宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第178話  旧き秩序と新たなる秩序

宍戸丈 LP4000 手札5枚

場 銀河眼の光子竜、可変機獣ガンナードラゴン、The supremacy SUN

伏せ 一枚

魔法 冥界の宝札

 

不動博士 LP4000 手札5枚

場 なし

伏せ 1枚(くず鉄のかかし)

 

 

 

 デュエルモンスターズ界にはデステニードローという言葉がある。

 どうしようもない劣勢、絶体絶命の窮地。それらをたった一枚のドローで逆転勝利を掴んできたデュエリストを目の当たりにした人々が、実しやかに囁くようになったのが始まりであるとされる。そしてそれは決して都市伝説や絵物語の中だけの存在ではない。

 武藤遊戯、海馬瀬人、城ノ内克也。あの伝説の三人を筆頭として、多くのデュエリストが一枚のドローカードによって、勝利の運命を手繰り寄せてきた。

 だが運命を引き寄せる力をもつデュエリストは、プロリーグという一流デュエリストの集う場所においても決して多くはない。

 どうしてほんの一握りのデュエリストは、運命を手繰ることが出来るのか。デステニードローとは本当にただの偶然なのか。

 この手の議論は現在のデュエルモンスターズ界でも度々行われており、これからもされていくだろう。

 そして此処にも『運命の引き』を実現させる力をもつ男が一人。

 

「私のターン……」

 

 魔王と対峙する不動博士は精神を刀のように研ぎ澄まし、裂帛の気迫をもってデッキに手をかけた。

 

「ドロー!」

 

 精神が刀だというのであれば、さしずめカードを引く様は居合の如く。

 

「――――きたか」

 

 ドローしたカードをゆっくり視界に収めた不動博士は、よく注意していなければ見逃してしまうほど微かに笑みを浮かべた。

 

「このカードは相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に手札より特殊召喚ができる。アンノウン・シンクロンを特殊召喚! 更に! チューニング・サポーターを通常召喚する!」

 

 

【アンノウン・シンクロン】

闇属性 ☆1 機械族 チューナー

攻撃力0

守備力0

「アンノウン・シンクロン」の(1)の方法による特殊召喚はデュエル中に1度しかできない。

(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

 

【チューニング・サポーター】

光属性 ☆1 機械族

攻撃力100

守備力300

このカードをシンクロ召喚に使用する場合、

このカードはレベル2モンスターとして扱う事ができる。

このカードがシンクロモンスターの

シンクロ召喚に使用され墓地へ送られた場合、

自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 サイバー・ドラゴンと同じ効果で、小さな機械で出来た眼球状のモンスターが呼び出される。ステータスは貧弱そのものだったが、丈の視線が釘づけになったのはカードに記されたチューナーという文字だった。

 シンクロ召喚するために呼び出したアンノウン・シンクロンだが隣にいるチューニング・サポーターのレベルはたったの1。これではレベル2のシンクロモンスターしか呼び出せない。チューニング・サポーターの効果を使用しても最大でレベル3。とてもではないが丈の三体の最上級モンスターたちを倒すには火力が届かない。ならば、

 

「よし。魔法発動、機械複製術! 自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスターを選択し、選択したモンスターの同名モンスターを二体まで自分フィールドに特殊召喚する。

 私が選択するのは攻撃力100のチューニング・サポーター! よってデッキより二体のチューニング・サポーターを特殊召喚する!」

 

「一気にモンスターを並べてきたか」

 

 

【機械複製術】

通常魔法カード

自分フィールド上に表側表示で存在する

攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。

 

 

 丈にとっては自分の親友であるカイザー亮も使用したカードだ。機械複製術の効果については熟知している。

 追加で二体のチューニング・サポーターが登場したことで、モンスターの数だけならば不動博士が丈を上回った。チューニング・サポーターのレベル2モンスターとして扱う効果を適用させれば、大抵のシンクロモンスターは呼び出せるだろう。

