宍戸丈 LP3400 手札四枚
場 なし
伏せ 一枚
魔法 冥界の宝札
ダークネス LP6200 手札二枚
場 E-HEROインフェルノ・ウィング、ジャンク・ウォリアー
伏せ 無し
ダークネスのフィールドにはインフェルノ・ウィングとジャンク・ウォリアー。ダークネスの言葉によれば、これより先の時代で最強となるデュエリストたちのエースカードが並んで立っている。
二体ともに極めて特殊なモンスターであり、方向性と採用基準も異なる二体が同じフィールドに同時に並ぶというのは恐らく今後お目にかかることはないだろう。
ジャンク・ウォリアーに至ってはまだ存在すらしていないシステムを用いたここより先に生まれるかもしれない未来のカードだ。普通なら勝てるわけがない。だが、
(新しい力だろうとなんだろうと……俺のデッキは負けはしない)
何故だろうか。あのカードの枠が白いモンスター。ジャンク・ウォリアーを見ていると自分のデッキが騒いでいるような気がした。
未だ嘗てない強烈なる闘争心が丈のデッキから湧き上がっている。ドローするためにデッキトップに手をかけると如実に鼓動を感じた。
(……そうか)
その時だ。丈はデッキの声を確かに訊いた。
「ダークネス、お前がどれだけ新しいシステムや新しいカードを作ろうと――――そんなものは悉く俺のデッキで駆逐する」
『威勢が良い人間だ。だがデュエリストなら口先ではなく己のデュエルで示して欲しいものだ』
「言われずとも! 俺のターン、ドロー! リバースカード発動、メタル・リフレクト・スライム!」
【メタル・リフレクト・スライム】
永続罠カード
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、
自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。
このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)
このデュエルで二度目となるメタル・リフレクト・スライムの召喚。前に召喚した際は単なる生け贄要因でしかなかったが、丈のデッキにおいてメタル・リフレクト・スライムが果たす役割とはそれだけではない。
あらゆるものに千変万化する水は時に白き龍の化身の攻撃すら跳ね返す防壁となり、時に最上級モンスター降臨の生け贄となり、そして或いは生け贄を揃える餌となる。
「俺は墓地にいる二体のレベル・スティーラーの効果を発動。メタル・リフレクト・スライムのレベルを10から8に下げ、二体のレベル・スティーラーをフィールドに守備表示で特殊召喚する」
【レベル・スティーラー】
闇属性 ☆1 昆虫族
攻撃力600
守備力0
このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル5以上のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。
このカードは生贄召喚以外のためには生贄にできない。
レベルを下げるというノーコストに近い蘇生能力をもつレベル・スティーラー。この攻撃力が1000にすら満たない弱小カードこそが丈のデッキにとって欠かす事ができないモンスターたちだ。
簡単に特殊召喚できしかもレベル10という高いレベルをもつメタル・リフレクト・スライムとレベル・スティーラー、相性は抜群といっていい。
「俺は二体のレベル・スティーラーを生け贄に捧げる。宇宙に輝く星々より大地に降臨せよ! 大いなる土星! The big SATURN!」
【The big SATURN】
闇属性 ☆8 機械族
攻撃力2800
守備力2200
このカードは手札またはデッキからの特殊召喚はできない。
手札を1枚捨てて1000ライフポイントを払う。
エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。
相手がコントロールするカードの効果によってこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。
ずんぐりとした体躯の巨大なゴーレムが地響きとともにフィールドに実体化する。
悲劇により突然この世を去った世界的カードデザイナー、フェニックス氏が遺した遺品とすらいえる其々世界に一枚しかないプラネットシリーズ。
その一枚こそがこのThe SATURNだ。プラネットの名の通り同シリーズは惑星を模したカードで構成されており、The SATURNは土星の名を冠するプラネットだ。
『ほぉ。天空に広がる銀河という海、煌めく星々において〝土星〟のエネルギーを宿したカードか。面白いカードを使う』
「中等部の修学旅行でアメリカに行った時のデュエル大会で手に入れたものだ。こうみえてプラネットシリーズには目がなくてね」
プラネットシリーズの殆ど全てが強力な効果をもつ最上級モンスターで構成されている。生け贄召喚を多用し最上級モンスターを並べやすい丈のデッキとはこの上なく相性が良い。
修学旅行でも大会の景品が常々欲しいと思っていたプラネットシリーズの一枚だから多少無理して参加したのだ。決勝戦でやたらとMeを連呼するアメリカ・アカデミアの一年生を下したのも今となっては良い思い出である。
