第190話 決闘舞台
ペガサス会長との会合から一か月後。
NDLでの試合で忙しく自由な時間をとれなかった丈は、漸く粗方の仕事を片付け不動博士を訪ねることができた。要件は言うまでもなく一か月前に預けた四体のドラゴンについて聞くためである。
「丈。君が持ってきた四枚のシンクロモンスターについて凄いことが分かったよ」
なにか新しい発見はあったかという丈の質問に、不動博士は難しい表情で答えた。
未知なるものの探求に胸躍らせる研究者としての高揚、未知なるものの蓋を開け災厄を解き放ってしまうかもという人間としての不安。この二つの相反する感情が、表情にはありありと浮かんでいた。
「というと?」
「材質や絵柄そのものに特筆すべき異常はない。あくまで物的に判断するのならば、これは市販されているカードと何も変わりはしなかった。
だが『異常』なのは召喚反応だ。粗方の調査を終えた私は、デュエルディスクにカードを置いて実際にこの『スターダスト・ドラゴン』を召喚してみたのだが、その際に検知された召喚反応が異常な数値を見せた。これがその時のデータだ」
「どれどれ……。通常のシンクロ召喚時の召喚反応の300倍じゃないか!?」
召喚反応の強さはカードパワーのみならず、デュエリストの持つ魂の強さによっても決まる。なので同じモンスターを召喚するのでも例えば海馬瀬人と近所の老人Aでは雲泥の差があるのだ。
不動博士は一流のデュエリスト。更にスターダスト・ドラゴンが優れたカードなら、この二つの相乗作用によって召喚反応が高まるのは寧ろ自然な事と言える。しかしそれにしても三百倍というのは異常な数値だった。
「更に『興味深い』ことがまだある。この『スターダスト・ドラゴン』を召喚した後、私は『レッド・デーモンズ・ドラゴン』のシンクロを行った。そしたらこういう結果になったのだ……」
「!」
資料にはレッド・デーモンズ・ドラゴンの召喚反応は通常の600倍――――スターダスト・ドラゴンの倍だったという驚くべき事実が記載されていた。
そして更にレッド・デーモンズ・ドラゴンに加えてブラックローズ・ドラゴンを召喚した際に反応が計測不能になったとも。
「最初は単にレッド・デーモンズ・ドラゴンとブラックローズ・ドラゴンの召喚反応がスターダストを上回るだけかとも思った。だがそれにしても計測不能というのは異常だ。
そこで私は一旦実験を中断し、改めてレッド・デーモンズ・ドラゴンとブラックローズ・ドラゴンを単独で召喚してみたところ、共に召喚反応は通常の300倍。スターダストとまったくの同値だったのだ」
「つまりシグナーの竜は?」
「ああ。仲間の竜と力を合わせることで、力を無限に高めていく性質をもっている可能性が高い。
過去のデータによれば彼の〝決闘王〟が三幻神を召喚した際にも、召喚反応は計測不能となったそうだ。シグナーの竜も三体まで場に呼び出されたことで、三幻神と同じ領域にまで踏み込んだ。
だとすればもしもシグナーの五竜が全て結集すれば、その力は神をも凌ぐやもしれない」
「……そうか。プロフェッサー、このことは」
「分かっている。決して口外はすまい。このカードに宿る力のことを知っているのは、研究チームでも私とルドガーとレクスの三人だけだ」
「感謝する」
デュエルの強さが社会的ステータスにも繋がる現代。強力なカードは例え奪ってでも手に入れようとする輩は少なくはない。
警察組織にデュエル専門の
そんな中に神をも殺す竜の存在が公になれば、確実にそのカードを強引な手段を用いても手に入れようとする連中が出てくるだろう。
ネオ・グールズは壊滅し、新生ネオ・グールズ(仮名)はただのアホの集団と化しているので大した脅威ではないが、グールズ以外にも巨大な影響力をもつデュエルギャングは数多い。
デュエルギャングにも最初からそうだったものと、元々あったマフィア組織がデュエルモンスターズも扱うようになった二つのパターンがあるが、ここは関係ないので省略する。
ともかく『シグナーの竜』は下手に扱えば世界を騒動に巻き込みかねない爆弾なのだ。もしかしたらシンクロ召喚というシステム以上に秘匿すべき価値があるとすら言えるかもしれない。
「っと、プロフェッサー。今は何時だ?」
「ん? もう直ぐ朝の二時だが、それがどうかしたかね?」
「――――しまった」
自分のうっかりミスに気付いた丈は、思わず天を仰いだ。
「一体全体どうしたのだ? 私で良ければ話を聞くが……」
「TVの録画をし忘れたんだ! ここと日本との時差は16時間。もう直ぐ日本は午後の六時……。その時間に亮の試合があったんだよ」
