宍戸丈 LP4000 手札2枚
場 銀河眼の光子竜
伏せ 三枚
魔法 冥界の宝札
田中ハル LP4000 手札5枚
場 無し
銀河眼の光子竜はバトルステップ時に、攻撃してきたモンスターを自身と共に除外する効果をもっている。3000の攻撃力と合わせてそうそうに戦闘破壊されることはない。相手の出方を伺うにはもってこいのモンスターだ。
とはいえ他の多くのモンスターがそうであるように、銀河眼の光子竜の特殊能力にも付け入る隙は多くある。暴帝ほどの実力者なら如何な銀河眼の光子竜といえど1ターンで攻略するのは不可能ではない。
だが〝暴帝〟がその隙をついてきても対応できるよう、丈は三枚のリバースカードをセットしている。暗黒界やHEROと比べて、どうしても初動が遅れがちの冥界軸の1ターン目としては上々の滑り出しだろう。
「……私のターン、ドロー」
目は虚ろのまま、しかしカードをドローする手は力強く。冷酷無情な暴帝は全盛期と同等、それ以上の気迫を放ちながらフィールドを睥睨する。
卒業模範デュエルで亮が彼と戦った時、暴帝が使っていたデッキは帝モンスターをメインとしたデッキだった。しかし田中ハルは常に時代の最先端を取り入れ、デッキを千変万化させることで有名のデュエリストである。一年を超えて同じデッキを使用することはない。
故に今の〝暴帝〟がどんなデッキを使うのかは不明だ。だがデッキで眠っているだけでも漂ってくる濃密な闘気。一線級の強さをもっているのは確実だろう。
「私はマンジュ・ゴッドを召喚する」
血走った赤い目に無数の白い手を生やした観音が召喚された。
マンジュ・ゴッドは召喚の際に儀式モンスターか儀式魔法をサーチする特殊能力をもったモンスター。そのデッキが投入されているということは、彼のデッキには『儀式召喚』のギミックが組み込まれているのだろう。そうでなければマンジュ・ゴッドを投入する理由がない。
これで暴帝のデッキが儀式召喚を主軸にしていることは予想できた。残る問題である『どういった儀式モンスターを使うか』についても直ぐに答えは出るだろう。
丈はじっと田中ハルの行動を伺う。
「マンジュ・ゴッドのモンスター効果を発動。私はデッキより儀式モンスターを手札に加える。私が手札に加えるのは――――ブリューナクの
「ブリューナクの……
聞いたことのない名前だった。ブリューナクというのは、ケルト神話の太陽神ルーが持つとされる神槍ブリューナクのことだろう。だがブリューナクという名前をもつカードを丈は聞いたことがない。それに影霊衣というのもさっぱりだ。
デュエルモンスターズは広い。まだまだ丈の知らないカードが多くあるし、新たなカードが生まれていっている。つまりはそういうことなのだろう。
「私はサーチしたブリューナクの影霊衣を手札より捨てる。そしてその効果を発動。ブリューナクの影霊衣以外の影霊衣モンスターを手札に加える」
「手札で効果を発揮する儀式モンスターだと!?」
【ブリューナクの影霊衣】
水属性 ☆6 戦士族
攻撃力2300
守備力1400
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
「ブリューナクの影霊衣」以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「ブリューナクの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「ブリューナクの影霊衣」以外の
「影霊衣」モンスター1体を手札に加える。
(2):エクストラデッキから特殊召喚された、
フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主のデッキに戻す。
未知のカード故にどんな効果でも驚かないよう覚悟していたが、これには驚かずにはいられない。
丈のトラウマであるサクリファイスを始めとして、儀式モンスターは強力な力を持つ分、専用の儀式魔法で儀式召喚しない限り力を発揮できないというデメリットをもつモンスターだ。
儀式モンスターは手札にあるのに、儀式魔法がなくて役に立たない――――なんていうのは、儀式デッキではよくあることである。だが儀式モンスターが手札誘発の特殊能力を備えていれば、儀式モンスターのデメリットをかなり軽減することが可能だ。
(影霊衣……これは想像以上に、難敵かもしれないな)
丈の予想を裏付けるように、暴帝ハルは冷酷に自身のデッキを稼働させていく。
「私がこの効果で手札に加えるのはクラウソラスの影霊衣だ。だがクラウソラスの影霊衣もブリューナクと同じく手札誘発の効果をもっている。
クラウソラスの影霊衣を手札から捨て、クラウソラスの第一の能力を発動。デッキより影霊衣と名のつく魔法・罠カードを手札に加える。私がサーチするのは儀式魔法、影霊衣の万華鏡」
「……!」
【クラウソラスの影霊衣】
水属性 ☆3 戦士族
攻撃力1200
守備力2300
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「クラウソラスの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