「冥界の宝札の効果だ。二体以上の生け贄を使った生け贄召喚に成功したため二枚ドロー。そして魔法カード、二重召喚を発動。俺はこのターン、もう一度だけ通常召喚を行うことができる。
俺はメタル・リフレクト・スライムのレベルを8から6に下げ、二体のレベル・スティーラーを再び特殊召喚。そして二体のレベル・スティーラーを生け贄に守護天使ジャンヌを攻撃表示で召喚!」
【守護天使ジャンヌ】
光属性 ☆7 天使族
攻撃力2800
守備力2000
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ、自分のライフポイントを回復する。
聖騎士ジャンヌが死して天使に名を連ねることを許された姿。守護天使となったジャンヌが聖なる輝きと共にフィールドに降臨する。
丈の場に二体の最上級モンスターが揃った。これで反撃の狼煙をあげる準備は万端。
「俺はThe big SATURNの効果を発動。手札を一枚捨てライフを1000払い、SATURNの攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで1000ポイント上昇する! SATURN FINAL!!」
星々の力を受けThe SATURNがファイナルモードへ変形した。迸るほどのエネルギーがスパークとなりSATURNの装甲を帯電させる。
1000ポイント攻撃力を増したSATURNの攻撃力は3800。ジャンク・ウォリアーの3100を超えた。丈のライフも2500となったが、丈にはライフ回復能力をもつジャンヌがいる。まるで問題にならない。
「バトルだ。The big SATURNでジャンク・ウォリアーを攻撃! 未知なる力を駆逐せよ、エンド・オブ・コスモス!」
SATURNの全砲門が開き全ての攻撃がジャンク・ウォリアーの全身を破壊し尽くした。
大火力による一斉放火を浴びたジャンク・ウォリアーは文字通りジャンクとなって破壊されフィールドから消え去る。
「続いて守護天使ジャンヌでインフェルノ・ウィングを攻撃! 奇蹟のラ・ピュセル!」
守護天使ジャンヌの無心の祈りが天に届き、天上から降り注いだ光が闇に堕ちた英雄、インフェルノ・ウィングを消し去っていく。
そして守護天使ジャンヌの能力によりインフェルノ・ウィングの力がそのまま丈の命へと還元される。
「守護天使ジャンヌのモンスター効果。戦闘で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のライフを回復する。インフェルノ・ウィングの攻撃力2100分のライフを俺は得る。逆にダークネス、お前には二つの戦闘ダメージだ」
『ヌゥ……』
宍戸丈LP2400→4500 ダークネスLP6200→4800
丈とダークネス、二人のライフポイントがほぼ並んだ。
しかし並んだといってもお互いのライフポイントは共に4000をオーバーしている。まだまだ勝負の行方は分からないだろう。
「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
『我のターン、ドロー。我はカードを一枚伏せる』
フィールドに置かれるリバースカード。奇妙だ、と直ぐに気付いた。リバースカードを伏せるのは普通ならそのターンの終わりだ。
ターンの初めにリバースカードを伏せると相手のリバースモンスターカードの効果で破壊されるなどの危険性がある。だというのに敢えてカードを伏せてきた。つまりは手札抹殺のような大胆な手札交換、或いは手札増強をするつもりだということだ。
『フフフフフ、我は手札より装備魔法を発動。D・D・R! 手札を一枚捨てゲームから除外されているモンスターをフィールドに帰還させる!』
【D・D・R】
装備魔法カード
手札を1枚捨て、ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
「ここで帰還カード!? しかもゲームから除外されているのは……」
『然り。我はD・D・Rの効果により除外されている混沌の黒魔術師をフィールドに帰還させこのカードを装備する!』
強力過ぎる力をもつが故に破壊したモンスターを墓地すらいかせずに除外され、逆に破壊された時に墓地へもいけぬ魔術師たちの頂点に君臨するカード。
混沌の黒魔術師はD・D・Rの力によって異次元の壁を突き破り、現世に舞い降りた。
「不味い……ダークネスの墓地には、あの魔法カードが……」
『フフフフフフ。もう遅いわ間抜け。混沌の黒魔術師のモンスター効果だ。このカードが召喚・特殊召喚された時、我の墓地にある魔法カードを一枚手札に加えることができる。
我が手札に加えるのは天よりの宝札。そして天よりの宝札をそのまま発動。互いのプレイヤーはカードが六枚になるようカードをドローする。
魔法カード発動、封印の黄金櫃。デッキよりカードを一枚選びゲームより除外。2ターン後のスタンバイフェイズ、除外したカードを我の手札に加える。我は命削りの宝札をゲームから除外』
憎々しげにダークネスを睨む。天よりの宝札の効果によって丈も手札増強が出来たがこのタイミングで六枚のカードをドローするのはダークネスにとってのメリットの方が圧倒的に多い。
