第50話 I2カップ終結
宍戸丈 LP100 手札1枚
場
伏せ 一枚
魔法 冥界の宝札
丸藤亮 LP1300 手札0枚
場 サイバー・エルタニン(攻撃力5500)
伏せ 二枚
魔法 未来融合
亮がターンエンドを告げると同時、丈は速攻魔法を発動させた。
このままがら空きのままに自分のターンへ移行してしまえば完全に詰みに陥ってしまう。
「エンドフェイズ時、速攻魔法発動。終焉の焔! このカードの効果で俺は二体の黒焔トークンを場に出現させる」
【終焉の焔】
速攻魔法カード
このカードを発動するターン、
自分は召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に「黒焔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは闇属性モンスター以外の生贄召喚のためには生贄にできない。
今までと同じように丈のフィールドに出現する二体のトークン。ふと丈はこのカードにもなんだかんだでいつも助けられたことを思い出す。
バルバロスや堕天使アスモディウス、The SUNは強力無比なモンスターだが、彼等を正規召喚しようとすれば終焉の焔のようなカードは必要不可欠となる。確かにこのカード単体が勝利に貢献したことはないし、華麗に相手プレイヤーに止めを刺した、なんてこともない。しかし丈を影から支え続けてくれたのは間違いなく終焉の焔などのトークン達であった。
(今回も……頼んだぞ)
心の中でトークンに語りかけると、二体の黒焔トークンが頷くように炎を光を点滅させた。了解という意思表示だろう。何となく丈にはトークンの言葉が理解できた。
『四面楚歌、絶体絶命、窮地にまで追い詰められた無敵の魔王! だがしかし、まだ彼の瞳には煌々と熱いソウルが滾っているッ! 彼は、まだ勝負を捨てていないぃぃぃぃぃぃッッ!! フィールドには二体のトークン!! そう、つまり観客の皆さまもお分かりであろうッ! 魔王は勝利への布石を打ったのだ! 次なるモンスターの布石を打ったのだ!! 窮鼠猫を噛む……魔王は帝王の喉元にその牙を突き立てる事が出来るのかッッ!! 頑張れ宍戸丈!! 負けるな丸藤亮ッ!!』
大歓声もMCの熱狂も、どこか遠い世界の出来事のように感じた。視界の端で吹雪がはちきれんばかりの声で応援してくれているのは分かるのだが、不思議とそれが届かない。
まるでこの世界が円形のデュエル場だけで完結してしまったかのようだ。無色透明な世界の中、色をもっているのは自分とカードと……対戦相手である丸藤亮だけ。世界にはもう二人の人間しかいなかった。
「亮」
おもむろに丈は亮に話しかけた。
「どうした、いきなり勿体ぶって」
「正直に話すと俺の手札にこの状況を逆転できるカードはない。もし次のドローでなにも良いカードが引けなければ、トークンを壁にして突破されないことを祈るしかないだろうな」
「そうか。それで? お前は諦めたのか? デュエルを放棄するのか? 決着をつけないまま」
「まさか」
苦笑してしまう。
亮に、ではない。こんな絶望的な状況を心の奥底から楽しんでしまっている馬鹿さ加減にだ。よく亮のことをデュエル馬鹿と言ったものだが、これではもう人のことを言えない。
デッキの上を撫でる。
思えばこのデッキで最初に戦ったデュエリストは目の前に立つ男だった。懐かしい小学生の頃の出会い。そう、あれは小学生の頃、サイバー流道場から帰ったばかりの丸藤亮と、デッキを構築したばかりの宍戸丈は出会い、戦い、そして腐れ縁の友人になったのだ。
あの時、負けたのは丈の方だった。忘れる筈もないあの刹那。自分を負かした丸藤亮の心からデュエルを楽しむ顔がつい昨日のことのように思い出せる。あんなにも清々しい気分で負けたのは初めてだったかもしれない。
だが、しかし。此度は勝つ。丸藤亮ではなく自分が勝つ。勝ってあの心の底からデュエルを楽しむ顔をしてみせる。その為には、
「次のドローだ。次のドローでなにもかもが決まる。お前相手に二体のトークンだけで持ち堪えられるとはつゆほど思っちゃいない。そう、だから」
丈はデッキトップに手をかけた。そして、
「俺はこのカードに全てを賭けるッ!」
一番上のカードを引いた。
「――――――――――――ドローッ!」
運命は…………微笑む。女神は帝王ではなく魔王に味方した。丈は壮絶に笑う。どうやら気紛れなる極上の美女を口説き落とすことが出来たらしい。
「懐かしいな本当に。覚えているか? 俺が初めてお前の家に行った時の事」
「ああ。覚えているとも」
「じゃあサイバー・エルタニンをトレードしたことも覚えているよな?」
「…………。――――――――、まさか?」
「その、まさかだよ」
幼き頃、丈は亮の家にあった、そのカードに視線が釘付けになった。
それは元の世界では禁止カードにもなった超強力カードであり、この世界でも百万を軽く超えるほどの世界に十枚とないレアカード中のレアカード。
――――どうしたんだよ、こんなカード?
