丸藤亮 LP4000 手札2枚
場 サイバー・ツイン・ドラゴン
伏せ 二枚
カミューラ LP6000 手札3枚
場 無し
伏せ 無し
フィールド ヴァンパイア帝国
「ご自慢のサイバー・ツイン・ドラゴンを召喚したからって粋がらないことね。私のターン、ドロー!」
亮のフィールドに二連続攻撃を可能とするサイバー・ツイン・ドラゴンがいることで、フィールドアドバンテージに関しては亮が上回っている。
しかしドレインシールドによりカミューラのLPは6000だ。凡夫であればいざ知れずセブンスターズの一員となるほどのデュエリストならば挽回は十分可能である。
実際これより更に酷い状況から逆転劇を見せたデュエリストを何度も見ている亮はそのことを良く知っている。だからこそ有利の中にあっても油断は一切しなかった。
「墓地のヴァンパイア・ソーサラーの効果を発動! 自身のメインフェイズ時、このカードを墓地より除外することでヴァンパイアと名のつく闇属性モンスターの召喚に必要な生け贄をなくすことが出来る!
ヴァンパイア・ソーサラーを除外。その効果によりレベル5のシャドウ・ヴァンパイアを生け贄なしで召喚!」
【シャドウ・ヴァンパイア】
闇属性 ☆5 アンデット族
攻撃力2000
守備力0
このカードが召喚に成功した時、
手札・デッキから「シャドウ・ヴァンパイア」以外の
「ヴァンパイア」と名のついた闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚に成功した場合、
このターンそのモンスター以外の自分のモンスターは攻撃できない。
また、このカードをエクシーズ召喚の素材とする場合、
闇属性モンスターのエクシーズ召喚にしか使用できない。
暗い影に身を包んだ吸血鬼がヴァンパイアの帝国に降り立つ。
カミューラの隣りに立ちゆらめくそれは、纏う影のせいかぼんやりとしていて姿を上手く視認することができない。
それに亮は見逃さなかった。〝シャドウ・ヴァンパイア〟はまだ世に出回っていないカードだが、単に未発売なだけのカードではない。
あれはI2カップ入賞者に与えられる特別パックなどといった特別な方法でなければ入手できない未来に実装される召喚システムに関連する効果をもつカード。
そんな代物を持つあたりカミューラのバックにはデュエルモンスターズ界の大物がついている可能性が高い。
「……シャドウ・ヴァンパイアの攻撃力は2000だ。俺のサイバー・ツイン・ドラゴンには及ばない」
「御心配は無用ですわ。だってこうするんですもの。シャドウ・ヴァンパイアの効果発動! このカードが召喚に成功した時、手札・デッキよりヴァンパイアを特殊召喚する!
影より現れなさい、ヴァンパイアを統べる領主! デッキよりヴァンパイア・ロードを攻撃表示で召喚!」
【ヴァンパイア・ロード】
闇属性 ☆5 アンデット族
攻撃力2000
守備力1500
このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言する。
相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地へ送る。
また、このカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
上級ヴァンパイア二体が並び立つ。
ヴァンパイア・ロード、昨日クロノス先生に止めを刺したモンスターだ。伝説のデュエリストの一角である海馬社長が使用したモンスターということもあり、ヴァンパイア・ロードのことは良く知っている。
汎用性の高い蘇生効果からヴァンパイアデッキ以外でも採用できるモンスターだ。
「ふふふ。昨日の先生と同じ方法で苦痛を与えてあげる。バトル! ヴァンパイア・ロードでサイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃、暗黒の使徒!!」
「っ! サイバー・ツイン・ドラゴンの迎撃。エヴォリューション・ツイン・バースト!」
光と闇、異なるエネルギーがぶつかりあう寸前。
「速攻魔法、収縮。サイバー・ツイン・ドラゴンの元々の攻撃力を半分にする!」
カミューラのマジックによりサイバー・ツイン・ドラゴンはその力を半減させた。
エネルギーの激突。力を半減させられたサイバー・ツイン・ドラゴンではヴァンパイア・ロードに及ぶはずがなく破壊された。
亮のLPが戦闘ダメージを受け2900ポイントとなる。
「ヴァンパイア・ロードのモンスター効果。相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、カードの種類を宣言し相手はそのカードをデッキから墓地へ送る。私が宣言するのは罠カード。罠カードを墓地へ送りなさい」