なにせ丈の場には冥界の宝札があるため手札には全く不足がないのだ。対してダークネスの手札は0枚。ご丁寧に発動前にリバースカードまで伏せている。伏せたカードが速攻魔法以外の魔法カードならダークネスには実質七枚の手札があるのと同じだ。
『ふむ。宍戸丈よ、ジャンク・ウォリアーを倒した褒美だ。先以上の褒美を貴様にくれてやる』
「――――くるか!」
『我は魔法カード、死者蘇生を発動。D・D・Rのコストとして墓地へ置いたガガガマジシャンを我のフィールドに特殊召喚する!』
【ガガガマジシャン】
闇属性 ☆4 魔法使い族
攻撃力1500
守備力1000
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に
1から8までの任意のレベルを宣言して発動できる。
エンドフェイズ時まで、このカードのレベルは宣言したレベルになる。
「ガガガマジシャン」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
このカードはシンクロ素材にできない。
魔法使い族でありながら魔法使いとは到底思えぬ気迫を発するモンスターが召喚される。
ガガガマジシャン、属性と種族は最上級魔術師ブラック・マジシャンと同じだ。攻撃力と守備力もなんの巡り合わせかブラック・マジシャンの数値をマイナス1000したものとなっている。
ただしブラック・マジシャンが如何にも魔術師然としているのに対してガガガマジシャンの方はガラの悪い高校生がそのまま魔術師となったようなイメージがあった。
『フフフフッ。これだけでは終わらんよ。更に我は手札よりガガガガールを通常召喚!』
【ガガガガール】
闇属性 ☆3 魔法使い族
攻撃力1000
守備力800
自分フィールド上の「ガガガマジシャン」1体を選択して発動できる。
このカードは選択したモンスターと同じレベルになる。
また、このカードを含む「ガガガ」と名のついたモンスターのみを
素材としたエクシーズモンスターは以下の効果を得る。
●このエクシーズ召喚に成功した時、
相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力を0にする。
次いで金髪にうっすらと赤い瞳をした魔術師の少女がガガガマジシャンの横に並ぶ。
ガガガマジシャンがブラック・マジシャンをイメージしたモンスターなら、ガガガガールはブラック・マジシャン・ガールをイメージしたモンスターなのだろう。
だがまたしても攻撃力の低いモンスターを並べて一体全体どうするつもりだというのか。チューナーがいるならジャンク・ウォリアーと同じことをしてくるのかと警戒するところだが、ダークネスのフィールドにチューナーモンスターはいない。
しかもガガガマジシャンにはご丁寧にカードテキスト内に『シンクロ素材にできない』という文面まで書かれていた。
『そう焦るな。見せてやろう……レベルを足していくというシンクロ召喚とはまた異なるシステム、レベルを重ねる技術を』
「レベルを、重ねる……?」
丈の脳裏にフラッシュバックするのはキースとのデュエルで使用した〝未来への思い〟のカード。より正しくは未来への思いに記載されていた一文。
ペガサス会長は言っていた。シンクロ召喚ともう一つデュエルの新システムとして競合中の召喚方法があると。その名は確か、
『ガガガガールのモンスター効果、このモンスターのレベルを我の場のガガガマジシャンと同じレベル4とする。そしてガガガマジシャンとガガガガールをオーバーレイ!』
「……ッ!」
シンクロ召喚に出現した光のリングとは異なる淡い粒子の渦。ガガガマジシャンとガガガガール、二体のレベル4モンスターがそこへ吸い込まれていく。
二つの力が流れ込み、新たなるモノが創造される。それはまるで宇宙の誕生する光景にも似ていた。粒子光が溢れフィールドに眩い光が充満する。
『二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れろ、ガガガガンマン!』
【ガガガガンマン】
地属性 ★4 戦士族
攻撃力1500
守備力2400
レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
このカードの表示形式によって以下の効果を適用する。
●攻撃表示:このターン、このカードが
相手モンスターを攻撃するダメージステップの間、
このカードの攻撃力は1000ポイントアップし、
その相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
●守備表示:相手ライフに800ポイントダメージを与える。
ガガガマジシャンやガガガガールと同じカード名にガガガとつくモンスターが降り立った。西部劇のガンマンのように二丁拳銃を軽快な手つきで弄ぶと悪戯気にBANGと丈に撃つ仕草をする。
シンクロ召喚とは別系統の技術、同じレベルのモンスターを重ね合わせるエクシーズ召喚。まさかシンクロ召喚に続いて未来の召喚システムを目にすることになるとは。
もはや驚きや怒りを通り越して感動すらしてしまいそうだ。
「……カード枠が、黒いのは分かるが……☆の並びが逆だ。それに色も違う」
『エクシーズモンスターには従来のモンスターと違いレベルはない。代わりにあるのはランク。このガガガガンマンはレベル4モンスター二体によりエクシーズ召喚したためランクは4だ』
