宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第4話   サイバー・エンド・ドラゴンは強いナリ

宍戸丈 LP4000 手札4枚

場 堕天使アスモディウス

伏せカード1枚

魔法 冥界の宝札

 

丸藤亮 LP2500 手札2枚

場 無し

伏せカード0枚

 

 

 気を落ち着かせるように亮は一度目を瞬きをし、そしてデッキトップから力強くカードをドローする。残りライフといい、亮は逆行に立たされている筈だがはた目からは全くそんな様子はない。

 

「俺のターン。……冥界の宝札か。それがある限り、お前は最上級モンスターを召喚するたびに手札を補強し有利になっていく。だがそのカードがなければカードはドロー出来ない。俺は大嵐を発動!」

 

 

【大嵐】

通常魔法カード

フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 

「これで冥界の宝札は破壊される」

 

「甘い!」

 

 自分の作ったデッキだ。弱点くらいは自分が良く分かっている。最上級モンスターを多用する以上、アド損を取り返すための冥界の宝札は必須。それを破壊されてしまえば、一気に回転率は落ちてしまう。だからこそ破壊を防ぐためのギミックはかなりの数、仕込んでいる。

 

「俺はカウンター罠、魔宮の賄賂を発動!」

 

 

【魔宮の賄賂】

カウンター罠カード

相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「この効果で大嵐は無効だ! そして相手プレイヤーは一枚ドローする」

 

「ドロー。…………フ、お前が冥界の宝札を防ぐためにカウンターを伏せているのは読めていた」

 

「えっ?」

 

 たらりと冷や汗が流れる。

 単なるハッタリと信じたいが、後のカイザーがそんなつまらない手段を使うとは考えづらい。

 

「俺はカードを一枚セット、更に魔法カード天よりの宝札を発動!」

 

 

【天よりの宝札】

通常魔法カード

お互いのプレイヤーは手札が六枚になるようカードをドローする。

 

 

「これで俺の手札は合計六枚。強欲な壺を発動し二枚ドロー! 手札より速攻魔法発動、サイバネティック・フュージョン・サポート!」

 

 

【サイバネティック・フュージョン・サポート】

速攻魔法カード

自分のライフポイントを半分払って発動する。

このターンに機械族融合モンスター1体を融合召喚する場合、

手札または自分フィールド上の融合素材モンスターを墓地に送る代わりに、

自分の墓地に存在する融合素材モンスターをゲームから除外する事ができる。

 

 

 丸藤亮LP2500→1250

 

 

「魔法効果で俺は機械族の融合素材をこのカードで代用できる。俺は手札よりパワー・ボンドを発動!」

 

「ッ!」

 

 遂に出た。丸藤亮――――――後のカイザー亮が全幅の信頼を寄せる最強の融合カード。融合モンスターだけでも強力だというのに、パワー・ボンドで融合召喚されたモンスターは攻撃力が二倍となる。エンドフェイズ時、融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けるというデメリットこそあるものの、それすらも亮ならば克服してくる筈だ。

 

「墓地の二体のサイバー・ドラゴンをゲームより除外、俺は再びサイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚する!」

 

 再臨するサイバー・ツイン・ドラゴン。だがパワー・ボンドによって召喚された為、サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力はF・G・Dを超える5600となっている。しかも二連続攻撃ができるのでFGDよりも極悪といえた。

 

「サイバー・ツイン・ドラゴン第一打! 堕天使アスモディウスを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 攻撃力の差は歴然。

 堕天使アスモディウスが粉砕される。

 

 

 宍戸丈 LP4000→1400

 

 

「だが俺は堕天使アスモディウスの効果! フィールドのこのカードが戦闘で破壊された時、トークンを二体出現させる!」

 

 

【堕天使アスモディウス】

闇属性 ☆8 天使族

攻撃力3000

守備力2500

このカードはデッキまたは墓地からの特殊召喚はできない。

1ターンに1度、自分のデッキから天使族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、

自分フィールド上に「アスモトークン」(天使族・闇・星5・攻1800/守1300)1体と、

「ディウストークン」(天使族・闇・星3・攻/守1200)1体を特殊召喚する。

「アスモトークン」はカードの効果では破壊されない。

「ディウストークン」は戦闘では破壊されない。

 

 

「俺はフィールドにアスモトークンとディウストークンを守備表示で召喚」

 

「ならば俺はアスモトークンに第二打を叩き込む。エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

「くそ! 戦闘耐性の無い方を」

 

