宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第177話  かかし

宍戸丈 LP3900 手札4枚

場 なし

伏せ 一枚

魔法 冥界の宝札

 

不動博士 LP4000 手札0枚

場 ジャンク・バーサーカー

伏せ 2枚

 

 

 押しては押し返され、押されてはまた押し返してという攻防が数ターンに渡って続いたが、そろそろ繰り返しも終わりにする頃合いだろう。

 宍戸丈の三ターン目。今ターンのドローで手札は五枚、場には冥界の宝札というドローエンジン。万が一勝負に負けても挽回する余力は十分ある。対する不動博士はリバースカードが二枚あるが手札はゼロ枚だ。ここで攻め切られれば押し返すのは難しいはずだ。ならばここは敢えて虎穴に入る頃合いである。

 

「俺のターン! 手札よりフォトン・サンクチュアリを発動。場に二体のフォトン・トークンを特殊召喚する」

 

「トークンを二体、それも攻撃力2000だと……?」

 

 

【フォトン・サンクチュアリ】

通常魔法カード

このカードを発動するターン、

自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

自分フィールド上に「フォトントークン」(雷族・光・星4・攻2000/守0)

2体を守備表示で特殊召喚する。

このトークンは攻撃できず、シンクロ素材にもできない。

 

 

 この手のトークンにしては2000という高すぎる攻撃力に不動博士は目を見張った。

 確かにこれでこのトークンになんの制約もなければ、制限カード級のパワーカードになるのかもしれない。だが強いカードには一部の例外はあるが、相応のリスクがつきものだ。フォトン・サンクチュアリも例外ではない。

 フォトン・サンクチュアリによって特殊召喚されたトークンは攻撃できず、シンクロ素材にすることも出来ない。またこのカードを発動するターン、光属性以外のモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を封じられる。尤も光属性モンスターであれば召喚も特殊召喚もやりたい放題というわけだが。

 

「……この流れ、また出てくるのか! 最上級モンスターがっ!」

 

「いくぞ。俺は二体のトークンを生け贄に捧げる。闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜!」

 

 

【銀河眼の光子竜】

光属性 ☆8 ドラゴン族

攻撃力3000

守備力2500

このカードは自分フィールド上に存在する

攻撃力2000以上のモンスター2体を生け贄にし、

手札から特殊召喚する事ができる。

このカードが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップ時、

その相手モンスター1体とこのカードをゲームから除外する事ができる。

この効果で除外したモンスターは、バトルフェイズ終了時にフィールド上に戻る。

この効果でゲームから除外したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、

このカードの攻撃力は、そのエクシーズモンスターを

ゲームから除外した時のエクシーズ素材の数×500ポイントアップする。

 

 

 二体のフォトンを喰らい、星々が煌めく銀河を眼に閉じ込めた光の竜が降臨する。彼のブルーアイズにも匹敵する威容に、ソリッドビジョンが震えているかのようだった。

 堕天使アスモディウス、神獣王バルバロス、そして銀河眼の光子竜。いずれも普通のデッキであれば中核を担っても不思議ではない最上級モンスター達。それを次々と、まるで下級モンスターのように召喚していくことこそが宍戸丈の真骨頂だ。

 

「バトルフェイズ! 銀河眼の光子竜でジャンク・バーサーカーを攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!」

 

「罠発動、くず鉄のかかし!」

 

 

【くず鉄のかかし】

通常罠カード

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

その攻撃モンスター1体の攻撃を無効にする。

発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

 

 銀河眼の光子竜が吐き出した銀河のエネルギーが、鉄屑で出来たかかしによって受け止められる。

 一瞬銀河眼の光子竜の効果を発動させるか迷ったが、考えた末に丈はここは様子を見ることにした。

 

「くず鉄のかかしは、相手モンスター1体の攻撃を無効にする。そして発動したくず鉄のかかしは再びフィールドにセットされる」

 

「発動しても墓地へ行かず何度でも再利用が可能な罠カードとはな。また珍しいカードを使う」

 

 しかし守ってばかりでは勝利することはできない。

 銀河眼の光子竜の攻撃は防がれはしたが、別に丈のフィールドのモンスターが破壊されたわけでも除外されたわけでもないのだ。

 くず鉄のかかしは中々に優秀な防御カードだが、ミラーフォースのような逆転を可能にするパワーはない。くず鉄のかかしが与えるのは逆転の時間であって突破口ではないのだ。

 

「リバースカードを一枚場に出してターンを終了する」

 

