宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第135話  吸血鬼の襲来

 セブンスターズから七星門の鍵を預けられた六人は校長室に集められていた。

 昨夜のセブンスターズ第一の刺客、死の物まね師とのデュエルと、彼によって語られたことについて報告するためである。

 宍戸丈が乗った飛行機が爆破され太平洋の藻屑となったこと、そして丈のデッキがセブンスターズに奪われたことなどを聞くと、殆どの人間が絶望的な顔をした。

 

「まさか宍戸くんがそのようなことになるとは……私が、悪かったんです」

 

 丈をアカデミアに呼び戻した鮫島校長が自分の責任を感じてうなだれる。

 セブンスターズが丈の乗る飛行機を狙ったのは、宍戸丈という戦力が鍵の守護者となることを警戒してのことだ。もしも鮫島校長が丈を呼び戻さなければ、或いは標的となることもなかったかもしれない。

 

「校長の責任じゃないぜ。悪いのはセブンスターズだ」

 

 死の物まね師のことを報告し終えた十代が苦々しく言った。

 ただ昨日の闇のゲームでのダメージがまだ残っているせいで、声にいつもよりも力がなかった。

 

「けれど宍戸先輩のデッキがセブンスターズの手にあるっていうことは」

 

「HEROデッキは十代が取り戻したから良いとして、最低でもあと二回はあの人のデッキと戦うことになるな」

 

 明日香の懸念に、万丈目は腕を組みながら頷く。

 残る丈のデッキは最上級モンスターを中心としたデッキに暗黒界デッキ。どちらも強力無比なパワーデッキだ。その破壊力は並みのデッキの比ではない。

 勿論デッキが強いからといってデュエリストが強いとは限らないし、丈のデッキを操るデュエリストが弱ければ使いこなせず簡単に倒せる可能性はある。

 だが昨夜の死の物まね師も雰囲気はどうあれ嘗て武藤遊戯を追い詰めたこともある実力者。他のセブンスターズも死の物まね師と同等かそれ以上の実力を持っていると考えていい。

 デッキが使いこなせないなんていうのは希望的観測が過ぎるというものだろう。

 

「そ、それだけじゃないノーネ! セニョール・宍戸のデッキといえーば、ささささささ、三邪神のカードも奪われたということなノーネ!」

 

『…………………………………』

 

 クロノスの言葉に全員がしーんと静まり返る。

 三幻神と対極に位置し三幻神を殺すためにデザインされたが、その余りの危険性故に創造主であるペガサスが生み出す前に封印したという逸話をもつカード。

 その力は三幻神と同等といわれ、宍戸丈が二代目決闘王に最も近いと言われるのも、彼がそのカードの担い手であるが故だ。

 三幻魔封印を阻止するために鍵の守護者として戦っているというのに、既に敵は三幻魔と同等の力を手にしている。

 守護者に選ばれた者達を不安にさせるには十分すぎることだった。

 

「そう警戒することか?」

 

 だが一堂は失念していた。

 この場には宍戸丈のライバルであり、彼と同じ四天王に名を連ねる帝王がいるということを。

 

「丸藤くん。どういうことですか、警戒する必要はないとは?」

 

「そのままの意味です、校長。三邪神は確かに凄まじい力を持っている。それは丈や吹雪と共に正面から戦った俺が一番よく知っています。

 だが今の三邪神は全て丈を主と認め……逆に言えば丈以外を主とは認めないほどに心許している。そんな三邪神が丈以外の、それも丈からカードを奪った人間に従うでしょうか?」

 

 神のカードは持ち主を選ぶ。相応しくない者が使おうとすれば、神のカードはデュエリストに天罰を下す。

 これはアカデミアに入るデュエリストならば誰でも知っているような都市伝説だ。しかも比較的多くの人間に信じられている。

 三邪神が三幻神と同格のカードならば、三幻神の時に起きた事例はそのまま三邪神に当て嵌めることができるだろう。

 

「丈のデッキが奪われたところで俺達のやることは変わらない。襲い掛かるセブンスターズの刺客をデュエルで撃退するだけ。そこに丈のデッキを取り返すという仕事が追加されたに過ぎない。あいつも自分が戻って来たときにHEROデッキしか手元になければ困るはずだ」

 

「し、しかしセニョール宍戸は太平洋に――――」

 

「生きていますよ、あいつなら。あいつは三年連続で世界の危機とやらに巻き込まれた男。今更飛行機撃墜くらいで死ぬような男じゃない。

 仮に死んで地獄に堕ちたら、地獄の鬼を打ち負かして現世に侵攻でもしてくるでしょう」

 

 絶対的な信頼をもってカイザーと謳われたデュエリストは断言する。

 その余りにも自信に溢れた言葉に他の守護者たちにも希望が戻ってきた。

 

