宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第185話  竜の行方、そして盗賊の所在

「これが俺が遺跡で託された五枚のカードです、ペガサス会長」

 

 遺跡から戻った丈は、まずペガサス会長に起こった出来事を説明に来た。

 あの遺跡で託された五枚は全てがシンクロモンスター。現在の世界にとっては未知のカードである。これをどうするかにしても、デュエルモンスターズの生みの親であるペガサス会長に話を通しておいたほうがいい。そう考えてのことだった。

 ペガサス会長はテーブルに置かれた五枚のシンクロモンスターを食い入るように見つめながら、震えながら口を開く。

 

「ありがとうございマース。オー、やはり間違いありまセーン。この五枚のカードは、I2社で開発中のどのカードにも当て嵌まらない。なによりもこうして触れているだけで伝わってくるエネルギー。並みの精霊のカードを遥かに超えていマース。

 三幻神のように相応しくない所有者に天罰を下すようなことはなさそうですが、実際に召喚すればどれほどの力を発揮するのか、私にもまるで想像がつきまセーン……」

 

「それについては『時として神をも倒すほど』と言えるでしょう。なにせこの竜達が敵とするのは地縛神と呼ばれる邪神なのですから」

 

 邪神と戦うためのドラゴンに、邪神を倒す力がないはずがない。そうでなければ五千年前の戦いでシグナーがダークシグナーに勝利できたはずがないのだから。

 今もこの世界が存続していることこそがその証明だ。

 

「邪神、冥界の王。因果なものですね。三千年の戦いが終わり、私自身も千年アイテムを喪失したというのに、冥界という概念はいつも私を縛る」

 

 一瞬の恋人との再会、それを代償にして永遠に喪失した片目を抑えながらペガサス会長はか細く言う。

 人間は現在と未来を変えることはできるが、過去を改変することはできない。それこそパラドックスのように神域にすら踏み込んだ叡智を手にしない限りは。

 デュエルモンスターズの創造主であるペガサス・J・クロフォードもそれは同じだ。

 

「ところで宍戸ボーイ。ユーは五枚のカードをどうするつもりですか? 私としてはシグナーなる者達が目覚めるまでユーに預かってもらえれば安心なのですが」

 

「プロフェッサーに、不動博士に預けます」

 

「ホワッツ!? ドクター不動に? 彼は確かにシンクロ召喚開発に関わる研究者で、彼自身も素晴らしいデュエリストですが一体どうして? ユーのことなのだから明確な理由があるのでショウ?」

 

 まったく予想もしていなかった丈の返答に、さしものペガサス会長も驚愕を露わにした。

 

「はい。下手すればタイムパラドックスを起こしかねないので詳しいことは言えませんが、俺は実際にシグナーと会ったことがあります」

 

 不動遊星という名前はここでは出さない。丈は優れたデュエリストではあるが、時間科学についてはまったくの門外漢だ。というよりタイムマシンが現代で開発されていない以上、この時代にタイムトラベルの専門家など誰一人として存在しない。

 故にどんな些細な切っ掛けが原因で歴史が変わるかはまったくの未知数である。例え相手がペガサス会長でも、いや世界に多大な影響力を持つペガサス会長だからこそ、あの闘いで得た情報を迂闊に漏らすことができないのだ。

 

「まさか遊戯ボーイも言っていた時空を超えたデュエルに参加していた中に?」

 

「その通りです。シグナーの痣をもつデュエリストがいました。それで……」

 

 ペガサス会長はそれだけで全ての事情を大まかに察した様子だった。

 

「分かりました。敢えて私も詳しくは聞きまセーン。ユーが信じたドクター不動を、私も信じましょう」

 

「ありがとうございます」

 

 流石に千年アイテムの所有者だった一人だけあって、この手の話に対する理解は深かった。オカルト嫌いの海馬社長ではこうはいかない。

 話は終わった。丈はこれからNDLでの試合があるので、その場を辞する。

 

「プリーズ・ウェイト! ちょっとタイムデース!」

 

 だが退室する直前、ペガサス会長に呼び止められて足を止めた。

 

「会長? なにか?」

 

「その五枚のカード、五千年周期の戦いに備えてI2社の研究チームで是非とも調査をしたいのデース。なので五枚のうち一枚だけ私に預けてもらえませんか?」

 

「分かりました。そういうことなら……」

 

 スターダスト・ドラゴンは止めた方が良いだろう。これはあの遊星のエースカード。絶対的に不動博士に届けるべきだ。

 となると候補は他の四枚。丈は適当に四枚の中からブラックフェザー・ドラゴンを選ぶとペガサス会長に渡す。理由は特にない。

 

「感謝しマース」

 

「では、俺はこれで」

 

 後は残る四枚のカードを不動博士に渡すだけだ。

 不動博士ならきっとカードをシグナーに届けてくれるだろうし、カードのエネルギーを悪用するようなこともしないだろう。

 

 

 

 

「ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハッ! 死霊伯爵の直接攻撃によりテメエのライフは0。受けてもらうぜ、罰ゲーム!!」

 

