宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第132話  狡猾なる罠

遊城十代 LP4000 手札0枚

場  セットモンスター

伏せ 一枚

 

宍戸丈  LP4000 手札1枚

場 M・HEROアシッド、E・HEROエアーマン

伏せ 一枚

 

 

 

「ハネクリボーのお蔭でワンターンキルを逃れて一安心といったところだが、同じ幸運が俺に二度と通じると思うな。このターンでお前のフィールドを焼野原にしてくれる。ドロー!」

 

「くっ……」

 

 認めたくはないが確かに丈の言う通り不味い状況だ。

 十代のフィールドにはリバースモンスターとリバースカードが一枚ずつ。対して丈のフィールドには二体のモンスター。

 だがここではやられない。このターンを耐えて、次の逆転を狙う。それに全神経を集中させる。

 

「手札よりE・HEROスパークマンを召喚、攻撃表示」

 

 

【E・HEROスパークマン】

光属性 ☆4 戦士族

攻撃力1600

守備力1400

様々な武器を使いこなす、光の戦士のE・HERO。

聖なる輝きスパークフラッシュが悪の退路を断つ。

 

 

 HEROの一枚、スパークマン。下級の通常HEROの中ではトップクラスの攻撃力をもつため十代も愛用しているカードだ。

 ただ十代のスパークマンが黄色いメットに青い体躯をしているのに対して、丈のそれは若干肌が黒ずんでいた。

 

「スパークマンでリバースモンスターを攻撃、スパークフラッシュ!」

 

 手から放たれる黒い稲妻が伏せモンスターを破壊する。

 破壊されたのはE・HEROフェザーマン。とてもではないがスパークマンの攻撃力には敵わない。

 

「今だ! リバースカード、オープン! ヒーロー・シグナル! 俺のモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、自分の手札またはデッキからE・HEROと名のつくモンスターを特殊召喚する!」

 

 

【ヒーロー・シグナル】

通常罠カード

自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され

墓地へ送られた時に発動する事ができる。

自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついた

レベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 その名の通り十代と丈の頭上に黒いシグナルが出現する。

 丈は目を細めた。十代と同じHERO使いである丈には、十代がこれから召喚するモンスターに当たりを付けているのだろう。

 

「デッキよりE・HEROバブルマンを守備表示で特殊召喚! そしてフィールド上にカードが無い時に特殊召喚に成功した時、デッキからカードを二枚ドローする。俺はカードを二枚ドロー!」

 

 

【E・HEROバブルマン】

水属性 ☆4 戦士族

攻撃力800

守備力1200

手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に

自分のフィールド上に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。

 

 

 逆転の鍵となるのは手札だ。ヒーローシグナルで壁モンスターを増やし、バブルマンの効果で手札増強を行う。

 これで十代の手札はゼロから二枚になった。次のターンでドローすれば三枚になるだろう。しかも、

 

「チッ。エアーマンでバブルマンを攻撃、続くM・HEROアシッドでプレイヤーを直接攻撃!」

 

 二体のモンスターの連続攻撃でバブルマンが破壊され、ダイレクトアタックを受ける。しかし一体の直接攻撃は防げた為、十代のライフは1400残る。

 1400あれば逆転には十分だ。

 また後一歩で勝ちを逃した形となった丈は悔しげに舌打ちする。

 

「ターンエンドだ。また命拾いしたな小僧」

 

「ついでに勝利も拾ってやるぜ。ここからが俺の逆転劇だ! 俺のターン、ドロー。強欲な壺を発動、カードを二枚ドローする!

 E・HEROプリズマーを攻撃表示で召喚! プリズマーの効果で自分の融合デッキにカード名が記載されている融合素材モンスター1体を墓地へ送り、このターンのエンドフェイズまでこのカードをそのモンスターの同名カードとして扱う!

 俺はシャイニング・フレア・ウィングマンを見せ、融合素材のスパークマンを墓地へ送るぜ!」

 

 

【E・HEROプリズマー】

光属性 ☆4 戦士族

攻撃力1700

守備力1100

自分の融合デッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せ、

そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を

自分のデッキから墓地へ送って発動する。

このカードはエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 水晶のようなプリズマーの表面にスパークマンが映し出される。

 墓地にHEROを送りつつ、融合素材の代用としても扱えるプリズマーはHEROデッキにとって要となるモンスターの一枚だ。

 

「墓地にはスパークマンと融合召喚されたフレイム・ウィングマン。となれば……」

 

「おう! 魔法カード、ミラクル・フュージョン! 墓地のスパークマンとフレイム・ウィングマンを融合! 来い、シャイニング・フレア・ウィングマン!」

 

 

【E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン 】

光属性 ☆8 戦士族

攻撃力2500

守備力2100

「E・HERO フレイム・ウィングマン」+「E・HERO スパークマン」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在する「E・HERO」と名のついた

