宍戸丈の奇天烈遊戯王   作:ドナルド

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第89話  俺のクリボーに常識は通用しねえ

宍戸丈 LP4000 手札2枚

場 クリボートークン×5

罠 暴走闘君×2

 

 

クロノス LP900 手札0枚

場 なし

伏せ 一枚

魔法 強欲なカケラ 禁止令

フィールド 歯車街

 

 

 

 丈とクロノス先生とのデュエルは先ず初めに丈が先制した。

 場には攻撃力2300で戦闘耐性まで付与された五体のクリボートークン。対するクロノス先生の場にモンスターはおらず手札は皆無。丈が完全に優勢だ。

 

(だがクロノス先生は伊達に実技最高責任者になってるわけじゃない)

 

 この程度で押し切れるようでは実技試験の責任者になどなれはしないだろう。

 

「グヌヌ。この私に一撃与えるとは特待生の名に恥じぬ実力ナノーネ。しかーし、余り物にあるフェリーチョ。後だしジャンケンの怖さを教えてあげルーノです! 私のターン、ドロー!」

 

 通常のドローを行った為、強欲なカケラに二つ目のカウンターが乗った。

 これで強欲なカケラは強欲な壺として機能する。

 

「私はカウンターが二つのった強欲のカケラを墓地へ送り二枚ドローすルーノ! 更に手札より強欲な壺も発動! 追加で二枚ドローするノーネ!」

 

 クロノス先生の手札が一気に0枚から四枚にまで回復した。怒涛の連続ドロー、この辺りはアカデミア教員の面目躍如といったところだろう。

 

「そして私はカードを二枚伏せルーノ。……ふふふっ! ここからが私の逆転ナノーネ。魔法カード、大嵐! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊するノーネ!」

 

「さっき自分で伏せたカードまで破壊するだって!? チェーンしてクリボーを呼ぶ笛を発動、手札にクリボーをサーチする!」

 

 丈のフィールドにある暴走闘君二枚が破壊されたことでクリボーの攻撃力が元に戻っていく。だが事はこれだけに留まらない。

 フィールド魔法である歯車街が破壊されたことで周囲の風景が元に戻り、クロノス先生が大嵐を発動する直前に伏せたカードも破壊された。

 

「モッツァレラチーズ! 心配ご無用ナノーネ。私が伏せた二枚のカードは黄金の邪神像、このカードが破壊された時に邪神トークンを特殊召喚するノーネ!

 そして破壊された歯車街の効果も発動。このカードが破壊された時、手札・デッキ・墓地から『古代の機械(アンティーク・ギア)』と名のつくモンスターを特殊召喚することができるノーネ!

 私はデッキより古代の機械巨竜を攻撃表示で特殊召喚すルーノ!! そして二体の邪神トークンを生け贄に捧げ古代の機械巨人を攻撃表示で召喚するノーネ!」

 

 

【古代の機械巨人】

地属性 ☆8 機械族

攻撃力3000

守備力3000

このカードは特殊召喚できない。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

このカードが攻撃する場合、

相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

 

【古代の機械巨竜】

地属性 ☆8 機械族

攻撃力3000

守備力2000

このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

以下のモンスターを生け贄にして表側表示で生け贄召喚した

このカードはそれぞれの効果を得る。

●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

●レッド・ガジェット:このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手ライフに400ポイントダメージを与える。

●イエロー・ガジェット:このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、

相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

 

 伝説のレアカードの一角に数えられる古代の機械巨人。これだけでも厄介だというのに巨人の隣りには巨竜がその翼を羽ばたかせている。

 古代の機械が誇る二体の大型モンスター。それが同時に丈の前に降臨してしまったのだ。

 

「古代の機械巨竜でクリボートークンを攻撃するノーネ! アルティメット・ギア・ストーム!」

 

 

 宍戸丈LP4000→1300

 

 暴走闘君を失ったクリボートークンは攻撃力300の弱小モンスターでしかない。古代の機械巨竜の攻撃力に抗うこともできずに消し飛ばされる。

 その様子を見た観衆から失望の溜息が出た。

 

「……最初は凄いと思ったけど、やっぱり古代の機械巨人と古代の機械巨竜を前にしちゃあな」

 

「可愛いけどクリボーじゃね」

 

 弱小モンスターでも活躍できるということを教える為のデュエルである以上、なんとしても二体の大型モンスターを倒さなければならない。

 我ながら面倒な仕事を引き受けてしまったものだ。

 

「続いて古代の機械巨人で二体目のクリボートークンを攻撃、アルティメット・パウンド!」

 

「古代の機械巨人は攻撃する時、ダメージステップ終了時まで魔法・罠カードの発動を封じる効果をもっている。けどモンスター効果はその限りじゃない。俺はクリボーを墓地へ捨てることでダメージを0にする……」

 

 クリボーが丈の身を守ってくれたお蔭でダメージがなくなる。古代の機械巨人の攻撃がそのまま通っていた場合、丈の敗北が確定していたところだった。静かにクリボーに感謝する。