「レベルが、ないだって。また面倒な」
レベルがないのではレベル制限B地区のようなレベルを条件とするロックカードの全てを擦り抜けることができる。
そういう意味でシンクロ召喚以上に革新的なシステムだった。
『無論それだけではない。エクシーズモンスターの殆どは素材としたモンスター、オーバーレイユニットを取り除くことで力を発揮する。ガガガガンマンの素材としたのはガガガマジシャンとガガガガール。よってオーバーレイユニットは二つだ』
ガガガガンマンの周りに守護霊のように飛ぶ二つの光球。あれがオーバーレイユニットなのだろう。
例えるなら魔力カウンターのようなものだろう。だがエクシーズモンスターが破壊されるかオーバーレイユニットが取り除くかされない限り墓地へいかずフィールドに留まるという点では大きく違う点だ。
『ガガガガンマンの効果、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで相手モンスターの攻撃力を500ポイント下げ、ガガガガンマン自身の攻撃力を1000ポイント上げる! バトルだ。では貴様に引導を渡してやろう。ガガガガンマンで守護天使ジャンヌを攻撃! ガガガショットッ!』
ジャンヌの攻撃力が2300、ガガガガンマンの攻撃力が2500となり力関係が逆転した。
ガガガガンマンの弾丸に眉間を討ち抜かれたジャンヌは苦悶の声をあげながら爆散する。
『そして混沌の黒魔術師でThe big SATURNに攻撃、破滅の呪文―デス・アルテマ―!』
SATURNと混沌の黒魔術師の攻撃力は全くの互角だ。よって両方のモンスターが共に破壊される。
これで再び仕切り直しとなった。ただダークネスの場にはガガガガンマンがいるため若干ダークネス有利といえるかもしれない。
『我はターンを終了する』
「俺のターン、ドロー……っ!」
ドローしたカードを確認して、思わずあっと驚きそうになる。まさかこのようなタイミングでこのカードがくるとはタイミングが良いにも程がある。
ダークネスが召喚したエクシーズモンスターという餌に釣られて出てきたのかもしれない。
(いいだろう)
このカードがその気ならデュエリストとして期待に応えなければならない。
「メタル・リフレクト・スライムのレベルを6から4に下げ二体のレベル・スティーラーを特殊召喚。そして二体のモンスターを生け贄に捧げ……。闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜ッ!」
【銀河眼の光子竜】
光属性 ☆8 ドラゴン族
攻撃力3000
守備力2500
このカードは自分フィールド上に存在する
攻撃力2000以上のモンスター2体を生け贄にし、
手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、
その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。
この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。
この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、
このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターを
ゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。
プラネットシリーズが惑星の力を宿したカードなら、銀河眼の光子竜は銀河という海の力を宿したモンスター。
そのステータスは伝説のレアカード、青眼の白龍と全くの同じ。丈のデッキに眠る光属性最上級モンスターとしては最強クラスのモンスターだ。
「さっきの繰り返しになるけど、二番煎じとは言うなよ。魔法カード、二重召喚。もう一度俺は通常召喚権を得る。そして銀河眼の光子竜のレベルを一つ下げレベル・スティーラーを特殊召喚。そしてメタル・リフレクト・スライムとレベル・スティーラーを生け贄にThe supremacy SUNを召喚!」
【The supremacy SUN】
闇属性 ☆10 悪魔族
攻撃力3000
守備力3000
このカードはこのカードの効果でしか特殊召喚できない。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、
次のターンのスタンバイフェイズ時、
手札を1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。
The SUNの姿を見たダークネスが『ほう』と小さく声を漏らした。
『真なる
「それはどうかな。バトルだ! 銀河眼の光子竜でガガガガンマンを攻撃! 破滅のフォトン・ストリームッ!」
『させはせぬ。罠発動、炸裂装甲! 戦闘してきた相手モンスターを破壊する』
シンプルな効果ほど強いという意味を体現したカードである炸裂装甲。恐らくThe SUNには蘇生能力があることを知って、銀河眼の光子竜を破壊しようとしてきたのだろう。
しかしダークネスは銀河眼の光子竜の能力を見抜くことができなかった。これが失敗の元。
