宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第40話  真紅眼暗黒金属竜

天上院 LP1400 手札3枚

場  無し

魔法 未来融合

 

丸藤亮 LP1600 手札4枚

場 人造人間サイコ・ロード

伏せ 2枚

 

 

 

「やるね亮。まさかたったの1ターンでこうも形勢を逆転されるとは思わなかったよ。この大会でまた腕を上げたようだ」

 

 吹雪は目を吊り上げながら友人のことをそう評する。

 丸藤亮は一年生の頃から既にアカデミア最強を名乗るに相応強いデュエリストだった。三年生や二年生などの上級生とのデュエルも負けなしだったし、教員の中でもまともな勝負が出来るのは本当に一握りという有様だった。 

 天上院吹雪の知る限り丸藤亮に黒星をつけたデュエリストはアカデミア内に四人。一人は吹雪自身、もう一人は共通の友人である宍戸丈、最後の一人は田中先生。それにしたって丈と吹雪は負けた回数の方が多い。

 そんな既最強の男が此処に来て更にその技量を増している。

 第一回戦でのサイコ流継承者、猪爪誠とのデュエルに何か得るものがあったのかもしれない。或いは大会の他の試合を見て自分を磨き直したのかもしれない。

 本当のところは吹雪にも分からないが、唯一つだけ言えるのは今の丸藤亮は今まで自分が戦ったどの丸藤亮よりも強いということだ。

 

(それでいい、それでいいよ亮)

 

 嘗てない強敵の出現に吹雪は破顔する。

 吹雪とて並大抵の覚悟で観客のど真ん中で「キング吹雪」と大見得を切ったのではない。大見得を切れば確かに観客は盛り上がるだろう。歓声も大きくなる。しかし惨めな敗北を晒せば次に待つのは冷ややかなブーイングの嵐だ。

 見栄を切るというのは自身を追いこむ事。

 吹雪はそういう風に思う。一度切った見栄は張り通す。見栄をそのまま現実へとする。吹雪はそうやって今まで生きてきたし、そうやって成長を重ねてきた。

 此度も同様。

 丸藤亮という怨敵を倒し、見栄をリアルにする。

 本物のキングとなってみせる。

 

(なにより……大切な妹、あすりんの前で無様は晒せないからね)

 

 観客席にいる最愛の妹に顔を向けると、ニコリと笑いウィンクした。偶然その辺りにいた女性客が黄色い声をあげるが、今回ばかりは吹雪もそちらは耳に届いていなかった。ただ最愛の妹が赤面したのを確認するとデュエルに戻る。

 これでいい。

 もし亮に勝てばこのまま観客席に突進して妹を抱き上げ、一緒にカメラに映る。負けた時は知らない。そんなものは考える必要もない。必要があるようになんてさせてやらない。

 

「行くよ亮、僕のターンだ。ドロー!」

 

「この瞬間、俺は速攻魔法発動。非常食、俺の場の永続魔法、悪夢の蜃気楼を破壊することによりライフを1000回復する」

 

 

 

【非常食】

通常魔法カード

このカード以外の自分フィールド上に存在する

魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。

墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。

 

 

 丸藤亮 LP1600→2600

 

 亮の使った魔法カード、悪夢の蜃気楼は自分のターン終了時に手札が四枚になるようカードをドローできる強力なドローソースだが、強いカードの性としてデメリット効果がある。それは次の自分のターンに引いた枚数分だけカードを墓地に送らなければならないということだ。

 丈の使う暗黒界デッキなら捨てることをメリットに転換もできるのだが、亮のデッキは暗黒界ではないので当然ながら手札を捨てるのはデメリットとなる。

 それを回避するための「非常食」。非常食で悪夢の蜃気楼を吹雪のターンで墓地へと送ってしまえば、永続魔法の悪夢の蜃気楼は亮のターンになっても効果を発動しない。つまり四枚のハンドアドバンテージを稼ぐ上にライフを1000も回復できるのだ。

 

「しかし読んでたよ。君ならそれくらいはやると! だけどね僕も事前にこういう場合になった時の準備は済ませていた!」

 

「なんだと?」

 

「僕のフィールドをがら空きにしたことで有利になったと思っているのなら、残念だけどご愁傷様と言わせて貰うよ。僕の場にモンスターがいない為、墓地のミンゲイドラゴンのモンスター効果を発動。このカードを墓地より復活させる!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】