「亮というと四天王の一人のカイザー亮か! だが彼とてプロ、試合なんて月に何度もやっているだろう。そんなに見逃せない試合だったのか?」
「ああ。対戦相手はエド・フェニックス。史上最年少のプロデュエリストで、一応今年から俺の後輩になる男だ」
カイザー亮とエド・フェニックス。
片やアカデミアの四天王に名を連ね、プロでも常勝を誇るカイザー。片やアカデミアに入る以前よりプロでの実績を積んできた最年少のプロデュエリスト。
どちらも次世代を代表するプロデュエリスト達が、極東の島国でぶつかろうとしていた。
VSエド・フェニックス戦より三日前。
カイザー……否、丸藤亮は嘗ては住み込みで修行していたサイバー流道場を訪れていた。
『亮。貴方ならば、いつか再びここへやって来ると思っていました』
デュエル・アカデミアではただの生徒と教師という関係であった鮫島校長は、この道場の中に限っては別の顔を見せる。
マスター鮫島。デュエルモンスターズ黎明期に名を馳せた、サイバー流の師範にしてカイザー亮の師。
彼は人生の辛みを噛み締めた、どこか達観した表情で弟子を迎え入れた。
『師範。俺はサイバー流を、いやサイバー流と共に更なる進化の高みへと上り詰めたい。だから俺に託して頂きたい。サイバー流の歴史に封じられた、あのデッキを――――』
『既に私を遥かに越え、伝説にすら迫り得る実力を得ながらも更なる力を欲しますか?』
『藤原は一時ダークネスの力に憑りつかれながら、これを克服して折れぬ強さを得た。吹雪もまたダークネスの誘惑を心の強さで断ち切り、闇の力を得た。丈は三邪神を受け入れ、彼等を統べた。
故に俺が更なる進化を遂げるには、サイバー流の闇ともいえる裏デッキを受け入れ、その力を我が物とせねばならない。だからどうか』
『分かりました。そこまでの覚悟があるのであれば止めても無駄でしょう。余りにも危険故に一度は封じた裏デッキ。亮、貴方に託しましょう』
『師範!』
『それと私のピケクラも――――』
『い り ま せ ん』
そして師匠よりサイバー流の闇を託された亮はここに立っている。史上最年少プロデュエリストであるエド・フェニックスとの戦いの場へ。
カイザー亮とエド・フェニックス両名が高い人気をもっていることや、事前にエドがこの戦いで隠してきた自身の本当のデッキを使うと明言したこともあって、会場である海馬ドームは満員御礼。立ち見すらプレミアがつく有様だった。
これほどの大観衆の前でデュエルをすることは、プロリーグのランキング一位決定戦でもなければそうそう見かけることは出来ないだろう。
『いよいよ実現した本日の一戦。プロ入りしてから連戦連勝、常勝のカイザー亮。そして30戦30勝、最近トップテン入りも果たしたプロリーグの貴公子エド・フェニックス。一体今日はどんなデュエルを見せてくれるのか!』
『カイザーの使うデッキは一撃必殺の火力をもつサイバー流だとして、エド・フェニックスの本当のデッキはその火力にどう立ち向かうのか。そこが勝敗を分けるカギとなるでしょうね』
実況と解説の声が響く。
カイザーは大観衆のプレッシャーなど気にもとめず、それはエド・フェニックスも同様。銀髪にシルバーのスーツという実況の言った通りの貴公子然とした容貌は、このプレッシャーを愉しんでいる風でもあった。
「君がエド・フェニックスか。デュエル・アカデミアでは入れ違いになってしまったな」
最年少プロという肩書をもつエド・フェニックスは十五歳。デュエリストでなければハイスクールで学生をしている年齢である。
エド本人は学生などせずプロに専念するつもりだったらしいが、マネージャーの強い勧めもあって今年デュエル・アカデミアに特別待遇の生徒として入学したのだ。
つまりは十代や万丈目の後輩である。
「こちらこそ。アカデミアの〝四天王〟の噂は聞いていますよ。今日はお手柔らかに〝先輩〟」
「「――――デュエル!」」
最近ヘルカイザーよろしく勝利をリスペクトして――――コンマイに魂を売ったともいう――――事故率が有り得ないほどハンパない冥界軸最上級多用混沌軸にクリフォートを取り入れたら、なんか成熟期から究極体にワープ進化して、アホみたいに安定力と征圧力が上昇しました。最上級帝とか銀河眼の光子竜とか混沌の黒魔術師とか入れている上に、スキルドレインも抜いているので、勿論純粋なクリフォートと比べれば安定力とか諸々が劣るのですが、その分嵌まった時の火力がえらことになってます。三幻神と三邪神が安定して出せるってどういうことなの……?