宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第176話  狂戦士

宍戸丈 LP3900 手札2枚

場 アスモトークン、ディウストークン

伏せ 二枚

魔法 冥界の宝札

 

不動博士 LP4000 手札3枚

場 ジャンク・ウォリアー、ドッペル・トークン×2

伏せ 一枚

 

 

 

 不動博士が召喚した記念すべき最初のシンクロモンスターであるジャンク・ウォリアー。その鉄拳によっていきなり堕天使アスモディウスが破壊されてしまったが、ここまでは想定の範囲内である。

 ジャンク・ウォリアーの攻撃力は2300だが、特殊能力で800上昇しているため、その数値は3100。モンスターカードにおける一つの指標である3000ラインを超えているため、普通に最上級モンスターを召喚して殴り倒すのは厳しいものがあるだろう。しかしなにも戦闘だけがモンスターを破壊する手段でもないし、逆転の下準備は既に出来ている。後はそれを実行するだけだ。

 

「俺のターン、ドロー! まずはトークンのレベルを一つ下げ、墓地よりレベル・スティーラーを蘇生させる」

 

「トークンと合わせて場にモンスターが三体……。来るか!」

 

「行くともさ。俺はアスモトークン、ディウストークン、レベル・スティーラーの三体を生け贄に捧げ神獣王バルバロスを攻撃表示で召喚する!」

 

 

【神獣王バルバロス】

地属性 ☆8 獣戦士族

攻撃力3000

守備力1200

このカードは生贄なしで通常召喚する事ができる。

この方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力は1900になる。

また、このカードはモンスター3体を生贄して召喚する事ができる。

この方法で召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する。

 

 

 全身に漲るばかりの戦意を纏いし、半馬の獣神が飛び出した。バルバロスは悪魔をも震撼させる雄叫びをあげると、紫電を奔らせている大槍を突き出す。

 妥協召喚可能な最上級モンスターであるバルバロスだが、真の力は三体の生け贄を用いて初めて発揮される。

 レベル・スティーラーは兎も角、最上級堕天使の忘れ形見が二体。生け贄としては上等だろう。

 

「冥界の宝札の効果で二枚カードをドロー。神獣王バルバロスの特殊能力が発動。モンスター三体を生け贄にした召喚に成功した時、相手フィールドの全てを全滅させる。出てきたばかりで悪いがジャンク・ウォリアーはここで退場だ。

 やれ、バルバロス! 敵のフィールドを草木一本たりとも残さず殲滅し焦土と化せ! スパイラル・ディザスターッ!」

 

「くっ……」

 

 邪神に仕える従属神にあって最強と称される獣の一撃である。なんの効果耐性も持たないジャンク・ウォリアーに耐えきれる道理はない。

 だが不動博士とてあのペガサス・J・クロフォードから直々にシンクロ召喚を託され、未来において世界を救う『英雄』の父となる男。相手が従属神でもただでやられるほど軟ではない。

 

「だが私のフィールドをがら空きにはさせない。私が伏せていたカードはリミッター・ブレイク。これは墓地へ送られることで初めて効果を発揮する罠カードだ」

 

「クロノス教諭が使っていた黄金の邪神像と同じ効果か……?」

 

「いいや。似ているが少々違う。場に特殊召喚されるのはトークンではなく、私のデッキに眠るモンスターだ。スピード・ウォリアーを守備表示で特殊召喚する!」

 

 

【リミッター・ブレイク】

通常罠カード

(1):このカードが墓地へ送られた時に発動する。

自分の手札・デッキ・墓地から「スピード・ウォリアー」1体を選んで特殊召喚する。

 

 

【スピード・ウォリアー】

風属性 ☆2 戦士族

攻撃力900

守備力400

このカードの召喚に成功したターンの

バトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。

このカードの元々の攻撃力はバトルフェイズ終了時まで倍になる。

 

 

 バルバロスの破壊によってがら空きとなったフィールドに、デュエリストを守るべく飛び出してくる白いウォリアー。

 ステータスは貧弱そのもので、優れた特殊能力があるわけでもない。けれどこれで不動博士がこのターンでダメージを受けることはなくなった。

 

「天災が草木を消し飛ばしても戦士(ウォリアー)はしぶとく残る、か。人間の底力を垣間見たような気がするよ。バトルフェイズへ移行。バルバロスでスピード・ウォリアーを攻撃する」

 

「すまない、スピード・ウォリアー……。よく助けてくれた」

 

 スピード・ウォリアーが槍に貫かれあっさり消滅する。召喚されて直ぐの退場であるが、自分の主人を守り通したスピード・ウォリアーは心なしか満足そうだった。

 あのカードには精霊が宿っていないので、デュエルモンスターズの精霊というわけではないだろう。だがなにも精霊の宿るカードだけが意思をもっているというわけではない。デュエリストがカードを愛すれば、例え精霊の宿らぬカードでも意思のようなものを持つことがある。これはその一例かもしれない。

