宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第3話   出た!ジョーさんのマジックコンボナリよ!

(く、クールになれクールになれ! ああ落ち着け。相手がただカイザーだっただけで、そこまで慌てることじゃないじゃないかっ! そうだよな。慌てない慌てない。俺は落ち着いている。冷静に冷静に……)

 

 バクバクと鳴る心臓の鼓動が喧しい。

 丈はどうにか表面上平静そうな表情を取り繕いながらも未来のカイザー、丸藤亮を見る。

 カイザー亮なのだと思って見てみれば、成程何処かで見た事があるがある顔立ちだ。しかし亮の髪形は武藤遊戯ほど独特でないことと、顔が二次元のアニメから三次元の人間になっていたので全く気付かなかった。

 

「どうしたんだ顔色が悪そうだが……」

 

「なんでもない! 無問題だ!」

 

 怪訝そうにこちらの様子を伺うカイザーに慌てて何でもないと取り繕う。

 相手がカイザーだったからといって申し込んだデュエルを途中で止める事は出来ない。余りにも怪しすぎるし相手にも失礼だ。それに幾らカイザーとはいえまだ小学生くらいの筈。ならば実力も原作よりは未熟かもしれない。勝機はそこにある。

 

「それならいいが……。サイバー・ドラゴンの召喚は特殊召喚。よって俺にはまだ通常召喚の権利が残っている。俺はサイバー・フェニックスを攻撃表示で召喚!」

 

 亮の手札から炎を纏った不死鳥が姿を現した。しかし伝承に伝わるただの不死鳥とは違う。力強い四肢は皮膚ではなく鋼鉄の鎧。サイバーという名の通り機械の不死鳥だった。

 

「妥協召喚したバルバロスの攻撃力は1900、俺のサイバー・ドラゴンが上回っている。バトル! サイバー・ドラゴンで神獣王バルバロスを攻撃、エヴォリューション・バースト!」

 

「させない。リバースカードオープン!」

 

「フ……なにかしらの罠を用意していたのは読んでいた。サイバー・フェニックスの効果、このカードがフィールド上で攻撃表示でいる限り、俺の場の機械族モンスターを対象にする魔法・罠カードの効果を無効にする」

 

 

【サイバー・フェニックス】

炎属性 ☆4 機械族

攻撃力1200

守備力1600

このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、

自分フィールド上に存在する機械族モンスター1体を対象とする

魔法・罠カードの効果を無効にする。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが

戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、

自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。

 

 

 サイバー・フェニックスの効果を聞いた丈だが、そこに焦りはなかった。不敵な笑みさえ浮かべていた。

 何故ならば丈がリバースしていたカードは相手モンスターを対象にするカードではないからである。サイバー・フェニックスは相手フィールドの機械族モンスターだけに作用する効果。丈のフィールドのモンスターに使用する魔法・罠カードに対しては無力だ。

 

「俺は速攻魔法、禁じられた聖杯を発動」

 

 

【禁じられた聖杯】

速攻魔法カード

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は

400ポイントアップし、効果は無効化される。

 

 

「モンスターの効果を無効にし攻撃力を上げる速攻魔法……。これでバルバロスの攻撃力は1900に400が加算され2300ポイント。――――――いや違うッ!」

 

 バルバロスに禁じられた聖杯を使う真の意味を理解した亮が目を見開く。

 フィールドに現れた杯が傾き、バルバロスに透き通った水を浴びせる。聖杯の水を浴びたバルバロスはその効果を失った代わりにその攻撃力を上昇させた。

 だがそれだけでは終わらない。

 丈が口を開く。

 

「バルバロスはモンスター効果によって生贄なしで妥協されたモンスター。その効果によって元々の攻撃力は1900にまでダウンしていた。しかし禁じられた聖杯によりその効果を消し去られた今、バルバロスは本当の力を取り戻す!」

 

 カードテキストに記されたバルバロスの攻撃力は3000。

 そこへ禁じられた聖杯の効果が加わり攻撃値は3400ポイントまで跳ね上がる。

 

「バルバロスの迎撃、トルネード・シェイパー!」

 

 バルバロスが持っていた大槍でサイバー・ドラゴンの胴体を貫く。キシャーという断末魔をあげながらサイバー・ドラゴンは破壊され墓地へと送られていった。

 

 丸藤亮 LP4000→2700

 

