宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

38 / 200
第38話  友VS友

『待ちに待った時が――――――遂に訪れた』

 

 MCの言葉にがやがやと騒がしかった観客席がしんと静まる。

 会場の中心のデュエル場には二人の全く同じ制服を着た二人の少年。それは二人が同じ所から来たデュエリストであることを如実に示していた。

 

『このような事態になると大会が始まった当初、どこの誰が予想したことか。準決勝まで進んだ四分の三は全くの無名のデュエリスト。それもそうだろう。彼等はプロでもなく賞金稼ぎでもない――――学生! 海馬瀬人がオーナーを務めるデュエルアカデミアに所属する現役中学生なのだ! 先の準決勝第一試合、強敵レベッカ・ホプキンスを打倒したのは魔王宍戸丈! そして準決勝第二試合に出場するのもまた、宍戸丈と同じアカデミアの生徒! しかもI2カップ実行委員会が掴んだ情報によると、彼等は全員が友人同士とのことだぁぁぁぁぁ!』

 

 友人VS友人。この構図に観客の興奮が否応なく高まる。会場の視線を一身に集めるは一人のデュエリスト。

 

『紹介しよう。エースカードはサイバー・ドラゴンッ! 多種多様な機械族と変幻自在なる戦術、アカデミアが誇る帝王、カイザー亮ぉぉぉぉおぉぉおお!』

 

 ライトアップされたのは腕を組んで堂々と立つ一人の少年、丸藤亮。中学生でありながら既にして帝王たるオーラを纏っている。

 

『対するは華麗なるドラゴン使い! その甘いマスクは女性を虜にする魔性の美しさ! ブリザードプリンス、天上院吹雪ぃぃぃぃぃいぃぃい!』

 

「きゃぁぁぁあぁぁぁ!」

 

「JOINNNNNNN!!!」

 

「プリンスぅぅぅうぅぅうう!」

 

 女性陣からの爆発的な歓声。カイザーには男性ファンの方が比率が多かったが、吹雪は女性ファンの比率が圧倒的に多かった。亮がどこかとっつきにくそうなしかめっ面を四十五日しているのに対し、吹雪は一目で人懐っこそうだと分かる雰囲気があるのがその理由の一つだろう。

 

『デュエルに勝利し魔王ジョーの待つ決勝戦に進むのは一体全体どちらなのか!? それではI2カップ準決勝第二試合、デュエル開始、GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!』

 

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 吹雪と亮が同時にデュエルディスクを構える。お互いにアカデミアで何度もデュエルした間柄。勝利したこともあれば敗北したこともあるし、共に笑いあった事もある。修学旅行では共に馬鹿騒ぎして怒られた事もある。そういう仲だった。だがデュエリストとして対決する以上、二人はもはや相容れぬ場所にたつ敵対者だ。倒すべき怨敵だ。

 天上院吹雪も丸藤亮も、断じて負けたくはないと思っている。目の前に立つ朋友を打ち倒したいと強く欲している。友人を蹴り落としてでも決勝の大舞台に立ちたいと願っている。なればこそ死戦となるは必定。

 先行は吹雪から。元よりこの二人にとって先行後攻をわざわざ決める意味などは皆無である。亮はサイバー流の使い手でありサイバー流は後攻を有利とするデュエル流派。故に亮は先行ではなく後攻を選ぶし、吹雪はセオリー通り先行を選ばんと欲する。だからこその無意味。

 

「亮、手加減はしないよ。勝ち負けはデュエルが終わるまで分からないけど敢えて言おう。勝つのは僕だ」

 

「いいや負けるのはお前だ吹雪」

 

 軽口を叩くようなノリで挑発し会うが、二人にとってはこれは単なる挨拶に過ぎない。吹雪は亮のその挑戦的な反応を面白そうに眺めながらもデッキからカードをドローした。

 

「いきなりだが攻めさせて貰おうか。僕は未来融合-フューチャーフュージョンを発動、FGDを選択し僕は真紅眼の飛竜、ミンゲイドラゴン、真紅眼の黒竜、ダーク・ホルス・ドラゴン、マテリアルドラゴンを墓地へ送る」

 

 

 

