宍戸丈 LP4000 手札5枚
場 無し
不動博士 LP4000 手札5枚
場 無し
ペガサス会長の話によれば三年後か四年後あたりに本格的に導入され始めるというシンクロ召喚。
これまで研究チーム内で何度かテストプレイを行われたことはあるそうだが、シンクロデッキが外部のデュエリストとデュエルするのはこれが初めてのことだ。謂わばこれは未来へ羽ばたくシンクロデッキの記念すべき第一戦ともいえるだろう。
その記念すべき初陣を赤の他人であれば勝利で飾ることを祈っていたところだが、生憎とその初陣の相手は自分だ。となると申し訳ないことに初陣早々に敗北を味わわせてやらねばならない。それがデュエリストたる者の務めというものだ。
「ゆくぞ、俺のターン。ドロー!」
シンクロ召喚との対戦経験をもつ丈だが、その回数はたったの二度。
情報アドバンテージというには余りにも心許ない。逆に不動博士は宍戸丈のデュエルをTVで何度か見ているはずだ。情報ではあちらに利がある。
だがその程度の不利は自分のデッキの力で埋めればいいだけだ。
「このカードは手札を一枚捨てることで特殊召喚できる。レベル・スティーラーを捨ててTHEトリッキーを攻撃表示で特殊召喚」
「THEトリッキー……キング・オブ・デュエリストが愛用したカードの一枚、か」
攻撃力は2000。生け贄なしで特殊召喚できるモンスターとしては、サイバー・ドラゴンには劣るが中々の数値である。
けれど丈のデッキにとって攻撃力2000などは平均以下に過ぎない。
「墓地へ捨てたレベル・スティーラーはフィールドのレベル5以上のモンスターのレベルを一つ下げ特殊召喚できる。場にレベル・スティーラーを復活させ、冥界の宝札を発動」
「――――くるか!」
丈のデュエルを見たことがあるだけあって、不動博士は即座に丈のやろうとしていることを理解したようだ。
ニヤリと笑うと、丈は不動博士の考えに正解を与えることにする。
「二体のモンスターを生け贄に捧げ、堕天使アスモディウスを攻撃表示で召喚する。冥界の宝札の効果で二枚カードをドロー!」
【堕天使アスモディウス】
闇属性 ☆8 天使族
攻撃力3000
守備力2500
このカードはデッキまたは墓地からの特殊召喚はできない。
1ターンに1度、自分のデッキから天使族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「アスモトークン」(天使族・闇・星5・攻1800/守1300)1体と、
「ディウストークン」(天使族・闇・星3・攻/守1200)1体を特殊召喚する。
「アスモトークン」はカードの効果では破壊されない。
「ディウストークン」は戦闘では破壊されない。
烏のような翼をもつ天使が不動博士を見下ろす。
アスモディウスのモチーフとなったのは、その名の通り七つの大罪のうち〝色欲〟を司ることで有名なアスモデウスだろう。
しかし堕天使アスモディウスは『色欲』を思わせる色気は皆無で、戦う天使に相応しい勇壮さだけがあった。
「先攻1ターン目からいきなりレベル8の最上級モンスターを繰り出すとは。なるほど……ペガサス会長がテストプレイヤーの相手として強く推薦するわけです。貴方のデッキほどシンクロの相手に相応しいものはない」
「褒め言葉として受け取っておこう。先攻1ターン目は攻撃することはできない。リバースカードを二枚伏せターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」
堕天使アスモディウスを召喚したのは、言うまでもなく先攻1ターン目は攻撃できないからだが、それだけが理由ではない。
その性質上、様々な効果をもつシンクロモンスターを臨機応変にエクストラデッキから呼び出せるのがシンクロ召喚の強味だ。
丈のデッキも最上級モンスターの層の厚さで負ける気はしないが、流石に柔軟性の高さでシンクロに勝るとは思わない。
堕天使アスモディウスは破壊をトリガーに耐性もちのトークンを呼び出すモンスター。不動博士の出方を伺うにはうってつけだろう。
「魔法カード、調律を発動。デッキからジャンク・シンクロンを手札に加える。その後、デッキの上からカードを一枚墓地へ送る」
【調律】
通常魔法カード
自分のデッキから「シンクロン」と名のついたチューナー1体を
手札に加えてデッキをシャッフルする。
その後、自分のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。
デッキトップを墓地へ送った不動博士の顔が変わった。恐らく良いカードが墓地へいったのだろう。
鉄面皮を僅かに変化させて、不動博士はプレイを続ける。
「手札に加えたジャンク・シンクロンを召喚。ジャンク・シンクロンの効果、墓地のレベル2以下のモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。