「カウンター罠、魔宮の賄賂を墓地へ送る」
「良くってよ。貴方のデッキからカードが墓地へ送られたこの瞬間、ヴァンパイア帝国の効果発動」
【ヴァンパイア帝国】
フィールド魔法カード
フィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力は
ダメージ計算時のみ500ポイントアップする。
また、1ターンに1度、相手のデッキからカードが墓地へ送られた時、
自分の手札・デッキから「ヴァンパイア」と名のついた
闇属性モンスター1体を墓地へ送り、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
「自分の手札またはデッキからヴァンパイアと名のつくモンスターを墓地へ送り、フィールド上のカード一枚を選択し破壊する。
デッキのヴァンパイア・レディを墓地へ送り……そうね。貴方の場にある右のリバースカードを破壊する」
「っ!」
伏せていた永続罠『輪廻独断』が破壊された。
輪廻独断は墓地のモンスターの種族を変更する罠カード。アンデット族は蘇生方法が豊富な種族。このカードで墓地のモンスターをアンデット族から変更してしまえば、ヴァンパイアデッキの動きを阻害できると思ったのだが、どうもその目論見は失敗したらしい。
「あら。厄介なカードを破壊できてラッキーだわ。カードを二枚伏せターンエンド。さぁ! 坊やのターンよ」
「俺のターン、ドロー! 相手の場にモンスターがいて自分の場にモンスターが居ない時、このモンスターは特殊召喚できる。
手札よりサイバー・ドラゴンを守備表示で召喚。更にリバースカードオープン、サイバー・ネットワーク!」
【サイバー・ドラゴン】
光属性 ☆5 機械族
攻撃力2100
守備力1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
【サイバー・ネットワーク】
永続罠カード
発動後3回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊する。
1ターンに1度、フィールド上に「サイバー・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。
デッキから機械族・光属性モンスター1体を除外する。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、
除外されている自分の機械族・光属性モンスターを可能な限り特殊召喚し、
自分の魔法・罠カードを全て破壊する。
この効果で特殊召喚したモンスターは効果を発動できない。
この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
サイバー・ドラゴンを守備表示で出すなど余りしたくない手なのだが状況が状況のため止むを得ない。
それにサイバー・ネットワークを発動するにはサイバー・ドラゴンがフィールドに存在する必要があるのだ。
「サイバー・ネットワークの効果、1ターンに一度、デッキから光属性機械族モンスターを除外する。デッキよりサイバー・ラーバァを除外。
モンスターとカードを一枚ずつセット。ターンを終了する」
「消極的なターンね。カイザーの名が泣くわよ。けど生憎だけど私は攻撃の手を緩めたりはしない。私のターン、先ずはリバースオープン。針虫の巣窟! 私のデッキの上より五枚のカードを墓地へ送る。
そしてヴァンパイア・ロードをゲームより除外し手札よりヴァンパイア・ジェネシスを攻撃表示で特殊召喚!」
【ヴァンパイアジェネシス】
闇属性 ☆8 アンデット族
攻撃力3000
守備力2100
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に存在する「ヴァンパイア・ロード」1体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、手札からアンデット族モンスター1体を墓地に捨てる事で、
捨てたアンデット族モンスターよりレベルの低い
アンデット族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。
ジェネシス、つまりは始祖。ヴァンパイアの始祖であるとされるモンスターが領主の体を媒介にして現れる。
紫色の体色をした巨大なオークのような姿をしたヴァンパイアはギロリと真っ赤な瞳で亮とサイバー・ドラゴンを見下ろした。
「このターンで終わりにし私のお人形にしてあげるわ坊や。ヴァンパイアジェネシスの効果、手札よりアンデット族モンスター1体を墓地へ送り、捨てたアンデット族よりレベルの低いモンスターを墓地より蘇生させる。