 

「バトルフェイズを終了。ターンエンドだ」

 

「スピード・ウォリアーの犠牲は無駄にはしない。私のターン、ドロー。このカードは手札を一枚捨てることで特殊召喚ができる。ボルト・ヘッジホッグを捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚。

 さらにボルト・ヘッジホッグは自分のフィールドにチューナーがいる時、墓地より蘇生することが可能。ボルト・ヘッジホッグを場に特殊召喚」

 

 

【クイック・シンクロン】

風属性 ☆5 機械族 チューナー

攻撃力700

守備力1400

このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。

このカードは「シンクロン」と名のついたチューナーの代わりに

シンクロ素材とする事ができる。

このカードをシンクロ素材とする場合、

「シンクロン」と名のついたチューナーをシンクロ素材とするモンスターの

シンクロ召喚にしか使用できない。

 

【ボルト・ヘッジホッグ】

地属性 ☆2 機械族

攻撃力800

守備力800

自分のメインフェイズ時、このカードが墓地に存在し、

自分フィールド上にチューナーが存在する場合、

このカードを墓地から特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したこのカードは、

フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 

 

 ガンマン風の機械小人に、体にボルトがくっついた鼠。ジャンク・シンクロンに続いて、どことなくジャンクらしい油っぽさを感じさせるモンスターたちだ。そしてチューナーと非チューナーが揃ったということは、ほぼ確実にシンクロをしてくるだろう。

 丈の予想は的中した。不動博士は自分のモンスター達に指示を飛ばすように叫ぶ。

 

「私はレベル2、ボルト・ヘッジホッグにレベル5、クイック・シンクロンをチューニング! 集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す! 光差す道となれ!」

 

 光の環に飛び込んだ二体のモンスターが、力を同調(シンクロ)させて一つのモンスターに新生する。

 

「シンクロ召喚! 吼えろ! ジャンク・バーサーカー!」

 

 まず感じたのはマグマの如く滾った破壊衝動に、強烈なパワーの奔流だ。とても小さな二体のモンスターから誕生したとは思えない力強さは、狂戦士(バーサーカー)という名前に恥じぬものがある。

 レベル5のシンクロモンスターに続いてレベル7のシンクロモンスター。ジャンク・ウォリアーのことを考えるのならば、このバーサーカーにも強力な特殊能力があるとみて間違いない。

 

「ジャンク・バーサーカーの攻撃力は2700。このまま攻撃してもバルバロスには届かない」

 

「……しかしそれを覆す力があると?」

 

「お察しの通りだ。ジャンク・バーサーカーの特殊能力を発動! 自分の墓地に存在するジャンクと名のつくモンスターを除外。その攻撃力の数値分だけ、相手モンスターの攻撃力をダウンする!」

 

「っ!」

 

 

【ジャンク・バーサーカー】

風属性 ☆7 戦士族

攻撃力2700

守備力1800

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

自分の墓地に存在する「ジャンク」と名のついたモンスター1体をゲームから除外し、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択した相手モンスターの攻撃力は、除外したモンスターの攻撃力分ダウンする。

また、このカードが守備表示のモンスターを攻撃した場合、

ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 

 

 不動博士の墓地にはジャンク・ウォリアーとジャンク・シンクロンの二体のジャンクモンスターがいる。ジャンク・バーサーカーにこの効果を使われれば、従属神は力のほとんどを喪失するだろう。

 とはいえ丈には不動博士を止める手段は現状存在しない。口惜しくてもここは黙して見守る他なかった。

 

「私はジャンク・ウォリアーを除外し、バルバロスの攻撃力を2300ポイント下げる」

 

「……これでバルバロスの攻撃力はたったの700。攻撃を受ければ大ダメージだ」

 

「バトル! ジャンク・バーサーカーでバルバロスを攻撃――――」

 

「そうは問屋が卸さない。罠発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にしてカードを一枚ドローする」

 

 ジャンク・バーサーカーによってバルバロスが破壊されるが、その余波は不可視の壁に阻まれて丈に届くことはなかった。

 ダメージの代わりに丈は山札から一枚カードを手札に加えた。

 

「むっ。やはりそう易々とは通してはくれんか。リバースカードを二枚セット、ターン終了だ」

 




 素良きゅんが本気出したらLDSで付き合いの長い不審者こと黒咲さんが敗北したでござる。どうやら素良の本気とはOCGオリジナルのガチカード(デストーイ・シザー・タイガー)を容赦なく使うことだったらしいですね。敗北が重なり小物化が進行していた素良もこの勝利で名誉挽回。そして逆に黒咲さん『俺はいつだって本気でデュエルしている…たとえ「その価値の無い」相手でもな』という滅茶苦茶カッコイイ台詞を言いながら負けちゃった黒咲さんの株が……。やっぱり黒咲さんのネタキャラ化は不可避なのか。

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