「カイザーの言う通りだ。こうやってデッキの一つだって取り戻せたんだし、残り二つもちゃっちゃと取り戻しちゃおうぜ」

 

 ぐっと拳を握りながら十代が言う。

 そんな面々を校長室の窓の向こう側から覗き見る蝙蝠に誰一人として気付くものはいなかった。

 

 

 

 

 

 一匹の蝙蝠が海に浮かぶ小舟に立つカミューラのもとに戻ってくる。

 蝙蝠がカミューラの伸ばした手に止まると、つぶらな赤い瞳をカミューラへ向けた。

 

「よしよし。お前が見たものを教えなさい」

 

 蝙蝠の目が赤く発光する。すると蝙蝠が見聞きしてきた情報、鍵の守護者に選ばれたデュエリストたちのデッキがカミューラの頭に流れ込んできた。

 

「ふふふふ。呑気な坊やたち。戦いっていうのは戦う前から始まっているものなのよ」

 

 蝙蝠の首を細い指でなでながら、吸血鬼の美女は妖しく微笑む。

 

「あら」

 

 鍵の守護者たちのデッキを確認している中で、カミューラは面白いものを見つけた。

 カイザー亮。本名は丸藤亮。恐らくは鍵の守護者の中で最強の実力をもつであろうデュエリスト。セブンスターズのボスからもカイザーには一層気を付けるよう五月蠅いくらいに言われている。

 しかしカミューラが注目したのはカイザーのデッキにではない。その自分好みの容姿だ。

 

「端正な容姿、愚かしくない目つき、知性を感じる佇まい…………決めた。カイザーなんて人間には不相応な称号なんて消し去って、私のお人形にしてあげようかしら」

 

 カミューラが顔もなにも描かれていないシンプルな人形を取り出す。

 闇のゲームにおいて丸藤亮を倒したあかつきには、この人形に〝魂〟が宿ることだろう。

 

 

 

 

 カミューラにロックオンされていることなど知りもしない亮は、一人部屋の中で自分のカードと睨めっこしていた。

 サイバー流の新規カードが新たに販売されたのがついこの前である。サイバー流後継者としてのコネもあり、新規サイバーはいの一番に入手した亮だが、実のところ新規サイバーを新たに加えたデッキには多少の不安要素がある。

 多くの新規カードが加わるということは、そのまま戦術の拡大に繋がる。だが戦術が拡大して強くなるとは限らないのだ。あれもこれもと節操なく投入した挙句にデッキの強さが低下するなんていうのはよくあることだ。

 亮は優れたデュエリストであり、そうはならないようバランスよくデッキを構築したつもりだ。

 だがこのデッキで一度も自分と互角の相手とデュエルしていないのが不安として残っている。

 

(前なら寝ている丈を叩き起こしてでもデッキ調整に付き合って貰ったんだが……あいつは今頃ここに向かっている途中。吹雪や藤原もまだアメリカ。やれやれ)

 

 デュエルする相手なら幾らでもいる。それこそ四天王なんて大仰な集団に名を連ねている亮が頼めば誰だって頷くだろう。そもそも亮にはデュエル希望の学生が半年待ちくらいで予約をいれているのだ。デュエルする機会に事欠くということはない。

 だが悲しいかな。この学園で亮と互角に戦えるのは〝四天王〟の面子だけ。そも亮はアカデミアに入学して以来、この学園で四天王以外のデュエリストに敗北したことはないし、それは他の三人も同じだ。

 そして新カードを投入した新デッキを確認するためには、やはり互角の実力をもつデュエリストと戦うのが一番良い。

 

「ままならんものだな。……………ん?」

 

 PDAが震えている。どうやら誰かからの連絡らしい。

 亮がPDAを操作して着信すると、そこに見慣れた弟の顔が映し出された。

 

「翔じゃないか。どうしたこんな夜更けに?」

 

『た、大変っス! セブンスターズの第二の刺客がやってきて、今クロノス先生がデュエルを――――』

 

「なんだと!? クロノス先生が……」

 

『相手はカミューラっていう吸血鬼で、クロノス先生が大変なことに……。お兄さん、速くきて下さいっス』

 

 クロノス先生といえばアカデミア実技最高責任者。鍵の守護者に選ばれていることからいってもその実力は折り紙つきだ。

 これが普通のデュエルなら亮も特に心配はしなかっただろう。

 だがセブンスターズとの戦いは闇のゲームだ。闇のゲームは現実的な苦痛を伴い、場合によっては命すら失う危険なデュエル。

 闇のゲームを知っているどころか、頑固に信じようとしなかったクロノス先生では危険だ。

 

「分かった。直ぐに向かう」

 

