宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

146 / 200
第145話  暗黒の軍勢

遊城十代 LP4000 手札5枚

場 無し

タイタン LP4000 手札5枚

場 無し

 

 

 

 デュエルディスクが指示した先攻はタイタン。

 幸いというべきか一度タイタンと戦った事のある十代はタイタンがどういうデッキを使うかは知っている。だがそれはタイタンも同じこと。十代がタイタンのデッキを知るように、タイタンも十代がHERO使いだということを知っている。故に条件は互角。

 

「私の先攻、ドロー。モンスターを裏側守備表示で伏せる。カードを二枚セットしてターンエンド」

 

「……………」

 

 消極的とも受け取れるターン、だがしかし攻撃ができない先攻1ターン目であればこんなところだろう。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 十代には二つの選択肢がある。

 タイタンの伏せたカードに臆することなく攻めるか、もしくは自分もタイタンと同じように防御を固め様子を伺うか。

 以前タイタンと戦った時のことを思い出す。

 タイタンは得意の手品でインチキの闇のゲームを仕掛けてきたが、その実力は確かなものだった。真の闇デュエリストになったことでその強さは更にパワーアップしていると考えて良いだろう。

 あの明日香をああもあっさり倒してしまった事がその証明である。

 

(だけど防御ってのは俺に似合わねえよな)

 

 仲間である明日香がやられ、今また自分も闇のゲームに囚われているにも拘らず十代はふてぶてしく笑う。

 

「いくぜタイタン! 手札より融合を発動! 手札のE・HEROワイルドマンとフェザーマンを融合するぜ。来い、E・HEROワイルド・ウィングマン!」

 

 

【E・HERO ワイルド・ウィングマン】

地属性 ☆8 戦士族

攻撃力1900

守備力2300

「E・HERO ワイルドマン」+「E・HERO フェザーマン」

このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。

手札を1枚捨てる事で、フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊する。

 

 

 筋肉隆々の戦士にフェザーマンの白い羽が生えた姿のHEROが降りたつ。

 タイタンの眉がピクリと動く。タイタンがどのようなカードを伏せているかは知らないが、ワイルド・ウィングマンであればそれを突破することもできる。

 

「ワイルド・ウィングマンの効果発動! 手札を一枚捨てることでフィールド上の魔法・罠カードを一枚破壊する! 俺は手札を二枚捨てて二枚の伏せカードを破壊するぜ!」

 

「ぬっ!」

 

 ワイルド・ウィングマンが弾丸のように飛ばした白い羽がタイタンの二枚の伏せカードを破壊する。

 破壊されたのはミラーフォースと次元幽閉。どちらも極めて厄介な攻撃誘発の罠カードだ。これでタイタンを守るのはあのリバースモンスターのみ。

 

「カードガンナーを召喚。カードガンナーは一ターンに一度、デッキからカードを墓地へ送ることで攻撃力を500ポイントアップする。

 この効果で一度に墓地へ送れるカードは三枚まで。俺は三枚カードを墓地へ送り攻撃力を1500ポイントアップする!

 バトルだ! ワイルド・ウィングマンで裏守備モンスターを攻撃。ウィング・インパクト!」

 

 突風が伏せモンスターを吹き飛ばす。

 

「――――ッ!」

 

 瞬間、心臓を握りつぶされるような悪寒。リバースし破壊されたカードはメタモルポット。

 手札を全て〝捨て〟てカードを五枚ドローする手札交換リバース能力をもったモンスター。

 

「ゲァハハハハハハハハハ! これが、こんなモノがHEROの切り札ぁ? まるでお話にならない。メタモルポットの効果発動ォ!!

 互いのプレイヤーは手札を全て捨て五枚カードをドローする。私が地獄へ送るはこの化物共だ。括目しろォ! 遊城十代」

 

「そ、それは!?」

 

 タイタンの手札にあるのは暗黒界の武神ゴルド、軍神シルバ、狩人ブラウ。手札から墓地へ送られた時に発動する特殊なカテゴリーに属する暗黒界モンスターたちだ。

 脳裏に蘇る。〝魔王〟と畏怖されるデュエリスト、宍戸丈のデッキは三つ。そのうち二つは既に十代と万丈目とで取り戻している。だが最後の一つは未だセブンスターズの手の中にある。

 その最後のデッキこそが暗黒界。その余りの破壊力と蹂躙力のため、宍戸丈がある一定以上のレベルだと認めた相手以外には絶対に使用しないという曰くつきのデッキだ。

 

「魔王だかなんだか知らんが、このようなデッキを使わずとも私自身のデッキならば貴様等小僧どもなど好きに料理できるが…………これもあの男の指示だ。

 なぁに大したことではない。貴様等小僧どもを殺すには丁度良い。ゆくぞ小童。愉しい愉しい狩猟の始まりだ。

 暗黒界の武神ゴルドとシルバの効果発動! こいつらがカード効果で手札より墓地へ送られた時、このカードを墓地より特殊召喚する! 地獄より這いだせゴルド、シルバ!」

 

 

【暗黒界の武神 ゴルド】

闇属性 ☆5 悪魔族

攻撃力2300

守備力1400

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

相手のカードの効果によって捨てられた場合、

さらに相手フィールド上に存在するカードを2枚まで選択して破壊する事ができる。

 

 