「この瞬間、銀河眼の光子竜の効果発動。このカードが戦闘を行うバトルステップ時、このカードと戦闘する相手モンスターをゲームから除外することが出来る!」
『なんだと!?』
「一度異次元へと消えろ、銀河眼の光子竜!」
神隠しにあったかの如く忽然と銀河眼の光子竜とガガガガンマンの姿が掻き消える。
だが二体のモンスターが消えてもバトルは続行される。そしてダークネスの場にモンスターはいない。
「The SUNでダークネスへ直接攻撃! SOLAR FLARE!」
『ヌゥゥゥウゥゥゥゥゥ!!』
The SUNの太陽光がダークネスの暗黒の命を削り取っていく。
ダークネスが苦悶の声をあげた。
ダークネスLP1800
初期値である4000をオーバーしていたライフが一気に初期値の半分以下に成り下がる。
「俺はリバースカードを二枚セット、ターンエンドだ。そしてエンドフェイズ時、銀河眼の光子竜とガガガガンマンはフィールドに舞い戻る。そして銀河眼の光子竜の効果! ガガガガンマンのオーバーレイユニットを吸収し、銀河眼の光子竜に攻撃力を500ポイント上昇する!」
ガガガガンマンのオーバーレイユニットを呑み込むと銀河眼の光子竜の攻撃力が上昇する。本来このオーバーレイユニットを吸収してパワーアップする効果はこの時代で役立つはずのないものだった。ダークネスのせいで役に立たない筈の力が役立ってしまった。皮肉なことである。
そして遂に、ここまできた。ダークネスを追い詰めた。後はこのまま攻めれば、押し切れる。そう思った所で、
『ふっふっふっふっふっ……』
ダークネスはさも可笑しそうに笑った。天の上から蜘蛛の糸を垂らし、罪人が昇ってくるのを楽しむ超越者のように。高い場所から宍戸丈のことを見下し嘲笑した。
「なにが、おかしいんだ?」
『いや、やるものだな。人間としては上々……よもや旧時代の力で新時代の力をこうも容易く駆逐するとはな。
故に我も真なる力を貴様に見せよう。時代の最強デュエリストたちのデッキを組み合わせた最強のデッキ。それすら超える最強の創造神の力をもってこのデュエルの幕引きとする。これが我が貴様に与える最後にして最上の褒美だ』
「っ!」
『貪欲な壺を発動、墓地のキングス・ナイト、クイーンズ・ナイト、ジャックス・ナイト、アルカナ・ナイトジョーカー、ジャンク・シンクロンをデッキへ戻しシャッフル。その後二枚ドローする。
更に魔法カード、魂の解放を発動。互いの墓地から五枚までカードを除外することが出来る。我はカオス・ソルジャー、ジャンク・ウォリアー。貴様の墓地に眠るレベル・スティーラー二体と守護天使ジャンヌをゲームより除外する』
レベル・スティーラー、墓地にあってこそ真価を発揮するカードが除外されてしまった。
これではレベル・スティーラー二体で生け贄を使い回す戦術が出来ない。
(…………ぐっ)
だがこのゾクリと、心臓に槍を突き刺されたような悪寒はそんな生易しいものではない。
何かとんでもないことがこれから起きようとしている。
『フフフフフ。我の手札にあらゆるキーカードが揃った。我は伏せていた罠カード、異次元の帰還を発動。このカード今更説明するまでもなかろう。我のライフを半分し払いゲームより除外されている我のモンスターを召喚可能な限りフィールドに帰還させる。
我はカオス・ソルジャー、E・HEROフェザーマン、E・HEROバーストレディ、ジャンク・ウォリアーをフィールドに特殊召喚。そして融合を発動、フェザーマンとバーストレディを融合。E・HEROフレイム・ウィングマンを融合召喚!』
【E・HEROフレイムウィングマン】
風属性 ☆6 戦士族
攻撃力2100
守備力1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
カオス・ソルジャー、フレイム・ウィングマン、ジャンク・ウォリアー、ガガガガンマン。
カードの種類も誕生した時代もなにもかもが異なる四体のモンスターがダークネスのフィールドに並ぶ。
『お前に……教えよう。我の真なる切り札は我のフィールドにいる儀式・融合・シンクロ・エクシーズ、全てのモンスターを一体ずつゲームより除外した時のみ召喚を許されるカードだ』
「なっ! 儀式・融合・シンクロ・エクシーズを全て、だって……!?」
強力な効果を持つモンスターはそれに応じて高い召喚難易度をもっていることが多い。
シンクロとエクシーズはまだいい。シンクロならばチューナーモンスターをデッキに何枚か入れれば良いし、エクシーズモンスターはどんなデッキにも無理なく投入できる。
しかし儀式と融合。これらは専用のデッキを組んでこそ力を発揮するカードたちだ。シンクロやエクシーズと違いどんなデッキにも入れられるような類のものではない。しかもそれを全てフィールドに揃えるなど並みのデュエリストに出来ることではないのだ。
それこそテーマも性質も異なるモンスターをデッキに投入し、尚且つそれを扱いきれるほどのデュエリストでなければ。
ダークネスは正真正銘嘘偽りのない十二次元宇宙の神。であれば人の身では不可能なこともやってのけるが道理。
『我はカオス・ソルジャー、E・HEROフレイム・ウィングマン、ジャンク・ウォリアー、ガガガガンマンを除外……。異なる歴史において最強なるデュエリストたちが操りし力。それらを供物とし星の創造神が地上に顕現する!
