宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第152話  仮面の英雄

宍戸丈 LP4000 手札5枚

場  

伏せ

魔法 

 

BMG(ブラック・マジシャン・ガール) LP4000 手札3枚

場 妖仙獣 右鎌神柱

伏せ 二枚

魔法 炎舞-「天璣」、修験の妖社

 

 

 

 二体の鎌鼬が手札に戻り、ブラック・マジシャン・ガールのフィールドのモンスターは右鎌神柱だけとなったが、状況は予断を許してはくれない。

 手札にある限り自身の効果で鎌鼬モンスターは何度でも大量展開が可能だ。そして次のターンになれば確実にブラック・マジシャン・ガールは鎌鼬三体を並べてくるだろう。そうなれば修験の妖社にまた妖仙カウンターが溜まり、新たにデッキから『妖仙獣』と名のつくカードをサーチしてしまう。

 宍戸丈を倒すために構築してきた――――というのは伊達ではなく非常に面倒なデッキだった。

 しかし丈とて四天王の一角。帰還早々に後輩達の前で無様を晒すわけにもいかない。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 ブラック・マジシャン・ガールの伏せた二枚のカードは気になるが、臆してターンを譲ればどんどん不利になっていくだけ。

 ならばリスクを覚悟しても臆さず攻めるのがデュエリストというものだ。

 

「強欲な壺で二枚ドロー。手札からE-エマージェンシーコールを発動。デッキよりE・HEROシャドー・ミストを手札に加える。そしてE・HEROブレイズマンを攻撃表示で召喚する」

 

 

【E・HEROブレイズマン】

炎属性 ☆4 戦士族

攻撃力1200

守備力1800

「E・HERO ブレイズマン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、

いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「融合」1枚を手札に加える。

(2):自分メインフェイズに発動できる。

デッキから「E・HERO ブレイズマン」以外の

「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送る。

このカードはターン終了時まで、

この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。

この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

【E・HEROシャドー・ミスト】

闇属性 ☆4 戦士族

攻撃力1000

守備力1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は

1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の

「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 

 全身から灼熱の炎を放った戦士が、カードから勢いよく飛び出してかと思うと、身体をくるりと回転させながら綺麗に地面に着地する。もしこれが運動の競技であれば、思わず満点を出していた見事な着地だった。

 ブレイズマンの攻撃力はたった1200。レベル4の下級モンスターとしては弱い部類である。しかしブレイズマンにはそれを補って余りある能力があるのだ。

 

「ブレイズマンのモンスター効果。メインフェイズにブレイズマン以外のE・HEROを墓地へ送ることで、ブレイズマンはターン終了時まで、墓地へ送ったモンスターと同じ攻撃力・守備力・属性となる! 俺が墓地へ送るのはE・HEROシャドー・ミスト!

 そして墓地へ送ったシャドー・ミストのモンスター効果。このカードが墓地へ送られた時、シャドー・ミスト以外のE・HEROを手札に加える。俺はエアーマンを手札に」

 

 ブレイズマンの特殊能力は非常に優秀だが、二番目の効果を使ったターン、融合モンスター以外特殊召喚できないというデメリットがある。

 なので丈は『融合』を使って、HEROらしく融合召喚で畳み掛けていく。

 

「魔法カード、融合を発動! 手札のシャドー・ミストとE・HEROオーシャンを手札融合! E・HEROアブソルートZeroを――――」

 

「そうはさせません! 永続罠、融合禁止エリア!」

 

「………………………………………………………………………………………………は?」

 

 

【融合禁止エリア】

永続罠カード

お互いのプレイヤーは融合召喚する事ができない。

 

 

 ブラック・マジシャン・ガールの発動したカードを中心に発生した意味不明の力場が、オーシャンとシャドー・ミストの融合を阻害する。

 融合に失敗した二体のHEROは手札に戻り、融合カードは呆気なく墓地へ送られていった。

 

「融合のメタカード……だと……?」

 

「本当はマクロコスモスと虚無空間を入れたかったんだけど、持ってなかったから代わりに、ね。マスターがラッキーカードだって言ってたし。これで融合召喚は出来ないよ、宍戸君!」

 

(遊戯さん、なにしてくれてるんですか)

 

 柔和な笑みを浮かべながら、ブラック・マジシャン・ガールに融合禁止エリアを渡す決闘王を思い浮かべて、心の中で怒りの念を送る。

 もっとも三幻神を筆頭とした最強クラスの精霊に囲われているあの人に、怒りの念を送った程度でどうこうすることはできないだろうが。

 

「…………」

 

 十代と同じように丈のHEROデッキの基礎となる戦術も融合だ。手札融合、墓地融合、除外融合。それら全てが封じられるというのは大きすぎる痛手である。

 しかも運の悪いことに、丈の手札の中に融合以外で攻めにいけるカードは存在しない。

 

「カードを三枚伏せる。ターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー! 私は鎌壱太刀を召喚、続いて効果で鎌弐太刀を召喚! そして鎌弐太刀の効果で鎌参太刀を召喚。鎌参太刀のモンスター効果、このカードが召喚された時、手札の妖仙獣を召喚する。私は二枚目の右鎌神柱を召喚!