(2):エクストラデッキから特殊召喚された、
フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は0になり、効果は無効化される。
この効果は相手ターンでも発動できる。
ブリューナクに続いてのサーチ効果。マンジュ・ゴッドで直接『影霊衣の万華鏡』をサーチせず、態々ブリューナクとクラウソラスを経由したのはデッキの圧縮と墓地肥しが目的に違いない。操られてもデュエルの堅実さはまるで変わっていなかった。
しかし暴帝のターンはまだ始まったばかり。悪夢はこれより起こるのだ。
「手札より影霊衣の万華鏡を発動! 儀式召喚するモンスターと同じレベルになるよう、手札・フィールドのモンスター1体を生け贄に、または融合デッキのモンスター1体を墓地へ送ることで儀式召喚する。私が墓地へ送るのはレベル12、F・G・Dだ!」
「なんだと!?」
【影霊衣の万華鏡】
儀式魔法カード
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
「影霊衣の万華鏡」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):儀式召喚するモンスターと同じレベルになるように、
自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリース、
またはエクストラデッキのモンスター1体を墓地へ送り、
手札から「影霊衣」儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する。
(2):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、
自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター1体を除外して発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法カード1枚を手札に加える。
万華鏡にF・G・Dのカードが吸い込まれて生き、万華鏡に数多のモンスターの影が生まれた。
最上の生け贄を捧げられたことで万華鏡は虹色の輝きを強めていく。ソリッドビジョンと分かっていても尚、幻想的光景に目を奪われそうになるが、丈の視線は『影霊衣の万華鏡』のカードテキストの一文へと注がれていた。
「儀式モンスターを『任意の数』だけ儀式召喚する、だと……? まさか!?」
「その通り。私は万華鏡に捧げた12のレベル分、即ちレベル8とレベル4のモンスターを同時に儀式召喚させる。現れろ、私のモンスター達よ! ヴァルキュルスの影霊衣とユニコールの影霊衣を儀式召喚!」
【ヴァルキュルスの影霊衣】
水属性 ☆8 魔法使い族
攻撃力2900
守備力1700
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
レベル8以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「ヴァルキュルスの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に自分の墓地の「影霊衣」カード1枚を除外し、
このカードを手札から捨てて発動できる。
その攻撃を無効にし、その後バトルフェイズを終了する。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
自分の手札・フィールドのモンスターを2体までリリースし、
リリースした数だけ自分はデッキからドローする。
【ユニコールの影霊衣】
水属性 ☆4 魔法使い族
攻撃力2300
守備力1000
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「ユニコールの影霊衣」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨て、「ユニコールの影霊衣」以外の
自分の墓地の「影霊衣」カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、エクストラデッキから特殊召喚された
フィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される。
悪魔を思わせる衣に身を包んだ魔法使いと、ユニコーンを思わせる甲冑を装備した戦士。二人の儀式モンスターが同時にフィールドに降臨した。
これまでの儀式召喚の常識を覆す出来事の連続に、丈は久しぶりに『戦慄』という感情を味わった。
「ヴァルキュルスの影霊衣のモンスター効果! 自分の手札・フィールドのモンスターを二体まで生け贄にし、生け贄にした数だけデッキからドローする。私はマンジュ・ゴッドと手札のトリシューラの影霊衣を生け贄に二枚ドロー!