カード1枚につき300ポイントアップする。

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、

破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

 風と炎を纏いしフレイム・ウィングマンに雷の力が合わさり、光の力をもつHEROが降り立った。

 シャイニング・フレア・ウィングマンは眩い光を放ちながら、フィールドを圧巻する。

 

「シャイニング・フレア・ウィングマンは墓地のE・HERO一体につき攻撃力を300ポイントアップさせる。俺の墓地にいるE・HEROは六体! よって1800ポイントアップだ!」

 

「やったわ! これで十代のモンスターが宍戸先輩のモンスターの攻撃力を上回った!」

 

「それで兄貴のシャイニング・フレア・ウィングマンには破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える効果があるっス!」

 

「攻撃が通れば十代の勝ちなんだな!」

 

 フレイム・ウィングマンを超えるエースモンスターの登場に、思わず明日香たちも破顔する。十代も自信ありげに笑いながら鼻を掻いた。

 これまで十代が相手してきたデュエリストなら或いはこれで終わっただろう。しかし今目の前に立っているのは仮にも宍戸丈。

 

「甘いなぁ」

 

「なに!?」

 

「俺はミラクル・フュージョンの発動に対してコイツを発動していた。カウンター罠、発動! 神の宣告!」

 

「げぇ!」

 

 

【神の宣告】

カウンター罠カード

ライフポイントを半分払って発動できる。

魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚の

どれか1つを無効にし破壊する。

 

 

 召喚されたばかりのシャイニング・フレア・ウィングマンが召喚を無効にされ跡形もなく消滅する。

 神の宣告、ライフ半分という大きなコストをもつが魔法・罠・モンスターの各召喚まで無効化する汎用性の高いカウンター罠だ。

 光の英雄も神の前には無力に等しい。

 

「さぁ。どうするね遊城十代。頼りのシャイニング・フレア・ウィングマンは召喚することすら叶わず消え去ったぞ。もう手は出し尽くしたかな」

 

「……カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 今度ばかりはさしもの十代も顔を青くする。

 シャイニング・フレア・ウィングマンでこのターンで勝利を決めるつもりでいたのだ。そうでなくとも巻き返しにはなるだろうと思っていた。

 だというのに頼りのシャイニング・フレア・ウィングマンは召喚することすらできず消滅。嘗てない絶体絶命の危機というやつだった。

 

「これが貴様のラストターンだ。天使の施しで三枚ドローし大嵐を発動、フィールドの魔法・罠を全て破壊する! そしてミラクル・フュージョンを発動! 俺は場のスパークマンと墓地の融合素材代用モンスター、沼地の魔神王を除外し融合!!」

 

「スパークマンに沼地の魔神王……? まさかこの組み合わせは!?」

 

「青ざめたな小僧。御察しの通り貴様の召喚できなかったモンスターは俺が召喚してやろう。現れろシャイニング・フレア・ウィングマン!」

 

 十代にとっては希望の光そのものでもあった頼りがいのある味方フレア・ウィングマン。

 だからこそそれが敵に回った時のショックは大きなものだった。

 

「バトル! シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃、シャイニング・シュート!」

 

 さっき明日香たちが言った通りシャイニング・フレア・ウィングマンには戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果がる。

 これに加え他のモンスターの総攻撃を喰らえば十代は終わりだ。

 

「させるかぁ!」

 

 

【ヒーローバリア】

通常罠カード

自分フィールド上に「E・HERO」と名のついたモンスターが

表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

 

 

 プリズマーを守るように風車が出現し、、シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃を弾き飛ばした。

 ヒーローバリア、フィールドにE・HEROがいる時だけ発動できる罠カードである。

 

「ヒーローバリアだと!? 馬鹿な。そのカードは大嵐で破壊されたはず……」

 

「……? HERO使いなのに、忘れちまったのか。ヒーローバリアはフリーチェーンのカード。大嵐が発動した時にチェーンして発動してたんだぜ」

 

「無駄な足掻きを……! ならばアシッドによる攻撃!」

 

「それもさせるかぁ! ネクロ・ガードナーを墓地から除外して、アシッドの攻撃を無効にするぜ!」

 

 黒い壁が出現し、それがアシッドの攻撃を阻む。

 

「っ!」

 

 どちらにせよこれで丈のフィールドに残っているモンスターはエアーマンだけ。

 そしてエアーマンの攻撃だけでは十代のライフを削りきる事は出来ない。

 

「っ! エアーマンでプリズマーを攻撃!」

 

 遊城十代LP1400→1300

 

 プリズマーが破壊され再び十代のフィールドががら空きになるが、またも丈は十代のライフを0にできずに終わる。

 

「……ターンエンドだ」

 

 これで再び十代は命を繋いだが、どこか釈然としない気分で宍戸丈を見る。

 強いのは間違いない。十代自身何度も追い込まれたし、逆転のキーカードを潰されもした。しかし以前カイザーと戦った時に感じた圧倒的なまでの強者の気配を丈はもっていないのだ。

 気のせいといってしまえばそれまでだが、十代にはそれが気に掛かった。

 


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