私は調律の効果で墓地へ送られたドッペル・ウォリアーを守備表示で特殊召喚!」
【ジャンク・シンクロン】
闇属性 ☆3 戦士族 チューナー
攻撃力1300
守備力500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の
レベル2以下のモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
【ドッペル・ウォリアー】
闇属性 ☆2 戦士族
攻撃力800
守備力800
(1):自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。
自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。
ジャンク・シンクロンはチューナーモンスター。これで不動博士のフィールドのモンスターの合計は5。
丈の脳裏にシンクロ召喚のシステムが蘇る。態々下級モンスターを二体も並べたということは、やるつもりだろう。
「よし! 私はレベル2、ドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」
☆2+☆3=☆5
カッと不動博士の目が見開かれると、二体のモンスターが緑色の輪の中に飛び込んでいく。
光の玉となった二体のモンスターはみるみる加速していき、やがて一つの人型を作り出していった。
「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光差す道となれ!」
光が弾け、そこからジャンクの肉体をもつ戦士が飛び出してくる。
「シンクロ召喚! 出でよ! ジャンク・ウォリアー!」
【ジャンク・ウォリアー】
闇属性 ☆5 戦士族
攻撃力2300
守備力1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。
このモンスターを目にするのはダークネスとの戦い以来だ。
ダークネスの出したジャンク・ウォリアーはどこか暗いオーラを漂わせていたが、不動博士のジャンク・ウォリアーにはそんなものはない。
絶望どころか未来への希望に満ちているようだった。
「それがシンクロ召喚か、プロフェッサー不動」
「ええ。しかしジャンク・ウォリアーの力が発揮されるのはここからです。ジャンク・ウォリアーのモンスター効果! シンクロ召喚に成功した時、このカードの攻撃力は自分フィールド上に表側表示で存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする」
「だがフィールドに今ジャンク・ウォリアー以外のモンスターは存在しない」
「それはどうかな。ジャンク・ウォリアーの能力の前に、墓地へ送られたドッペル・ウォリアーの効果が発動!」
「墓地へ送られることで発動する効果!?」
ジャンク・シンクロンの効果で特殊召喚されたドッペル・ウォリアーは効果を無効にされている。だがそれはあくまでフィールドにあった場合の話。
フィールドではなく墓地で発動する効果は問題なく使用可能だ。
「このカードがシンクロ素材として墓地へ送られた時、攻撃力守備力が400のドッペルトークン二体を場に出現させる」
「トークンのレベルは1……。まさか!」
「その通り。ジャンク・ウォリアーが二体の攻撃力を得る。パワー・オブ・フェローズ!」
ドッペルトークン二体の攻撃力の合計は800ポイント。よってジャンク・ウォリアーの攻撃力は800上昇して3100だ。
堕天使アスモディウスの打点を上回った力を得て、ジャンク・ウォリアーが猛々しく拳を突き出す。
「バトルフェイズ。ジャンク・ウォリアーで堕天使アスモディウスを攻撃、スクラップ・フィスト!」
「……!」
宍戸丈LP4000→3900
たかだか100ポイントのライフである。必要経費と割り切って甘んじて受ける。
それに堕天使アスモディウスは無駄死にするわけではない。ジャンク・ウォリアーに粉砕されたアスモディウスは、フィールドに二体のトークンを残す。
「堕天使アスモディウスのモンスター効果。アスモトークンとディウストークンを場に出現させる」
【アスモトークン】
闇属性 ☆5 天使族
攻撃力1800
守備力1300
アスモトークンはカードの効果では破壊されない。
【ディウストークン】
闇属性 ☆3 天使族
攻撃力1200
守備力1200
ディウストークンは戦闘では破壊されない。
図らずもドッペルトークンの効果に意趣返しする形となってしまった。
攻撃可能モンスターが残っていない不動博士には、もうバトルフェイズを続けることはできない。
「バトルを終了。カードを一枚伏せターンエンドだ」
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