宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第148話  魔王のデュエル

宍戸丈  LP4000 手札5枚

場 無し

 

室地戦人 LP4000 手札5枚

場 無し

 

 

 

 常識はずれの手段で三邪神の使役を可能とし、襲い掛かって来た室地戦人。そんな時に颯爽と現れ室地戦人と対峙する丈。

 そんな丈がどういう思いでこのデュエルに望んでいるかと言われれば、

 

(手早く校長に戻ってきた挨拶だけするつもりだったんだがな)

 

 周りの期待とは裏腹に、丈は内心で戸惑っていた。

 別にデュエルするのが嫌な訳ではない。ただ漸く長旅を終えて懐かしのデュエル・アカデミアに戻ってきたのだから、ゆっくりと体を休めたかった。

 しかし校長室へ向かう途中でなにか悪寒を感じて、同行していた梶木に先に行って貰い、悪寒のした場所に来てみたら。

 

(こんなことになっていたと)

 

 暴露してしまえばここは他の誰かに任せ、自分はこっそり観戦しておきたかったのだが、相手が三邪神を使うというのなら黙っているわけにはいかない。

 三邪神は自分がペガサス会長から託されたモンスターであり、自分の失態でセブンスターズに奪取されてしまったカード。自分のミスは自分で挽回するのが丈の流儀だ。

 

「丈。手早くすませるといい。疲れているんだろう? なんならサレンダーしてしまうか。それならば直ぐに休めるだろう」

 

 こっちの心中をお見通しだと言わんばかりに、亮がニヤリと笑う。

 

「冗談言うな。疲れているか疲れてないかと言われれば疲れているが、後輩の見ている前で無様を晒すこともできないだろう。さて、それじゃ――――」

 

「先攻はお譲りする」

 

 アムナエルとやらの用意した魔法薬で、その姿を一変させた室地戦人だったが、その瞳の奥には理知的な光が残っている。

 デュエルモンスターズにおいてサイバー流のような例外はおいておいて先攻は絶対有利。それを室地戦人は敢えて譲って来た。

 

「どういうつもりだ?」

 

 まさか魔法薬で命を削ってまで襲い掛かってくる相手が油断している、なんてことはないだろう。

 室地戦人は決死の覚悟をもって襲撃を仕掛けてきている。だとすれば相手の有利と知って先攻を譲ったのは、

 

「こちらは貴方のカードを奪い、使うというデュエリストにあるまじき行いをしている。せめてものデュエリストの矜持故……と言いたいところでありますが、貴方様に一つ尋ねたいことがありますので、そのためと思って頂ければ」

 

「聞きたいこと?」

 

「明弩瑠璃。貴方様を襲った彼女は無事ですか?」

 

「無事だよ。五体満足、しっかり生きている」

 

「そう、ですか」

 

 心の底から安堵の息を零す。

 室地戦人は黄色人種、明弩瑠璃は名前こそ日系だが白人。人種の違いや顔立ちにまるで面影がないことからいっても、よもや彼等が親族ということはあるまい。

 だが肉親同士だけが親愛の情をもつという道理はない。室地戦人からすれば、彼女は娘のような存在だったのかもしれない。

 

「感謝致します。ではどうぞ――――ただし先攻はお譲りしますが、手を抜く気はございませんので」

 

「律儀な人だ。だが」

 

 相手は嘗て自分が戦った三邪神だ。三邪神の強さはそれの担い手である丈が一番良く知っている。

 けれど恐れはない。三邪神の恐ろしさを一番良く知るのが丈のように、三邪神の弱点を一番良く知っているのも丈なのだから。

 

「俺のターン、ドロー! 永続魔法、冥界の宝札を発動。このカードは二体以上の生け贄召喚が成功した時、デッキからカードを二枚ドローする。

 さらにマジックカード、フォトン・サンクチュアリ。俺の場に二体のフォトントークンを特殊召喚する」

 

 

【フォトン・サンクチュアリ】

通常魔法カード

このカードを発動するターン、

自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

自分フィールド上に「フォトントークン」(雷族・光・星4・攻2000/守0)

2体を守備表示で特殊召喚する。

このトークンは攻撃できず、シンクロ素材にもできない。

 