「ひぃ! や、やめ……あ、のぁあああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッ!!」

 

 裏路地にて響き渡る男の絶叫。闇のゲームに敗北した男は、肉体も魂諸共にバクラへと吸い込まれ血肉となっていく。残ったのはデュエルディスクとそこにセットされていたデッキだけだ。

 腕っ節の強さとデュエルの強さで不良を束ねていた男も、こうなってしまえば形無しである。

 バクラは男のデュエルディスクからデッキを抜き取ると、そこから使えそうなカードを容赦なく抜き取っていく。

 

「ちっ。しけてやがるな」

 

 男のデッキは所謂テーマデッキで、採用されているカードも多くがそのテーマだからこそ活きるばかり。汎用性の高いカードや、バクラのデッキで役立ちそうなカードは少なかったのだ。

 最初は宍戸丈の魂の一部を喰らうことで、幽霊に等しい存在としてどうにか現世にしがみついていたバクラだったが、三幻魔の力を吸い取り、ホムンクルスの器を得ることで、その力は千年リングの所有者だった頃のそれに近付いていた。

 しかし肉体と魔力が戻ってきても、未だに完全に戻らぬものこそがデッキである。

 ペガサス・J・クロフォードは海馬コーポレーションと共に全カードショップなどをマークしている。バクラがそこからカードを入手すれば、所在が一瞬でペガサスや海馬に伝わるのは間違いない。

 嘗てのバクラよりも遥かに『盗賊王バクラ』としての意識の強い現在のバクラは、あっさりとそれを見破り、結果として未だにペガサス達に所在を掴まれないことに成功しているわけだが、そのせいでカードの入手に余計な手間をかける羽目となった。

 

(最初は嘗てのオレ様の使っていたカードを集め、元のオカルトデッキは戻ってきたが、あの時代と今じゃカードプールにも差がある。

 今のデッキでも、そこいらの雑魚には負けはしねえが、いずれ遊戯や宍戸丈を相手するとなればカードパワーの低さは否めねえ。早ぇところデッキを強化しねえとな)

 

 科学技術が日々進歩していくように、デュエルモンスターズも進化しているのだ。

 その昔は極一部を除いて効果をもたないモンスターばかりだった融合モンスターにも、今では強力なモンスター効果をもつモンスターが多く登場している。それに影丸を通じて掴んだ情報では、I2社はシンクロ召喚という新たなシステムを生み出そうともしているらしい。

 昔は昔で強力なカードもあったが、そういったカードは強力さ故に禁止カードに指定されてしまっている。

 バクラのデッキにあるカードは、全てがバトルシティトーナメント時代のもの。はっきり言ってしまえば、バクラのデッキは時代遅れなのだ。

 

「……ちっ。まぁ使えるカードはこの程度か」

 

 必要なカードを抜き取ると、男のデッキを投げ捨てる。

 ここら一帯のアウトローな連中のカードは殆ど狩り尽くした。あまり成果があったとは言い難いが、そろそろこの場からは離れるべきだろう。

 一か所に拠点を置くのではなく、次々に拠点を移し居場所を掴まれないようにする。それが盗賊の基本だ。下手に徒党を組んで居場所を知られでもすれば、また『あの時』のように皆殺しにされる。

 

「おいテメエだなぁ~。ここらでクズな不良共を襲ってはカードを強奪していやがるクズ野郎ってのは」

 

「……あ?」

 

 バクラに野太い声をぶつけてきたのは、警備員の服をきた大柄な男だった。

 

「牛尾哲、警察に新しく創設されたデュエルモンスターズ関連事件専門の警官。警備員(セキュリティ)様だよ。お前が奪ったカードとお前のデッキは俺が徴収する。覚悟しやがれ」

 

「なるほど。テメエもデュエリストなら丁度いい」

 

 大仰な口を聞くだけあって、牛尾哲という男は先程の雑魚よりは上等な精神力をもっている様子だった。

 ならばそのデッキにも少しは使えるカードがあるだろう。

 

「やれるものならやってみな。王様すら殺し切れなかったオレ様を、ただの人間が殺したらテメエがナンバーワンだぜ。さぁ、デュエルだ」

 

「こんな場所でゴミ漁りしているようなクズ野郎が、この俺とデュエルだとぉ? 思い知らせてやるぜ、身の程ってものをよぉ」

 

「「――――デュエル!!」」

 




 シグナーの竜は原作通り……というより予定調和的に不動博士のところに行くことになりました。そしてブラックフェザーだけはペガサスのところに置いてけぼりに。この残されたブラックフェザードラゴンが紆余曲折あってピアスンのところへいくと脳内保管しておいて下さい。
 そして後半久しぶりにして牛尾さんの本格登場です。といっても5D'sのイベントを経験していない牛尾さんなので、ダークナー編後のように丸くはありませんが。大体第一話で登場した時の牛尾さんを思い出して頂けたら。
 とまぁそんなこんなで次はバクラVS牛尾さんによる初代キャラ対決です。次回! オカルトデッキVS○○デッキ。牛尾さんのデッキを見事的中された方には、ボディーガード料20万円を徴収します(大嘘)
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