――――偶然当たったんだ。といっても俺のデッキには入れられないから宝の持ち腐れになってしまってるが。
長き時を経て、彼のモンスターが遂に表舞台へと立つ。
カっと目を見開き、丈は高らかに宣言する。
「俺は二体の黒焔トークンを生贄に捧げる! 光と闇の洗礼を浴びし時、封じられし闇の中より彼の魔導師が復活するッ! 俺に勝利を! 召喚ッ! 混沌の黒魔術師ッ!」
【混沌の黒魔術師】
闇属性 ☆8 魔法使い族
攻撃力2800
守備力2600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
自分の墓地から魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。
このカードが戦闘によって破壊したモンスターは墓地へは行かず
ゲームから除外される。
このカードがフィールド上から離れた場合、ゲームから除外される。
三千年前のエジプトに君臨せしファラオに仕えた神官マハード、その魂が宿りしデュエルモンスターズ界最上級魔術師ブラック・マジシャン。だがそのブラック・マジシャンをも超える最強の黒魔術師、それこそが混沌の黒魔術師だった。
「ははははっ。本当に冗談ではなく誰かが俺達の運命を操作しているのかもしれないな。俺がサイバー・エルタニンを出せば、お前は混沌の黒魔術師……で、くるとはな。だがいい、それでこそだ。そうでなければ倒し甲斐がないッ! 来い! お前の全力で、この俺の心臓を穿ってみせろッ!」
「上等だッ! 先ずは冥界の宝札の効果で二枚ドロー! そして混沌の黒魔術師のモンスター効果、このカードが召喚・特殊召喚された時! 墓地から魔法カードを一枚手札に加えることが出来るッ! 俺は強欲な壺を手札に加え、強欲な壺を発動! カードを二枚ドローするぞ」
強欲な壺で二枚ドローすると、遂に待ち望んだカードがきた。
禁じられた聖杯。
モンスター一体の効果を1ターンだけ無効にする速攻魔法。サイバー・エルタニンは攻撃力と守備力がともに?の効果にステータスを依存するモンスターだ。その効果を禁じられた聖杯で打ち消してしまえば、その攻撃力は一気に400まで下がる。そこへ攻撃力2800の混沌の黒魔術師で攻撃すれば勝利だ。
「バトル! 混沌の黒魔術師でサイバー・エルタニンを攻―――――――」
攻撃、と言おうとした瞬間。ぞわりと、背中に悪寒が奔った。理屈などなく魂が告げている。ここで攻撃しては駄目だ。攻撃すれば負ける。負けて敗北すると。
亮には伏せカードが二枚ある。もしもここで攻撃すれば、あの伏せカードによって宍戸丈は完膚無きにまでやられるだろう。
普段の丈なら伏せカードに一々怯えていられるかと攻撃を強行したかもしれない。しかし今回はデュエリストとしての本能が、攻撃するなと叫んでいた。
「俺は……バトルフェイズを終了」
「!」
「カードを三枚伏せてターンエンドだ」
千載一遇の好機に攻撃せずにターンを終了させた丈に対し、会場中の観客が怪訝な顔をする。MCでさえ呆然としてコメントが出ない様子だった。
そんな中、亮だけは笑っている。
「攻撃を避けて来たか。いや……違うな。万全の状態で対決するために、敢えて1ターン先延ばしにしたのか」
魔法カードと違い罠カードは伏せたターンに使用できない。丈の手札には罠カードが何枚かあったが、それらは前のターンでは使用不可能であった。だがもう違う。ターンが亮に移行した瞬間、既に罠は罠として作動する。宍戸丈の準備は整ったのだ。
長い付き合いの亮はそのことを理解したからこそ戦意を全身から漂わせながら告げた。
「俺達のライフは残りわずか。これが最後のバトルだ。もう俺にターンが回ってくることはないだろうな。そして……これ以上、やることもない。バトルフェイズッ!」
亮が動き、自らの従えるモンスターに指令を出す。
「サイバー・エルタニンで混沌の黒魔術師を攻撃、ドラコニス・アセンションッ!」
サイバー・エルタニンの口が開かれ、そこから強力なエネルギー砲が放たれる。その直前、丈はリバースカードを発動させる。
「攻撃宣言の瞬間、速攻魔法発動! 禁じられた聖杯! モンスターの攻撃力を400上げ、モンスター効果をこのターンまで無効化する!」
【禁じられた聖杯】
速攻魔法カード
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は
400ポイントアップし、効果は無効化される。
これでサイバー・エルタニンの攻撃力が一気に400まで下落した。
しかしカイザーと謳われた男はこの程度のことは予測済みであった。
「読んでいた。カウンター罠、マジック・ドレイン! 魔法カードの発動及び効果を無効にする! お前は手札から魔法カードを捨てることで、これの効果を無効にできるがな」
