ダンジョンに魔軍司令が居るのは間違っているだろうか   作:ナナシの権蔵

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暴走した部分を少しでも作者の胃に優しい方向へ…


第13話

「分類すれば私は転生では無く憑依ですね。基本的に『彼女』は原作知識とやらを私に教えて眺めているだけです」

「道理で初対面から警戒が少ない筈だ。他にも居るのか?」

「私は存じませんが2人目が居たのです。3人目以降が居ても不思議はありません。居ると考えるのが妥当です。私は神威に耐性がありましたから原作と外れた行動をして神威に耐えられるならほぼ確定でしょうね」

 

 ヤバい、急に頭痛が痛い、胃が痛いポンポンペイン。一歩間違えば破滅の危険があるこの世界で火遊びする馬鹿は絶対に居る。何なら享楽的な神に意気投合ネタバレしてやらかしてても不思議は無い。村人AやモブAの行動なんて監視のしようが無い。推しキャラが闇派閥イヴィルス側に居るヤツなんてガチの爆弾じゃねえか。もうオラリオが馬鹿の巣窟か地雷原にしか見えねえよド畜生がっ!!!

 

「いかんっ、一旦ベルの村に行くぞ!」

 

 空中で絨毯を筒に戻してアスフィの腕を掴み移動呪文ルーラを唱える。

 

「ベル、と言うのは確か原作の主人公で【静寂】の甥っ子でしたね?」

「そうだ、あの子の安全を確保せん事には何も出来ん。いつアルフィアやザルドが敵に回るか分かったものでは無い!」

 

 下種ゲスは突き抜けているから下種ゲスなのだ。俺程度が考える最悪など軽く飛び越すだろう。

 

「アスフィには悪いが最早一蓮托生だ、地獄の果てまで付き合ってもらうぞ」

「ふふっ、元よりそのつもりです。そうでなければ憑依の事を打ち明けたりはしませよ」

 

 ベルの事を含め闇派閥イヴィルスに渡ってはマズイ情報が多過ぎる。殺女アラクニア辺りが知れば間違い無く利用する。子供を1人人質に取るだけでLV7を操れるのだ、あのクズ女が躊躇する理由は無い。何かをやらかす前に早急に始末せねば…

 ベルが死ねばアルフィアはどう動く? 怒り狂って全てを破壊するか? それとも妹に詫びながら命を絶つか? どちらにせよ俺の平穏は遠退く。自分以外の転生者を考慮しなかった己の馬鹿さ加減にも腹が立つが、それは全部纏めてこの采配を振るった邪神にぶつけてやる。楽ニ死ネルト思ウナヨ!

 

 

 

「あれ? ハドラーさん、戻るのは明日じゃなかったっけ?」

「…少し予定がズレてしまってな。持って行くつもりだった魚が無駄になりそうなので一旦戻ったんだ。大量にあるから皆に配ってくれるか」

「あいよ、いつもありがとうね」

 

 レイナが持っていたロープを受け取り、魚の入った箱を渡す。備蓄には向いてない魚は俺が偶に持って帰って来る以外は近くの川で釣るしか無い。味がパンとは合わせにくいのが難点だが、清酒や米との相性は抜群なので人気は高い。

 

「長閑で良い場所ですね」

ゼウスの発作コレが無ければ尚良かったんだがな」

 

 村の景観を乱していたボロボロのぐるぐる巻のゼウスミノムシを引き摺ってベルの家を目指す。

 俺の想定に反して村は一部の例外ゼウスの覗き以外は平和だったようだ。

 

「戻ったぞベル、シルファ」

「ハドラーさん、おかえり〜」

「おかえりなさい」

「ショタっ子とケモ耳美少女キタ━━━(゚∀゚)━━━」

「「ひぃぃっ…!?」」

「ぐえっ…」

 

 突然錯乱して突撃するアスフィの後ろ襟を掴んで静止する。良かった、この手の行動する奴に耐性があって、本当に良かった。さて、断罪の時だな…

 