 右鎌神柱は自身の効果で守備表示になります。さらに右鎌神柱はモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の妖仙獣を攻撃対象にできない。私の場に二体の右鎌神柱が並んだことで、攻撃は完全に封じたよ」

 

「また面倒なコンボを」

 

 地味に十代相手にやったマジシャンズ・ヴァルキリアのロックと同じコンボだ。

 融合に加えて攻撃まで封じられたわけだが、ここまで封じられると焦るを通り越して笑いすら出てこない。

 

「だが俺もそう易々とコンボを許すほどマグロじゃないぞ。右鎌神柱が召喚された時に罠を発動。激流葬! フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 

「させないよ! カウンター罠、妖仙獣の秘技!」

 

 

【妖仙獣の秘技】

カウンター罠カード

(1):自分フィールドに「妖仙獣」カードが存在し、

自分のモンスターゾーンに「妖仙獣」モンスター以外の表側表示モンスターが存在しない場合、

モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 

「自分フィールド上に妖仙獣以外のモンスターが存在しない場合、モンスター効果・魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する。私は激流葬の効果を無効! これで私のモンスターは破壊されないよ」

 

「抜け目がない」

 

 決まれば起死回生の一手となった激流葬も無効化され、流石の丈も少しばかり落ち込む。

 目を向けるのは妖仙カウンターが四つ置かれた修験の妖社。そしてカウンター罠、妖仙獣の秘技にはしっかりと『妖仙獣』の三文字がついている。

 これだけでブラック・マジシャン・ガールがなにをしてくるのか予想がつくというものだ。

 

「修験の妖社の効果発動! 妖仙カウンターを三つ取り除いて墓地から妖仙獣の秘技を手札に加える! 鎌壱太刀のモンスター効果。このカード以外の妖仙獣がいる時、相手フィールド上の表側表示のカードを手札に戻す。私はブレイズマンを手札に戻すよ」

 

 ブレイズマンの炎が烈風にかき消され、丈の手札に戻ってくる。これで丈のモンスターカードゾーンから全てのモンスターが消えた。

 

「鎌壱太刀で丈くんを直接攻撃、壱の太刀!」

 

「ライフで受ける!」

 

 宍戸丈LP4000→2300

 

 丈の体を切り裂いていくつむじ風。

 鎌壱太刀の攻撃力1600に永続魔法でプラス100された1700ポイントが、丈のライフより削られた。

 

「鎌参太刀のモンスター効果。このカード以外の妖仙獣が戦闘ダメージを与えた場合、デッキより妖仙獣を一枚サーチする。私は二枚目の妖仙獣の秘技をサーチ!

 続いて鎌弐太刀で丈くんへの直接攻撃! 弐の太刀!」

 

「やらせはしない。罠発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にしてカードを一枚ドローする」

 

「だけど鎌参太刀の攻撃が残ってるよ。鎌参太刀の攻撃、参の太刀!」

 

「……!」

 

 宍戸丈LP2300→700

 

 弐度目のつむじ風に、丈のライフが遂に1000をきってしまった。

 会場中から男子生徒を中心としたブラック・マジシャン・ガールファンの生徒たちからの歓声があがり、女生徒や中等部からの進学組を中心とした魔王ファンの生徒からの悲鳴があがった。

 

『こ、これは大変なことになってしまったぞ! 〝魔王〟宍戸丈VSブラマジガールのエキシビジョンマッチ。先制したのはブラック・マジシャン・ガールだぁあッ! しかも宍戸選手のライフは700ポイントまで削られ絶体絶命! このままやられてしまうのか!?』

 

『いや宍戸さんには五枚の手札がある。あれだけあれば逆転は不可能じゃない。問題はブラック・マジシャン・ガールの手札にある二枚の妖仙獣の秘技をどうするか、だが』

 

 実況兼司会進行役の翔と、解説の万丈目のコメントが的確過ぎて泣けてくる。

 しかしただ一方的にやられるほど宍戸丈は腑抜けてはいない。

 

「私はリバースカードを二枚セット。これで私はターンエンド。エンドフェイズ時、三体の鼬は自身の効果で手札に戻る」

 

「今だ。エンドフェイズ時、リバースカードオープン、心鎮壷! フィールドに伏せられた魔法・罠カードを発動できなくする!」

 

「なっ!」

 

 

【心鎮壷】

永続罠カード

フィールド上にセットされた魔法・罠カードを2枚選択して発動する。

このカードがフィールド上に存在する限り、

選択された魔法・罠カードは発動できない。

 