 構築中のデッキを纏めると慌てて寮を飛び出す。

 カミューラとクロノス先生のデュエルは海岸で行われている。ブルー寮から海岸まではどれだけ全速力で走っても二十分はかかる。

 しかしサイバー流の厳しい特訓で鍛え上げられた足腰はたった十分で亮を海岸まで送り届けた。

 

「クロノス教諭!」

 

「せ、セニョール丸藤!?」

 

 亮がきたことにデュエルをしていたクロノス先生が驚いて振り返る。

 十代や万丈目、他の守護者の面々や翔と隼人もクロノス先生のデュエルを見守るためにそこにいた。

 

「あら。やっと来たの。こんな弱っちい相手と遊んでいて待ちわびちゃったわ」

 

「よ、ヨワッチイ!? 失礼千万モッツァレラチーズなノーネ!」

 

 赤いドレスに身を包んだ貴婦人、カミューラは口の隙間から吸血鬼の証たる牙を覗かせる。

 艶めかしい視線が亮の全身を這いまわった。亮は不愉快げに顔を歪ませる。

 

「レディを待たせるなんて紳士として足りなくてよ。私もあなたみたいなタイプじゃない男の相手をするなんて面白くないし、そこの坊やとのチェンジを認めてあげるわよ」

 

「チェンジだと?」

 

 亮はクロノス先生とカミューラのフィールドに視線を向ける。

 

 

クロノス  LP100 手札2枚

場  なし

伏せ なし

 

カミューラ LP3450 手札4枚

場 ヴァンパイア・ロード

伏せ 二枚

フィールド 不死の王国ヘルヴァニア

 

 

 ターンこそクロノス先生だが、ハンドアドバンテージもフィールドアドバンテージもライフアドバンテージも圧倒的にカミューラが上回っている。

 このデュエルを引き継ぐとなると、圧倒的不利からスタートすることになるだろう。しかしこの程度で怯んでいては帝王の名が廃る。

 

「……いいだろう。このデュエル、俺が――――」

 

「駄目なノーネ!」

 

 だが亮の言葉は、力強い否定により遮られた。

 

「クロノス教諭、しかし」

 

「チェンジなーど、断じて認めないノーネ……。彼は私の生徒、セニョーラには指一本触れさせませンーノ。それに私はまだ負けたわけじゃないノーネ!」

 

 クロノス教諭の言葉に籠もった強い感情を察した亮は、それ以上なにも言いはしなかった。

 このデュエルはクロノス先生とカミューラの戦い。戦っているデュエリストが闘志を失っていないのなら、ギャラリーが何か言うことではない。

 

「ハッ。愚かしい選択だこと。勝てぬと知って抗うなんてこれだから人間は愚かね。そんなに死にたいなら望み通りにしてあげるわ。

 メインディッシュには程遠いけれど、ナプキンくらいには丁度良いわね。弱いくせにこの私の前に立った愚かさを人形となり呪いなさい!」

 

「それは違うぜ」

 

 カミューラの侮辱を否定したのは、予想外にも十代だった。

 

「ドロップアウトボーイ……」

 

「戦った俺が言うんだ。間違いない! クロノス先生……見せてくれよ、アンタのターン!」

 

 これまでドロップアウトボーイと散々貶めてきた十代からの声援に、クロノス先生の目に力強い炎が宿る。

 

「セニョーラ・カミューラ」

 

 強い声でクロノス先生が口を開いた。

 

「このクロノス・デ・メディチ、断じて闇のデュエルなどに敗れるわけにはいきませンーノ! 何故ならデュエルとは本来、青少年に希望と光を与えるものであり、恐怖と闇をもたらすものではないノーネ!」

 

「言葉だけならなんとでも言えるわねぇ。だけどこの状況で今更なにをする気かしら?」

 

 カミューラの場には効果破壊されても蘇生する効果をもつヴァンパイア・ロードに、アンデット族を手札から捨てることで場のモンスターを全て破壊するフィールド魔法、ヘルヴァニア。そしてリバースカードが二枚ある。

 対するクロノス先生の場はがら空き。絶望的な状況だが、

 

「それはこれから見せてあげルーノ。私のターン! フィールド魔法、歯車街を発動すルーノ!」

 

 

【歯車街】

フィールド魔法カード

「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に

必要な生け贄を1体少なくする事ができる。

このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から

「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚できる。

 

 

 フィールド魔法の上書き。ヘルヴァニアが消滅し、かわりに歯車の街が出現する。

 歯車街はアンティーク・ギアの生け贄を一つ少なくするフィールド魔法だが、今回クロノスはそのためにフィールド魔法を展開したのではない。

 

「そして魔法カード、大嵐! 互いのフィールドの魔法・罠を全て破壊するノーネ。セニョーラの伏せカードはぽぽいのぽ~いなノーネ!」

 