怖れ慄き懺悔せよ。これが唯一つなる真理。あらゆる戦争に終わりという解答を与えしもの。創星神 sophiaッッ!!』
【創星神 sophia】
闇属性 ☆11 天使族
攻撃力3600
守備力3400
このカードは通常召喚できない。
自分・相手フィールド上に表側表示で存在する、
儀式・融合・シンクロ・エクシーズモンスターを
それぞれ1体ずつゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。
このカードの特殊召喚は無効化されない。
このカードが特殊召喚に成功した時、
このカード以外のお互いの手札・フィールド上・墓地のカードを全てゲームから除外する。
この効果の発動に対して魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。
この世のありとあらゆる神聖をその身に宿したモンスター、否、神がフィールドに降臨する。
星の創造者、創星神 sophiaはあらゆるものに侵されぬ尊き神聖を纏っていた。
左手に「創造の力」を宿した結晶、右手に「破壊の力」を宿した結晶。あらゆるものを創造しあらゆるものを破壊する。星を生み出した大いなる母性をもつ牛頭の女神。
姿を見ているだけで目が溶けてしまいそうだ。宿している力は正真正銘の〝神〟そのもの。三邪神全てと相対した時の恐怖感が蘇ってくる。
無限に広がる暗黒の空間を埋め尽くすように君臨している姿は破壊神オベリスクを思わせた。
大型モンスターである銀河眼の光子竜も大きさで創星神 sophiaの足程度しかない。
『冥界の大邪神に魅入られし者よ。創星神の裁きをその身をもって知るがいい! 終束するセカイ!!』
「な、なんだっ!?」
丈のフィールドだけではない。森羅万象の悉くが創星神の『破壊の力』を宿した結晶に呑みこまれていく。
絶対的な力の前に銀河眼の光子竜やThe SUNすらが抗えない。
『創星神が場に降誕した時、互いのフィールド・手札・墓地のカードを全てゲームより除外する。星の創造・星の滅亡に立ち会えるのは唯一つ神のみ!』
「な、ならばカウンター罠、天罰を……」
『笑止!』
発動しようとした天罰が粉々に砕け散った。
『創星神の世界浄化に対しあらゆる抵抗は不可能! 創星神に天罰を下そうなど……愚か意外になにものでもない!』
そして全て消える。全部が消える。丈がこれまでのデュエルで肥やしてきた墓地が、揃えたモンスターたちが、魔法・罠が……たった一枚のカードによって全てが〝無〟となった。
正に世界の浄化。完全なるリセット。なにもかもが洗い流された世界で残るものなどは、いや……丈の目がダークネスの背後にある黄金の箱に釘づけとなる。
「封印の、黄金櫃」
『然り。封印の黄金櫃はフィールドには留まらず、2ターン後のスタンバイフェイズ時に我が封印したカードを手札に加える。そして我の封印したカードは〝命削りの宝札〟だ。この意味、貴様なら痛い程に分かるだろう?』
命削りの宝札、一気に五枚のカードを加える強力無比なドローソース。5ターン後に手札を全て捨てるデメリットを背負い込むことになるが、天よりの宝札と異なり相手にはドローさせないというメリットがある。
つまり次のターン、ダークネスは五枚ものカードをドローするということだ。
「ここまでの展開を読んで、封印の黄金櫃を発動させていたのか……?」
『人間の浅知恵など神の叡智と比べれば大したことなきものであったな。バトルフェイズ、我は創星神 sophiaで貴様を攻撃。智慧のグノーシス・ソフィア!』
「ぐ、ぁあああああああああああああ!!」
創星神 sophiaの破壊の力が今度は丈自身の身に天罰として降り注ぐ。
ライフが4000をオーバーしていたため一気にライフを奪われるということはなく、丈には700ポイントのライフが残った。だが創星神の一撃は丈の精神の力を削り取るには十分すぎる威力をもっていた。
手札もなくフィールドもなく墓地すらない。なにもかもがゼロ、ここから逆転することなどは、
(……いや)
自分の言葉を思い出せ。自分が以前パンドラに向かって偉そうに言った事を。
あの時、自分は確かに言った。ゼロからの再出発は出来る、と。今の状況はあらゆるものがリセットされ完全なる0だ。ここからしっかり再出発しなければ、あの時に吐いた言葉が嘘になる。
「自分の発言には、責任をもたないと……いけないな。俺の、ターンだ……」
『無駄な足掻きを。何故そこまで我に刃向おうとする? 貴様は勘違いしているかもしれんが、我は全人類を皆殺しにしようなどとは考えてなどおらぬ。
寧ろ我がこの世に現出したのは貴様たちがダークネスを望んだからではないか。我がこうして貴様とデュエルをしていることがその証左よ。
