宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第199話  離別

丸藤亮 LP2500 手札1枚

場 サイバー・ダーク・ホーン

 

早乙女レイ LP700 手札2枚

場 無し

魔法 神の居城―ヴァルハラ

罠 王宮のお触れ

 

 

 

 

 サイバー・ダークの直接攻撃に精神を抉られ、全身を苦痛に苛まれているレイ。しかしレイは気合い――――レイに言わせれば乙女の一途な想いで痛みを堪えながらデッキトップに指をかける。

 恋愛にはまったく興味を示してこなかった亮であるが、ここまでの気迫を見せられては、恋の力も馬鹿にできないと認めざるをえない。それに一途さが生み出す力も。

 

「ボクの…………ターンッ! ドロー!」

 

 そしてデュエリストの想いにデッキも応える。土壇場で逆転のカードを引き当てたレイの目が希望に輝いた。

 フィールドに顕現しているヴァルハラの門が開く。新たなる天使を決闘場へと迎えるために。

 

「やっときたよ。亮サマのサイバー流を封じるための切り札が! このカードでボクの想いを亮サマに届けてみせる」

 

「自信がありそうだな。来い、レイ。俺は逃げも隠れもしない。お前の切り札も正面から受け止めてやる。来い――――!」

 

「まずボクはヴァルハラの効果発動。二体目のスペルビアをボクの場に特殊召喚する!」

 

 

【堕天使スペルビア】

闇属性 ☆8 天使族

攻撃力2900

守備力2400

このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、

自分の墓地に存在する「堕天使スペルビア」以外の

天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

 スペルビアの攻撃数値はサイバー・ダーク・ホーンを凌駕している。だがまさかあれだけ大口をたたいて、サイバー流封じがこれだけの筈がないだろう。

 つまりスペルビアはヴァルハラの効果を無駄にしないためのオマケ。レイの言う『切り札』は別にある。

 

「ボクの墓地には二体のヘカテリス、堕天使スペルビア、堕天使ディザイアで合計四体。そしてボクの手札にいる最強の『天使』は天使族モンスターが四体の時に特殊召喚することができる!」

 

「なに? その召喚方法は、まさかお前のサイバー流封じとは!?」

 

「墓地に眠る天使たち、力を貸して!」

 

 二体のヘカテリス、スペルビアとディザイアが自身の輝きをレイの手札へと送った。

 四体の天使達の光を受け、神聖四文字にて語り継がれる『神』に仕えし大天使がフィールドに降臨する。

 

「現れて! 大天使クリスティア!!」

 

 

【大天使クリスティア】

光属性 ☆8 天使族

攻撃力2800

守備力2300

自分の墓地に存在する天使族モンスターが4体のみの場合、

このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、

自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を手札に加える。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

お互いにモンスターを特殊召喚する事はできない。

このカードがフィールド上から墓地へ送られる場合、

墓地へは行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。

 

 

 薄赤色の六枚羽と白亜の四肢。ヴァルハラにあるその姿は正に聖書の景色の再現そのもの。

 クリスティアの光がフィールドに降り注ぎ、それはサイバー・ダークの暗黒すらも浄化していくかのようだった。

 

「大天使クリスティアがいる限り互いのプレイヤーは一切の特殊召喚を封じられる。亮サマのサイバー流の切り札は融合召喚。そしてサイバー・ドラゴンも容易な特殊召喚を最大の武器にしたモンスター。つまり特殊召喚が出来なくなればサイバー流はまともな動きが出来なくなるも同然。これで亮サマのサイバー流は封じたよ!」

 

「成程、な」

 

 四天王の一人、藤原とのデュエルで最も手古摺った一枚がこのクリスティアだった。

 通常召喚だけで最上級モンスターを呼び出そうとすれば、ダブルコストモンスターを利用しても最低2ターンはかかる。一定レベル以上のデュエリスト同士の戦いでは、召喚したモンスターが次のターンに残っていないのは日常茶飯事であり、そのため特殊召喚はほぼ全てのデッキにあるギミックだ。故にこそ特殊召喚を封殺するクリスティアはサイバー流のみならず他多くのデッキにとっての天敵といえるだろう。