 

 攻撃力2000のモンスターが一瞬で二体並ぶ。とはいえこのカードは守備表示であるし攻撃もできない。

 しかもこのカードを発動したターンは光属性以外のモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を封じられるデメリットもある。だが逆を言えば光属性モンスターなら幾らでも召喚できるということだ。

 

「二体のフォトントークンを生け贄に捧げ、現れろ! 銀河眼の光子竜!」

 

 

【銀河眼の光子竜】

光属性 ☆8 ドラゴン族

攻撃力3000

守備力2500

このカードは自分フィールド上に存在する

攻撃力2000以上のモンスター2体を生け贄にし、

手札から特殊召喚する事ができる。

このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、

その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。

この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。

この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、

このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターを

ゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。

 

 

 宇宙の瞳をもつドラゴンが場に降り立つ。最上級モンスター降臨により冥界の宝札のドローエンジンが動き、丈はデッキから二枚のカードをドローした。

 攻撃力3000の最上級モンスターを召喚しておきながら未だ丈の手札は五枚。初期手札からたった一枚の消費だ。

 

「カードを三枚伏せ、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー! ……ゆきますぞ」

 

 瞳が妖しく光り輝く。

 三邪神は強力無比なモンスターだが、その召喚に三体の生け贄が必要となる性質上、召喚するのはかなり難しい。

 恐らく室地戦人のデッキは三邪神召喚のみに特化したデッキ。だとすれば或いはこのターンで出してくるかもしれない。

 そんな丈の予想は的中した。

 

「このカードは手札を一枚捨てて特殊召喚できる。THEトリッキーを攻撃表示で召喚! 更に幻銃士を召喚。その効果により自分フィールドのモンスターの数だけ銃士トークンを召喚する。

 私の場にはTHEトリッキーと幻銃士の二体。よって二体のトークンを場に出現させる!」

 

 

【THE トリッキー】

風属性 ☆5 魔法使い族

攻撃力2000

守備力1200

このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。

 

 

【幻銃士】

闇属性 ☆4 悪魔族

攻撃力1100

守備力800

このカードが召喚・反転召喚に成功した時、

自分フィールド上に存在するモンスターの数まで自分フィールド上に

「銃士トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事ができる。

また、自分のスタンバイフェイズ毎に自分フィールド上に表側表示で存在する

「銃士」と名のついたモンスター1体につき相手ライフに

300ポイントダメージを与える事ができる。

この効果を発動するターン、自分フィールド上に存在する

「銃士」と名のついたモンスターは攻撃宣言をする事ができない。

 

 

 これで室地戦人のフィールドには四体のモンスターが並んだ。

 既に通常召喚をしているため、普通ならまだ三邪神を召喚することはできないが、もし手札にあのカードがあるのならば最後の問題もクリアされる。

 

「魔法発動、二重召喚! このターン、私はもう一度通常召喚を行うことができる。二体のトークンと幻銃士を生け贄に捧げ降臨せよ、邪神アバター!」

 

 

【THE DEVILS AVATAR】

DIVINE ☆10 GOD

ATK/?

DEF/?

God over god.

Attack and defense point of Avatar equals to the point plus 1 of that of

the monster's attack point which has the highest attack point among

monsters exist on the field.

 

 

 夜の闇を一層の暗黒で染め上げ、漆黒の太陽が顕現する。

 

「ぐっ、ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 三邪神の召喚によって室地戦人の全身は、鎖で締め上げられるような負荷がかかる。

 如何に魔法薬で肉体を強化しているとはいえ、あれでは削った寿命をさらに削ってしまうだろう。丈が三邪神を見つめ、目配せをするとその負荷は止まった。

 

「……はぁ……ぐっ……はぁ……邪神アバターはフィールドで最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力にプラス1した攻撃力となる……。

 フィールドで最も攻撃力が高いのは銀河眼の光子竜。よって邪神アバターの攻撃力は3001となり、その姿を変化させる!」

 

 アバターの姿が漆黒の銀河眼の光子竜へとかわる。常にあらゆるモンスターの攻撃力を上回るバトルにおける絶対強者。

 これが邪神アバターが三邪神の最上位にあり無敵と称される所以だ。

 