地属性 ☆2 ドラゴン族

攻撃力400

守備力200

ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する場合、

このモンスター1体で2体分のリリースとする事ができる。

自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、

自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、

このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

この効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動できない。

この効果で特殊召喚されたこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 

 

 

「ミンゲイドラゴン、ドラゴン族の生贄にする場合、二体分の生贄となるダブルコストモンスター。ドラゴン族の最上級モンスターを呼び寄せる気か吹雪」

 

「ちょっと違うかな。確かにミンゲイドラゴンを使えば手札の最上級ドラゴンを場に出すことは出来る」

 

 サイコ流最強のモンスターといってもサイコ・ロードの攻撃力は2600。倒せない数値ではない。

 

「だけどね僕の狙いはそんなことじゃない。僕のデッキに眠る最凶モンスターはね、ドラゴン族をフィールドから除外することによって特殊召喚されるんだよ」

 

「まさか……ッ!」

 

Exactly(その通りだよ)! ミンゲイドラゴンをフィールドから除外、そして手札より特殊召喚! 暗黒に住まいし黒竜よ! 鋼の力を受け、今こそ可能性の竜たる真価を知らしめろ! 来い! フィールドを圧巻せよ! レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンッ!」

 

 

 

【レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン】

闇属性 ☆10 ドラゴン族

攻撃力2800

守備力2400

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体を

ゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の

ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。

 

 

 

 先程現れた真紅眼の黒竜比べても勝る威容と威風。二つを吹雪かせながら鋼鉄の黒竜―――――レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンが遂にこの会場に出現した。暗黒(ダークネス)鋼鉄(メタル)の力を得た真紅眼は正に多くの派生形をもつレッドアイズの最終形態。

 ブルーアイズが単騎で戦局を覆すドラゴンならば、レッドアイズは他のモンスターとの結束により真価を発揮するドラゴン。単独の力でこそブルーアイズに及ばないものの、レッドアイズには他のモンスターの力を合わせることにより多くの可能性を生み出すことが可能なのだ。

 

『す、すごいぃっぃ! これがぁぁ~、こぉぉれぇがぁ! 天上院吹雪の隠し玉! キング吹雪の真エース! レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンだぁぁぁぁッ!』

 

 レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンは会場高く飛翔し主以外全てを威圧するよう咆哮をすると、主の下へと戻ってくる。吹雪は赤子をあやす様にレッドアイズの頭を撫でてやると、真っ直ぐに亮を指差した。

 

「悪いね亮。君よりも早く僕が最強モンスターを呼んでしまった。君にはサイバー・エンドを呼ぶ間は与えられない。レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンのモンスター効果、1ターンに一度墓地または手札のドラゴンを特殊召喚できる。僕は墓地にいるマテリアルドラゴンを召喚!」

 

 

 

【マテリアルドラゴン】

光属性 ☆6 ドラゴン族

攻撃力2400

守備力2000

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、

ライフポイントにダメージを与える効果は、ライフポイントを回復する効果になる。

また、「フィールド上のモンスターを破壊する効果」を持つ

魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、

手札を1枚墓地へ送る事でその発動を無効にし破壊する。

 

 

 

「君のライフは残り2600。このモンスター達の一斉攻撃でジ・エンドだ。レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンの攻撃、暗黒鋼炎弾(ダークネスメタルフレア)!」

 

 サイコ・ロードといえど真紅眼の最終形態の前には為す術もなく破壊されてしまう。サイコ・ロードとレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンとの攻撃力の差は200。よって戦闘ダメージ200を受け亮のライフは残り2400。絶体絶命だ。

 

「喰らえマテリアル・ドラゴンの攻撃、マテリアル・フレイム!」

 

「罠発動。ガード・ブロック。モンスター一体の攻撃を無効にしカードをドローする!」

 

「防いだか。仕方ないね、僕はカードを一枚セットしターンエンドだ」

 

 絶体絶命。誰もがそう確信する中で亮は笑う。

 既に彼の手札にはサイバー・ドラゴンをより強力にするための最強の融合カードが存在していた。




 このssではレダメはアニメ効果ではなくOCG効果となっております。

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