宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第56話  VS レアハンター 後編

吹雪 LP4000 手札4枚

場 セットモンスター

 

レアハンター LP4000 手札1枚(封印されし者の左腕)

場 セットモンスター

伏せ 一枚(補充要因)

 

 

 

 伏せたのはクリッターと補充要因だろう。

 補充要因は墓地の通常モンスターを三枚手札に加えることができるカード。レアハンターの手札にエクゾディアが残っていれば、そのままレアハンターの勝利となったかもしれないが、その目論見は吹雪のダスト・シュートによって打ち砕かれた。

 

「僕のターン、ドロー。僕は黒竜の雛を攻撃表示で召喚する」

 

 

【黒竜の雛】

闇属性 ☆1 ドラゴン族

攻撃力800

守備力500

自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送って発動できる。

手札から「真紅眼の黒竜」1体を特殊召喚する。

 

 

 召喚されたのは卵から頭だけを出した小さなドラゴンだ。つぶらな赤い瞳と黒い肢体はそのモンスターがレッドアイズの雛であることを現していた。

 

「そして僕は黒竜の雛を墓地へ送り、手札のレッドアイズを守備表示で特殊召喚する」

 

 

 

【真紅眼の黒竜】

闇属性 ☆7 ドラゴン族

攻撃力2400

守備力2000

真紅の眼を持つ黒竜。怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす。

 

 

 

 吹雪のエースモンスターである黒き竜が翼を羽ばたかせながらフィールドに降り立つ。血のように真っ赤の双眸は目の前にいるエクゾディア使いを静かに見据えた。

 レアハンターはレッドアイズが召喚されると目を細める。

 

「守備表示か。どうした折角のレッドアイズだというのに攻撃しなくていいのか?」

 

「ふふふっ。必死のようなところ悪いけど、挑発にのってクリッターを攻撃するほど僕は抜けていないよ」

 

「ちっ」

 

 レアハンターが舌打ちする。フィールドから墓地に送られた時、攻撃力1500以下のモンスターを手札に加えるクリッターなど攻撃すればエクゾディアが手札に加わって吹雪の負けが確定する。

 

「更に魔法カード、黒炎弾を発動! このカードはレッドアイズの元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるカードだ」

 

 

【黒炎弾】

通常魔法カード

自分フィールド上の「真紅眼の黒竜」1体を選択して発動する。

選択した「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

このカードを発動するターン「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

 

 

 レッドアイズから黒い炎の弾丸が吐き出される。黒炎がレアハンターに直撃するとライフの半分以上を奪い取った。

 

 

レアハンター LP4000→1600

 

 

 2400ダメージを受けたレアハンターは苦痛に悶えながらも余裕を崩そうとはしなかった。

 

「まだまだ。この程度のダメージでは私は倒せない。フフフフフフ、次の私のターンでクリッターを墓地に送るカードがくれば私の勝利だ」

 

「それはどうかな」

 

「なに?」

 

「確かに君のセットしているカードは補充要因。君は封印されしエクゾディアを除いた四枚のパーツを手中に収めているも同然といえる。勝利まで後一歩といっても過言じゃないだろう。

 だけどそれは僕だって同じだよ。僕のデッキには『黒炎弾』があと二枚ある。僕の今のデッキ枚数は33枚。つまり次のターン、33分の2の確率で僕の勝利が確定するわけだ。いや、天使の施しや強欲な壺みたいなドローソースを引く可能性もあるから、実際の確率はもっと高いかな」

 

「何が言いたい?」

 

「僕のフィールドにレッドアイズを残しておく限り、君は常にそういう今にも負けるかもしれない危険性に晒されているということだよ」

 

「その手は食わない」

 

 レアハンターがかぶりを振り一蹴した。

 

「武藤遊戯もそうだ。私をそうやって誘い罠に駆けた。二度も同じ手を食うと思うなよ。私は私のペースで私だけのデュエルをする。そうすれば私は……無敵だ。

 エンドフェイズ時、罠カード『補充要因』を発動! エクゾディアの三パーツを手札に加える!」

 