断言しよう。我が世界をダークネスに誘わなければ人間は滅ぶ。邪神や天災などではなく、人は自ら人を滅亡させる。それが分かっていながら……』
「さて、ね。人間がいつか滅びるってことを否定する気はないし、ダークネスを求める人間の気持ちを否定する気もない」
人間だって誰しもが強くあれるわけではない。時に泣き言を言い時に逃げ出したくなるからこその人間だ。
或いは人生を投げ出し逃げてしまうのも選択の一つであるのかもしれない。丈はそのことまで否定するつもりはなかった。だが、
「全人類をダークネスに誘うなんていうのは容認できない。確かに人間はいつか滅びるかもしれないし、人間はいつか死ぬ。だとしても……誰もが必ず訪れる死を悲観して絶望しているわけじゃない。
俺にはまだ分からないけど……俺よりずっと年上の御老人には自分の死期すらジョークの種にする人だっているくらいさ。俺はどうしてもそんなご老人方全員がダークネスの世界を望んでるとは思えない。だから地球に住む一人の人間として戦う。シンプルな構図だ」
『無意味だな。この場面、もはや貴様に逆転の可能性はない』
「それは……やってみなければ分からない! 俺のターン、ドロー!」
創星神 sophiaには手札・墓地・フィールドのカードを全て除外する強力無比のリセット能力と自身の召喚及び効果を無効にさせない効果をもつが、フィールドで一度効果を発動しまえば何の効果にも耐性のない攻撃力が高いだけのモンスターだ。
もしも除去カードを引き当てることができれば、持ち直すことは出来る。
丈はドローしたカードを見て、
「……! カードを一枚伏せ、ターンエンド」
あらゆるものが除外されていてはやる事もなにもない。丈はデュエリストとしても人間としてもラストとなるかもしれないターンを一分も満たずに終わらせた。
『我のターン。大人しくサレンダーをして楽になるという道を選ばなかった以上、貴様が伏せたリバースカード、それが最後の頼みの綱というわけだ。
単なるフェイクの可能性もあるが、関係はない。フェイクだろうと本当のトラップだろうと――――破壊してしまえば良いのだからな!
我のドローしたカードはフィールドのカードを除去できるカードではない、が、五枚もドローすれば確実にそのリバースカードを消し去るカードを引き当てることができる。これで終わりだ。我は黄金櫃の封印を解く!』
黄金の箱がゴゴゴと音をたてながら、その封印を解き放つ。
そして黄金櫃に封印されていた命削りの宝札がゆっくりと出てくる。
『我は命削りの宝札をそのまま発動。デッキより手札が五枚になるようカードをドローする』
相手の場には攻撃力3600のモンスターがいる上に手札を五枚までドローされる。この絶望的な展開に並みのデュエリストならダークネスがリバースカードを除去するカードを引き当てないことを祈るだけだっただろう。
だが丈は祈るどころか逆にふてぶてしくニヤリと笑った。
『……なにを、笑う?』
「正直危ないところだった。もしお前が創星神 sophiaでそのまま攻撃をしてきたら俺は負けていたよ。だが未知なるリバースカードを恐れたお前の選択が逆に俺に勝利の希望を与えた!」
『な、なにを』
「俺はこの瞬間、セットしていたリバースカードを発動する。精霊の鏡!」
【精霊の鏡】
通常罠カード
プレイヤー1人を対象とする魔法の効果を別のプレイヤーに移し替える。
精霊がその体ほどの大きさの鏡で『命削りの宝札』の姿を映し出す。
『精霊の、鏡だと……?』
「このカードの効果により〝命削りの宝札〟の対象となるプレイヤーを別のプレイヤーに移し替えることが出来る。俺が選択するプレイヤーは俺自身! 俺は命削りの宝札の効果により五枚のカードをドロー!」
『グ、ヌッ……! だが我には攻撃力3600の創星神 sophiaがいる! バトルフェイズ! 創星神 sophiaの攻撃、智慧のグノーシス・ソフィアッ!』
「俺は手札よりクリボーのカードを捨てることで戦闘ダメージを0にする!」
創星神 sophiaが繰り出してきた漆黒の破滅のエネルギーを手札から飛び出してきたクリボーが受け止める。
クリボーは必死に鳴き声をあげながら創星神 sophiaの攻撃に立ち向かい、そのダメージを完全に防ぎきった。
『く、クリボーだと……? よもやそんなカードが……』
「どんなカードにも個性がある。デュエルモンスターズに完全にナンバーワンのカードなんて存在しない。確かにクリボーは攻撃力300の弱小モンスターだ。だが〝神〟の攻撃だって受け止められる立派な個性がある。
個性を否定するということはそれらのカードごとの特色すら否定すること……。やっぱり俺はダークネスと交わることは出来なさそうだ」
『ヌゥゥ。我は、ターンを終了する……』
