スーザンは、ミャゲルを連れて教会を後にした。

 

「……タビト。俺とラソラ婆さんを残したのはなんでだ?話でもあるのか?」

 

「……テツロウには敵わないな。うん……ちょっとね」

 

「そうだぇ~……テツロウ。いや、“拳王”テツロウよ」

 

「……なんだよ、急に改まって」

 

 ラソラ婆さんは、今までの間の抜けた話し方から、言葉に重みのある話し方を始める。

 

「……その実力、佇まいから疑うまでもない。……故に、領主ラソラから、個人的なお願いをさせていただきたい」

 

 ラソラ婆さんの口から出た願い……それは、到底無下にはできないものだった。

 

 

「ん~……酸素草を沢山買っておきましょうか~」

 

 私とスーザンさんは、町に買い出しに出てきています。

 ダンジョン内は泳がないといけない場所もあるようで、長時間泳ぐために必要な道具を集めています。

 

「……泳げるようになっておいて良かった」

 

「泳ぎは、海近辺のダンジョンだと必須ですからね~」

 

「そういえば、酸素草って何に使うんですか?」

 

「これを特殊な方法で煎じると、短時間ですが水の中でも呼吸ができるようになるんです~」

 

 スーザンさんは、色んな道具の説明をしてくれます。商人の娘として勉強はしているつもりだったんですけど……スーザンさんの知識には脱帽しました。

 

「スーザンさんは、道具について御詳しいんですね?」

 

「スーザンでいいですよ~。……そうですねぇ~。お師様……タビト様の弟子ですから~」

 

「魔道具使いですもんね……!」

 

「ミャゲルちゃんこそ、あのテツロウ様の弟子なんですよね?……やっぱり、普通にしていても隙がありませんね~」

 

 ……スーザンさんからは、観察されているような視線を感じていました。Sランク冒険者の弟子……やっぱり、普通の冒険者とは違いますね!

 

「……ミャゲルちゃん。少し聞いても良いですか~?」

 

「なんでしょう?」

 

「……テツロウ様はSランク冒険者と行っても、引退なされているんですよね~?……その実力って、どれほどのものなんでしょう?」

 

「……師匠の実力を疑ってるんですか?」

 

「会ったこともみたこともないので~……足でまといを連れて行くわけにも行きませんから~」

 

 ……こうして話している間に、冒険者ギルドの支部へと着いていました。

 確かに、テツロウ様は冒険者を引退してこの間まで隠居していましたが……その実力は現在もSランクにふさわしいものを持っています。……それを疑われるのは、弟子として面白くありません。

 

「……なら、私が証明しますよ。タビト様の弟子であるあなたに勝利して!」

 

「望むところです~。……後悔、しないでくださいね~?」

 

 ……ごめんなさい、師匠。本気を出してでも、この勝負、勝ちます!

 




この世界の弟子たちは血気盛んかもしれない。
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