「…人間とは言葉で理解し合う生き物だ。見たものだけではお互いの認識の違いで齟齬があるやもしれん。俺が見た幼児少女に突撃する変態も何かの勘違いの可能性があるな。故に一度くらい釈明の機会を与えるべきだろうと判断する。ただ今の俺は少々冷静さを欠いているので言動には細心の注意を払ってくれ給え。では一応聞いてやろうか……何か言い残すことはあるかねアスフィ・アル・アンドロメダ」

 

 手首を返しぶら下げた犯罪未遂者アスフィの顔を真正面から眺める。

 

「…私じゃ、私じゃ無いんです…」

 

 流石は苦労人、初手から泣き落としで来たか。必死さと後が無い焦りを演出して涙で哀れみを誘うとは中々だ。か細い声量で諦観を示し裁きを受け入れる構えは実に見事。ならばせめて最後は楽に逝けるよう俺の渾身の呪文で葬ってやろう。極大消滅呪文メドローアならせめてものはなむけに相応しいかろう。まだ未完成で放てば腕が消滅するが時を置けば再生するのだから安いモノだろう。

 

「…『彼女』の仕業なんです…」

 

 …情状酌量の余地あり。決議を一時中断し、追加の情報にて再び審議、判決を下すものとする。

 

 

 

 ベルやシルファの前でこの話の続きは無理だし危険だ。かと言って子供2人を外に出すのははばかられる。なので消去法で俺とアスフィは外の人気の無い場所へ移動した。逢引のような色気のある話なら良かった……

 

「…そう言えば聞いていたな、基本的には傍観者だと。その言い方だと過去に表に出ることはあったのか?」

「私が幼少の時に何度か。ここ数年は収まっていたので油断しました、本当に申し訳ない」

「俺が言うのも何だがよく受け入れられたな」

 

 こちらには幽霊の概念が無い。死者は肉体を残し魂は天界に向かうとされている。陰陽師や霊媒師シャーマンも居ないからどうにもならなかったのかもしれんな。

 

「有益な情報を次々と頂いたので邪険にしづらくて……自己紹介もこちらには無い言葉でしたので私には理解出来ず……」

「余り聞きたくないが聞かねば話が進まんか。ならば憶えている部分を正確に言え」

「はい、確か『アタシはショタコンでロリコンな両刀パイのモフリストケモナーよ』と……」

「……そう、か…………そうか……」

 

 性癖のごった煮が過ぎる……あぁ、もう何も言うまい。コレは触れてはならぬおぞましい禁忌のナニカだ。

 

「さっきの様子を見た感じでは表に出て来る事は滅多に無いのか?」

「はい、主導権は私にあります。ですが先程のように感情が昂った時に表に出て来る時があるのです。本人に聞いても『萌えは全てを凌駕する』としか説明されず、今の所マズイと思った時に自力で抑え込むしか手がありません」

「まるで呪いだな。それも趣味に突っ走る最高にたちの悪い最低な邪神の類だ」

「全くもってその通りです。1人で旅に出たのもハドラーさんのように事情を理解してくれて、いざとなったら止めるか処断出来る方を探すのも含まれてます。まぁ流石は未遂で死ぬのは御免ですからこれからは全力で抑えますが万が一、止めきれず行為に及んでしまった場合は潔く処分を受け入れます。その時は出来れば邪神の呪いで可怪しくなったと喧伝してください。母だけは知ってますので手配してくれる筈です」

 

 そう言ってこちらに向けられたアスフィの瞳は光の存在すら塗り潰す、どす黒い闇そのものに見えた。ミストバーンより上じゃないかこの闇?