「バトル! 邪神アバターで銀河眼の光子竜を攻撃! 破滅のダーク・ストリーム!」

 

 全く同一質量のモンスターが同時に動く。二体のドラゴンが吐き出す破滅のエネルギー。攻撃力が常に1上回る特性上、どうしようと銀河眼の光子竜でアバターを倒すことはできない。だが、

 

「罠発動」

 

「忘れましたか。神に罠は通用しない!」

 

「忘れていないとも。俺が発動するカードはこれだ。リバースカード、ドゥーブルパッセ!」

 

「あっ! あれは明日香のカード!」

 

 十代が驚きの声をあげる。

 彼の言う通りこれは吹雪の妹である明日香が愛用していたカード。本来は丈のデッキにはなかった罠カードである。

 

「後輩が先輩から教えを受けるように、先輩も後輩から多くを学ぶものさ。ドゥーブルパッセ、このカードは相手の攻撃を直接攻撃として受け、攻撃対象となったモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える! やれ銀河眼の光子竜。破滅のフォトンストリーム!」

 

 邪神に罠が通用せずとも、攻撃対象を入れ替えることくらいはできる。

 

「ぐ、ぁあ!」

 

 銀河眼の光子竜のダメージが襲い掛かり、室地戦人のライフをごっそり削り取る。

 勿論ドゥーブルパッセの効果によりアバターの攻撃も丈に降りかかってきたが、

 

「ダメージ計算時、ガード・ブロックを発動。戦闘ダメージをゼロにしカードを一枚ドローする」

 

「なんと。邪神の攻撃をこうも受け切るとは。流石は魔王、恐るべき実力。しかし貴方とはいえアバターの攻略はそうそう出来るものではないでしょう。私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

「エンドフェイズ時、サイクロン発動」

 

「!」

 

 サイクロンが室地戦人の伏せたカード、ガード・ブロックを破壊する。

 邪神を召喚するため室地戦人は五枚ものカードを消費した。そしてガード・ブロックまでもが破壊されたことで、フィールドには邪神アバターと……攻撃表示のTHEトリッキーのみ。

 

「ま、まさか」

 

「邪神の力を過信したな。確かに邪神アバターは無敵のモンスター。アバターを倒す方法は数多くあるデュエルモンスターズのカードを探しても数えるほどしかない。

 しかしデュエルは別に邪神アバターを倒すのが勝利条件じゃあない。アバターが無敵でも、それを操るデュエリストまで無敵というわけじゃないということに気付けなかったのが敗因だ。

 俺のターン、ドロー。バトル、銀河眼の光子竜でTHEトリッキーを攻撃。破滅のフォトンストリーム!」

 

 銀河眼の光子竜とTHEトリッキーの攻撃力の差は1000。室地戦人のライフも同様に1000。

 ジャストキル。室地戦人は無敵の邪神アバターを召喚しながら、アバターを残したまま敗北した。

 

「たった3ターンで三邪神を操るデュエリストを攻略してしまうとは……。恐ろしい! なんと全く無駄のないプレイングだ。あらゆる行動に無意味なものが一つもない。完封だ」

 

「あ、三沢くんいたんだ」

 

「いたよ!」

 

 外野のラー・イエローの生徒と亮の弟が言い争いをしているが、それはさておき。

 丈は亮のいる方へ振り向くと、

 

「ただいま」

 

 亮だけではなく、このデュエル・アカデミアという場所に対してそう告げた。

 




 デュエリストならば知っていることと思いますが、デュエルモンスターズこと遊戯王OCGのルールが三月で大幅に変更されます。
 具体的には、

・先攻はドローできない。

・フィールド魔法はお互いのプレイヤーが発動できる。

・ペンデュラム召喚追加

 他にも細かい変更はあるのですが、大まかにはこんなところです。
 とはいえこの作品の時系列はGXであり、遊戯王ARC-Vではありません。なので仮にまた『超融合』的なイベントで主人公集結とか、遊戯王ARC-Vの時代に飛ぶとかそういうことが起きない限り、ルールは先攻ドローありのフィールド魔法は片方だけのままです。では。

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