「ははははははははははは。馬鹿なことをしたわね、クロノス先生? ついさっき自分で発動したばかりのフィールド魔法ごと吹き飛ばすなんて正気?」

 

「ドロップアウトなのはセニョーラの方なノーネ! 歯車街が破壊され墓地へ送られた時、自分の手札・デッキ・墓地よりアンティーク・ギアと名のつくモンスター1体を特殊召喚するノーネ!」

 

「なんですって!?」

 

「現れるノーネ! 古代の機械巨竜!」

 

 

【古代の機械巨竜】

地属性 ☆8 機械族

攻撃力3000

守備力2000

このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

以下のモンスターを生け贄にして表側表示で生け贄召喚した

このカードはそれぞれの効果を得る。

●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

●レッド・ガジェット:このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手ライフに400ポイントダメージを与える。

●イエロー・ガジェット:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、

相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

 

 リバースカードが一層したフィールドに歯車により稼働する巨大な竜が出現する。

 カミューラの場のヴァンパイア・ロードの攻撃力は2000。対する古代の機械巨竜は3000。カミューラのモンスターを上回った。

 

「バトルなノーネ! 古代の機械巨竜でヴァンパイア・ロードを攻撃ナノーネ! アルティメット・ギア・バースト!」

 

 ヴァンパイア・ロードも機械の巨竜には叶わず消し飛ばされる。

 戦闘ダメージによりカミューラのライフが2450まで削られた。

 

「私はこれでターンエンド。どんなもんナノーネ! セニョーラのフィールドは一掃! 私の場には古代の機械巨竜! これぞ大逆転なノーネ!」

 

「……ええ。少しはやるじゃない。だけどここまでよ」

 

「にょ?」

 

「生者の書-禁断の呪術-を発動! ヴァンパイア・ロードを復活させ場に攻撃表示で特殊召喚! そして貴方の墓地の古代の機械兵をゲームより除外。

 更に速攻魔法、収縮により古代の機械巨竜の攻撃力を半分にする!」

 

 

【ヴァンパイア・ロード】

闇属性 ☆5 アンデット族

攻撃力2000

守備力1500

このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言する。

相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地へ送る。

また、このカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、

次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

【生者の書-禁断の呪術-】

通常魔法カード

自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚し、

相手の墓地に存在するモンスター1体を選択してゲームから除外する。

 

 

 棺桶が開き、そこより蘇る吸血鬼の領主(ロード)

 頼みの綱であった古代の機械巨竜も攻撃力は半分にされ1500。残りライフ100のクロノス先生が攻撃を受ければ負けだ。

 もはやどうしようもないと悟り、クロノス先生は覚悟を決めた顔をする。

 

「諸君! 良く見ておくノーネ。そして約束するノーネ」

 

「約、束?」

 

「例え闇のデュエルに敗れたとしても闇は光を凌駕できない。そう信じて決して心を折らぬ事。私と約束してくだサイ」

 

「クロノス教諭……」

 

「最後の授業は終わったのかしら。バトル! ヴァンパイア・ロードの攻撃、暗黒の使徒!」

 

 先程やられた逆襲とばかりにヴァンパイア・ロードが古代の機械巨竜を破壊する。

 クロノス先生のライフポイントが0を刻み、敗北が決定した。

 

「ボーイ……光のデュエルを……」

 

 ライフを失ったクロノス先生は力尽きてその場に斃れる。

 

「約束通り敗者には私のコレクションになって貰うわ」

 

 カミューラが顔のない人形を取り出す。

 するとゲームに負けたクロノス先生の体が消えていき、先生の体が消えていくごとに人形には変化が見え始めていた。

 そしてクロノス先生が完全に消え去ると、人形はクロノス先生の顔に変化する。

 

「それにしても……好みじゃないわね」

 

 カミューラが人間を放り捨て、足で踏みつぶす。

 瞬間、亮の中でなにかが切れた。常に亮の中にあった相手をリスペクトするという精神。しかしその精神をカミューラとのデュエルではすることが出来ないだろうと、他人事のように亮は思った。

 亮の殺意を感じたのかカミューラは蠱惑的に笑うと、

 

「次が楽しみね」

 

 カミューラの姿が掻き消える。かわりにその背後にある霧が晴れ、西欧の造りの城が出現する。

 これがカミューラの居城。わざわざこんなものでアカデミアに乗り込んでくるとは、吸血鬼だけあって派手なことが好みらしい。

 

「楽しみ……だと? 精々楽しんでいるといい。だがお前が楽しんでいられるのは俺とデュエルするその時までだ」

 

 亮についている三体のサイバー・ドラゴンが、主の殺意を敏感に感じ取り嘶いた。

 


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