イージス護衛艦「はぐろ」、がんばります。   作:gotsu

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夏休みとは儚い夢であった。
また頑張ろう。


調達します。

「船団、入港準備完了、逐次入港始めます!」

 すっかり少なくなった輸送船団を眺める。最初は60隻もいましたが今はその半分以下の15隻にまで減っています。

 あの戦闘から数日後、船団は安全海域に入るとバラバラに別れ、それぞれの目的地に向かって行きました。そして私達は約3週間の長い航海を終えてようやく目的地のSP国の港近くまでたどり着きました。大破した如月ちゃんと多摩さんは昨日の夜のうちに一足先に入港、ドック入りしています。

「船団、左舷を航過します!」

「手の空いている妖精さんは甲板へ、みんなで見送りましょう。」

 私がそう言うと妖精さんが沢山中から出てきて左舷に並んでいきます。

 

「輸送船、旗流揚げます![貴艦の協力に感謝する、航海の安全を祈る。]です!」

「…はい。」

 左舷を通る輸送船を見送る、人が沢山乗っている船のようで甲板に沢山の人が出てきて手を振ってくれている。甲板の上の人はみんな笑顔だった。

「左帽振れー!」

 私達も妖精さんと一緒に手や帽子を振り返します。でもあの人たちの笑顔が少し私には痛かったです。過程がどうあってもあの人たちの仲間を見捨てたことに変わりはありません。

 結局、暗い海に置き去りにした10人のうち3人は数日後に水上機に発見されて助かったそうです。

 私達は頑張った、そして任務は成功している。

 でもあの日からどこか心に引っかかりを感じてしまっている。

「もっとしっかりしないと!」

 自分に言い聞かせるように声を出す、その気持ちに答えは出ていないんだから今は置いておこう、旗艦がしょんぼりしていたら艦隊のみんなの空気まで悪くなってしまいます。

 はぐろは戦闘が終わってからの艦隊の雰囲気を思い出す。

 

「司令部より入電、[入港許可、巡洋艦以下はA-6およびA-5岸壁に繋留、空母はB-6ブイに繋留せよ、繋留方向は西向き!]です。」

「わかりました、入港準備、右横付け用意!」

 大型の空母が岸壁に留められる施設は余ってないようで龍鳳さんだけはブイにもやいを取る事になったようです。

 シンガポール海峡を抜けるとすぐそこにSP国の艦娘のための港があります。私達はそこに入港していきます。

 目を凝らしてみると、私達が繋留する岸壁には二人の艦娘らしい女の子が立っています。

 二人ともおそろいの簡素なセーラー服を着ています。そのうちの一人の、黒い髪に三つ編みの女の子が手を振ってきます。私達も手を振り返します。でも、もう一人の子は詰まらなさそうにそっぽを向いています。

 

 岸壁に係留してみんなの入港作業が終わるのを見届けて、舷梯を降りて行きます。

 3週間ぶりに地面を踏みました。

「やった、三週間ぶりの地面!」

「何だか変な感じがしますね。」

 深雪ちゃんと白雪ちゃんも岸壁に降りてきます。みんな嬉しそうに地面の感触を確かめています。

「はしゃいでないで、北上さんが貴重な時間を割いてくれてるの、さっさと行くわよ!」

「ご、ごめんなさい!」

 茶色の髪の女の子に怒られてしまいます。

「まあまあ、大井っち、長旅の疲れもあるだろうし、ゆっくりさせてあげなよ。」

「でも、私と北上さんの貴重な時間を!」

「多摩姉さんの恩人だからね。」

「それも…、そうですわね……」

「多摩ねえに案内をよろしくって言われてね、この基地の司令官の所に案内するよ。ああ、自己紹介がまだだったね、球磨型軽巡洋艦の3番艦、北上だよー。こっちは4番艦の大井っち、まーよろしく。」

「は、はい、よろしくお願いします、私達は第11護衛艦隊です、私は旗艦のはぐろです。それから軽空母の龍鳳さんと特型駆逐艦の吹雪ちゃん、白雪ちゃん、初雪ちゃん、深雪ちゃんです。」

 全員おそるおそる、といった風におじぎをする。

「じゃあ今から司令官のところに案内するからついてきてね。」

 北上さんに連れられて海沿いの道を歩く。

 道は砂利道であんまり整備されていないみたいです。

「このあたりは深海棲艦の活動がないからあんまり予算が割り当てられてないんだって、あっちの普通の船が停泊する方はよく整備されてるんだけどね…。」

 北上さんは沢山の船が停泊している方の港を指差します。

 マラッカ海峡に面しているここは船の航行の要衝となっていますが艦娘にとっては深海棲艦の脅威もほとんどない後方基地になっているそうです。そのためドックなどの修理施設は充実しているそうですが、その他の施設はオンボロな感じだそうです。

「ここがこの基地の司令部だよ。」

 しばらく歩くと、司令部のある建物に案内されますが…。

「うわぁ…」

「建物っていうか...お化け屋敷?」

「ちょっと初雪ちゃん、失礼だよ!」

 私達が案内されたのは木造の今にも崩れそうな小さな建物でした。所々壁は剥がれて屋根も一部トタンで補強されているようです。表には落ちかけたSP国分遣隊司令部と書かれた看板があります。

