ウマ娘 走れカワサキ一等星〜地方ウマ娘が砂舞台でティアラの女王狙います 作:トマスアレポ
「NO SIGNAL」は通信状況によりトラッキングセンサー情報が取得できないそのウマ娘番号が表示されます。
全出走ウマ娘の位置情報が取得できている間は表示されません。
↓矢印は進行方向を示します
<< 600←現在の通過距離を示します
①②③④ ⑤ ⑥ ⑦⑧⑨ ⑩ ⑪
⑫ ⑬⑭ ⑮⑯⑰ ⑱
58.3km/h←先頭馬の時速を示します
東京優駿←レース名を表示します
実況の声は、最初の一語からすでに緊張で張りつめていた。
――スタートしました。各ウマ娘揃ったいいスタートです。
その瞬間、空気が一段階薄くなった。
18の影が同時に跳ね、砂煙ひとつ立てないほど滑らかに加速していく。
芝の上の足音が13万の大歓声にかき消されないように響いた。
実況が矢継ぎ早に状況を読み上げる。
――注目最初の先行争い、まずは6番エコロアムラームと16番マイネルサーバントが出ていきます。
1番人気ダノンアンコールはすっと下げて、4番手5番手あたりを追走します。
その後ろマークするように7番ダイナコンサートと9番シャダイカムイ。その後ろには5番シルクレインボウと15番タガノアラビアータが続きます。
薫風の東京レース場、18頭のウマ娘たちが1コーナーを通過していきます。
1コーナーへ吸い込まれていく18の影。
その背に、八千頭超の世代を背負っているとはとても思えなかった。
あまりに軽く、あまりに速い。
――2コーナー回って先頭は6番エコロアムラームリードは2馬身3馬身と開きます。その後ろから16番マイネルサーバント。その後ろ内には3番ナイトストレイド、2番のタイセイラヴァンダ追走。
――そして1番人気のダノンアンコールはここにいた!
ペースが落ち着く中包囲網を作るように7番ダイナコンサート、その外9番シャダイカムイ。
更には内5番シルクレインボウ、15番タガノアラビアータ、4番のニシノルーメットがいて向正面に入ります。
――更にその後方には8番キャロットラッシュと13番アスクパレスモア内に10番サトノラバルム。
馬群開いて、14番ナムラレインと11番ハギノトップスタァ、まもなく残り1000m通過、最初の1000mは59秒9というペース!やや流れています。
その後方でざわりと動く影があった。
1人のウマ娘が、最後方から一気に捲り上げてくる。
――その後ろ17番シャドウハーミットに外18番デルマツキヒザ、そして最後方に12番アドマイヤトロンが…上がって行って、一気に先頭から4番手5番手の位置に付けました!
――更には11番ハギノトップスタァと8番キャロットラッシュもこれを見るように一気に上がっていきます!
観客がどよめく。
隊列は急に固まり、呼吸が詰まるような圧迫感がスタンド全体を締めつける。
――隊列がぎゅっと固まります!
先頭は依然6番エコロアムラームリードがなくなって、並んで16番マイネルサーバント、内に3番ナイトストレイド、2番のタイセイラヴァンダ、7番ダイナコンサートに5番シルクレインボウ。
広がって4コーナーカーブ、1番のダノンアンコールは内内包まれて5番手6番手の位置で、無敗の二冠へ最後の直線500mの攻防です!
4コーナーと大ケヤキを過ぎて最後の直線が迫る。
ダノンアンコールは内で包まれたまま、しかし焦る気配も見せない。
実況の声が跳ねた。
観客の叫びが風と化し、壁になり、直線へ押し流されていく。
――先頭は6番エコロアムラームと16番マイネルサーバントが並んで行って、そこに追い出した2番のタイセイラヴァンダ!400を切りました!
外はダイナコンサートに馬場の真ん中シルクレインボウアドマイヤトロン!
――さあ腕が飛ぶ!ダノンアンコール!トザキの夢が近づく!
後は追込み勢足色はどうか!
ここでダノンアンコール先頭!ダノンアンコール先頭!
その実況の叫びに、スタンドが揺れた。
この瞬間、皆が信じたのだ。
やっぱりこの子が勝つのだと。
――あと150!
しかし内ラチ沿いからナイトストレイド!
馬場の真ん中ダノンアンコール!
ここでナイトストレイド先頭!二番手ダノンアンコール!
トザキの夢はどうなんだぁ〜!
内ラチ沿い、死角のような場所から飛び出してきた影。
まるで伏兵が大河ドラマのラストで主役の座を奪うように、するりと抜けた。
――しかし内ナイトストレイド!
3番手争いシルクレインボウアドマイヤトロン!
なんとなんと勝ったのはナイトストレイド!
その瞬間、東京レース場が揺れた。
轟音が、悲鳴が、歓声が、落胆が――全てが混じり合って渦巻く。
ありえない、と。
嘘だろ、と。
でもこれが現実だ、と。
「嘘ぉ……」
私が呟き、
「えぇ……」
ベルも呆然とした。
「――これが競馬だ!これが競馬の恐ろしさ!」
実況の叫びが、どこか空虚な趣で通り過ぎていく。
立ち見席を見下ろすと、どこかの観客が紙吹雪をばら撒き始めていた。
喜びではなく――
もはや諦めの八つ当たりのように。
サンリンドーは頭を抱えた。
ラウンジ席の大人たちも、学生席のウマ娘たちも、
“こうなるとは思っていなかった顔”をしている。
「こんなこともあるんだなぁ……」
「そ、そうですね……」
「まあ、中央の真剣対決だからな。こんな日もあるさ……」
サンリンドーの言葉は慰めに聞こえるが、どこか経験者の諦観も混じっていた。
東京レース場のどよめきは、まるで地鳴りのように続き――
しばらく収まりそうにない。