宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第162話  楽園喪失

宍戸丈 LP3500 手札2枚

場 神獣王バルバロス

伏せ 二枚

 

バクラ LP4000 手札2枚

場 ジャイアントウィルス×2

伏せ 二枚

魔法 カードトレーダー

 

 

 びりびりと肌が焼ける緊張感が伝わる。これはプロでやっているような、競技としてのデュエルではない。

 デュエルモンスターズの原型たるディアハと同じ命懸けの闇のゲーム。

 

「オレ様のターン、カードドロー」

 

 ドクンッと丈の心臓が跳ねる。バクラがデッキよりドローしたカードから発せられるのは、隠しても隠し切れない強大なエネルギーだった。

 ほぼ確実にバクラの引いたのは三幻魔のカード。あのデッキは『三幻魔』を召喚し運用することのみに特化したデッキである。だとすればここからが本番ということだ。

 

「ククククククッ、良いカードを引いたぜ。こいつで手始めにテメエのチンケなモンスターを墓地へ送ってやるよぉ! だがその前にオレ様はカードトレーダーの効果を使うぜ。手札のカードをデッキに戻し、代わりに一枚ドロー。そしてオレ様は魔法カード、デビルズ・サンクチュアリを発動」

 

 

【デビルズ・サンクチュアリ】

通常魔法カード

「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を

自分のフィールド上に1体特殊召喚する。

このトークンは攻撃をする事ができない。

「メタルデビル・トークン」の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、

かわりに相手プレイヤーが受ける。

自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。

払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。

 

 

 バクラのフィールドに丈の顔を映し出したトークンが出現する。

 デビルズ・サンクチュアリは戦闘ダメージを相手に返す能力から、武藤遊戯が対マリクのキーカードとして投入したことで有名だ。

 だがバクラの目的はデビルズ・サンクチュアリの特殊能力で相手にダメージを与えることではなく、三体の生け贄を場に揃えること。

 ジャイアントウィルスと合わせてバクラのフィールドのモンスター。三体分の生け贄がここに揃った。

 

「精々震えな。オレ様は三体のモンスターを生け贄に捧げ、幻魔皇ラビエルが降臨する。来やがれ、ラビエルッ!」

 

 

【幻魔皇ラビエル】

闇属性 ☆10 悪魔族

攻撃力4000

守備力4000

このカードを生け贄召喚する場合、三体の生け贄を捧げなければならない。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

罠の効果を受け付けず、魔法・効果モンスターの効果は

発動ターンのみ有効となる。

相手がモンスターを召喚・特殊召喚した時、自分フィールド上に「幻魔トークン」

(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を同じ数だけ特殊召喚する。

このトークンは攻撃宣言を行う事ができない。

1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター2体を生け贄に捧げる事で、

このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は

生け贄に捧げたモンスターの攻撃力分アップする。

 

 

 亀裂の入る大地。地響きをたてながら、割れた大地より蒼い魔神が昇ってくる。天を衝く巨体と隆々たる四肢。オベリスクの巨神兵にも似た威圧感をもった幻魔が場に顕現した。

 丈のデッキに眠っている三邪神が、自分達と同格の力が現れたことに震えだす。

 ラビエルが背中の翼をバッと広げた。それだけでフィールド全体に突風が吹き荒れる。

 

「ひぁーははははははっははははっははははははははははははははははははははははっ! 邪神相手にしてるだけあってビビっちまうことはねぇようで安心したぜぇ。

 このまま攻撃してもいいが、どうせなら与えるダメージは大きければ大きいほど良いよなぁ。永続魔法、強者の苦痛。こいつがある限りテメエのモンスターはレベルの数だけ100ポイント攻撃力を下げるぜ」

 

「――!」

 

 

【強者の苦痛】

永続魔法カード

相手フィールド上のモンスターの攻撃力は、

そのモンスターのレベル×100ポイントダウンする。

 

 

 バルバロスのレベルは8。よって攻撃力は800ポイントダウンして1100まで低下してしまう。

 こんな所にラビエルの攻撃を受けてしまえば大損害だ。この攻撃をまともに喰らうわけにはいかない。

 

「バトルフェイズ。幻魔皇ラビエルでバルバロスを攻撃、天界蹂躙拳!」

 

「罠発動、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを一枚ドローする!」

 

 幻魔に罠は通じないが、幻魔ではなくプレイヤー自身に影響を与える罠カードは無効化されない。対三邪神戦でも使用した戦法の一つだ。

 ラビエルはバルバロスを木端微塵に粉砕したが、ダメージを丈に与えることは出来なかった。

 

「狡い手を使いやがるぜ。バトルを終了、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー。速攻魔法、終焉の焔を発動! 二体の黒焔トークンを場に二体出現させる!」

 

 

【終焉の焔】

速攻魔法カード

このカードを発動するターン、

自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。

自分フィールド上に「黒焔トークン」

(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。

このトークンは闇属性モンスター以外の生贄召喚のためには生贄にできない。

 

 

 二体の黒焔トークンが特殊召喚される。終焉の焔は一気に二体のトークンを出現させる代わりに、このターンの召喚を封じられ、しかも闇属性以外の生け贄には使えないという弱点がある。

 ただこのカードには抜け道があるのだ。

 

「冥界の宝札を発動。二体の黒焔トークンを生け贄にモンスターをセットする。冥界の宝札の効果で二枚のカードをドロー!」

 

