元Sランク冒険者、弟子を取る〜引退後の生活は、おしかけ弟子のせいで滅茶苦茶です〜   作:サラダよりは肉が好き

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区切り良く掲載すると、文字数が少なくなる減少。


第25話 元Sランク冒険者と、ボス部屋前。

 結局、弟子達に戦闘を任せたまま進むことができた。俺とタビトは、後方師匠面をしていただけである。まぁ実際に師匠なのだが。

 ミャゲルとスーザンのポテンシャルには驚かされるばかりだ。出現するモンスターはC~Bランクの魔物ばかり。本来、DランクのミャゲルとCランクのスーザンだけでは相手をすることも難しい数と質。しかし、彼女達は創意工夫で魔物を翻弄し、倒していく。

 ミャゲルは、だんだんと動きに無駄が無くなり、最小限の動きで敵の動きを捌き、弱点を攻撃する瞬間のみに全力を注いでいた。今までは速度に頼った戦い方をしていたが、ここにきて一皮剥けたと見える。

 そうなった心当たりは……間違いなく重りか。重りで普段通りの動きはできず、体力の消耗が激しい中で、どうすれば戦えるかを考えてたどり着いた戦闘スタイルなのだろう。実際、ダンジョン内でも重りを外させなかった理由もそこにある。

 身体能力は大いに活用すべきなのだが、技術や対処法を学ばねば活かされる機会は激減するしな。無駄な力が入ると余計な消耗を生むし、必要なことだった。

 スーザンは、戦闘スタイルだけで言えば魔法戦士に近い。といってもスーザンの場合は魔法ではなく魔道具で、小型爆弾や強力なライトによる目つぶし、拳銃のような魔道具まで持っている。そしてそれらを適切なタイミングで使用する判断力もある。

 驚くべきなのは、彼女が使っている魔道具は自分で作成しているという点だ。魔道具は繊細で複雑だ。魔力や魔法を、適した素材を適した形に加工したものに装填させる。魔法や魔力の理解だけではなく、素材の加工技術など……それぞれのエキスパートが、分担して作業を行い初めて完成するものだ。

 それを、スーザンは1人でやってのける。これがどれくらい滅茶苦茶なことかと言えば、音楽で言うところの、作詞、作曲、演奏、ボーカルを、全てを高水準で行っているといったところか?他者との意思疎通が必要ない分、一貫性のあるモノを作ることが出来るだろう。タビトが放っておかないのもわかる気がする。

 

「……今の所、敵が強い以外には他のダンジョンと変わったところはないね」

 

「あぁ。……黒い靄もない。しかし、マグナアビスと関連していようがしていまいが、出来立てのダンジョンでも敵のレベルが高い場合がある……っていうのは、少し不味い状況だな」

 

「少なくとも、3年前まではそんなことはなかったからね。……うーん、魅せるのは得意だけど、報告とかは向いてないんだけどなぁ」

 

 タビトは少し肩を落とす。マスターアーツ内で、交渉や外交は主にミランダやサクラコに……タカミチが請け負っていた。タビトは……主に女子からは人気があり、ファンは大勢居たが、政治的なコミュニケーションとは距離を置いていたな。それでも、最低限は理解してるみたいだけど。

 

「……あ!師匠~!こっちに入口と同じような扉があります~!」

 

「……見つかったか」

 

 ボス部屋の扉だ。入口と同じ形をしているのが特徴。ダンジョンコアもここに存在する。弱点なら派手に置き場所をアピールせずに隠せば良いのに……と、昔は俺も思ったが、どうやら学者連中の間では色んな意見が飛び交っているようだ。「獲物を油断させるため、わかりやすいゴールを設定している」とか、「扉は人で言うところの、臓器と臓器の間を役割を果たすのではないか」とかなんとか。

 

「ここまで、特別何も見つかりませんでしたね~」

 

「ですね……とても良い修行にはなりましたけど。師匠!……そろそろ重りが重たくて腕も脚もキツイです。外すことって……」

 

「却下」

 

「師匠の鬼ィ!」

 

「ははは、鬼(オーガ)ならこの間倒したじゃないか。怖くない怖くない」

 

「シャーッ!」

 

「仲が良いですね~。……親子みたい?」

 

「アレはどっちかっていうと兄妹かも?」

 

 誰が兄だ。まぁ流石にボス部屋の前なので、重りは外してやるか。道中の敵の強さから考えて、間違いなくボスはAランク相当だろうしな。

 敵にもよるが、俺やタビトが手を出さないといけない部分も出てくるだろう。ランクが1つ変わるということは、それだけ強さの上り幅も違うからな。

 

「水中に潜ることが無かったので、今までお配りしていませんでしたが……念のため、こちらを装着していただけますか~?」

 

 と、スーザンからマスクのようなものが手渡された。厚手の布を使用した、耳に引っ掛けるタイプだ。僅かに魔力を感じるし、これも魔道具だろう。

 

「魔力を込めた布の間に、酸素草を加工したものが入っています~。着けていると、1時間くらい水中でも呼吸ができて便利ですよ~」

 

「さらっと現代クオリティの酸素マスク渡されたな……」

 

「ありがとうスーザン。助かるよ。……ボクはともかく、テツロウは水中でも1時間活動できるから要るかわからないけど」

 

「「え゛」」

 

「おーい。そこの弟子2人、普通に引くなー。若干傷つくから」

 

 仕方ないじゃないか……心肺機能は基礎だって、俺の師匠に散々仕込まれたんだから……。あと、普通にマスクは要る。活動できるってだけで、しんどさはあるからな。

 

「さて……少し休憩したらボス部屋に乗り込むぞ。一本道で調べられそうなところも無かったからな」

 

「はい!」

 

 弟子達で対処できないならそれでも良し。無理な場合は……

 

「~♪」

 

 いい機会だし、タビトに動いてもらうか。奇術星(トリックスター)と呼ばれた、魔道具操作技術……久しぶりに拝むとしようかね。

 




次回、ボスとの邂逅。
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