【暗黒界の軍神 シルバ】

闇属性 ☆5 悪魔族

攻撃力2300

守備力1400

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

相手のカードの効果によって捨てられた場合、

さらに相手は手札を2枚選択して好きな順番でデッキの下に戻す。

 

 

 金色の肌の悪魔と銀色の肌の悪魔。暗黒界の住人にして暗黒界を統べる神の一柱。ゴルドとシルバが墓地より這い出て、十代と相対した。

 攻撃力はともに2300。十代の場にあるE・HEROワイルド・ウィングマンを上回っている。

 

「まだだァ!! 狩人ブラウの効果だ、私はカードを一枚ドロー!」

 

「なんて奴だ。俺のターンで上級モンスターを二体召喚しながら、カードをドローするなんて」

 

 結局自分がやったことはタイタンを有利にすることになってしまった。十代は悔しさから歯噛みする。

 だが不幸中の幸いというべきかメタモルポットの効果で五枚のカードをドローすることができた。

 ここはこの五枚でなんとかするしかない。

 

「……バトルフェイズを終了。カードを二枚伏せターンエンドだ」

 

「私のターン。テラ・フォーミングを発動。デッキからフィールド魔法、暗黒界の門を手札に加える。そして暗黒界の門をそのまま発動」

 

 

【暗黒界の門】

フィールド魔法カード

フィールド上に表側表示で存在する

悪魔族モンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。

1ターンに1度、自分の墓地に存在する

悪魔族モンスター1体をゲームから除外する事で、

手札から悪魔族モンスター1体を選択して捨てる。

その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 悪魔を模した巨大な門が地面からせり上がってくる。

 〝暗黒界の門〟という名前の示す通り暗黒界のためのフィールド魔法なのだろう。

 

「暗黒界の門の効果。墓地の悪魔族モンスターを除外することで、手札の悪魔族モンスターを一枚捨て一枚ドローする。私は狩人ブラウを除外し、尖兵ベージを捨てる。

 門の効果によりカードを一枚ドローし、ベージの効果でベージを墓地からフィールドに特殊召喚」

 

 

【暗黒界の尖兵ベージ】

闇属性 ☆4 悪魔族

攻撃力1600

守備力1300

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、

このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

 通常召喚すらしていないのに新たにモンスターが召喚されてしまう。タイタンの場のモンスターの数が十代の場のモンスターを上回った。

 

「さぁバトルだ――――と、いきたいところだが、その前にその目障りな伏せカードを消し去っておこう。手札より魔法発動、ナイト・ショット!」

 

「ならチェーンして」

 

「ぶるぁあああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「っ!」

 

「伏せカードなんて使ってんじゃねえ!! ナイト・ショットの対象となった魔法・罠はこのカードの発動に対しチェーンして発動することができない。残念だったな、遊城十代」

 

 

【ナイト・ショット】

通常魔法カード

相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

このカードの発動に対して相手は選択されたカードを発動できない。

 

 

 十代の場に伏せられていたリバースカードが撃ち貫かれる。

 破壊されたのは進化する翼、ハネクリボーをLV10に進化させるための必須カードだ。

 

「進化する翼とはな。これはこれは良いカードを破壊して貰えた。迂闊に攻撃していたら私の場が焼野原になり、私もまた闇に沈んでいたところだ。

 しかしこれで貴様は無防備。丸い裸、略して丸裸だ。私は暗黒界の狂王ブロンを召喚」

 

 

【暗黒界の狂王 ブロン】

闇属性 ☆4 悪魔族

攻撃力1800

守備力400

このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

自分の手札を1枚選択して捨てる事ができる。

 

 

 四体目の暗黒界が召喚された。その役割は狂王――――神には劣るが、下級モンスターとしては高い攻撃力をもったカードである。

 

「バトル! 今死ね! すぐ死ね! 骨まで砕けろお!! ジェノサイドブレイバーッ!!」

 

 ゴルドがワイルド・ウィングマンを、シルバがカードガンナーを撃破する。

 カードガンナーの効果で十代は一枚ドローするが、その戦闘ダメージによりライフは1700にまで削り取られた。

 そしてタイタンの場には二体のモンスターが残っている。このまま攻撃されれば終わりだが、十代はそこまで往生際が良くはない。

 

「速攻魔法、クリボーを呼ぶ笛!」

 

『クリクリ~』

 

 

【クリボーを呼ぶ笛】

速効魔法カード

自分のデッキから「クリボー」または「ハネクリボー」1体を選択し、

手札に加えるか自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 

 クリボーを呼ぶ笛により、十代の場にハネクリボーが守備表示で召喚される。

 ブロンの攻撃がハネクリボーを破壊するが、これでもう十代の負けはなくなった。

 

「ありがとう相棒。ハネクリボーのモンスター効果、ハネクリボーが破壊され墓地へ送られたターン。俺が受ける戦闘ダメージは0となる」

 

「チッ。命拾いしたか小僧。カードを三枚伏せターンエンドだ」

 

「ふぅ。危ないところだったぜ」

 

 冷や汗を拭う。もしも万が一ナイト・ショットの対象になったのが「進化する翼」ではなく「クリボーを呼ぶ笛」なら確実に十代は敗北していただろう。

 それを言ったらナイト・ショットさえ発動していなければ、クリボーを呼ぶ笛と進化する翼によりハネクリボーLV10を召喚して、勝利できていたわけだが。

 兎も角。ここからが挽回だ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。