 

「レベル1、チューニング・サポーターにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング。集いし願いが新たな速度の地平へいざなう! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー。フォーミュラ・シンクロン!」

 

 

【フォーミュラ・シンクロン】

光属性 ☆2 機械族 チューナー

攻撃力200

守備力1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

(2):相手メインフェイズに発動できる。

このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。

 

 

 レベル2という理論上最低レベルのシンクロモンスターは、シンクロチューナーという世にも珍しいカードだった。

 時間旅行という常人には埒外の出来事を経験している丈にとっても、まったく初見のカードに目を見開く。

 

「シンクロモンスターの、チューナー。面白いシステムにまた面白いカードを導入したものだ。流石はペガサス会長……」

 

「フォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時、デッキからカードを一枚ドローすることが出来る。さらにチューニング・サポーターがシンクロ素材となった時にもカードを一枚ドローする。私はこれらの効果で二枚カードをドロー!

 魔法発動、二重召喚! このターン、私はもう一度通常召喚を行える。シンクロン・エクスプローラーを通常召喚し効果発動。自分の墓地よりシンクロンと名の付くモンスターを効果を無効にして復活させる! ジャンク・シンクロンを特殊召喚!」

 

 

【シンクロン・エクスプローラー】

地属性 ☆2 機械族

攻撃力0

守備力700

(1):このカードが召喚に成功した時、

自分の墓地の「シンクロン」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 

 ジャンク・シンクロン、シンクロン・エクスプローラー、フォーミュラ・シンクロン、チューニング・サポーター二体。さっきまではがら空きだったというのに、もうモンスターゾーンが一杯になった。

 この展開力はシンクロ召喚ならではだろう。従来のデッキでは不可能であるし、出来たとしてもこれほどまでに下級モンスターを呼び出す旨みがない。

 

「ミスター宍戸。貴方の召喚した重量級モンスター達は確かに強大にして無比。ステータスが貧弱な下級モンスターにとって、それは届かない頂きだった。だがシンクロ召喚という新たな概念は、これらをモンスター同士の結束によって打倒する。

 括目せよ、これがシンクロだ! レベル1、チューニング・サポーターとレベル2として扱うチューニング・サポーターとレベル2のシンクロン・エクスプローラーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!

 集いし闘志が、怒号の魔人を呼び覚ます! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 粉砕せよ! ジャンク・デストロイヤー!」

 

 

【ジャンク・デストロイヤー】

地属性 ☆8 戦士族

攻撃力2600

守備力2500

「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、

このカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで

フィールド上のカードを選択して破壊できる。

 

 

 四体のモンスターが光輪に吸い込まれて一体化する。そうして現れたのは巨大ロボット――――そう形容するしかない戦士だった。

 ジャンク・デストロイヤーはロボットアニメのようにツインアイを輝かせると、丈の場にいる三体の最上級モンスターを睨みつける。

 

「ジャンク・デストロイヤー……レベル8のシンクロモンスター。塵もつもれば山となるという諺は知っているが、ジャンクも集まればスーパーロボットになるというわけか」

 

「チューニング・サポーター二体の効果により二枚カードをドロー! さらにジャンク・デストロイヤーはシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数までフィールドのカードを選択し破壊できる!」

 

「っ! チューナー以外の素材モンスターは三体。つまり……合計三枚のカードを破壊だと!?」

 

「私が選択するのはThe SUN、冥界の宝札、銀河眼の光子竜の三枚! いけ、タイダル・エナジー!」

 

「ちぃ! 俺のモンスターをこうも簡単にっ!」

 

 しかもチューニング・サポーターが手札を補強したため、不動博士には未だに五枚の手札がある。追い打ちをかけるように、場にはチューナーであるフォーミュラ・シンクロンが残っているときていた。

 そして不動博士も宍戸丈も墓地にある例のカードの存在を忘れてはいない。

 

「墓地のレベル・スティーラーの効果発動。ジャンク・デストロイヤーのレベルを一つ下げ、レベル・スティーラーを蘇生する。魔法発動、死者蘇生。チューニング・サポーターを墓地から復活させる。

 レベル2、チューニング・サポーターにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング! 集いし星が大いなる力を呼び起こす! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、アームズ・エイド!

