宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第108話  紅蓮の弓矢

宍戸丈 LP4000 手札1枚

場 なし

 

孔雀舞 LP2600 手札0枚

場 The アトモスフィア、セットモンスター

伏せ 一枚

魔法 堕天使アスモディウス(装備カード扱い)

 

 

 

 攻撃力4200ものモンスターとリバースカードも壁モンスターもない状況で相対していると流石にプレッシャーが半端なものではない。

 だが一年前の三邪神ほどではないと丈は自分を奮い立たせる。三邪神の触れるだけで蒸発してしまいそうなエネルギーの奔流と比べれば大したことがない。

 

「俺のターン、ドロー! 強欲な壺を発動。デッキからカードを二枚ドローする。速攻魔法、サイクロン! フィールド魔法、ハーピィの狩場を破壊だ」

 

 突風が巻き起こりフィールドに発動していたハーピィの狩場のカードを吹き飛ばす。カードが破壊され墓地へ送られると、周囲の風景もまた元のデュエル場へと戻った。

 

「よし。これで……」

 

 ハーピィの狩場は最初に丈が仕掛けた様に下手をうてば自分で自分のカードを破壊する事を強要されてしまうという弱点があるが、それを加味してもやはり魔法・罠カードを安定して除去できる性能は恐ろしいの一言である。

 特に永続魔法を多く並べる丈のデッキにはかなり刺さるカードだ。ここで破壊できた意義は大きい。

 

「ハーピィの狩場を破壊して一安心してるとこ悪いけど忘れてない? アタシの場には無傷のアトモスフィアがいるってことを」

 

「勿論忘れてない。俺はモンスターをセット。…………そしてリバースカードを一枚セットする」

 

「!」

 

「ターンエンド」

 

 これ見よがしにニヤリと笑いつつ手札のカードを伏せる。しゅん、とフィールドに裏側表示でセットされた伏せカードが実体化した。

 舞が苦々しそうに丈を睨みつける。

 

「可愛い顔して嫌らしいことするじゃない。一丁前に私と駆け引きをするつもり?」

 

「さぁ。どうでしょう?」

 

 ハーピィの狩場がなくなりダウンしたとはいえ攻撃力4000という脅威の力をもつアトモスフィア。そのアトモスフィアがある舞は一見すれば優位に立っているように見えるだろう。

 だが例え攻撃力が高くともそれだけで押し切れないのがデュエルモンスターズというものである。

 攻撃力が10000だろうと1000000だろうとたった一枚の伏せカードであっけなく破壊されるなんてことはよくあることだ。

 だからもしも丈の伏せたのが〝ミラーフォース〟のようなカードならば、それこそ一気に形勢逆転することもできるのである。

 しかし〝孔雀舞〟はそんな程度のブラフで攻撃を躊躇するヤワなデュエリストではなかった。

 

「賢しい手にはのらないよ。アタシは裏側守備表示でセットしていたメタモルポットを反転召喚! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て五枚のカードをドローする」

 

(ここで大量の手札交換か)

 

 一筋の汗が流れる。ここでメタモルポットとは色々な意味で丈にとって想定外にして予想外だった。

 丈は手札が0枚のため何のカードも捨てることなくデッキからカードを五枚ドローする。ドローした五枚はどれも悪くないカードなのだが、こんな時では余り嬉しくない。

 

「アタシは手札よりハーピィ・クィーンを攻撃表示で召喚」

 

 

【ハーピィ・クィーン】

風属性 ☆4 鳥獣族

攻撃力1900

守備力1200

このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。

デッキから「ハーピィの狩場」1枚を手札に加える。

また、このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り

「ハーピィ・レディ」として扱う。

 

 

 クィーンと名のつくだけあって他のハーピィ・レディより妖艶さの際立つハーピィが、長い緑色の髪を靡かせながらクスクスと丈を嘲笑する。

 これが普通の女性にされたらイラっとくるところだが、ハーピィ・クィーンの嘲笑が余りにも様になっているせいで怒りの感情すら湧いてこない。

 その攻撃力は1900ポイント。ハーピィデッキの下級モンスターではエース級ともいえるモンスターである。

 