 サイバー・ドラゴンとバルバロスの攻撃力の差は1300。

 よって亮のライフから1300ポイントが減らされた。

 

「やるな。まさかそんな手でモンスターのデメリットを打消し、俺にダメージを与えるとは。宍戸丈、久々に俺も熱くなれそうだ。俺はリバースカードを二枚セット。ターンエンドだ」

 

 

宍戸丈 LP4000 手札4枚

場 神獣王バルバロス

伏せカード0枚

 

丸藤亮 LP2700 手札2枚

場 サイバー・フェニックス

伏せカード2枚

 

 

 ターンが亮から丈へと移る。

 丈としてはここで新たなモンスターを召喚して、サイバー・フェニックスを撃破しプレイヤーへの直接攻撃を加えたいが哀しいかな、今手札に召喚できるモンスターはいない。 

 幸いにして禁じられた聖杯で一度効果を無効化されたバルバロスは攻撃力3000のままだ。3000という数値は彼のブルーアイズと互角であり、そうそう破られるものではない。ここは次への布石を整えておくべきだろう。

 

「俺はバルバロスでサイバー・フェニックスを攻撃、トルネード・シェイパー!」

 

「ダメージ計算時、罠カード発動。ガード・ブロック!」

 

 

【ガード・ブロック】

通常罠カード

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「このカード効果で俺は戦闘ダメージを0にし、俺はカードを一枚ドローする。更にサイバー・フェニックスの効果、このカードが戦闘で破壊された時一枚ドローする。俺はもう一枚ドロー」

 

 亮の手札が一気に二枚から四枚にまで回復した。

 強欲な壺などのドローソースを一切使わずに二枚のカードを補充するタクティクスは流石未来のカイザーというべきか。

 

「だがこれでそっちの場のモンスターはゼロ。俺は手札より魔法カード、迷える仔羊を発動! 場に仔羊トークンを二体守備表示で出現させる」

 

 

【迷える仔羊】

通常魔法カード

このカードを発動する場合、

このターン内は召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

自分フィールド上に「仔羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を

2体守備表示で特殊召喚する。

 

 

「攻撃力と守備力がゼロのトークン。次のターンに上級モンスターを召喚するための布石を整えたようだな」

 

 二体の子羊トークンを見た亮が冷静にそう判断する。

 その読み正解だった。この仔羊トークンは次のターン、手札に眠る最上級モンスターを場に召喚させるための生贄要因だ。

 最上級モンスターを召喚する場合、ちまちま通常召喚を駆使して生贄を用意しようとすれば合計で3ターンかかってしまうが、トークンを使えば一瞬で二体もの生贄を確保することが出来る。モンスターではなくトークンという生贄要因、それが最上級モンスターを多く採用するために丈がとった戦術だった。

 尤も仔羊トークンを場に出現させたターン、自分は召喚・反転召喚・特殊召喚できないのがネックといえばネックだが。

 

「俺はリバースカードを二枚伏せターンエンド」

 

「次はこちらの番だ。俺のターン! 天使の施し。三枚ドローし二枚捨てる。そして相手の場にのみモンスターがいる為、俺は再びサイバー・ドラゴンを場に特殊召喚する。来い、サイバー・ドラゴン!」

 

「二枚目のサイバー・ドラゴンが出て来たか……」

 

 幾ら小学生とはいえ、サイバー・ドラゴンは既にデッキに三枚あると考えてよいだろう。融合デッキには多種多様なサイバー・ドラゴンの融合体もある筈だ。

 中でも攻撃力4000で貫通能力までもつサイバー・エンド・ドラゴンだけは出させてはいけない。あの火力は危険だ。丈のデッキにサイバー・エンドとまともに戦って勝てるモンスターはいない。

 

「手札より魔法カード、エヴォリューション・バーストを発動! このカードは場にサイバー・ドラゴンがいる時、フィールド上のカードを一枚破壊できる」

 

 

【エヴォリューション・バースト】

通常魔法カード

自分フィールド上に「サイバー・ドラゴン」が表側表示で存在する場合のみ

発動する事ができる。相手フィールド上のカード1枚を破壊する。

このカードを発動するターン「サイバー・ドラゴン」は攻撃する事ができない。

 

 

「俺が選択するのは当然バルバロス! やれサイバー・ドラゴン、バルバロスを破壊しろ」

 