「私のターン、ドロー。罠発動、針虫の巣窟。デッキトップから五枚のカードを墓地へ送る。さらにモンスターを裏守備表示でセットする。ターンエンド」

 

(どうやら1ターンで逆転のカードは引き当てられなかったようだな)

 

 不動博士の場にはリバースモンスターとバーサーカーで二体のモンスターがあり、バックにはかかしも存在している。

 このターンで丈が最上級モンスターを新たに召喚しても、これだけの布陣であれば最低でもモンスターは一体は残る――――とでも考えているのかもしれない。

 けれど予想通りにいかないのがデュエルモンスターズの醍醐味である。プロデュエリストとして、ここは是が非でも予想を上回らねばなるまい。

 

「俺はエンドフェイズ時に速攻魔法、終焉の焔を発動。二体の黒焔トークンを特殊召喚する。そして俺のターン、ドロー! 二体の黒焔トークンを生け贄に捧げThe supremacy SUNを召喚する。昇れ、闇の日輪!」

 

 

【The supremacy SUN】

闇属性 ☆10 悪魔族

攻撃力3000

守備力3000

このカードはこのカードの効果でしか特殊召喚できない。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、

次のターンのスタンバイフェイズ時、

手札を1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 最高神(ラー)と同じ太陽の名をもつモンスターがフィールドを照らし出す。遍く世界を照らし恵みを与える太陽も、一度牙を剥けばどのような炎をも凌駕する灼熱と化す。

 彼の太陽神と比べれば些か劣るが、こちらの太陽も不死性を持ち合わせている。それを披露するかどうかは今後のデュエル次第であるが。

 

「The supremacy SUN……」

 

「まだだ! 手札より二重召喚を発動。このターン、俺はもう一度通常召喚を行うことができる。おろかな埋葬でデッキのレベル・スティーラーを墓地へ落とし、The supremacy SUNのレベルを二つ下げレベル・スティーラー二体を特殊召喚。

 さぁ照覧あれ。レベル・スティーラー二体を生け贄に捧げ、再びの生け贄召喚だ。千変万化せし機構の竜よ、ここに完全なる力を解き放て! 可変機獣ガンナードラゴンを召喚ッ!」

 

 

【可変機獣ガンナードラゴン】

闇属性 ☆7 機械族

攻撃力2800

守備力2000

このカードは生け贄なしで通常召喚する事ができる。

その場合、このカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

 

 

 銀河の竜と可変する機械竜。二体のドラゴンを控えさせ、中心に坐すは闇の日輪。

 これらを束ねる丈からすれば圧倒的なパワーに爽快感すら覚えるが、これらと敵対している不動博士の受けるプレッシャーは並大抵のものではないだろう。

 だが下手なデュエリストならサレンダーしても不思議ではない重圧の中、不動博士はまったく臆することなく怪物たちを見据えていた。その瞳には丈が嘗て邂逅した未来のデュエリストの面影がある。いや時系列的には、むしろ彼に不動博士の面影があると言った方が良いのかもしれない。

 

「バトルフェイズ。ガンナードラゴンでジャンク・バーサーカーを攻撃、続いて銀河眼の光子竜でセットモンスターを攻撃する」

 

「私が伏せていたのはメタモルポット。互いのプレイヤーは手札を全て捨て五枚カードをドローする」

 

「ふむ」

 

 強力な手札交換により敵にもメリットを与えるメタモルポットであるが、今回に限ってはデメリットが大きかったといえるだろう。なにせ冥界の宝札というドローエンジンによって七枚あった丈の手札は、全てが墓地送りとなってしまったのだから。

 こんなことならば予めカードを伏せてから攻撃するべきだったと後悔するが、メタモルポットを予測できなかったのは自分の失態。ここは甘んじて受け入れるしかないだろう。

 

「最後にThe SUNのバトルだが、これは」

 

「くず鉄のかかしを発動して防ぐ!」

 

「こうなるだろう? バトルは終了だ。ターンエンド」

 




 昨日のことでした。なにげなく今度の禁止・制限を見てみれば、なんとあの混沌の黒魔術師がエラッタされて制限復帰するじゃありませんか。混沌の黒魔術師といえば、カイザーからもらった友情のカードでありながら、禁止カードのせいでカイザーのエルタニンと違ってI2カップ編くらいでしか活躍しなかったキャード。
 だけどもう制限になったので遠慮する必要はありません。今後は普通に混沌の黒魔術師も使います。

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