 

 

【補充要員】

通常罠カード

自分の墓地にモンスターが5体以上存在する場合に発動する事ができる。

自分の墓地に存在する効果モンスター以外の攻撃力1500以下の

モンスターを3体まで選択して手札に加える。

 

 

 

 レアハンターの手札に三枚のパーツが加わる。これで本当に後一歩だ。

 しかしなんとしても全パーツ完成させるわけにはいかない。

 

「私のターン、ドロー。強欲な壺を発動し二枚ドロー! いいカードを引いたぞ。私は封印の黄金櫃を発動する」

 

 

 

【封印の黄金櫃】

通常魔法カード

自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。

発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。

 

 

「私が除外するのは当然、封印されしエクゾディア。フフフフ、これで2ターン後に私の勝利だ」

 

「………」

 

「更にカードを一枚セットしてターンエンド」

 

「迂闊だね」

 

「なに?」

 

「封印の黄金櫃は優秀なカードだ。どんなカードでも2ターンあれば確実に手札にもってくることができる。一枚しか入れられない制限カードを中心とするデッキにとっては必須ともいえるカードだ。

 けどね。逆に言えば手札に加わるのに2ターンを擁する。つまり……君のフィールドにいるクリッターはもはや鉄壁の壁ではなくなった」

 

 クリッターを墓地に送れば敗北が決定する。そういう前提条件があったからこそ吹雪はクリッターを攻撃できなかった。

 だがもはやそんな枷はない。クリッターは鉄壁ではなくなった。

 

「僕のターンだ、ドロー。僕はセットしてあったミンゲイドラゴンを除外してレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを特殊召喚する!」

 

 

【レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン】

闇属性 ☆10 ドラゴン族

攻撃力2800

守備力2400

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体を

ゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の

ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。

 

 

 

 多くの派生モンスターをもったレッドアイズの最終形態。あらゆるドラゴン族デッキにおいて主軸ともいえる働きが出来るレッドアイズがフィールドに降臨した。

 鋼鉄の黒竜は機械的殺意を撒き散らしながらレアハンターを見下ろした。

 

「真紅眼の黒竜を攻撃表示に変更。バトルフェイズ! レッドアイズの攻撃、黒炎弾!」

 

 セットしてあったクリッターが吹き飛ばされる。守備表示だったのでレアハンターにはダメージがない。

 ただレアハンターのライフは1600しかない。次の攻撃で終わりだ。

 

「フフフフフ、レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンとは中々のモンスターを召喚するものじゃないか。だが甘い。クリッターのモンスター効果、デッキより『魂を狩る死霊』を手札に加える。更に永続罠カード、グラヴィティ・バインド-超重力網-を発動する!

 これでもうレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンは攻撃できない。更に魂を狩る死霊は戦闘では破壊されないモンスター。これで私の勝利は確定的だ」

 

 

 

【グラヴィティ・バインド-超重力網-】

永続罠カード

フィールド上のレベル4以上のモンスターは攻撃できない。

 

 

【魂を狩る死霊】

闇属性 ☆3 アンデット族

攻撃力300

守備力200

このカードは戦闘では破壊されない。

このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊する。

このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手の手札をランダムに1枚捨てる。

 

 

 

 レベル4以上のモンスターが攻撃できなくなるグラヴィティ・バインドに戦闘耐性をもつ壁モンスター。

 この布陣を突破するのは並大抵のことではないだろう。それこそ究極のリセットカードである最終戦争でも使わない限りは。

 

「……僕はカードを一枚セット、ターンエンド」

 

「私のターンだ。フフフフ、モンスターとカードをセットする。どうだ天上院吹雪、自分の喉元にナイフを突きつけられた感想は? なに心配するな。もう少しでお前は敗北し楽になれる。私の勝ちだ」

 

「それはどうかな」

 

 絶体絶命のピンチでありながら吹雪には敗北の恐怖などは微塵もなかった。

 あるのは自分のデッキに対する絶対的信頼だけ。

 