「俺のターン――――」
これが宍戸丈にとってラストターンとなるだろう。デッキトップに手をかけた途端に響いてきた。耳ではなく魂に直接届いた。邪神の鼓動が……確かに、届いた。
「ドローッッ!!」
もはやカードを確認するまでもなかった。わざわざ確認せずとも魂がそのカードの名を教えてくれていた。
「ハードアームドラゴン、このカードは手札よりレベル8以上のモンスター1体を墓地へ送り手札から特殊召喚できる。ハードアームドラゴンを特殊召喚!」
【ハードアームドラゴン】
地属性 ☆4 ドラゴン族
攻撃力1500
守備力800
このカードは手札のレベル8以上のモンスター1体を墓地へ送り、
手札から特殊召喚できる。
このカードを生け贄にして召喚に成功したレベル7以上のモンスターは、
カードの効果では破壊されない。
いつもは召喚した最上級モンスターに破壊耐性を与えるために使用しているハードアームドラゴンだが、今回このモンスターを特殊召喚したのは生け贄のためではない。
手札にあった〝レベル8以上のモンスター〟を墓地へ送るためだ。このキーカードを使うために。
「魔法カード発動、死者蘇生。墓地に眠る〝しもべ〟をフィールドに特殊召喚する」
『例えモンスターを蘇生させようと攻撃力3600の創星神 sophiaなどそうは――――』
「なにを勘違いしているんだ。俺が召喚するのはモンスターじゃない。〝神〟だ!」
『――――っ! 宍戸丈、貴様!』
「死者蘇生の魔力により地獄より生還せよ! 破壊神をも駆逐する恐怖の根源、我が絶対の力となりて、 我が領域に降臨せよ! 天地を揺るがす全能たる力によって、俺に勝利をもたらせ! 邪神ドレッド・ルート降臨ッッ!!」
【THE DEVILS DREAD-ROOT】
DIVINE ☆10 GOD
ATK/4000
DEF/4000
Fear dominates the whole field.
Both attack and defense points of all the monsters will halve.
丈の墓地から爆発したかのような轟音が鳴り響き、冥界の大邪神の力を受け継ぎし〝恐怖〟がフィールドに甦る。
三邪神が一つ、邪神ドレッド・ルートが丈の下に降臨した。
「邪神ドレッド・ルートの特殊能力! 邪神ドレッド・ルート以外のカードの攻撃力・守備力は半分となる!」
創星神 sophiaがドレッド・ルートの力を受け、その巨躯を縮ませていく。星のような威容を放っていた創星神 sophiaは山のようなサイズとなった。
邪神ドレッド・ルートと創星神 sophia、二体の神が真正面から相対する。
「行けドレッド・ルート! 俺達の未来を切り開け!! フィアーズノックダウンッ!!」
ドレッド・ルートの突きだした拳が創星神 sophiaの胴体を穿ち貫いた。
創星神 sophiaは全身から眩い光条を撒き散らすと、天地がぶつかった様な音をあげながら爆発した。そして倒したのは創星神 sophiaだけではない。ダークネスのライフもまたドレッド・ルートの攻撃により0を刻んだ。
『――――認めよう。我の、敗北だ。だがゆめ忘れぬことだ。我を現世へ招きしは我に非ず。人々のもつ心の闇であるとな。人間の心に闇がある限り我は決して消えてなくなることはない。此度は防がれたが、また貴様たち人間が我を求める時が必ずくるだろう』
「……人間の心の闇がなくなることなんて……永久にないだろうさ。だけど何度も来るなら何度でも追い返すだけだ」
心の闇は誰にでもある。大切なのは心の闇を否定することでも、消し去ることでもない。闇を受け入れ自分の一部とすることだ。誰にでも光と闇がある。ならば闇だけを追放する理由なんてない。
光と闇、二つが備わってこその人間。光だけしかもたない存在も、闇しかもたない存在も人間ではないのだ。
だからこれからも丈は人間として光と闇、両方と根気よく付き合っていく。
『では暫しの別れだ…………さらば……だ。……人間……よ』
ダークネスが消え去ると同時に、風景が元の特待生寮の地下室へと戻る。
ふらりとよろめきそうになった。さすがにかなり精神力を消耗してしまったが戻ってくる事が出来たようだ。
丈はゆっくりとその瞳を閉じた。
ダークネスのデッキ最終発表は『歴代主人公夢の共演&創星神 sophiaデッキ』でした。正直絶対に誰も分からないだろうと高を括っていたら、歴代主人公混合デッキの方を当ててしまった方が一人いました。予想外です。想定外です。さすがに102話時点で創星神 sophiaまで予想できた方はいませんでしたが。
ちなみに気付いた人がいるかは分かりませんが、今回の宍戸丈VSダークネスは「闘いの儀」における遊戯VSアテムとは真逆の形で決着してます。