【マジック・ドレイン】
カウンター罠カード
相手が魔法カードを発動した時に発動する事ができる。
相手は手札から魔法カード1枚を捨ててこのカードの効果を無効にする事ができる。
捨てなかった場合、相手の魔法カードの発動を無効にし破壊する。
「……俺の手札に魔法カードはない」
「ならば」
「だが! 俺の伏せカードにはこいつがある。カウンター罠の発動に対しカウンター罠を発動。魔宮の賄賂! 魔法・罠の発動を無効にし破壊! 相手は一枚のカードをドローする」
【魔宮の賄賂】
カウンター罠カード
相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
相手はデッキからカードを1枚ドローする。
「これで禁じられた聖杯の効果が通り、サイバー・エルタニンの攻撃力が下がる。更にカウンター罠を発動したことにより冥王竜ヴァンダルギオンを召喚ッ!」
【冥王竜ヴァンダルギオン】
闇属性 ☆8 ドラゴン族
攻撃力2800
守備力2500
相手がコントロールするカードの発動をカウンター罠で無効にした場合、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
無効にしたカードの種類により以下の効果を発動する。
●魔法:相手ライフに1500ポイントダメージを与える。
●罠:相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
●効果モンスター:自分の墓地からモンスター1体を選択して
自分フィールド上に特殊召喚する。
手札から漆黒の影が飛び出し、やがてそれが巨大な黒竜の姿となる。
冥王竜ヴァンダルギオン。丈のデッキに隠された陰のエースモンスターというべきカードだ。
「俺が無効にしたのは罠カード。よって俺は相手フィールドのカードを一枚選択し破壊することが出来る!」
サイバー・エルタニンを破壊するのもいいが、今やサイバー・エルタニンは攻撃力400のモンスター。しかも攻撃宣言を済ましている。ここでこれを破壊してしまえば、亮に1ターンの隙を与えてしまう。ならば破壊すべきはエルタニンではなく残ったもう一枚の伏せカード。
「ヴァンダルギオンでその伏せカードを破壊、そして混沌の黒魔術師の迎撃。滅びの呪文―デス・アルテマ―!」
混沌の黒魔術師が杖をエルタニンに向けると、強力な呪いの込められた衝撃波を放った。まともに受ければ最後、この世から跡形もなく消滅させてしまう力の宿りし消滅の力。だが丸藤亮はまだ隠していたカードがあった。
「丈、お前は強い……たぶん俺が今まで戦ってきた誰よりも……強かった。だが勝つのは俺だ。冥王竜ヴァンダルギオンで破壊される前に、俺はその速攻魔法を発動する! これが俺の可能性だ。魔法の教科書!」
【魔法の教科書】
速攻魔法カード
自分の手札を全て捨てて発動する。
自分のデッキの上からカードを1枚めくり、それが魔法カードだった場合はそのカードの効果を発動する。
魔法カード以外のカードだった場合は墓地へ送る。
「手札を全て捨て効果発動、このカードは俺の引いたカードが魔法カードだった場合、その場で発動することが出来る」
亮がカードをドローすると、そのカードを見せてきた。
「……俺の引いたのは……魔法カード、
【突然変異】
通常魔法カード
自分フィールド上モンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターのレベルと同じレベルの
融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する。
「突然変異だって!?」
亮のフィールドにいるモンスターは☆10のサイバー・エルタニンのみ。よって亮が生贄とするモンスターはサイバー・エルタニンということになる。そして亮のデッキに眠る☆10の融合モンスターといえば、考えられる選択肢は一つ。
「朋友の化身たるしもべよ! 今こそその魂を継ぎメタモルフォーゼしろッ! 降臨せよ我が魂! 我が誇り! フィールドを圧巻し、この俺に勝利の美酒を授けろ! サイバー・エンド・ドラゴンッッ!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
光属性 ☆10 機械族
攻撃力4000
守備力2800
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
サイバー・エルタニンがその姿を変異させ、瞬く間に姿をサイバー・エンド・ドラゴンへと変える。丸藤亮の切り札にして最強のモンスター、サイバー・エンド・ドラゴンへと。
「これが俺の勝利への道しるべだァ! サイバー・エンド・ドラゴンで混沌の黒魔術師に攻撃、エターナル・エヴォリューション・バーストッ!」
