宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第169話  おジャマの力

宍戸丈 LP4000 手札3枚

場 堕天使アスモディウス

伏せ 一枚

魔法 冥界の宝札

 

 

万丈目 LP4000 手札5枚

場 アームド・ドラゴンLV3

伏せ 三枚

 

 

 最初の丈のターンは、どうにか持ち堪えることができた。これで第一関門はクリアである。

 万丈目のフィールドにはアームド・ドラゴン。リバースカードが気になるが、ここは攻め時だ。

 

「俺のターン、ドロー! アームド・ドラゴンLV3は俺のスタンバイフェイズにLV5へレベルアップする」

 

「来るか、ノース校の秘宝」

 

「俺はデッキよりアームド・ドラゴンLV5を特殊召喚!」

 

 

【アームド・ドラゴンLV5】

風属性 ☆5 ドラゴン族

攻撃力2400

守備力1700

手札からモンスター1体を墓地へ送る事で、

そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。

また、このカードが戦闘によってモンスターを破壊したターンのエンドフェイズ時、

フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事で、

手札またはデッキから「アームド・ドラゴン LV7」1体を特殊召喚する。

 

 

 貧弱なステータスだったLV3が進化して、一気に獰猛な迫力をもったドラゴンとなる。アームドという名は伊達ではなく、その肉体は鋭利な爪と鱗で武装されていた。

 しかしアームド・ドラゴンLV5の攻撃力は2400。このままでは堕天使アスモディウスを粉砕することは出来ない。

 アームド・ドラゴンLV5には破壊効果もあるが、それを使うには堕天使アスモディウス以上の攻撃力をもつモンスターがいなければならないのだ。

 

『万丈目兄貴~。今こそ兄弟の絆で、あのおっかない堕天使を倒す時よ~』

 

 だが万丈目の手札にアスモディウスを超えるモンスターはゼロ。いるのはおジャマ三兄弟だけだ。

 

「危険な懸けだが、やってやるさ! 進化した俺様は運命すら支配する。手札抹殺、互いのプレイヤーは手札を全て捨て捨てた枚数分カードをドローする!」

 

『ちょ、兄貴~!』

 

「俺は三枚ドローする」

 

「俺は五枚だ!」

 

 おジャマ三兄弟の断末魔は華麗にスルーして、万丈目は新たに五枚のカードをドローする。

 どんな低ステータスの雑魚モンスターであろうと、一枚のカードであることには変わりはない。三枚のおジャマという雑魚が齎した三枚のドロー、果たしてそこに挽回のカードはあった。

 

「ライフを1000払いおジャマンダラを発動! 墓地のおジャマ・イエロー、おジャマ・ブラック、おジャマ・グリーンを墓地から復活!」

 

 

【おジャマンダラ】

通常魔法カード

1000LPを払って発動する。

自分の墓地に存在する「おジャマ・イエロー」「おジャマ・グリーン」「おジャマ・ブラック」を

それぞれ1体ずつ自分の場に特殊召喚する。

 

 

『うっふぅ~ん。信じてたわよぉ、兄貴。万丈目の兄貴なら兄弟を召喚してくれるってこと』

 

「ふん。そう言った以上、骨の髄まで俺の役にたってもらうぞ、クズ共。このカードは俺の場におジャマ三兄弟がいる時のみ発動できる。おジャマデルタハリケーン!」

 

 

【おジャマ・デルタハリケーン】

通常魔法カード

自分フィールド上に「おジャマ・グリーン」「おジャマ・イエロー」

「おジャマ・ブラック」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。

相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。

 

 

 魔法カードの発動と共に、おジャマ三兄弟が空中に跳躍して自分達の尻を重ね合わせる。これぞ正に結束ならぬケツ束の力というべきか。

 三体のおジャマはそのまま超高速回転していき、あらゆるものを薙ぎ払うハリケーンを発生させた。

 

「……成程。これがおジャマの力か」

 

 堕天使アスモディウスと、伏せられていたミラーフォースが破壊される。

 邪魔なミラーフォースが消えてこのままダイレクトアタック、といきたいところであるがそうは問屋が卸してくれない。

 

「堕天使アスモディウスの効果。こいつが破壊された時、カード効果では破壊されないアスモトークンと戦闘では破壊されないディウストークンを場に召喚する」

 

 

【アスモトークン】

闇属性 ☆5 天使族

攻撃力1800

守備力1300

アスモトークンはカードの効果では破壊されない。

 

 

【ディウストークン】

闇属性 ☆3 天使族

攻撃力1200

守備力1200

ディウストークンは戦闘では破壊されない。

 

 

 破壊されても二体のトークンを生み出し、フィールドをがら空きにはさせない。

 これこそが堕天使アスモディウスがもつ厄介な能力だ。しかもアスモトークンのレベルは5。一体だけだがレベル・スティーラーを蘇生する餌にできるというのだから無駄がない。

 

「厄介な能力だが万丈目サンダーには通用しない! アームド・ドラゴンLV5のモンスター効果発動。手札のモンスターを捨てて、捨てたモンスター以下の攻撃力のモンスターを破壊する!