 そして手札のモンスターを一枚捨てることでクイック・シンクロンを特殊召喚。再びジャンク・デストロイヤーのレベルを下げ、レベル・スティーラーを復活させる!

 レベル1、レベル・スティーラーにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング! 集いし絆が更なる力を紡ぎ出す! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、ターボ・ウォリアー!」

 

 

【アームズ・エイド】

光属性 ☆4 機械族

攻撃力1800

守備力1200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとしてモンスターに装備、

または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚できる。

この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、

装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。

また、装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、

破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

【ターボ・ウォリアー】

風属性 ☆6 戦士族

攻撃力2500

守備力1500

「ターボ・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

レベル6以上のシンクロモンスターを攻撃対象としたこのカードの攻撃宣言時、

攻撃対象モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで半分にする。

フィールド上のこのカードはレベル6以下の効果モンスターの効果の対象にならない。

 

 

 フォーミュラ・シンクロン、ジャンク・デストロイヤーに続いて二体のシンクロモンスターが召喚される。

 今ターンだけで四度目のシンクロ召喚。正に怒涛のシンクロラッシュに息をつく間もないとはこのことだ。

 

「アームズ・エイドは1ターンに1度、装備カード扱いとしてモンスターに装備することができる。アームズ・エイドをジャンク・デストロイヤーに装備! 効果によりデストロイヤーの攻撃力は1000ポイントアップする!

 バトル! ジャンク・デストロイヤーで可変機獣ガンナードラゴンを攻撃!!」

 

「くっ……!」

 

 宍戸丈LP3900→3100

 

 ガンナー・ドラゴンも抵抗するが、アームズ・エイドを装備したジャンク・デストロイヤーの一撃によって粉砕された。

 しかしアームズ・エイドを装備したジャンク・デストロイヤーはそれだけでは許してはくれない。

 

「アームズ・エイドの効果。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを撃破した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「フレイム・ウィングマンと同じ効果だと!?」

 

 宍戸丈LP3100→300

 

 4000ポイントのライフが一気に十分の一の300にまで追い詰められた。

 ここにターボ・ウォリアーの追撃が容赦なく向かってくる。

 

「ターボ・ウォリアーで相手プレイヤーを直接攻撃――――」

 

「まだだ、そう簡単に新しいシステムに駆逐されるものか! 手札からクリボーを捨てることでダメージをゼロにする!」

 

『クリクリ~』

 

 丈の命運もここまでと思われた瞬間、手札から飛び出したクリボーが身を挺してデストロイヤーの直接攻撃を防ぎ切った。

 

「やはり簡単には勝たせてはくれないか。バトルフェイズを終了。カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

「俺のターン……」

 

 ジャンク・デストロイヤーに装備されているアームズ・エイドを含めれば三体のシンクロモンスターと、がら空きのフィールドで対峙している丈。図らずも前のターンと立場がまるで逆転しまった。

 だが不動博士と丈とで違うことが一つ。丈のフィールドには既に日の出が約束されている。

 

「ドロー! スタンバイフェイズ時、The supremacy SUNのモンスター効果が発動する! 手札を一枚捨てることで、破壊されたこのカードを復活させる!