「ハーピィ・クィーンはフィールドまたは墓地にある時、カード名をハーピィ・レディとして扱う。よってこのカードの条件もクリアできるわけよ。万華鏡-華麗なる分身-の、ね。

 女王の姿を映しだし、再び三つの姿に分身しなさい。私の可愛いしもべ達!」

 

 

【万華鏡-華麗なる分身-】

通常魔法カード

フィールド上に「ハーピィ・レディ」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

自分の手札・デッキから「ハーピィ・レディ」または

「ハーピィ・レディ三姉妹」1体を特殊召喚する。

 

 

【ハーピィ・レディ三姉妹】

風属性 ☆6 鳥獣族

攻撃力1950

守備力2100

このカードは通常召喚できない。

「万華鏡-華麗なる分身-」の効果で特殊召喚する事ができる。

 

 

 孔雀舞のフィールドに三姉妹を三体とするならば合計四体のハーピィが並んだ。四体のハーピィに囲まれて佇むアトモスフィアはさしずめハーピィたちの守護神とでもいったところか。

 いや4000という高い攻撃力を踏まえれば守護神というよりかは破壊神と言う方が相応強いかもしれない。

 

「バトル! ハーピィ・クィーンでリバースモンスターを攻撃!」

 

 ハーピィ・クィーンが飛び上がり、そのかぎ爪でセットモンスターを攻撃した。

 攻撃対象となったことで表側表示となるセットモンスター。出てきたモンスターはあろうことかメタモルポット。

 

「…………はい?」

 

「あー、この瞬間。メタモルポットの効果発動。お互いのプレイヤーは手札を全て捨ててカードを五枚ドローする。うん」

 

「ま、待ちなさい! ということはアンタもメタモルポットを伏せてたわけ?」

 

「ご覧の通りですよ」

 

 だから良いカードがきたところで余り嬉しくなかったのだ。どうせメタモルポットの効果で捨てられるのに良いカードがきたところで宝の持ち腐れ以外のなにものでもない。

 あんまりな展開に丈も肩を落とし嘆息する。

 

『なんと宍戸丈、孔雀舞両選手。共にメタモルポットを伏せていた!! 宍戸丈、プロ初デュエルにして珍プレイだぁぁぁ!!』

 

 手に汗握る展開で熱くなっていた会場が別の意味で沸き立った。観客の笑いがあちらこちらから響く。

 だが対戦相手である孔雀舞は溜息をつきながらも、獰猛なデュエリストとしての殺意を引込めてはいなかった。

 

「はぁ。変な事になったけど、あたしのやることは全くこれっぽっちも変わらないよ。メタモルポットがなくなったことでアンタのフィールドから壁モンスターは消えた。

 行くよ。アトモスフィアで相手プレイヤーを直接攻撃。テンペスト・サンクションズ!!」

 

「リバースカードオープン。罠発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを一度だけゼロにして、デッキからカードを一枚ドローする」

 

 

【ガード・ブロック】

通常罠カード

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 アトモスフィアの放った大気は不可視の壁に阻まれ丈へは届かない。そしてメタモルポットの五枚とガード・ブロックのドローで手札が六枚になった。

 そしてこのターンで丈のライフが0になることもなくなった。

 

「チッ。完全にブラフってわけでもなかったわけね。ハーピィ・レディ三姉妹、生意気な坊やを痛めつけてやりな! トリプル・スクラッチ・クラッシャー!」

 

「ぐっ!」

 

 三姉妹の息の合ったコンビネーション攻撃が丈の身を切り刻んだ。無傷だったライフが2150、半分近くまで削り込まれる。

 

「おまけだよ。メタモルポットで攻撃」

 

 反転召喚されたメタモルポットも当然攻撃権はある。攻撃力は低いが確かなダメージが丈に襲い掛かりライフポイントが半分を切った。

 1350。なんとも中途半端なこの数値が丈に残って命数だった。

 