 

「上手く躱してきたノーネ。私はターン終了でスーノ」

 

「俺のターン、ドロー。……カードを一枚セット、モンスターをセット。ターンエンド」

 

「防戦一方なノーネ。私のターン」

 

 にんまり笑いつつクロノス先生がドローした。そして、

 

「バトルフェイズ!」

 

 このまま勝負に決着をつけるためバトルフェイズへの移行を宣言した。

 

「バトルフェイズ突入前にこのカードを発動。和睦の使者。このターンの戦闘ダメージを全て0にする」

 

「むむっ。往生際が悪いノーネ。カードを一枚伏せてターン終了ナノーネ」

 

「俺のターン……ドロー」

 

 取り敢えずセットしたモンスターを守ることが出来た。

 古代の機械巨竜と古代の機械巨人、どちらも攻撃する際にダメージステップ終了まで魔法・罠を封じる厄介な効果をもったモンスターたちだ。しかも古代の機械巨人は貫通効果までもっているため守備表示で時間を稼ぐことも出来やしない。

 このターンであの二体をどうにかしなければ敗北は必至。そのためには、

 

「俺はセットしていたメタモルポットを反転召喚! その効果により互いのプレイヤーは手札を五枚捨てて五枚ドローする!」

 

 五枚のドローに賭けるしかない。もしも丈のデッキが丈を見捨てていなければ、このドローで可能性を手繰り寄せることができるはずだ。

 

「……! 俺はモンスターをセット、カードをセット。ターンエンド」

 

「ふっふっふっ。私の古代の機械たちの前に手も足も出ないようでスーネ! けど手は抜きませンーノ! これが私とセニョールのラストターンになるノーネ! 私のターン、ドロー!

 私はリバースカード発動、トラップ・スタン! このターン、このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にするノーネ! これでセニョールの逆転のカードは封印したノーネ」

 

「ぐっ!」

 

「バトルフェイズ! 古代の機械巨人でクリボートークンを攻撃――――これで終わりなノーネ」

 

「それはどうかな」

 

「ニョ?」

 

「古代の機械巨人が攻撃に入るよりも前に速攻魔法発動、進化する翼!」

 

 

【進化する翼】

速効魔法カード

自分フィールド上に存在する「ハネクリボー」1体と手札2枚を墓地に送る。

「ハネクリボー LV10」1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

 

 

 このカードこそが丈が待ち望んできた一発逆転のキーカードだ。

 そしてこのデッキの双璧ともいえるクリボーと対を為すモンスターの最終形態へ進化させるトリガーでもある。

 

「俺はセットしていたハネクリボーと手札を二枚墓地へ送る。そして俺はハネクリボーLV10を手札かデッキより特殊召喚する! 現れろ、ハネクリボーLV10!!」

 

 

【ハネクリボーLV10】

光属性 ☆10 天使族

攻撃力300

守備力200

このカードは通常召喚できない。

このカードは「進化する翼」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。

自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを生け贄に捧げる事で、

相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊し、

破壊したモンスターの元々の攻撃力の合計分のダメージを相手ライフに与える。

この効果は相手バトルフェイズ中のみ発動する事ができる。

 

 

 ハネクリボーの小さな体が輝いたかと思うと、そこから雄大な純白の翼がより大きく鋭利に噴出した。

 それを生やしているのは小さい身で巨大な敵にも臆さず相対できる勇気をもったモンスター、ハネクリボー。

 

「は、ハネクリボーLV10でスート! で、ですーが、幾らクリボーが進化したところで攻撃力はたったの300! 私の古代の機械巨人の十分の一でスーノ!」

 

「それはどうかな。ハネクリボーLV10には特殊能力がある。それはこのカードを生け贄にすることで相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

「にゃ、にゃんこー!?」

 

「行け! ハネクリボーLV10!」

 

『クリクリクリクリ~~!』

 

 ハネクリボーLV10が古代の機械巨人たちに突進する。

 そしてハネクリボーが古代の機械巨人にぶつかると、光が爆ぜた。充満していく光は古代の機械巨人と古代の機械巨竜の二体を巻き込んでいく。

 光が晴れる頃、そこにはもう二体の古代の機械はどこにもいなくなっていた。

 

「ま、マンマミーア。ガックリンチョ」

 

 デュエルが終わると、クロノス先生が膝を突く。如何に特待生相手だろうと教え子に敗北するのはショックだったらしい。

 けれど丈とて危ないところだった。もしも前のターンで和睦の使者を引き当てることが出来なければ、そのまま古代の機械の総攻撃で負けていただろう。

 最後のひとつ前のドロー。それが総てを分けた。

 

『お見事、勝者は宍戸丈くん。弱小モンスターであるクリボーを最大限活用し、クロノス先生の最上級モンスターを打倒してみせるタクティクス。流石は特待生です』

 

 鮫島校長のアナウンスと共に爆発的な歓声が轟く。

 これで少しでも低ステータスモンスターが見直されれば嬉しいところだ。


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