 日輪は何度でも昇る、昇り続ける。銀河の中心にありし暗黒の恒星、天空へと昇り暗黒を照らせ!」

 

 自身の効果以外で特殊召喚不可能な最上級モンスターという超重量級は伊達ではない。The supremacy SUNは召喚難易度に見合った恐るべき力を備えている。

 The SUNが墓地より蘇ったことで、状況は四分にまで持ち直した…………のも束の間のことだった。

 

「罠発動、奈落の落とし穴! 相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、そのモンスターを破壊しゲームから除外する!」

 

「!」

 

 

【奈落の落とし穴】

通常罠カード

相手が攻撃力1500以上のモンスターを

召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動する事ができる。

その攻撃力1500以上のモンスターを破壊しゲームから除外する。

 

 

 The SUNが抱える弱点の一つをつかれた。破壊され墓地にいれば何度も蘇る日輪も、ゲームから除外されてしまえば復活することはできない。

 前のターン、不動博士はここまで考えてThe SUNを破壊したのだ。The SUNが蘇る瞬間、日輪を永遠の奈落へと突き落すために。

 

「しかし――――これでもう奈落は消えた! 永続罠発動、リビングデッドの呼び声! 墓地より神獣王バルバロスを復活! バルバロスのレベルを二つ下げ、二体のレベル・スティーラーを特殊召喚!

 更に墓地の光属性モンスター、銀河眼の光子竜と闇属性モンスター、堕天使アスモディウスをゲームより除外。光と闇を供物とし、世界に天地開闢の時を告げる。降臨せよ、我が魂! カオス・ソルジャー -開闢の使者-!」

 

 銀河眼の光子竜と堕天使アスモディウスの力を得て、デュエルモンスターズ界最強戦士と最強の従属神が揃い踏みする。

 カオス・ソルジャーの攻撃力は3000だが除外効果を用いれば、攻撃力3600のデストロイヤーを除外することも可能だ。続いてバルバロスでターボ・ウォリアーを撃破すれば再び逆転することが出来るだろう。だが、

 

「………………」

 

(あの目……)

 

 不動博士の強い瞳に、丈は見覚えがある。

 どんなに劣勢になろうと勝負を諦めない強い意思。ああいう目をしたデュエリストは、絶体絶命の窮地を幾度となくミラクルドローで切り抜けてきたものだ。丈自身そうやって勝利してきた一人である。

 故にここは必勝を期すために、このターンにて決着をつける。

 

「許せ、カオス・ソルジャー。その身、供物とさせて貰うぞ」

 

 丈の言葉に承知した、と示すかのようにカオス・ソルジャーがコクリと頷く。信頼するカードの了承も得たことで、踏ん切りもついた。

 勝利を手にするため魔王はここに暴君を招聘する。

 

「まずはカオス・ソルジャーの効果を発動。ターボ・ウォリアーをゲームより除外する。さらに俺は――――カオス・ソルジャーとバルバロスの二体を生け贄に捧げる!」

 

「なに!? カオス・ソルジャーを生け贄にするだと!?」

 

「海王星に君臨せし冷たき暴君よ。民を、財を、臣下を! 万象悉く喰らい己が武力と化せ! 生け贄召喚、The tyrant NEPTUNE!」

 

 

【The tyrant NEPTUNE】

水属性 ☆10 爬虫類族

攻撃力0

守備力0

このカードは特殊召喚できない。

このカードはモンスター1体を生け贄にして生け贄召喚する事ができる。

このカードの攻撃力・守備力は、生け贄召喚時に生け贄にしたモンスターの

元々の攻撃力・守備力をそれぞれ合計した数値分アップする。

このカードが生け贄召喚に成功した時、

墓地に存在する生け贄にした効果モンスター1体を選択し、

そのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。

 

 

 カオス・ソルジャーとバルバロスの魂を喰らい、海王星を支配する暴君がフィールドを圧巻する。

 手に持っている大鎌は自らに刃向うものを処刑してきたが故か怨念に染まり、鰐の形相は子供が泣き止むほどに恐ろしいものだった。

 

「海王星……プラネットシリーズの一体か……。これが!」

 