「メインフェイズ2。フィールド魔法、ハーピィの狩場を発動。ターンエンド」

 

 三度目の正直とばかりに周囲の風景が狩場へと姿を変化させる。

 ともあれガード・ブロックのお蔭で九死に一生を得た。孔雀舞の表情が暗いものへと変わる。彼女からすれば先程のターンで決着をつけるつもりだったのだろう。

 或いは手札には攻撃が防がれても丈のライフを削る手段があったのかもしれない。だがそれは丈のメタモルポットによりふいとなった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 そして丈のターン、ドローしたことにより手札は合計で七枚。七枚もの手札が齎すであろう可能性。孔雀舞ほどのデュエリストが警戒しないはずがない。

 警戒する、というのはデュエルにおいても重要な心構えではあるが物事には警戒したから防げるということばかりではない。

 丈がドローしたカードと他六枚の手札。キーカードは揃っている。

 

「――――ここから、攻める」

 

 まずは、と丈が一枚のカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「永続魔法、冥界の宝札を発動!」

 

 

【冥界の宝札】

永続魔法カード

2体以上の生け贄を必要とする生け贄召喚に成功した時、

デッキからカードを2枚ドローする。  

 

 

 丈のデッキの回転の軸となるドローエンジン。冥界の宝札が遂に発動した。

 これで漸く宍戸丈のデッキが真価を発揮する条件が揃う。だが今回はそれ以上だ。プロ最初のデュエルがいつも通りのデュエルではしまらない。

 初陣はやはり100%以上の全力を超えた全力というものを披露しなければならない。

 

「さらに! 俺は冥界の宝札に続き永続魔法……進撃の帝王を発動!!」

 

 

【進撃の帝王】

永続魔法カード

このカードがフィールド上に存在する限り、

自分フィールド上の生け贄召喚したモンスターは

カードの効果の対象にならず、カードの効果では破壊されない。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、

自分は融合デッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 ハーピィの狩場に閉じ込められた丈とそのデッキたち。だが狩られているのはもうここまでだ。

 攻守はここに交代する。これからはハーピィが狩るのではない。ハーピィたちが狩られるのだ。ここから魔王の反撃が始まる。

 

「閉じ込められた被捕食者は烈火の如き怒りを携え拳を振るう……。フォトン・サンクチュアリを発動、二体の生け贄をフィールドに揃える。そして二体のフォトンを生け贄に捧げ、白竜の忍者を攻撃表示で場に繰り出す」

 

 

【フォトン・サンクチュアリ】

通常魔法カード

このカードを発動するターン、

自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

自分フィールド上に「フォトントークン」(雷族・光・星4・攻2000/守0)

2体を守備表示で特殊召喚する。

このトークンは攻撃できず、シンクロ素材にもできない。

 

 

【白竜の忍者】

光属性 ☆7 ドラゴン族

攻撃力2700

守備力1200

このカードを特殊召喚する場合、

「忍法」と名のついたカードの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

自分フィールド上の魔法・罠カードはカードの効果では破壊されない。

 

 

 白竜の力を宿した〝忍〟が降り立つと主である丈に跪く。そして冥界の力が宍戸丈に新たに二枚の手札を捧げた。

 強力な最上級モンスター、白竜の忍者。さらには冥界の宝札と進撃の帝王。これだけのカードを出しておきながら以前として丈の手札は五枚。

 ここまでやっておきながら余力は十二分。

 

「進撃の帝王がある限り生け贄召喚したモンスターはカード効果では破壊されず対象にもならない。そして白竜の忍者がいる限り俺のフィールドの魔法・罠はカード効果では破壊されることがない。この意味、貴女なら分かるでしょう?」

 

「っ! 〝白竜の忍者〟がある限り進撃の帝王を破壊できないし、〝進撃の帝王〟がある限り白竜の忍者を戦闘以外では破壊できない…………お互いがお互いを守り合ってその耐性を何十倍にも高めた無敵コンボ!」