さらに手札より新たなる儀式魔法、影霊衣の反魂術を発動! レベル合計が同じになるよう手札・フィールドのモンスターを生け贄に捧げ、手札・墓地より影霊衣儀式モンスターを儀式召喚する!
私は手札の影霊衣の術師シュリットを生け贄にする。シュリットは影霊衣儀式モンスターの儀式召喚に使用する場合、一体で必要な生け贄分として使用できる」
【影霊衣の反魂術】
儀式魔法カード
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
「影霊衣の反魂術」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、
自分の手札・墓地から「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する。
(2):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、
自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター1体を除外して発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法カード1枚を手札に加える。
【影霊衣の術師 シュリット】
水属性 ☆3 戦士族
攻撃力300
守備力1800
「影霊衣の術士 シュリット」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する場合、
このカード1枚で儀式召喚に必要なレベル分のリリースとして使用できる。
(2):このカードが効果でリリースされた場合に発動できる。
デッキから戦士族の「影霊衣」儀式モンスター1体を手札に加える。
黄金の輝きがクリスタルに吸い込まれ、ここに生け贄を用いた儀式は完了する。
眩い輝きを放ちながらクリスタルが弾け、そこから水色の騎士の影が飛び出した。
「破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! 儀式召喚、顕現せよ! トリシューラの影霊衣ッ!」
【トリシューラの影霊衣】
水属性 ☆9 戦士族
攻撃力2700
守備力2000
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
レベル9以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「トリシューラの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「影霊衣」モンスターが効果の対象になった時、
このカードを手札から捨てて発動できる。
その発動を無効にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが儀式召喚に成功した時に発動できる。
相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚選び、その3枚を除外する。
これまで丈は多くのデュエリストと戦ってきたし、その中には儀式使いも多くいた。だが先攻1ターン目から三体も儀式召喚をしてきたデュエリストは初めてだ。
三つ首の氷龍の霊衣を装備した戦士が、自らこそが先鋒であると名乗りを上げる様に前へと出る。トリシューラの影霊衣から発せられるプレッシャーに、丈の肌がささくれ立った。
トリシューラの影霊衣は力の解放を告げる様に、自らの武器を天へ掲げた。
「トリシューラの影霊衣の特殊能力発動。このカードの儀式召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードを其々一枚選び、その三枚を除外する!」
「成程、大した効果だ。こんなものを喰らえば俺はいきなり一溜まりもないな。だがやらせはしない! カウンター罠、天罰! 手札を一枚捨て、モンスター効果を無効にし破壊する!」
破滅の氷結を飛ばそうとしたトリシューラは、天より落ちた雷によって消し飛ばされる。
これでどうにか最悪の事態を免れることはできた。いきなりカード三枚も除外など冗談ではない。
「……ふむ。私はカードをニ枚伏せターンエンドだ」
「エンドフェイズ時、終焉の焔を発動。黒焔トークン二体を場に出現させる」
【終焉の焔】
速攻魔法カード
このカードを発動するターン、
自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に「黒焔トークン」
丈の頬を伝った汗が、地面に落ちる。どうも三幻魔の所へは遅刻することになりそうだ。
だが遅刻をしないために無理をして『欠席』してしまってはどうしようもない。急がば回れの諺通り、まずは全身全霊を目の前の障害物の突破に費やすべきだろう。
というわけで田中先生のデッキは影霊衣でした。正直シャドールとどっちにしようか迷いましたが、後書きであれだけ儀式を猛プッシュしていたので儀式になりました。
相変わらずのガチっぷりですが安心して下さい。影霊衣のキーカードの一つでもある虹光の宣告者はシンクロモンスターなので現実ほどヤバくはありません。え? 虹光の宣告者がなくても普通にヤバい? 知らん、そんな事は俺の管轄外だ。