「まだデュエルは終わっていない。勝利宣言をするにはまだまだ全然早いよ」

 

「フフフフフ、若いルーキーだけあって威勢だけは良いな。この状況でお前になにができる?」

 

「これができるのさ! 僕はエンドフェイズ時、リバースカードオープン! レッドアイズを生贄に捧げ、魔のデッキ破壊ウィルスを発動する!」

 

 

 

【魔のデッキ破壊ウイルス】

通常罠カード

自分フィールド上に存在する攻撃力2000以上の

闇属性モンスター1体を生贄にして発動する。

相手フィールド上に存在するモンスター、相手の手札、

相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、

攻撃力1500以下のモンスターを破壊する。

 

 

 

 レッドアイズが生贄となり、魔のウイルスがレアハンターの手札とフィールドに感染した。

 

「魔のデッキ破壊ウイルスだとぉ!?」

 

「そう。君がセットしている魂を狩る死霊もエクゾディアパーツも全て攻撃力1500以下のモンスターカード! ウイルスは君のフィールドと手札を完全破壊するよ」

 

「なぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!」

 

 完成間近だったエクゾディアの両腕と両足が再び墓地へ送られる。

 しかしレアハンターの手札は0枚。最初のようにエクゾディアパーツを回収するようなカードはない。

 

「デュエルを進めよう、僕のターン。ドロー。ベストなカードをドローしたよ。魔法カード、大嵐! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊するよ」

 

 フィールドに吹き荒れた嵐がレアハンターの頼りとする最後の壁、グラヴィティバインドを破壊する。セットしておいたもう一枚はどうやらミラフォだったらしい。

 これで完全にレアハンターのフィールドはがら空き。

 

「僕はレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンのモンスター効果、墓地よりレッドアイズを蘇生して……バトルフェイズに以降する。

 レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンと真紅眼の黒竜の攻撃! ダークネス・ツイン・フレアッ!」

 

 二体のレッドアイズの黒炎がレアハンターを包み込む。

 合計攻撃力は5200。レアハンターのライフは一瞬にして消し飛んだ。

 

 レアハンター LP1600→0

 

 

 敗北者となったレアハンターが崩れ落ちる。

 

「負けた…私の最強デッキが……。ヒィィィィィィィィ! ヒ……助けて……来る来る来る助けて……来るぁああああああ! 来る…来る……来る…来る…マリク様が……ヒィィィィィィィィ!」

 

「マリクはもうボスじゃないんじゃなかったのかい?」

 

 多少呆れつつも吹雪は笑う。エクゾディアデッキには驚いたが終わってみればライフがまるで削られないでの快勝であった。

 

「爽快カーンだね。さっ、二人は大丈夫かな」

 

 吹雪は一度だけ崩れ落ちて悶えるレアハンターを振り返ると、元来た道を戻っていく。

 デッキの中にいるレッドアイズが嬉しそうに嘶いたような気がした。

 




吹雪「今日の最強カードは『魔のデッキ破壊ウイルス』だよ。自分フィールドの攻撃力2000以上の闇属性モンスターを一体生贄にすることで3ターン相手の攻撃力1500以下のモンスターを死滅させることができるよ」

レアハンター「フフフフ、私の次くらいに強い海馬瀬人が使用した『死のデッキ破壊ウイルス』の相互互換といえるな」

カイザー「普通のビートダウン相手には効果が薄いが低コストモンスターを軸にしている5D's主人公の不動遊星のようなデュエリストには天敵といってもいいカードだ。ただ攻撃力2000以上のモンスターを生贄にするのはコストとしてやや重い。簡単にモンスターを墓地や手札から特殊召喚できるレダメや、墓地からの蘇生が容易の暗黒界の龍神グラファと合わせて運用するといいだろう」

宍戸丈「主人公なのに台詞が……ないナリよ」

吹雪「久しぶりだねそれ」

カイザー「口癖とはなんだったのか」

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