宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第163話  邪神VS幻魔

宍戸丈 LP3500 手札3枚

場 メタル・リフレクト・スライム

伏せ 一枚

魔法 冥界の宝札

罠 メタル・リフレクト・スライム

 

バクラ LP4000 手札2枚

場 幻魔皇ラビエル、カース・オブ・スタチュー、幻魔トークン

伏せ 一枚

魔法 カードトレーダー、強者の苦痛

罠 カース・オブ・スタチュー

フィールド 失楽園

 

 

 

 幻魔皇ラビエルが凶悪な赤い眼で丈を見下ろしている。眼に浮かんでいるのは緋色の殺意だ。

 デュエルモンスターズのカードには精霊の宿った特別なカードがある。精霊と一口に言っても藤原のオネストのように、自分で実体化するほどの魔力を持つモノや、万丈目のおジャマのように単体ではさして力を持たないモノもいるが、三幻魔は三邪神と同じ。最上位に君臨する大精霊だ。

 あれがデュエル・アカデミアから張られている結界を抜け出せば、世界は混沌に包まれることになるかもしれない。

 幸いなのはバクラ本人には三幻魔に対しての興味が薄いことだが、どちらにせよ負ける訳にはいかなかった。

 

「俺のターン……ドロー」

 

 三幻魔に対抗するには同格の精霊、三邪神をもって相手するのが一番手っ取り早い。だが三幻魔の気に当てられて運勢が落ちているのか、丈の手札に三邪神のカードはなかった。

 神の如き力をもつカードもデッキで眠っているうちは単なるカード。ならば、

 

「スタンバイフェイズ時、The SUNの特殊能力が発動する! こいつは破壊されて墓地へ送られた場合、次のターンのスタンバイフェイズ時に手札のカードを墓地へ捨てることで、The SUNは復活する!」

 

「The SUN……成程。忌々しいラーと同じく、墓地に置かれてこそ真価を発揮するモンスターってわけか」

 

「手札よりレベル・スティーラーを捨てる。再び昇れ、至高なる太陽! The supremacy SUN!」

 

 

【The supremacy SUN】

闇属性 ☆10 悪魔族

攻撃力3000

守備力3000

このカードはこのカードの効果でしか特殊召喚できない。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、

次のターンのスタンバイフェイズ時、

手札を1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

 闇に包まれたフィールドを、The SUNの太陽光が塗り替える。だがThe SUNの攻撃力は3000。ラビエルの4000には届かない。

 丈の冥界軸最上級は多種多様な最上級モンスターを召喚していくパワーデッキだが、モンスターの殆どが3000のラインばかりで、相手が3000を超えるモンスターを出した場合、そのまま押し切られかねないという弱点をもっている。

 けれど丈はあのカイザー亮の親友にして好敵手として、彼と1000を超えるデュエルを積み重ねてきた。高攻撃力への対処法くらいは備えている。

 

「少し勿体ないが仕方ない。永続罠、リビングデッドの呼び声を発動! これにより墓地のバルバロスが復活する」

 

「バルバロスは妥協召喚したモンスター。よって墓地から蘇生させた場合は、攻撃力は元の3000になる、か。だがそれじゃラビエルは倒せねえな」

 

 それにバルバロスとThe SUNの特殊召喚でバクラの場に二体の幻魔トークンが召喚され、フィールドが埋まってしまった。

 幻魔を倒し直接攻撃を通すのは並大抵のことではないだろう。

 

「そう、The SUNでもバルバロスでも幻魔は倒せない。故に――――倒せるカードを召喚する。俺はThe SUNとバルバロスの二体を生け贄に捧げる!」

 

「最上級モンスター二体を生け贄だと!?」

 

「喰らい尽くせ! 冷たき暴君、ここに顕現! The tyrant NEPTUNE!」

 

 

【The tyrant NEPTUNE】

水属性 ☆10 爬虫類族

攻撃力0

守備力0

このカードは特殊召喚できない。

このカードはモンスター1体を生け贄にして生け贄召喚する事ができる。

このカードの攻撃力・守備力は、生け贄召喚時に生け贄にしたモンスターの

元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値分アップする。

このカードが生け贄召喚に成功した時、

墓地に存在する生け贄にした効果モンスター1体を選択し、

そのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。

 

 

 ワニの頭部に恐竜の体、そして命も魂も奪い尽くす大鎌。プラネットシリーズのうち海王星を象徴する暴君がフィールドに降臨した。

 神と同等のレベルをもつプラネットは、幻魔の威圧にもまるで動じずにラビエルを睨み返す。

 

「冥界の宝札の効果で二枚ドロー。NEPTUNEの攻撃力は生け贄にしたモンスターの元々の攻撃力・守備力をアップした数値となる。バルバロスとThe SUNの攻撃力の合計は6000。よってこいつの攻撃力は6000ポイントだ!」