私は闇より出でし絶望を手札より捨て、カース・オブ・ヴァンパイアを特殊召喚。そして墓地の馬頭鬼を除外し効果発動。アンデット族モンスターを更に蘇生させる。蘇れ、ヴァンパイア・ロード!」
【カース・オブ・ヴァンパイア】
闇属性 ☆6 アンデット族
攻撃力2000
守備力800
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
500ライフポイントを払って発動できる。
次のターンのスタンバイフェイズ時に、このカードを墓地から特殊召喚する。
また、この効果によって特殊召喚に成功した時に発動する。
このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
【馬頭鬼】
地属性 ☆4 アンデット族
攻撃力1700
守備力800
自分のメインフェイズ時、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、
自分の墓地からアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
針虫の巣窟で墓地へ送られた二体のヴァンパイアが蘇る。
ヴァンパイアの帝国に集結せしヴァンパイアジェネシス、ヴァンパイア・ロード、シャドウ・ヴァンパイア、カース・オブ・ヴァンパイア。
四体のヴァンパイアが並び立つフィールドは壮観という他ない。
「これで終わりよ! バトルフェイズ、ヴァンパイア軍団の総攻撃! やれ、ヴァンパイア・ロード! 暗黒の使徒!」
ヴァンパイア・ロードの闇の波動がサイバー・ドラゴンを消し飛ばす。守備表示だったためダメージは0。
けれどカミューラにはヴァンパイアがまだ後三体残っている。逆に亮の場にはモンスターが一体だけ。攻撃が全て通ればライフは0となる。
「二連目! ヴァンパイア・シャドウ! シャドウ・ファンタジア!!」
シャドウ・ヴァンパイアの攻撃を受けたリバースモンスターが表側表示となる。
表側となったモンスターはメタモルポット。表側になったことでリバース効果が発動する。
「メタモルポットの効果。互いのプレイヤーは手札を全て墓地へ送り、五枚カードをドローする」
「無駄な足掻きをするわね。これが最後、ヴァンパイア・ジェネシスの攻撃――――」
「残念だがそこからは通さない。リバース発動、ダブル・サイクロン。自分の場の魔法・罠カードと相手の魔法・罠カードを一枚破壊する! 俺は自分の場のサイバー・ネットワークを破壊、そしてお前のヴァンパイア帝国を破壊する」
「なんですって!?」
突風が吹き荒れヴァンパイアの帝国を浮き飛ばす。吹き荒れる突風はその勢いで亮のサイバー・ネットワークも破壊する。
「そしてサイバー・ネットワークが破壊されたことでその効果が発動・墓地に除外されている光属性機械族モンスターを可能な限り特殊召喚する。
代償として俺は自分の場の魔法・罠カードが全て破壊されるが、もうないから関係ない。除外されているサイバー・ラーバァを特殊召喚」
【サイバー・ラーバァ】
光属性 ☆1 機械族
攻撃力400
守備力600
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、
このターン戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキから「サイバー・ラーバァ」1体を
自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
ダブル・サイクロン、普通に使えばサイクロンの下位互換でしかないカードだが使い方によってはサイクロンでは出来ない動きが出来るようになる。
今回のこれはその一例だった。
「だったらヴァンパイアジェネシスでサイバー・ラーバァを攻撃!」
「サイバー・ラーバァが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、その効果が発動。デッキよりサイバー・ラーバァを新たに召喚」
「っ! まさかそのためにさっきのターンにサイバー・ラーバァを……!」
「さて。どうかな。俺をこのターンで終わらせるなどと言っていたが、これで終わりか?」
「減らず口を。可愛くない……! カース・オブ・ヴァンパイアでサイバー・ラーバァを攻撃!」
「破壊される。もう俺のデッキにサイバー・ラーバァはない」
「……バトルを終了。二枚カードをセットしターンエンド」
危なげなくヴァンパイア軍団の総攻撃を回避してみせた亮は薄く笑う。ここからがサイバー流の本領発揮だ。
亮の手札の中にはパワー・ボンドのカードがあった。