 頭の回転が速過ぎて終わりまで読めてるから王族と個人の思想で板挟みになってるのか? 原作より苦労人してないか? 主に精神的なダメージで…

 そう思えば行動力があるのも半分は自棄ヤケの入った個人としての思いか。残りは自分の命を使える内に使い倒す王族としての義務感が原因と……

 一蓮托生と言った手前、放り出すのは論外だ。ショタでロリの判定が小人族パルゥムにも適応されるならば敵認定だ。俺の推しキャラに被害が及べば冷静では居られない。だが憑依した異世界の魂なんぞどう剥がせば……

 

「待てよ、あの魂を悪霊…霊と仮定するなら……」

 

 対抗手段はあった。仮定に仮定を重ねた推論で試してみなければ分からないが、場合によっては完全に消し去れる可能性はある。アレを呪いと判断出来れば最も簡単だ。悪霊なら霊以外に邪悪とも仮定出来るな。霊では無く思念の塊ならばアスフィに怪我をさせる事になるから出来ればこの手段は控えたい。

 

「アスフィよ、しくじる事を考えれば余り希望を持たせたくはないが、ソレをどうにかできるかもしれん」

「………」

「断っておくが絶対では無い上に分の悪い賭けになる。また手段によっては成功しても小さくない傷を負う可能性が高…」

「アレが消えて命が助かるなら御の字です!」

 

 再起動が早い圧が強い顔が近い止めろ縋り付くな。

 

「まずは試しだ。『のモノを蝕む呪いを解き放て』解呪呪文シャナク!」

 

 呪文を唱えるとアスフィの身体が神聖な光りに包まれる。胸の辺りから黒いモヤが出て空中へ消えるが、モヤが消えきる前に光が消えた。解呪呪文シャナクの効果の方が先に切れたようだ。

 

「手応えはあったがどうだ?」

「…まだ残っています。ですが、身体の中に張り付く感じが薄れましたね」

「そうか、だが呪いの気配は減っても別の嫌な気配を感じるな。どうやら呪いだけでは無いらしい。ならば次の手段だ。『邪なる威力よ退け』破邪呪文マホカトール!」

「うっ…」

 

 地面に輝く五芒星の魔法陣が描かれ、薄っすらと光る半円の聖域が発生する。すると今度はアスフィの背中側から大量のモヤが現れる。ソレは蠢きながらゆっくりとアスフィから離れ、破邪呪文マホカトールの範囲外でボヤけた人型を取る。

 

「ふむ、やはり退けるのはじゃだけでなくよこしまもか。アスフィ、身体は大丈夫か?」

「…はい、ですがさっきまで聞こえていた『彼女』の声がどんどん聞こえなくなって…」

「そうか……ではコレで終わりにしよう。『の魂を呪いより解き放ち昇天させよ』昇天呪文ニフラーヤ!」

 

 人型のモヤを中心に光の柱が立ち昇る。モヤの色が白味を帯びると空へと昇り始め、回りの光と変わらないくらい白くなると見えなくなった。

 

「ハドラーさん、今飛んで行ったのは…」

「うむ、ヤツの魂だ。他の手段は効果が怪しいか怪我前提の手段しか残ってなかったからな」

 

 アバン流空の技を使わずに済んだのは本当に良かった。邪悪なエネルギーを絶つのが主目的の技だが物理ダメージもあるし俺の未熟さもあってアスフィの魂に影響を与えない保証もない。契約だけ済ませて使う機会の無かった呪文の効果が可怪しかったのは黙っておこう。結果オーライだ。

 

「サラバだ名も知らぬ魂よ。俺は貴様の冥福を祈ろう、迷わずに成仏しろよ」

 

 前世の供養の仕方を思い出しながら両手を合わせて拝む。後で小さな墓くらいは作ってやろう。

 




まさか初めての特殊フォントをこんなセリフに使う事になるとは……

そして憑依者よサラバ。君はアスフィが過労死しかねない原作の運命を変えた名も無き英雄として読者の記憶に残る筈だ……多分……

せめての供養

ロリショタパイケモフネキ
自分の抱擁を嫌がって道路に飛び出した猫を庇い死亡。
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