「The tyrant NEPTUNEの攻撃力は生け贄にしたモンスターの攻撃力分だけアップする。よってネプチューンの攻撃力は6000ポイント! そしてネプチューンは生け贄にしたモンスター1体の特殊能力を奪い取り、我が物とする! 俺が選ぶのは無論カオス・ソルジャー! 最後に魔法カード、ナイト・ショットでくず鉄のかかしを破壊。

 バトルだ。The tyrant NEPTUNEの攻撃、Sickle of ruin! 二連打ァ!」

 

「くっ――――! 私の、負け……か」

 

「ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ――――なんてな」

 

 不動博士LP4000→0

 

 デュエルに敗北した不動博士は膝をつくが、満足のいくデュエルを出来た達成感からか表情は晴れ晴れとしたものだった。

 丈も同じである。不動博士とのデュエルは、どちらが勝つのか最後の最後まで分からない本当にギリギリの勝負だった。こんなに熱いデュエルは卒業後アメリカに帰国して、キースやレベッカと一戦交えて以来のことである。

 

「流石にお強い。噂に違わぬ実力、感服しました」

 

「そちらこそ。あのペガサス会長から新システムを任されるだけの実力、身を以て思い知らされましたよ。だが初の対外試合に黒星をつけてしまって悪かった」

 

「正々堂々のデュエルの勝敗に文句などありませんよ。それとそう畏まられずとも結構です。告白すればあの魔王ともあろう人物に畏まられると変な気分になってしまう」

 

「そうか、プロフェッサー。なら俺に対しても変な気遣い・遠慮・敬語その他一切は不要だ」

 

「分かりました……いや、分かった。今日は良い日だ。ここへ来て初めて同郷の友人ができた」

 

 デュエルをすれば皆友達――――とまではあのバクラの例もあるので一概には言えないが、少なくともこのデュエルの中で丈と不動博士の間には友情のようなものが芽生えつつあった。

 二人は固い握手をしながら十年来の友のように語り合う。

 

「出来れば明日もここに来てデュエルをしたいところだが、明日からレベッカと用事がある。再デュエルは来週にしよう」

 

「レベッカというとあのレベッカ・ホプキンス女史のことか? アメリカ随一の才媛とデートとは魔王も隅におけないな」

 

「そんなんじゃない。レベッカの祖父のホプキンス教授と一緒に遺跡探検に同行するだけだよ」

 

「ほう。遺跡とは一体どこの?」

 

「メキシコさ」

 

 曰く、其の者は人間に火を齎した。

 曰く、其の者は人間に文明を授けた。

 曰く、其の者は平和の神であり、太陽神であり、創造神でもあったという

 アステカ神話にて語られし蛇神ケツァルコアトルの伝説。五千年周期で冥界の王と死闘を繰り広げてきた人類の守護者。

 その別名を〝赤き竜〟と呼んだ。

 




~おまけ・その頃の天JOIN吹雪さん~

吹雪「真紅眼融合を発動! 真紅眼の黒竜とデーモンの召喚をデッキで融合、悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴンを融合召喚!」

プロA「何? 融合は手札とフィールドに融合素材がなければ使えないのではないのか!?」

吹雪「真紅眼融合はレッドアイズ専用の融合カード。その効果はデッキにも及ぶ!」

プロA「デッキから融合だと? インチキ効果もいい加減にしろ!」

吹雪「バトル! 悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴンでレオ・ウィザードを攻撃、デーモン・メテオ・フレア!」

プロA「ぐぉおおおおおおおお!! だが俺にはまだライフが――――」

吹雪「バトルフェイズ終了時、悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴンのモンスター効果発動。墓地のレッドアイズをデッキに戻し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! 黒炎弾!!」

プロA「ぎゃぁああああああああああああああああああ!!」

トマト「やめろー! こんなのデュエルじゃない!」

MC「決まったぁああああ! 天上院吹雪、これで通算13回目のワンキル勝利だぁぁああああ!! どこまで続くこの快進撃!! この人でなし!!」

トマト「俺が信じるデュエルは、みんなを幸せに……!」

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