イージス護衛艦「はぐろ」、がんばります。   作:gotsu

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被雷します。

「天候を報告します、視程、20KM以上、風、東から約30ノット以上、波4~6M、うねり7、シーステイト6です。」

 天候は低気圧の影響で雨こそ降っていないものの風が強くて海は大荒れになりました。数時間前まで哨戒をしていたシーホークも既に着艦して格納庫で羽を休めています。この天候では発艦出来ても帰ってこれなくなります。

「半日後には海峡通過です、頑張りましょう!」

 ゆれる艦内でみんなを励まします。海峡を通過さえすれば潜水艦の出没する危険な海域を突破したのと同じです。

「うぅ、頑張ります…。」

「ちょっと揺れが…」

「あいたたた…頭うったぁ~。」

「…」

 吹雪ちゃん達からそれぞれ返事が返ってきます。小さいのでこの天候にはかなり堪えているようです。

「龍鳳さん、このまま行ったほうがいいんでしょうか?」

 みんなの様子が気になって、つい聞いてしまいます。

「…そうですね、どちらも一長一短といったところでしょうか。」

 龍鳳さんはこのまま行く事と天候の回復を待って海峡を通過する方法と、それぞれの利点欠点を説明してくれました。

 

「あくまで私の考えです、決めるのは旗艦のあなたです。」

 龍鳳さんは最後に一言付け加えます、どんなに龍鳳さんが経験豊富でも旗艦は私、しっかり考えて決めないといけません。

 

 

「……わかりました、このまま行きましょう。」

「はい。」

 いち早くこの海域を脱出するためにこのまま行く事にします。

「皆さん、このまま予定通り海峡の通過を目指します、頑張りましょう!」

「「「「はい(…)」」」」

「初雪ちゃん?」

 さっきから返事が無い初雪ちゃんに呼びかけます。

「…大丈夫、頑張る。」

 ちょっと元気の無い返事が返ってきます、特型駆逐艦はトップヘビーと聞いた事があります、揺れが酷くてもしかしたら…。

「初雪ちゃん、頑張りましょう、もうすぐ海峡です。」

「…うん。」

 

 

 

 

 

「第11護衛艦隊より入電、[ヨテイドオリツウキョウセヨ]です。」

「わかったにゃ。」

 後ろの艦隊から連絡を受けた多摩は、予定通りバシー海峡通過を目指す。

「天気は悪いけど、下手に留まってぶつかるよりましにゃ。」

 練度の低い商船隊をこんな嵐の中で留まらせたら、それこそ何が起こるかわからない、後ろの旗艦の意図を汲み取った多摩は大所帯の商船隊に毒気づいた。

 

 

 

「高速推進音、魚雷の模様です。」

 先行して海峡の通過を目前にした多摩に水測妖精から落ち着いた声で報告が入る、当たるような魚雷ではないらしい。

「方位、登って行きます、前を通過する見込みです。」

「どこに撃ってるにゃあ。」

 明後日の方向に進んでいく魚雷に言葉を漏らす、多摩は軽巡洋艦として、適当に撃つ魚雷は好きではなかった。。

「無線封鎖解除!みんな、制圧するにゃ、少しでも船団の危険を減らすにゃあ。」

「「「「了解!」」」」

 多摩の号令で駆逐艦4隻が一斉に動き出す。悪天候の中でも連携して艦隊行動が取れるほど先行する艦隊の練度は高い、だてに困難な任務を任されている訳ではない。

「推進音、魚雷の模様です、方位落ちます、艦尾を通過します。」

 立て続けに魚雷探知が知らされる、でも相手は当てる気があるのか無いのか、全く見当違いの所にばかり撃ってきている。

「こんな当てずっぽうの魚雷、何が目的にゃあ……。」

 多摩は相手の不自然な攻撃に何かひっかかりを感じながらも、いつも通り制圧に向かった。

 

 

 

 

「弥生には負けてられないわね、え~い!」

 いち早く敵の魚雷発射点近くに来た如月が爆雷攻撃を始める。

「感あり、高速推進音、魚雷!、右60度、方位変わらず、被雷コースです!」

「えっ、どこ、見えない!」

 爆雷制圧を始めてすぐに全く予想しなかった報告が如月の艦橋に響く。魚雷を撃って来た潜水艦は今制圧の真っ最中のはずなのだ。 

 必死に探そうとするが波が高くて時折艦橋まで波をかぶるような状態では、とても目では魚雷など見つけられる訳がなかった。

「最大戦速、面舵いっぱい!お願い、かわして!」

 艦橋の中の手近な物にしがみつく、艦橋内はシンとして、ただ伝声管を通して聞こえる水測妖精の声と波が船体にぶつかる音だけが響いていた。

 如月は艦娘になって初めて何かに祈った。何に祈ったのかは自分でもわからない、ただ外れて下さいと祈る。一秒が何時間にも思える時間が過ぎ、そして一瞬大きな衝撃を感じ如月は意識を手放した。

 

 

 

 

「如月被雷~!!」

 多摩の艦橋に見張り妖精の声が響く。

 すぐさま艦橋から飛び出して、如月がいたほうを見ると、水柱が如月の船体を覆い隠すように崩れ落ちていた。

「如月、大丈夫にゃ、如月!」

「くっ、如月を助けに行くにゃ、面舵いっぱい、第三戦速!」

 返事がない如月に向かって一直線に向かう、駆逐艦は装甲が薄い、魚雷の一発でも致命傷になりかねない。まだ如月の姿は見える、被害は分らないけどもう一回魚雷を受けたらそれこそどうなるかわからない。

「やられた、敵の目的はこれにゃあ!」

 一隻を囮にして別の船が必中を狙う、何てやつらにゃ!