 

 ブラック・マジシャン・ガールのリバースした二枚のカウンター罠、妖仙獣の秘技が封印されていく。

 さしものカウンター罠も罠である以上はセットされたターンは無力だ。

 

「むぅ。折角サーチしたのに」

 

「これで妖仙獣の秘技二枚はただのハリボテだ。俺のターン、ドロー」

 

 前のターンの猛攻で『妖仙獣』がどれほど厄介な強さをもっているかは身に染みて理解できた。

 このデュエル、迂闊に相手にターンを回した方が負ける。

 

(ならば――――)

 

 もはやブラック・マジシャン・ガールにターンは譲らない。このターンの内に完膚なきまでにブラック・マジシャン・ガールのライフを消し飛ばす。

 それが自らを勝利へ導く最も冴えたやり方だ。

 

「手札抹殺を発動! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分だけカードをドローする! 俺は五枚捨てて五枚ドロー。さらにシャドー・ミストのモンスター効果により、デッキからE・HEROオーシャンを手札に加える!

 手札に加えたE・HEROオーシャンを通常召喚。更に手札より速攻魔法、マスク・チェンジを発動。変身召喚、現れろ! M・HEROアシッド!」

 

 

【M・HEROアシッド】

水属性 ☆8 戦士族

攻撃力2600

守備力2100

このカードは「マスク・チェンジ」の効果でのみ特殊召喚できる。

このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊し、

相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力は300ポイントダウンする。

 

 

「どうして……? 融合禁止エリアがある限り融合召喚は出来ないはずなのに」

 

「残念だったな。マスク・チェンジはモンスターを墓地へ送ることで、融合デッキからモンスターを〝特殊召喚〟するカード。融合禁止エリアの管轄外だ。

 そしてM・HEROアシッドのモンスター効果。このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法・罠を全て破壊する。消え失せろ、邪魔な永続罠!」

 

「うわあああああああ!」

 

 フィールドに発生した津波が、発動していた融合禁止エリアと修験の妖社を呑み込んでいく。

 融合禁止エリアが破壊され墓地へ送られたことで、漸く『融合召喚』が解禁となった。

 

「だ、だけど私の場には二体の右鎌神柱が――――」

 

「とんだロマンチストだな。お前に次のターンは廻ってこない。俺に融合召喚を許した時点でお前の敗北は不可避だ!

 ミラクル・フュージョンを発動。墓地のオーシャンとスパークマンを除外し、E・HEROアブソルートZeroを融合召喚。そして速攻魔法、フォーム・チェンジを発動!

 フォーム・チェンジは自分フィールドの融合HEROを対象として選択として発動。そのモンスターと同じレベルでカード名の異なる『M・HERO』を特殊召喚する!

 アブソルートZeroを水から風へフォームチェンジ! 変身召喚Ver2。勝利の神風を巻き起こせ! M・HEROカミカゼを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 

【フォーム・チェンジ】

速攻魔法カード

(1):自分フィールドの「HERO」融合モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターをエクストラデッキへ戻し、

そのモンスターの元々のレベルと同じレベルでカード名が異なる

「M・HERO」モンスター1体を、

「マスク・チェンジ」による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

 

【M・HEROカミカゼ】

風属性 ☆8 戦士族

攻撃力2700

守備力1900

このカードは「マスク・チェンジ」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

相手はバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できない。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

 フィールドに吹き荒れるカミカゼ。白いマントをなびかせて、森よりも深い緑のHEROがフィールドに降り立った。

 並び立つ風と水の仮面ヒーロー。これで混沌を象徴するHEROを召喚できるようになったが、今はアレを出す必要はない。

 

「アブソルートZeroのモンスター効果は知っているな? Zeroがフィールドを離れた時、相手フィールドのモンスターを全て破壊する」

 

 二体の右鎌神柱が氷漬けとなって砕け散る。

 壁モンスターが消滅したことで、ブラック・マジシャン・ガールのフィールドにモンスターはゼロ。もう風と水の二重奏を阻める者はいない。

 

「バトルフェイズ。二体のM・HEROで直接攻撃、M・HERO DOUBLE ATTACK!!」

 

「きゃぁああああああああああ!」

 

 ブラック・マジシャン・ガールLP4000→0

 

 風と水がブラック・マジシャン・ガールのライフを根こそぎ奪い尽くす。

 相手ライフをゼロにしたことでデュエルディスクが宍戸丈の勝利を告げた。

 

『決着ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』

 

『やはり逆転してきたか。それにしても宍戸さんのHEROデッキ、また更に磨きをかけてきたな……』

 

 一時はどうなるかと思ったが、どうにか後輩たちの目の前で恥をかかずに済んだようだ。

 二体のHEROに吹っ飛ばされてい尻もちをついたブラック・マジシャン・ガールは、ゆっくりと起き上がると、

 