 しかも悪いことにクリスティアの攻撃力は2800。特殊召喚なしで戦闘破壊するには高い数値だ。

 

「バトルだ! 堕天使スペルビアでサイバー・ダーク・ホーンを攻撃!」

 

「くっ……!」

 

 丸藤亮LP2500→2100

 

 堕天使スペルビアの漆黒の翼による攻撃。サイバー・ダーク・ホーンはそれを装備しているハウンド・ドラゴンを盾にすることで防ぎ、自身は破壊を逃れる。

 だがダメージはそのままのため亮のライフポイントが400削られた。

 

「サイバー・ダーク・ホーンは装備しているモンスターを犠牲にすることで戦闘破壊を免れる……」

 

「けどハウンド・ドラゴンを失ったサイバー・ダーク・ホーンの攻撃力はたったの800。やって、クリスティア!」

 

「――――っ!」

 

 丸藤亮LP2000→100

 

 一体こんなことを誰が予想しただろうか。

 アカデミアの四天王に名を連ね、若くして伝説になったデュエリストが。プロリーグに入るや否や常勝無敗伝説を築き上げた帝王が。まだ中学生にすらなっていない少女に絶体絶命の状況にまで追い詰められるなどと。

 カイザー亮の信奉者達は下手すれば幻覚であると疑うかもしれない。だがこれは紛れもない現実の光景だ。

 丸藤亮は追い詰められていた。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 しかし追い詰められた亮に悲壮感はなかった。

 七年間を一途に丸藤亮という男に恋焦がれてきた早乙女レイ。彼女とのデュエルを通して亮にも分かりかけてきたことがある。サイバー流裏デッキ、サイバー・ダークの力を制御するための突破口が。

 あとほんの少し、指がほんの少し伸びる程度で帝王の手は裏へと届く。そのためにもこのデュエルに負ける訳には行かない。

 

「……モンスターをセットする。ターンエンドだ」

 

「あの亮サマが裏守備モンスターを出しただけでターンを終えるなんて」

 

 四天王の中でも最も苛烈な攻勢に定評のあるカイザー亮らしからぬターン。これによりレイは自分に勝利の女神がほほ笑んでいることを自覚する。だが女神というのは気紛れだ。今のうちに倒し切らなければ今度はこちらが追い込まれる――――ということも同時にレイは悟った。

 

「よし。ボクのターン、ドロー! ボクはシャイン・エンジェルを召喚する。そしてこのままバトルフェイズに入るよ!」

 

 亮の残りライフはたったの100ポイント。あと一度でも戦闘ダメージを与えることができれば、恐らくレイの勝ちは確定する。

 

(裏守備表示で出したということは、あのカードはサイバー・ヴァリーじゃない。それに亮サマのデッキには人食い虫みたいなリバースモンスターは入っていなかったはず。この攻撃で押し切る!)

 

 デュエルモンスターズというのはコンディションや運によって勝敗の左右されるゲーム。今回レイがあのカイザー相手に良い勝負を出来ているのは、レイが絶好調なのに対して亮が絶不調だからに過ぎない。両者の間には易々とは埋めがたい差が広がっている。

 だがこの一瞬、このデュエルに限り早乙女レイは七年間ただ追い続けるだけだった帝王の背中に追いつこうとしていた。

 

「バトル! 大天使クリスティアで裏守備モンスターを攻撃! この想い、届け!」

 

「リバースしたのはメタモルポット! 互いのプレイヤーはデッキからカードを五枚ドローする」

 

「手札を増やしたところでもう遅いよ! これでボクの勝ちだ! シャイン・エンジェルで亮サマを直接攻撃――――」

 