 

「チッ。だが強者の苦痛による攻撃力の減少効果を受けて貰うぜ」

 

「だとしてもラビエルを倒すには十分すぎる。俺はNEPTUNEのレベルを二つ下げて二体のレベル・スティーラーを守備表示で召喚。

 バトルだ! NEPTUNEで幻魔皇ラビエルを攻撃、Sickle of ruin(シグル・オブ・ルーイン)ッ!」

 

「甘ぇぜ。オレ様は1000ポイントのライフを支払い永続罠発動、スキルドレイン!」

 

「――――な……ん……だと?」

 

 

【スキルドレイン】

永続罠カード

1000ライフポイントを払って発動できる。

このカードがフィールド上に存在する限り、

フィールド上の全ての効果モンスターの効果は無効化される。

 

 

 スキルドレインはフィールド上のモンスター効果を無効化するトラップ。モンスター効果によって神をも凌駕する攻撃力を得ていたThe tyrant NEPTUNEは、効果を無効にされてしまえば攻撃力は0だ。

 そして既に『攻撃宣言』は行われている。

 

「大変だわ! もしこの攻撃が通ってしまったら、先輩は4000ポイントのダメージを受けて……」

 

「丈さん! 融合解除……は無理だから、サイクロンだ!」

 

 後輩たちの悲鳴交じりの声援が届く。それにしても十代、この状況でサイクロンを発動しろとは中々に実践的なアドバイスをするものだ。

 ただ丈の手札にサイクロンは残念なことになかったので、代わりに他の速攻魔法を発動することにした。

 

「速攻魔法、月の書! モンスターを裏守備表示に変更する。俺が選択するのは無論The tyrant NEPTUNE。攻撃モンスターが裏守備になったことで、攻撃は無効となる。

 バトルフェイズを終了。カードを一枚伏せターンエンドだ」

 

「上手いこと躱しやがったか。オレ様のターン、ドローカード。失楽園の効果で更に二枚追加ドロー。永続魔法、強欲なカケラを発動!」

 

 バクラのフィールドはカードトレーダー、強者の苦痛、強欲なカケラで三枚の永続魔法が発動した状態になった。

 もしも三幻魔の召喚方法が噂に聞いた通りならば、これで更なる幻魔を呼び出す準備が整ってしまったことになる。

 

「ククククッ。その顔じゃテメエもなにが起こるか気付いているようだな。オレ様はラビエルの効果で二体の幻魔トークンを生け贄にすることで攻撃力を上昇。

 目玉に焼き付けやがれ、これが二体目の幻魔だ。オレ様は三枚の永続魔法を墓地へ送り降雷皇ハモンをフィールドに降臨するぜ!」

 

 

【降雷皇ハモン】

光属性 ☆10 雷族

攻撃力4000

守備力4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上の魔法カード3枚を

墓地に送ることで特殊召喚する事ができる。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

罠の効果を受け付けず、魔法・効果モンスターの効果は

発動ターンのみ有効となる。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、

相手ライフに1000ポイントダメージを与える。

守備表示のこのカードが破壊されたターン、

コントローラーの受けるダメージは0になる。

この効果は発動ターンのみ有効とする。

 

 

 雷鳴を轟かせ、恐怖と共に二体目の幻魔が降りてくる。幻魔皇ラビエルがオベリスクに似た幻魔ならば、降雷皇ハモンはラーの面影があった。

 ラビエルとハモン。二体の幻魔が顕現したことで、アカデミアの空は天変地異が起きたかの如く荒々しくなっていた。

 

「バトル。降雷皇ハモンの攻撃、失楽の霹靂! NEPTUNEを消し飛ばしっちまいな!」

 

 NEPTUNEはハモンの雷光に抗うこともできず、肉体の一切を蒸発させる。

 

「ハモンの特殊能力。こいつがモンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える 地獄の贖罪!」

 

 宍戸丈LP3500→2500

 

 雷が丈に落ちて、1000ポイントのライフを奪っていった。

 だがまだバクラのバトルフェイズは終了していない。バクラの場にはまだ二体のモンスターが残っている。

 

「ラビエルでメタル・リフレクト・スライムを攻撃、天界蹂躙拳!」

 

 メタル・リフレクト・スライムがやられ、丈の場にはレベル・スティーラー二体を残すのみとなった。

 ライフには余裕があるが、それも幻魔一体の攻撃で失われるものに過ぎない。大ピンチというやつだ。

 

「バトルフェイズを終了。メインフェイズ2にカース・オブ・スタチューを守備表示に変更。リバースカードを二枚場に出しターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ドローしたカードを見た瞬間、丈の目がカッと見開かれた。三幻魔と真っ向から対抗することの出来る『魔力』を秘めたカード。邪神の一枚を漸く引き当てることができた。