 俺が手札より捨てるのは攻撃力1400の仮面竜。この効果によってディウストークンを破壊する!」

 

 アームド・ドラゴンの放った風刃がディウストークンを切り刻む。戦闘では破壊されないトークンも、破壊効果の前には無意味だ。

 

「手札のクリッターを攻撃表示で通常召喚。バトルだ! アームド・ドラゴンLV5でアスモトークンを攻撃、アームド・バスター! そしてクリッターで直接攻撃!」

 

 宍戸丈LP4000→3000

 

 生け贄の餌になるアスモトークンを消し去り、三年前は傷一つつけられなかった丈のライフに確かなダメージを与えた。

 たった1000ポイントたらずの直接攻撃ではあるが、それでもこれは一つの前進である。

 

「バトルフェイズを終了。俺はターンエンドだ。そしてこのエンドフェイズ時、アームド・ドラゴンLV5はLV7へ進化する!」

 

 

【アームド・ドラゴンLV7】

風属性 ☆7 ドラゴン族

攻撃力2800

守備力1000

「アームド・ドラゴン LV5」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。

手札からモンスター1体を墓地へ送る事で、

そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。

 

 

 戦闘で相手モンスターを撃破したことで増大した破壊衝動が、アームド・ドラゴンを更なる先の姿へと進化させた。

 鬼気すら感じる威圧感は、伝説のブルーアイズにも劣るものではない。

 

「俺のターン、一時休戦を発動。互いにカードを一枚ドローし、次の相手ターン終了時まで互いの受ける全てのダメージは0になる。

 カードを一枚伏せ、カードカー・Dを召喚。このカードを生け贄にし、デッキよりカードを二枚ドローする。この効果を発動した場合、強制的にエンドフェイズになる。ターンエンドだ」

 

 

【カードカー・D】

地属性 ☆2 機械族

攻撃力800

守備力400

このカードは特殊召喚できない。

このカードが召喚に成功した自分のメインフェイズ1に

このカードを生け贄にして発動できる。

デッキからカードを2枚ドローし、このターンのエンドフェイズになる。

この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 アームド・ドラゴンLV7の脅威にもまったく動じず、宍戸丈は淡々とデュエルを進める。

 一見すると時間稼ぎにしか思えない行動。されどこれは反撃のために牙を研いでいるだけだ。油断はできない。

 しかし流れが自分に向いてきていることは確かだ。ここは宍戸丈が反撃に出る前に畳み掛ける。

 

「俺のターン、ドロー! 融合を発動、おジャマ三兄弟を融合しおジャマキングを融合召喚!」

 

 

【おジャマキング】

光属性 ☆6 獣族

攻撃力0

守備力3000

「おジャマ・グリーン」+「おジャマ・イエロー」+「おジャマ・ブラック」

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

相手のモンスターカードゾーンを3ヵ所まで使用不可能にする。

 

 

 おジャマ三兄弟が融合して現れたのは、シルバーな肉体をもつ筋肉もりもりのおジャマだった。

 サイズは通常のおジャマのざっと十倍はあるが、攻撃力は相変わらずの0。その代わりに守備力はブルーアイズと同等の3000だった。

 

「おジャマキングが場に表側表示で存在する限り、宍戸さん。アンタはモンスターカードゾーンを三か所使用不能になる」

 

「……上手いな。ダメージを与えられずとも、こういう方法で行動を妨害して追い詰めてくるとは。三日で猪から名将に化ける男もいる。三年も経てば蛇が龍になるのにも十分というわけか」

 

「ふん、当然だ! 俺はこの三年間、アンタを倒すことを第一の『通過点』としてきたのだからな! クリッターを守備表示に変更、俺はこれでターンエンドだ」

 

「エンドフェイズ時、終焉の焔を発動する」

 

 宍戸丈を打倒することは、万丈目にとってゴールではない。ありとあらゆるデュエリストを倒し決闘王となる。そしてカードゲーム界の頂点に君臨する。これが万丈目のゴールだ。

 万丈目の目指す場所は宍戸丈ではなく、宍戸丈すらも超えた先にある。少なくとも、今の所は。

 


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