 亮が攻撃したのがディウストークンだったのなら、戦闘では破壊されない効果があるためサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃は無意味に終わったのだが、アスモトークンには効果破壊耐性はあっても戦闘耐性はない。

 

「俺はサイバー・ジラフを召喚」

 

 

【サイバー・ジラフ】

光属性 ☆3 機械族

攻撃力300

守備力800

このカードを生け贄に捧げる。

このターンのエンドフェイズまで、

このカードのコントローラーへの効果によるダメージは0になる。

 

 

「俺はサイバー・ジラフを生贄に捧げ、パワー・ボンドのデメリットをゼロにする。リバースカードを三枚セットしターン終了」

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 ここで持ち直さなければ勝ち目はない。

 不幸中の幸いにして天よりの宝札と今のドローで手札は七枚。これだけあれば十分にサイバー・ツイン・ドラゴンに対処できる。

 丈のデッキにサイバー・ツイン・ドラゴンを上回る攻撃力をもつモンスターはいないが、モンスターを除去する方法はなにも戦闘だけではないのだ。

 

「いくぞ亮! 俺はこのターンでサイバー・ツイン・ドラゴンを倒す! 手札より魔法カード、クロス・ソウルを発動!」

 

 

【クロス・ソウル】

通常魔法カード

相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。

このターン自分のモンスターを生贄にする場合、

自分のモンスター1体の代わりに選択した相手モンスターを生贄にしなければならない。

このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行う事ができない。

 

 

「これで俺はこのターン、サイバー・ツイン・ドラゴンを俺のモンスターのための生贄として使用できる。俺はサイバー・ツイン・ドラゴンとディウストークンを生贄に捧げ、The supremacy SUNを召喚! 冥界の宝札の効果で二枚ドロー!」

 

 

【The supremacy SUN 】

闇属性 ☆10 悪魔族

攻撃力3000

守備力3000

このカードはこのカードの効果でしか特殊召喚できない。

フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、

次のターンのスタンバイフェイズ時、

手札を1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

「クロス・ソウルを使用したターン、俺はバトルフェイズを行えない。ここでダイレクトアタック出来れば俺の勝利なんだけど、うん。現実は悲しい。俺はカードを三枚セットしてターン終了」

 

 

宍戸丈 LP1400 手札4枚

場 The supremacy SUN

伏せカード三枚

魔法 冥界の宝札

 

丸藤亮 LP1250 手札2枚

場 無し

伏せカード三枚

 

 

「俺のターン、ドロー。貪欲な壺、墓地のモンスター五体をデッキに戻し、デッキからカードを二枚ドロー」

 

 

【貪欲な壺】

通常魔法カード

自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、

デッキに加えてシャッフルする。

その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 亮の墓地にあるのはサイバー・ジラフ、サイバー・フェニックス、二体のサイバー・ツイン・ドラゴン、そしてプロト・サイバー・ドラゴンの五体の筈だ。普通に考えればその五体をデッキと融合デッキに戻したのだと思うところだが、亮が天使の施しを発動していたので断言はできない。

 

「よし。俺は場のリバースカード、王宮のお触れを発動する」

 

 

【王宮のお触れ】

永続罠カード

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする。

 

 

(不味い!)

 

 もしもこのカードの発動を許せば、たちまち丈の場のリバースカードはただの邪魔な紙屑となる。これだけは発動を許す訳にはいかない。

 

「カウンター罠、盗賊の七つ道具!」

 

「甘い。こちらもカウンター罠! 魔宮の賄賂!」

 

「まだまだ! 神の宣告! ライフを半分払い、魔宮の賄賂を無効!」

 

 

 宍戸丈 LP1400→400→200

 

 

 チェーン合戦に勝ち、王宮のお触れを無効化することには成功したものの代償は大きい。1400あったライフが一気に200だ。

 

 

「予想外だよ。ここで王宮のお触れを発動し、迎撃用の罠は完全に封殺するつもりだったのだが、お前のリバースカードは俺の予想を上回っていた。しかし俺にはまだ手札が残っている。俺は手札より魔力倹約術発動!」

 

 

【魔力倹約術】

永続魔法カード

魔法カードを発動するために払うライフポイントが必要なくなる。

 

 

「更に魔法カード、次元融合! 2000のライフを支払い、お互いのプレイヤーはゲームから除外されたカードを召喚可能な限りフィールドに特殊召喚する」

 

 

【次元融合】

通常魔法カード

2000ライフポイントを払う。

お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する。

 

 