「それはどうかな。どうやら俺の悪運はつきていないらしい。レイ、お前の直接攻撃宣言時に俺は手札の速攻のかかしを捨てる」

 

「なっ!」

 

 速攻のかかしは直接攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させる手札誘発の一枚。

 バトルフェーダーと違いフィールドに特殊召喚されることはないが、だからこそ大天使クリスティアの効果にも引っかかることはない。

 

「これでバトルフェイズは終了される。さぁまだお前のターンは続いているぞ、レイ」

 

「…………ボクは、ターンエンド」

 

 吹いていた風がやみ、流れが変わる。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 亮の手札は六枚。うち一枚はパワー・ボンド。亮が信じる最強の融合カードであるが、大天使クリスティアがフィールドに存在している限り『融合』は封じられている。

 他の五枚はいずれもサイバー・ドラゴン系列のカード。中にはフィールドのカードを一枚破壊するエヴォリューション・バーストもあった。サイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚して効果を発動、サイバー・ドラゴン・ツヴァイのカード名をサイバー・ドラゴンに変更することで、大天使クリスティアを破壊することは可能だろう。そうすればパワー・ボンドによる融合召喚が可能になり、この戦況を覆すことができるはずだ。だが、

 

「俺のこれまでの人生は常にサイバー・ドラゴンと共にあった……。サイバー・ドラゴンと寝食を共にし、苦楽を共有してきた。生まれる時は違えど、死ぬ時まで共にあろうと誓いもした……」

 

「亮サマ?」

 

「だが許せ、サイバー・ドラゴン。更なる高みへと昇るため、俺はお前たちを一時捨てる! 手札より魔法発動、手札抹殺! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分だけカードをドローする!」

 

 レイとのデュエルで亮は知った。ただ一つのことを求めることの強さを、ただ一つを想うことの尊さを。

 亮は表と裏、両方を一度に扱おうとした。けれどそれでは駄目なのである。表と裏を一つとするには、まず裏と一対一で向かい合い、然る後に表と向かい合う必要がある。一度に二つを求めるなど土台不可能な話だったのだ。

 

「ゆくぞ! これが俺の答えだ! サイバー・ダーク・エッジを召喚、効果によりハウンド・ドラゴンを装備! 攻撃力を1700ポイントアップさせる!」

 

 

【サイバー・ダーク・エッジ】

闇属性 ☆4 機械族

攻撃力800

守備力800

このカードが召喚に成功した時、

自分の墓地のレベル3以下のドラゴン族モンスター1体を選択し、

装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。

このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

その場合、このカードの攻撃力はダメージ計算時のみ半分になる。

このカードが戦闘によって破壊される場合、

代わりにこのカードの効果で装備したモンスターを破壊する。

 

 

 サイバー・ダーク・エッジの攻撃力は2500。スペルビアもクリスティアも倒せはしない。

 けれどデュエルに勝つのに必ずモンスターを倒す必要はないのだ。要はデュエリストを倒せればそれでいい。そしてこのカードはそのための能力をもっている。

 

「サイバー・ダーク・エッジのモンスター効果。このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することが出来る。代償に攻撃力は半減するがな」

 

「ぼ、ボクのライフは残り700!?」

 

「終わりだ。サイバー・ダーク・エッジよ、レイの懐にある勝利をもぎ取り、我が喉を勝利の美酒で潤すがいい! ダークネス・バースト!!」

 

「きゃ、あああああああああああああああああ!」

 

 早乙女レイLP700→0

 

 サイバー・ダーク・エッジの攻撃力は半減しても1250。700のライフポイントを削り切り0にする。ソリッドビジョンが消失し、レイは膝をついた。

 最後に立つのは光を捨て去り、闇を受け入れた孤高の帝王が唯一人。

 

 




カイザー「俺達、暫く距離を置いた方がいいと思うんだ……」

表サイバー「!?」
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