 生け贄召喚は出来ずともモンスターをセットすることは出来る。丈の伏せたモンスターはThe SUN。破壊された時に墓地より蘇生する効果を持つ優秀なモンスターだ。

 ラビエルの攻撃力には及ばないが、壁モンスターとしての能力は十分すぎる。

 

「待ちな。テメエが終焉の焔を発動したタイミングで、ラビエルの特殊能力も発動するぜ。テメエがモンスターを召喚・特殊召喚した場合、自分フィールドに幻魔トークンを同じ数だけ出現させる。

 テメエが終焉の焔で呼び出したトークン二体分。つまり二体の幻魔トークンが場に守備表示で特殊召喚」

 

 

【幻魔トークン】

闇属性 ☆1 悪魔族

攻撃力1000

守備力1000

 

 

 トークンとしては攻撃力1000は高い数値であるが、幻魔トークンは攻撃宣言できない制約をもっている。

 壁モンスターにはなっても、戦闘要員にはなりはしないだろう。

 

「――カードを一枚伏せる。ターンエン」

 

「エンドフェイズ時、永続罠を発動!」

 

 

【カース・オブ・スタチュー】

永続罠カード

このカードは発動後モンスターカード

(岩石族・闇・星4・攻1800/守1000)となり、

自分のモンスターカードゾーンに特殊召喚する。

このカードがフィールド上にモンスター扱いとして存在し、

このカード以外のモンスター扱いとした罠カードが

相手モンスターと戦闘を行った場合、

その相手モンスターをダメージ計算後に破壊する。

このカードは罠カードとしても扱う。

 

 

「こいつは発動後にモンスターカードとなって場に特殊召喚されるトラップモンスターだ。カース・オブ・スタチューを場に特殊召喚するぜ。…………ったく、つまらねえカード入れやがって。トラップモンスターならゾーマを使いやがれってんだ」

 

 文句を言いながらもバクラがカース・オブ・スタチューのカードをモンスターゾーンへ置く。

 なんの違和感もなく三幻魔デッキを使いこなしているバクラだが、あのデッキは影丸理事長のもの。バクラとしては投入されているカードにも不満が多いのだろう。

 

「オレ様のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、カードトレーダーの効果を発動するぜ。カードを一枚デッキへ戻し、新たにドロー。魔法カード、テラ・フォーミング! デッキからフィールド魔法『失楽園』をサーチするぜ」

 

「なっ!? あのカードは!」

 

「不味いぞ、丈」

 

「万丈目? 亮?」

 

 影丸理事長のデュエルを見ていない丈には分からないが、バクラのサーチしたフィールド魔法は相当不味いカードらしい。

 ただ丈の場にフィールド魔法の発動を防ぐ術はないので、どれだけ危険なカードだろうと覚悟を決める他なかった。

 

「覚悟はいいか? このフィールド魔法は相当イカれているぜぇ~。フィールド魔法、失楽園を発動! こいつはフィールド上に三幻魔が一体以上存在している場合、1ターンに1度だけデッキよりカードを二枚ドローする!」

 

「1ターンに二枚のドローだと!? インチキ効果もいい加減にしろ!」

 

 

【失楽園】

フィールド魔法カード

フィールド上に「神炎皇ウリア」「降雷皇ハモン」

「幻魔皇ラビエル」の内1体以上が存在している場合、

そのカードのコントローラーは1ターンに1度だけ

デッキからカードを2枚ドローできる。

 

 

 1ターンに効果で二枚ドローできるということは、通常ドローも合わせてバクラは三枚ドロー出来るということだ。

 ハンドアドバンテージが大きく勝敗を左右するデュエルモンスターズにおいて、1ターンに三枚ドロー出来るというのは余りにも驚異的である。

 万丈目や亮があれほど警戒するのは当然のことだ。

 

「ラビエルの特殊能力発動! こいつは1ターンに1度、オレ様のフィールドのモンスターを二体まで生け贄に捧げることで、生け贄にしたモンスターのステータスをエンドフェイズまで吸収する。

 二体の幻魔トークンを生け贄に、ラビエルよ! 力を得よ!」

 

 幻魔トークンを両手で握り潰し、その生命力を奪っていくラビエル。4000だった攻撃力は6000まで上昇し、遂にあのF・G・Dをも凌駕する数値となった。

 

「バトルフェイズ。ラビエルでセットモンスターを攻撃、天界蹂躙拳!」

 

「……俺のセットしていたのはThe supremacy SUNだ。破壊される」

 

 守備力3000のThe SUNも6000の破壊力の前では紙同然。至高の太陽は、あっさりと幻魔の天拳によって粉砕された。

 

「続いてカース・オブ・スタチューで直接攻撃するぜ。闇のゲームの苦痛をたっぷり味わいな!」

 

「させない。罠発動、メタル・リフレクト・スライム!」

 

 

【メタル・リフレクト・スライム】

永続罠カード

このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、

自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。

このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)

 

 

 丈の場にモンスターが増えたことで、巻き戻しが発生する。

 メタル・リフレクト・スライムの守備力は3000。バクラは一瞬攻撃するかどうか迷っていたが、結局ダメージを警戒して手を出してくることはなかった。

 

「ラビエルの効果、幻魔トークンを一体特殊召喚するぜ。バトルを終了、ターンエンドだ」

 

 


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