「ライフコストの2000は魔力倹約術の効果で無効だ。除外されている俺のモンスターはサイバー・ドラゴンが二体。よってサイバー・ドラゴンを二体、フィールド上に特殊召喚。これで用意は整った。俺は二枚目のパワー・ボンドを発動!」

 

 

【パワー・ボンド】

通常魔法カード

手札またはフィールド上から、

融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、

機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。

このカードによって特殊召喚したモンスターは、

元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。

発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは

特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。

(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

 

 

「手札のサイバー・ドラゴンと場の二体のサイバー・ドラゴンを融合。召喚せよ、サイバー流継承者たる証! サイバー・エンド・ドラゴンッ!」

 

 三体のサイバー・ドラゴンが融合し、今、サイバー流の極致。究極のサイバー・ドラゴンが召喚される。地獄の閻魔すらも裸足で逃げ出させるような咆哮を上げ、三つ首の機械竜、サイバー・エンド・ドラゴンが亮のフィールドに現れた。

 サイバー・エンドの元々の攻撃力は4000。それがパワー・ボンドで二倍となっているため、その攻撃値は8000。三幻神の一柱オベリスクの丁度二倍。

 

 

 

【サイバー・エンド・ドラゴン】

光属性 ☆12 機械族

攻撃力4000

守備力2800

「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 ソリッドビジョンとは言ってしまえばただの立体映像、幻に過ぎない。

 どれだけリアルでも、どれほど恐ろしい異形の怪物でも実際には何の力もない幻影だ。だというのにサイバー・エンド・ドラゴンから発せられる威圧はとてもじゃないが幻とは思えない。

 丈は無意識のうちに足を半歩下げてしまっていた。それでも中身の年齢は亮より遥かに年上だということが、尻尾撒いて逃げ出すことを踏み留まらせていた。

 半ば意地でキッとサイバー・エンドを見返す。それを見て亮は不敵に笑う。

 

「ラストバトルだ。サイバー・エンド・ドラゴンでThe supremacy SUNを攻撃! エターナル・エヴォリューション・バーストッ!」

 

「まだ俺は負けない! 俺にはまだリバースカードが一枚残っている。罠カード発動! 聖なるバリア ーミラーフォースー!」

 

 

 

【聖なるバリア ーミラーフォースー】

通常罠カード

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。

相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。

 

 

「これでサイバー・エンドは破壊だ」

 

「やはり、まだ手を残していたか」

 

「は?」

 

 そして気づく。

 リバースカードが一枚残っているのは自分だけではない。亮のフィールドにもまだリバースカードが残っていることに。

 

「リスペクトデュエルの極意、それは相手の立場となり考えること。俺はお前の立場になり考え、そしてその伏せカードの存在を看破した! だからこそ俺も敬意をもち、最高の力をもってお前を倒そう! これが俺の勝利への布石、リバースカードオープン! トラップ・ジャマー!」

 

 

【トラップ・ジャマー】

カウンター罠カード

バトルフェイズ中のみ発動する事ができる。

相手が発動した罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

 

「お前のミラーフォースは無効だ。サイバー・エンドの攻撃を遮るものはない。今度こそ攻撃、エターナル・エヴォリューション・バーストッ!」

 

「ぐぅああああああ!!」

 

 

 宍戸丈 LP200→0

 

 

 5000ポイントのオーバーキルを喰らい丈が吹き飛ばされた。

 負けてしまった。相手が原作の強キャラだったとはいえ、やはり作ったばかりのデッキの初陣で負けてしまうというのは何時もとは違う嫌な敗北感がある。出ばなをくじかれるともいうのだろう。

 ざっざっと土を踏むおとに首を上げる。そこに左手を差し出した亮がいた。

 

「いいデュエルだった。俺もここまで追い込まれたのは久しぶりだよ。久方ぶりに熱くなれた、感謝する」

 

「あ、ああ……」

 

 差し出した手を掴み立ち上がる。

 

「またデュエルしよう。この近くに住んでいるのか?」

 

「ここから歩いて五分くらいだよ」

 

「俺の家もそれくらいだ。――――――そうだ、俺の家に来ないか? 丁度、両親も出ていて暇をしていたんだ。互いのデッキのことも話したいからな」

 

 どうやら未来のカイザー閣下に気に入られてしまったらしい。

 確かにカイザー亮相手にそこそこの善戦を出来たものだと思うが…………なにか琴線に触れることがあっただろうか。

 しかし丈自身、画面の向こうから眺めるだけの原作キャラと話せることが嫌な筈はない。結局、カイザーの誘いに応じてホイホイついて行った。

 


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