 

「魔王の進撃はなんびとたりとも阻めない」

 

 丈は苦笑する。我ながら芝居がかった言い方だが、プロデュエリストとはデュエリストであると同時にエンターテイメント。ファンのためこういったファンサービス染みたこともしなければならない。

 とどのつまり「受け取れ! 俺のファンサービスを!」ということだ。開き直り(ヤケクソ)とも言う。

 

「……いいわ。来なさい!」

 

「いやまだ行かない。このまま攻撃したところで白竜の忍者の攻撃力は2700。ゲームエンドに持ち込むには残念ながら足りない。返しのターンでアトモスフィアに攻撃されては折角の〝無敵〟も台無しだ。だから――――」

 

「まさかまだモンスターを召喚するというの!?」

 

 やるならば徹底的に。敵が息絶えるまで手を緩めるつもりは微塵もない。殺意を消す気も毛頭ない。

 

「ご名答。俺は墓地の守護天使ジャンヌとクリボーをゲームより除外。光と闇を供物とし、世界に天地開闢の時が告げられる。降臨せよ、我が魂! カオス・ソルジャー -開闢の使者-!」

 

 

【カオス・ソルジャー -開闢の使者-】

光属性 ☆8 戦士族

攻撃力3000

守備力2500

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ

ゲームから除外した場合に特殊召喚できる。

1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●フィールド上のモンスター1体を選択してゲームから除外する。

この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

●このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、

もう1度だけ続けて攻撃できる。

 

 

 墓地より光と闇のしもべが生け贄として捧げられ、天地創造の光が降り注ぐ。

 あらゆる音が消えた時、フィールドに降臨したのは漆黒の鎧に身を包んだデュエルモンスターズ界において〝最強〟の呼び名を創造主より頂いた剣士。カオス・ソルジャー -開闢の使者-だ。

 

『き、きた……』

 

 人間は想像を絶するものを目の当たりにすると逆に静かとなるらしい。あの騒がしかったMCすら息をのみ、歓声を控えた。

 最強の剣士の威容に誰もが息をのみ目を奪われる。

 唯一人。萎縮も畏怖の念も露わにしていないのはカオス・ソルジャーの主である宍戸丈だけ。丈はカオス・ソルジャーに向かって左手を振り下ろす。それが合図となった。

 堰を切ったように会場中の人々の喉が爆発する。

 

「カオス・ソルジャーの特殊能力。1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体を選択し除外する。消え去れ、天地開闢創造撃!」

 

 大気を支配していた〝The アトモスフィア〟が天地開闢の一撃を前に為す術もなく雲散する。

 そして丈はただ一言「バトル」と告げた。

 

「ハーピィ・クィーンにはさっき嘲笑された借りがあったけどまだ倒さない。……そう最初に狙うのは攻撃表示で無防備を晒しているメタモルポットだ。白竜の忍者、屠殺しろ」

 

 白竜の忍者が小さく頷くと、目にも留まらぬ速度でメタモルポットを十八の残骸に解体した。

 

「いつっ……やってくれたわね!」

 

 孔雀舞のライフが1000をきって600を刻む。遂に、だ

 あの城之内克也と互角の戦いを繰り広げてきた歴戦の決闘者にチェックをかけた。

 

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

 一転して絶体絶命の窮地へと追い込まれた孔雀舞。しかし舞もまた戦意を折ってはいない。

 歴戦のデュエリストという称号は勝利の歴史であると同時に敗北の歴史である。孔雀舞もまた華々しい勝利を幾度となく積み重ねてきたのと同じように、その陰で惨めな敗北というものを積み重ねてきた。

 勝利と敗北。それを知るからこそ人は真の強者たりえるのだ。故に歴戦のデュエリストがこの程度で膝を屈するなど有り得ない。

 