 サイバー・ドラゴンから吐き出された光線がバルバロスを消し飛ばす。しかし魔法効果による破壊のため丈のライフは無傷だ。

 

「そして手札よりプロト・サイバー・ドラゴンを召喚。このカードはフィールドに存在する時、カード名をサイバー・ドラゴンとして扱う」

 

 

【プロト・サイバー・ドラゴン】

光属性 ☆3 機械族

攻撃力1100

守備力600

このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、

カード名を「サイバー・ドラゴン」として扱う。

 

 

 攻撃力1100のモンスターを敢えて攻撃表示で出す。

 生贄要因である仔羊トークンを一掃するためとも考えられるが、丈は直感でそれ以上にヤバいことが起きるであろうことを予感していた。

 そして予感は的中する。

 

「手札より融合のカードを使用し場のサイバー・ドラゴンとプロト・サイバー・ドラゴンを融合。融合召喚、起動せよサイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

 二体のモンスターが混じり溶け合い、サイバー・ドラゴンが合体した双頭のサイバー・ドラゴンがフィールドに召喚される。

 その攻撃力はサイバー・ドラゴンを超える2800。攻撃力こそバルバロスには及ばないものの、サイバー・ツイン・ドラゴンには強力なモンスター効果がある。

 

 

【サイバー・ツイン・ドラゴン】

光属性 ☆8 機械族・融合

攻撃力2800

守備力2100

「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」

このカードの融合召喚は、上記のカードでしか行えない。

このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

「サイバー・ツイン・ドラゴンで二体の仔羊トークンを攻撃、エヴォリューション・ツイン・バースト、第一打ァ!」

 

 守備力0の子羊トークンにサイバー・ツイン・ドラゴンに抵抗する力などない。あっさりとその身を散らせ消滅した。

 

「そして二連目、エヴォリューション・ツイン・バースト、第二打ァ!」

 

「くっ」

 

 丈の場から全てのトークンが消えた。

 しかしまだ丈には手が残っている。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

「このエンドフェイズ時、速攻魔法発動! 終焉の焔!」

 

「終焉の焔?」

 

 

【終焉の焔】

速攻魔法カード

このカードを発動するターン、

自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。

自分フィールド上に「黒焔トークン」

(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。

このトークンは闇属性モンスター以外の生贄召喚のためには生贄にできない。

 

 

「やるな。仔羊トークンは囮で、まだ本命を隠していたとは」

 

「その通り。俺は新たに場に黒焔トークンを二体出現させる。これで生贄要因は確保だ。俺のターン、ドロー!」

 

(――――――――――きたっ!)

 

 引いたカードは魔法カード。

 自然と丈の口元に笑みが広がった。このカードこそこのデッキをフル回転させるためのエンジン。これがないこのデッキは軽自動車のエンジンを積んだフェラーリに等しい。

 

「俺は手札より永続魔法発動! 冥界の宝札!」

 

 

【冥界の宝札】

永続魔法カード

2体以上の生け贄を必要とする生け贄召喚に成功した時、

デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「俺は二体の黒焔トークンを生贄に、堕天使アスモディウスを召喚!」

 

 黒焔トークンが消え、変わりに烏のように真っ黒な翼と甲冑を纏った堕天使がフィールドに飛び出した。丈は更に冥界の宝札の効果で二枚ドローする。これでアド損分は取り返した。

 

「堕天使アスモディウスの攻撃力は3000! サイバー・ツイン・ドラゴンを上回っている。アスモディウスでサイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃、ヘル・パレード!」

 

 丸藤亮 LP2700→2500

 

 亮の場からサイバー・ツイン・ドラゴンが消える。しかし切り札的モンスターがやられたというのに、まだ亮には不安や恐れのようなものはない。

 丈は原作GXにおける丸藤亮のデュエルを思い出す。サイバー・ドラゴンを主軸とし、多くの融合モンスターを呼び出し敵を圧殺する火力。特にサイバー・エンドやキメラティック・オーバー・ドラゴンは元の世界の初期ライフ8000でもワンターンキルを可能にしてしまうほどのパワーをもつモンスターだ。

 サイバー・ツイン・ドラゴンなど序の口。亮のデッキにはまだまだ強力なモンスターが眠っているのだ。

 

「俺はこれでターンを終了。そっちのターンナリよ」

 


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