丈の視界一杯に広がる破壊の極光。サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃力は三幻神の一角、オベリスクの巨神神と同等の4000だ。混沌の黒魔術師では太刀打ちできない。
だが……
「一体で勝てないなら、二体の力を結束する」
「――――――――――なに?」
初めて、このデュエルで初めて亮が心の底からの驚愕の表情を浮かべる。
丈は腐れ縁の友人を信じていた。丸藤亮というデュエリストならば、自分のあらゆる戦術を上回ってくるだろうと信じ切っていた。だからこそ丈は自分のあらゆる戦術を上回ってくる丸藤亮を更に上回るため、ある一枚のカードを伏せていたのだ。
「これが俺の最後の切り札だ。罠カード発動、迎撃の盾!」
【迎撃の盾】
通常罠カード
自分フィールド上のモンスター1体を生贄にして発動する。フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力はエンドフェイズ時まで生贄にしたモンスターの守備力の数値分アップする。
「俺は冥王竜ヴァンダルギオンを生贄に、混沌の黒魔術師の攻撃力をアップさせる!」
混沌の黒魔術師の攻撃力は2800。冥王竜ヴァンダルギオンの守備力は2500。その合計した数値は5300。
そして丸藤亮のライフポイントは――――――1300だった。
攻撃宣言は既にされている。取り消しはもう出来ない。亮のフィールドにサイバー・エンド・ドラゴン以外のカードはなく、手札も墓地もなにもかもが空っぽだった。
悔しいような清々しいような、なんともいえない表情をすると、亮はフッと微笑み言う。
「丈。俺はデュエリストだ、サレンダーはしない。お前に送る言葉は一つだけだ。――――――――来い」
「ああ。亮、有難う。本当に楽しかった。最高のデュエルだった。混沌の黒魔術師でサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃。冥王の呪文―ヘル・アルテマ―!」
滅びの魔術がサイバー・エンド・ドラゴンを、丸藤亮の魂を包み込む。一度だけサイバー・エンド・ドラゴンは苦しそうに嘶くと、次にはどこか満足そうに薄らと消えていった。
そしてサイバー・エンド・ドラゴンと混沌の黒魔術師の攻撃力の差分のダメージ、1300が丸藤亮のライフから削られる。
丸藤亮 LP1300→0
「…………………………………え?」
会場の誰かがうつろに漏らす。
やがて一人また一人と、現状を飲み込み始めた。ライフポイントが0の無敗の帝王と、ライフポイントがたった100のみ残った無敵の魔王。
勝者が誰なのかを、誰もが悟った時――――――I2カップの舞台であるドームが爆発した。
『うぉぉおぉォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!! ヴィクトリー!! ヴィクトリぃぃぃぃぃぃぃいぃぃいぃイイイいいいいいいいいいい!!!!』
MCの絶叫とともに、観客の興奮の歓声がドームに轟く。
『長きにわたる死闘! 繰り広げられた激闘! 壮絶なる闘争! 第一回I2カップ!! 数多の強敵たちを打ち倒し見事初代チャンピオンに君臨したのは魔王ッ! 宍戸丈ぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおおおおおおおッッッ!!! なんというデュエルか! 凄い! 素晴らしい!! エクセレント・ダイナマイト・エヴォリューション!! 私は未だかつてこれほどまでに! これほどまでに魂が震えるデュエルを見た事がなかったぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!! うぉぉぉおぉぉぉおぉお!! 生きてて良かったぁあああああああああああああああああああ!!!』
熱狂は終わる兆しが見えなかった。
そして恐らくは今、世界で最も興奮という二文字が終結した場所の中心に立つ二人は、お互いに近付いて行き固く握手をした。
見れば柵を乗り越え吹雪が駆け寄ってくるのが見える。
やがて丈は――――観客より遅れて、自分が丸藤亮に勝ったのだと実感した。
┏━ 宍戸丈
┏━┫
┃ └─ 羽蛾
┏━┫
┃ │ ┌─ 本田
┃ └━┫
┃ ┗━ マナ
┏━┫
┃ │ ┌─ 三沢
┃ │ ┌━┫
┃ │ │ ┗━ 御伽
┃ └━┫
┃ ┃ ┏━ レベッカ
┃ ┗━┫
┃ └─ トム
━┫
│ ┌─ 牛尾
│ ┌━┫
│ │ ┗━ 不動
│ ┌━┫
│ │ ┃ ┏━ 天上院
│ │ ┗━┫
│ │ └─ 竜崎
└━┫
┃ ┌─ 骨塚
┃ ┌━┫
┃ │ ┗━ 十六夜
┗━┫
┃ ┏━ 丸藤亮
┗━┫
└─ 猪爪誠