 後は三体の生け贄を場に揃えて、邪神を召喚するだけ。いつもやっている延長線上に過ぎない楽な作業だ。

 

「このカードは手札を一枚捨てることで特殊召喚することができる。Theトリッキーを特殊召喚」

 

 

【THE トリッキー】

風属性 ☆5 魔法使い族

攻撃力2000

守備力1200

このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。

 

 

 赤いクエスチョンマークのマスクを被った魔法使いが現れる。THEトリッキーはあの武藤遊戯も使ったことで有名で、尚且つその優秀な効果から非常に人気のあるモンスターだ。

 昔は人気さと実用性に裏付けされた高価さのせいで、手に入れることができなかったが、プロデュエリストの資金力のお蔭で購入することが出来た。

 金をかければ強くなれるわけではないが、金があるにこしたことはない。こういう時、お金の力をしみじみと感じる。

 

「場のモンスターは三体。テメエも引き当てたようだな」

 

「その通り。俺はフィールドの三体のモンスターを生け贄に捧げる!」

 

 黒い邪悪な魔力の奔流が、丈を中心として立ち昇る。空を覆い尽くす灰色の雲も、立ち昇る邪気に退いた。

 高まっていく破壊衝動。地面が震え、ここに邪神が出現する。

 

「破壊神をも駆逐する恐怖の根源、我が絶対の力となりて、 我が領域に顕現せよ!  天地を揺るがす全能たる力によって、俺に勝利をもたらせ! 邪神ドレッド・ルート降臨ッッ!!」

 

 

【THE DEVILS DREAD-ROOT】

DIVINE ☆10 GOD

ATK/4000

DEF/4000

Fear dominates the whole field.

Both attack and defense points of all the monsters will halve.

 

 

 山のような巨体は幻魔皇ラビエルのものだけに非ず。ラビエルと同等の巨体に、ドス黒さの混じった深緑色の肌。殺意でぎらぎらと光った双眸。

 殺戮衝動を振り撒きながら、世界に恐怖を齎す破壊邪神が主人の剣として出現する。

 幻魔と邪神。もはやモンスターの次元を超えた二大精霊の対峙に、むせかえるほどの魔力が漂い始めるた。

 その濃密過ぎる魔力の余波は、ハネクリボーやおジャマ三兄弟といった精霊が実体化するほどだった。

 

「仮にもゾークの欠片が不甲斐ねえ。宍戸丈に完全に飼いならされやがって」

 

「冥界の宝札の効果で二枚カードをドローする。ドレッドルートの効果でこいつ以外のフィールドのモンスターは全て攻撃力を半減させる。幻魔も例外じゃない。

 これにより攻撃力4000のラビエルとハモンは攻撃力を2000に半減させる。バトルだ。ドレッドルートでラビエルを攻撃」

 

「罠発動、針虫の巣窟。デッキの上からカードを五枚墓地へ送るぜ」

 

 

【針虫の巣窟】

通常罠カード

自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

 

 

 バクラが墓地へ落としたカードは全て罠カード。その中に墓地で発動できるカードはない。

 よってドレッドルートの攻撃を遮ることはバクラには出来なかった。

 

「ドレッドルート、幻魔を地獄へ突き落せ! フィアーズノックダウンッ!」

 

「迎撃しろ、ラビエル! 天界蹂躙拳ッ!」

 

 モーションからタイミングまで全く同じ。ドレッドルートとラビエルは互いの拳を正面からぶつけあった。

 邪神と幻魔の正面激突に核爆発を思わせるエネルギーが炸裂し、デュエル・アカデミア中に破壊魔力をばら撒く。

 アカデミアに張られている結界のお蔭で破壊の魔力が外に漏れることはなかったが、そうでなければ魔力は大気圏を突き破って宇宙にまで飛び出していたことだろう。

 ラビエルは暫くの間、持ち堪えていたが、ドレッドルートの半減で力を落としたのが敗因となって打ち負ける。

 ドレッドルートの巨拳がラビエルの腹を貫いて、その体を粉砕した。

 

「ぐぉぉおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーッ!!」

 

 バクラLP3000→1000

 

 ドレッドルートの攻撃でダメージを受けたバクラが、苦痛の声をあげながら地面に叩き付けられた。、

 闇のゲームであることに加えて、凶悪性に関しては三幻神をも凌駕する三邪神の一撃である。心の強いデュエリストでも、死にかねない苦痛を味わった筈だ。

 なのにバクラはそんな苦痛を受けて尚、邪悪に嗤いながら立ち上がる。

 

「ククククククッ。やってくれるじゃねえか。それくらいはやってもらわねえとゾークの分身を名乗れねえよなぁ」

 

「……バトルを終了。邪神にモンスター効果は通用しない。よってレベル・スティーラーでレベルを下げることも不可能だ。俺はターンを終了する」

 


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