【未来融合-フューチャーフュージョン】

永続魔法カード

自分の融合デッキに存在する融合モンスター1体をお互いに確認し、

決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。

発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、確認した融合モンスター1体を

融合召喚扱いとして融合デッキから特殊召喚する。

このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊する。

そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 

 

 

 未来融合でFGDを選択、デッキのドラゴン族モンスターを墓地に送ることにより墓地肥やしと大量のデッキ圧縮を同時に行う。ドラゴン族デッキにおける単純にして最高の戦術の一つだった。

 

「更に強欲な壺を発動しデッキから二枚ドロー!」

 

 吹雪はドローした二枚のカードを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべた。亮はその吹雪を見てどんなカードをドローしたのかと身構える。亮は経験から、吹雪がハッタリなどというつまらない手段を使うような男でないことを熟知していた。吹雪が"不敵に笑う"ということは本当に不敵にするだけのカードがきたということなのである。

 

「僕は黒龍の雛を攻撃表示で召喚!」

 

 

 

【黒龍の雛】

闇属性 ☆1 ドラゴン族

攻撃力800

守備力500

自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送って発動できる。

手札から「真紅眼の黒竜」1体を特殊召喚する。

 

 

 

 もしかしなくても真紅眼の黒竜の雛なのだろう。赤い卵から首だけを出した可愛らしい小黒竜。攻撃力や守備力は脆弱だが代わりに成熟体である真紅眼の黒竜に化ける可能性をもったモンスターだ。

 そして吹雪がこの脆弱なカードをわざわざ攻撃表示で召喚したということは手札にそのカードがあるのは確実である。

 

「黒竜の雛のモンスター効果。このカードを墓地へと送り手札から真紅眼の黒竜を攻撃表示で召喚するよ!」

 

 

 

【真紅眼の黒竜】

闇属性 ☆7 ドラゴン族

攻撃力2400

守備力2000

 

 

 

 デュエルモンスターズ史上に燦爛と名を残す伝説のレアカードの登場に会場の興奮が更に高まった。レッドアイズ、黒い肢体をもつドラゴンは会場のど真ん中でその巨大なる翼を開くと、対戦相手である亮を威嚇するように嘶いた。

 

『来たぁぁあぁ! 一ターン目から来たぁぁっぁぁあぁぁ! 天上院吹雪のエースモンスター、レッドアイズ! 伝説のデュエリスト海馬瀬人の使う青眼の白龍と双璧をなす伝説の竜がここに降臨! このタクティクス、ブリザードプリンスの名は伊達じゃないのか!?』

 

「チッチッチッ、ノンだよMCくん。亮が帝王(カイザー)で丈が魔王(サタン)ならば、僕としても王子(プリンス)のままではいられないよ。二人が魔王と帝王ならば、僕はブリザードキング、キング吹雪、フブキングだ!」

 

 吹雪はそう高らかに宣言するとデュエルディスクに一枚の魔法カードを叩きつけた。

 

「幾らレッドアイズを召喚しようと先行一ターン目は攻撃できない。原則としてはね。だけど例外はあるものだよ。僕は魔法カード、黒炎弾を発動!」

 

「レッドアイズの必殺技と同じ名前のカード!?」

 

 

【黒炎弾】

通常魔法カード

自分フィールド上の「真紅眼の黒竜」1体を選択して発動する。

選択した「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

このカードを発動するターン「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

 

 

「このカードは自分のフィールド上にいるレッドアイズを選択して発動、相手プレイヤーにレッドアイズの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。このカードを発動するターン、レッドアイズは攻撃することが出来なくなるけど……元々攻撃できない先行一ターン目だから関係はない」

 

「レッドアイズの攻撃力は2400、ということは」

 

「そう。亮、君に2400のダメージだ! やれレッドアイズ、黒炎弾!」

 

 レッドアイズの口から放たれた黒炎が亮のライフポイントを焼く。

 初期ライフが4000のため、バトルシティトーナメントを倣い多くのバーン効果をもつ通常魔法カードは禁止カードに指定されているものの、黒炎弾のように特定の条件下でないと使用不可能なカードはこの限りではない。

 

 丸藤亮 LP4000→1600

 

「やるな吹雪!」

 

「そうでもないよ。君なら次のターンで一気に逆転の手をうってくる。僕としては眠れる君が一番怖い。僕はこれでターンエンド」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。