 既に、雷撃を受けたであろう場所に睦月が爆雷を落としている。

「気をつけるにゃ、みんな、相手は一隻だけじゃないにゃ!」

「睦月、如月の様子はどうなってるにゃ!」

「た、多摩さん、き、如月ちゃんは……返事がありません、被害もわかりません、でも沈没はしてません!」

「如月の盾に、両舷前進微速、前に出るにゃあ!」

 多摩は急いで如月に近づき、如月の周りを盾になるように回り始めた。

 被雷した如月の姿を見て多摩は息を呑んだ、後ろの主砲から、艦尾がバッキリと折れているのだ。

「ひどいにゃあ……」

 間違いなく大破、自力で航行は出来ないだろう、何としても制圧して引っ張ってでも行かなければいけない。

「みんな、如月は大破、航行不能、残りを何としても制圧するにゃ!」

「第11護衛艦隊に連絡、敵と遭遇、如月大破、救援願頼むにゃあ!」

 もっとも、あっちの方も今頃は……。

「こんな連携をする敵にゃ、後ろもきっと……。」

 図上演習で龍鳳に大敗を喫した多摩だが、今まで多くの輸送作戦を成功させた経験がある。敵の意図を看破して艦隊と輸送船団の状況の不味さを悟る。

 制圧しなければ、とても如月を引っ張ってはいけない、如月を見捨てれば別だが、そんな選択肢は無い。

 如月の被雷を皮切りに、第30駆逐隊の死闘が始まった。

 

 

 

 

「ESM探知、対水上捜索用レーダーです!」

 第30駆逐艦が魚雷攻撃を受け始めた頃、後続の艦隊にも動きがあった。

「パッシブソーナーに反応は?」

「反応……ありません、ノーコンタクト!」

「……これは!新たに五つ、ESMコンタクト、通信電波、内容不明!少なくとも5隻の潜水艦が同時に通信しています!」

 水上レーダーの探知を皮切りに、突然沢山の電波が飛び交う。

「電波封止を解除、水上レーダーで捜索して下さい!!」

「了解、対水上レーダー送信開始!」

「各艦に連絡、正面海域に敵の兆候があります、警戒をして下さい!」

「「「「「了解!(わかった…)」」」」」

 みんなに連絡を取ってレーダーの結果を待ちます。

 

「ESM,反応消えました!」

「ダメです、シークラッターが多すぎて役に立ちません!」

「わかりました、このままレーダー捜索を続けて下さい!」

 海面がこれほど荒れていては、レーダーで潜望鏡を探知するのは不可能のようです。

 沢山の電波の到来方向が描き出されたディスプレイを見る、相手は多くの艦で電波を使って逆にこっちを混乱させようとしています。多摩さんがこの電波を探知していたとしても、数日前のようにピンポイントで場所は分らないでしょう。

 でも、海峡付近で襲撃を受ける事は想定の範囲内です、ここを通るしか南シナ海に抜ける道はありません、つまり、敵にしてみれば、待っていれば必ず獲物が通る場所です、そんな所を対策せずに通る訳がありません。

「先行している第30駆逐隊に連絡を、少なくとも五隻の敵の接触を受けました。」

 私がそう言って通信の妖精さんを見ると、ヘッドホンを付けた妖精さんの顔色が、むるみるうちに悪くなっていく。

「第30駆逐隊より入電、敵と遭遇、如月大破、航行不能、救援を求めています!」

「えっ?」

 如月大破…航行不能…救援……

 頭の中をいくつかの言葉がぐるぐる回る。

「…」

「……」

「………」

「はぐろさん、指示をお願いします!」

「どう対応すれば!」

 耳元で聞こえる皆の声にハッとします。

「はい!対応は……。」

 ……どうすればよかったんだろう、どうすればいいんだろう。

 出航前にあんなに図演をしたのに、こういう時はどうしていたんだろう?

「状況を整理しましょう、はぐろさんのソーナーに捕まってないなら、まだ時間はあります!」

 艦隊の最後尾、龍鳳が声を上げる。こんな天候では、戦闘には全く参加出来ないが、そのぶん冷静に成り行きを見る事が出来ていたのだった。




方位登る(前を通る)
方位変わらず距離近づく(当たる)
方位落ちる(後ろを通る)

なかなか書きたい事を文章にするのは難しいです。
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