「アタシのターンよ。白竜の忍者と進撃の帝王のコンボ。一見攻略不可能にみえるコンボだけど攻略法はある。誰にでも思いつくシンプルな攻略法が。

 このターンでアタシは白竜の忍者を戦闘破壊するわ!」

 

 そう単純にしてシンプルなことだ。白竜の忍者にも進撃の帝王にも戦闘破壊耐性を与える効果は何一つとして記述されていない。そして白竜の忍者の攻撃力は2700。戦闘破壊は十分に可能な数値なのだ。

 

「手札を一枚捨て永続罠、発動! ヒステリック・パーティ!」

 

 

【ヒステリック・パーティー】

永続罠カード

手札を1枚捨てて発動できる。

自分の墓地から「ハーピィ・レディ」を可能な限り特殊召喚する。

このカードがフィールド上から離れた時、

このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する。

 

 

「このカードの効果によりアタシは墓地から『ハーピィ・レディ』を召喚可能な限り特殊召喚する! アタシはハーピィ・クイーン、ハーピィ・レディ1二体を墓地から特殊召喚!」

 

 

【ハーピィ・レディ1】

風属性 ☆4 鳥獣族

攻撃力1300

守備力1400

このカードのカード名は「ハーピィ・レディ」として扱う。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

 

 

 効果は重複する。ハーピィ・レディの攻撃力を上げる効果は二体がフィールドに現れたことで倍の600ポイントの上昇となる。

 孔雀舞のハーピィたちが一気にその攻撃力を上昇させた。狩場の強制効果は破壊耐性を付与された丈の魔法・罠を選択し不発とする。

 

「さらに! 永続魔法、強者の苦痛を発動! このカードがある限り相手モンスターはレベル×100ポイント攻撃力をダウンさせる!」

 

「むっ!」

 

 カオス・ソルジャーのレベルは8、白竜の忍者はレベル7。強者の苦痛の効果を受けカオス・ソルジャーは2200に白竜の忍者は2000まで攻撃力を低下させた。

 これで攻撃力が完全に逆転した。ハーピィの総攻撃を受ければ丈のライフは消し飛ぶだろう。だから、

 

「罠発動、威嚇する咆哮! このターン、相手の攻撃宣言を封じる」

 

 攻撃される前に攻撃を先に潰す。

 

「っ! 威嚇する咆哮を、ここで……! カードを二枚セットしてターンエンドよ」

 

「俺のターン。カオス・ソルジャーのレベルを二つ下げ二体のレベル・スティーラーを特殊召喚。二体のレベル・スティーラーとカオス・ソルジャーを生け贄に捧げ神獣王バルバロスを攻撃表示で召喚!

 そしてバルバロスのモンスター効果。相手フィールド上のカードを全て破壊する!」

 

「リバース発動、奈落の落とし穴――――」

 

「残念だが進撃の帝王が俺のフィールドで発動中。破壊は無意味だ。そしてバルバロスで攻撃、トルネード・シェイパー!」

 

 バルバロスの槍から放たれた雷が孔雀舞のハーピィたちの全てを粉々にする。

 がら空きとなったフィールドを駆け抜けバルバロスが槍を突きだした。舞のライフが0を刻む。

 

『決まったぁぁぁぁッ! 宍戸丈VS孔雀舞! 激闘を制したのはルーキーの宍戸丈だぁぁぁッ!』

 

 デュエルが終わると舞が手を出してくる。丈は緊張が解けて思わず朗らかに笑いながらその手を握った。

 

「良いデュエルだったわ。まさかルーキーに足元掬われるなんてアタシもまだまだね」

 

「いや俺も偶然冥界の宝札で引いたカードに威嚇する咆哮がなければあのまま押し負けてましたよ」

 

「まったく謙虚なんだか剛胆なんだか分からないわね」

 

 ともあれ宍戸丈のプロ最初のデュエルは終わった。紙一重の攻防だったが、どうにか最初の戦いを白星で飾ることができたらしい。

 歓声が降り注ぐ中、丈の口元には確かな笑みがあった。

 


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