「あいたたたた。負けちゃったかぁ、やっぱり強いね、宍戸君」

 

「こちらの台詞だ、それは」

 

 

 

 

「遊戯さんはなんて?」

 

 コスプレデュエル大会が終わった後、丈とブラック・マジシャン・ガールは喧騒から離れた森の中で密会していた。

 密会というと男と女同士ということもあってアブノーマルな臭いがプンプンするが、丈とブラック・マジシャン・ガールにそういった意図はまったくない。

 こうして誰にも聞かれない場所で話しているのは、話題が別の意味でアブノーマルなものだからだ。

 

「セブンスターズの件は十代くんに任せておけば大丈夫だろうから、自分は手を出さないでおくって。本当に危険な時は駆け付けるって言ってたけど、そういう万が一の場合は丈くんもいるから大丈夫だよね」

 

「キング・オブ・デュエリストに信頼されるなんて光栄だな。ああ、精々信頼に応えるよう努力するさ。遊戯さんにはなにかと世話になったからな」

 

 神のカードの所有者の先輩である武藤遊戯のアドバイスは、邪神の所有者である丈にとって大きな助けになった。

 それにネオ・グールズの事件でも影で助けてくれていたそうであるし、宍戸丈にとって武藤遊戯は頭の上がらない大先輩だった。

 

「それともう一つ。バクラのことだが――――」

 

「獏良くん……ううん、大邪神ゾークの分霊。盗賊王の……バクラ、だね」

 

 三邪神を取り戻し解決に終わったネオ・グールズ事件。だがしかし事件は未だ真の意味で終わりを迎えてはいない。

 事件の元凶となったバクラの魂。一時は完全復活しかけた彼は、邪神の制御が丈に奪われたことで肉体が崩壊。デュエルから逃走したまま行方知らずだ。

 

「マスターも海馬コーポレーションの人とか、マリクくんとかと協力して世界中を探し回っているんだけどね。まだ足取りは全然掴めてないんだ。ごめんね」

 

「謝る必要はない。元々俺の迂闊が招いたことだ」

 

 あのバクラがただ逃げているだけとは考えられない。確実に復活のため暗躍しているはずだ。案外セブンスターズの事件にもなんらかの形で関わっているかもしれない。

 バクラを見つけ出し倒す。それはあの時、バクラを逃がしてしまった丈がやらねばならない役目だ。

 

「あ。そうそう、これはマスターから」

 

 ブラック・マジシャン・ガールが二枚のカードを渡してくる。カードを受け取った丈は、その二枚に視線を落として目を見開いた。

 

「……これは?」

 

 デュエリストであればその二枚を知らない筈がない。ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガール。武藤遊戯のエースモンスター達だ。

 問題なのはブラック・マジシャン・ガールを経由して、武藤遊戯がその二枚を宍戸丈に渡してきたという意味である。

 

「もしもなにかあったら、このカードに強く念じてね。私かお師匠様の魔力で届く範囲内ならマスターに通じるから」

 

「ケータイで良いのではないのか?」

 

「それが出来たらいいんだけどねぇ。マスターは一年の80%くらいは電波の通じない場所にいるし。異世界とか平行世界とか異次元とか」

 

「なにしてるんだ遊戯さん」

 

 ナチュラルに異世界やら平行世界なんて単語が出るあたり、あの人も大概にして人間を止めている。決闘王・武藤遊戯の武者修行を追うだけで長編映画が五本は作れそうだ。

 

「だが自分のエースカードを他人に渡して、遊戯さんのデッキは大丈夫なのか?」

 

「うん。この二枚はマスターが元々持っていたカードじゃなくて、新しくパックで当てたものだからね」

 

 あっさり言ってくれるがブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールの二枚をパックで当てるなど、砂漠から一粒のダイヤを見つけるようなものだ。

 決闘王はデュエル外でも決闘王ということなのだろう。デュエルモンスターズの頂点は伊達ではない。

 

「ありがとう。もしバクラの足取りが掴めたら知らせてくれ。遊戯さんに宜しく頼む」

 

「うん。じゃあね、丈くん。大変だと思うけど……頑張って」

 

 最後にエールを送って、ブラック・マジシャン・ガールの姿が掻き消える。自分の所有者の下へと戻っていったのだろう。

 キング・オブ・デュエリストに期待をかけられているのならば、丈もうかうかとはしていられない。手始めに残り一人のセブンスターズから対処することにしよう。

 丈はデュエルディスクにデッキをセットして、森の深くへ消えていった。

 

 




紫雲院素良→融合、黒咲隼→エクシーズ、赤馬零児→ペンデュラムという感じにARC-Vには召喚方法に因んだ色を冠するキャラが多数登場しています。
ということは5D'sに登場した青山光平→儀式という可能性が微レ存……。

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