「いいのいいの、オンボロなのは本当だから。」

 大井さんが言います。

 そうして案内されるままに今にも外れそうな扉を開けて建物に入ります。

「多摩さん、如月ちゃん!」

 扉を開けると第30駆逐隊のみんながいて思わす声をあげてしまいました。

「やっと来た、待ちくたびれたにゃ。」

「あの、大丈夫でしたか?」

「見ての通り、如月も多摩もピンピンしてるにゃ。」

「ごめんなさい、心配をかけてしまって。」

 多摩さんはそう言って笑顔を見せます、如月ちゃんは何だか申し訳なさそうにしています。

「すみません、もう少し早く助けに行ければよかったんですが…。」

「多摩姉さん、話は後にして下さい、さっさと報告を終わらせましょう。」

「それもそうにゃ、行くにゃあ。」

「第11護衛艦隊、第30駆逐隊入ります!」

 司令官室と書かれたくたびれた扉を開ける。

「ご苦労さま、ようこそSP国分遣隊へ。」

 部屋には簡素な机と地図が置いてあり、一人の若い女の人が座っていました。肩までの黒い髪にツリ目で切れ長の目、少し怖そうです。

「女性が司令官だから驚いた?」

 私達の様子を見て悪戯そうに言います。

「は、はい、少し…。」

 私たちがそう言うと目の端を緩めて優しそうに笑った。

「ふふ、正直でよろしい、私はSP国分遣隊司令官の水瀬と言います。今回の護衛任務ご苦労さま、しばらくは何もないからゆっくりしていきなさい。」

「えっと、何もない事もないと思うんだけど…。」

「そうね、ゆっくりする前にやってもらわなきゃいけない事があったわ。」

 司令官は大井さんに言われてから思い出したようにおもむろに篭とバケツを取り出す。

「この基地では自給自足だから、頑張って集めて来てね。」

 司令官はそう言ってバケツと篭を私達に渡しました。

「戦闘詳報は後で読ませてもらうわ、それとあなた達には任務達成の他に一つお手柄があるのよ。」

 司令官は立ち上がって地図の前に移動する。

「遭遇した深海棲艦の数が多すぎるから、おかしいと思ってあのあたりの島をくまなく捜索したのよ、そしたら…」

 司令官は地図の一点を棒でバンバン叩きます。

「小規模だけど敵の棲地を見つけたわ。」

「「「「「「「「ええっ!」」」」」」」」

 司令官が言った言葉にみんなが驚きの声を上げる。

「現在この棲地に対して攻略部隊が向かってる、BN国の基地から一個艦隊、FP国の基地から二個艦隊が、棲地の規模から考えて、もうあらかたの戦力は失ってると思うけど念には念をってやつね。ここを攻略出来ると本土への航路はかなり安全になるハズだわ。」

「私達は何もしなくていいんですか?」

「いいのよ、艦隊はあなた達だけじゃないの、食料探しも仕事のうちよ、えっと…」

「吹雪です。」

「吹雪ちゃん。」

「じゃあ戦闘詳報を頂戴。」

「はい。」

 私は銀色のケースから一週間かけて作った戦闘詳報を司令官に渡した。

「……ちょっと……すいぶん分厚いわね。」

「す、すみません。」

 司令官は困惑気味に受け取ります。確かに少し多すぎたかもしれません。

「第11駆逐隊は話があるから残って、北上さんは第30駆逐隊を連れてってあげて。」

「はいはいー、みんな行くよ。」

 北上さんが第30駆逐隊を伴って部屋を出ます。部屋には私達と司令官が残されます。

「…で、どうだった。」

「何がですか?」

「初めての戦闘よ、ずいぶん活躍したのに浮かれない顔してたそうじゃない。」

 さっきまでの雰囲気とは打って変わって鋭い眼差しで私達を見ます。

「目の前で人が死んだのがそんなに堪えた?」

「……」

「それとも怖くなった?」

「それは…」

「あの時は私が指揮を執っていました、悪いのは私です!」

 吹雪ちゃんが司令官に言います。

「違う!私が見逃したから、吹雪ちゃんは悪くない......」

「違います、私が最後まで残らなかったから!」

「ちょっと待って、別に責任がどうとかそんな事じゃないの!」

 司令官が言い合いを始めた艦娘に割って入る。

「ただ覚えておいて、海戦でワンサイドゲームはまれよ、今回の事もよく考えておいてね。もしかしたら次は仲間の誰かかもしれないんだから。」

「「「「はい……」」」」

 仲間を失う事は考えなかった訳ではないのですが今回の事でどうしても頭の中をよぎってしまいます。

「辛気臭い返事をしない、いい?考えられるのは生きている者の、艦娘の特権よ。あなたたちはただの船じゃないんだから、考えて答えを出しなさい、話は以上です。外で大井が待っているから案内してもらいなさい。」

「「「「はい!」」」」

 私たちの返事を聞いて司令はもとの優しそうな表情に戻ります。

「よろしい、ここは色々大変だけど慣れれば楽しいから休みをもらったと思って楽しんでね。」

 最後に司令官はそう言いました。私達はあいさつをして司令官の部屋を出ます。

 

「お・そ・い!」

 部屋を出ると大井さんが腕を組んで待っていました。

「北上さんに置いていかれたわ、さっさと行くわよ。」

 そう言うと大井さんはさっさと歩き出してしまいました。私達も遅れる訳にいきません、大井さんに付いていきます。

「ここが宿舎よ、司令室がアレだから期待はしていなかったと思うけど、このザマだから自分の艤装で寝泊りする艦娘も多いわ。」

 案内された先にはバラックを少し立派にしたような建物がありました。

「中は一応妖精さんが掃除しているから綺麗なはずよ、ちなみにお風呂はあれ!」

「あれって……どこにお風呂があるんですか?」

 白雪ちゃんが不思議そうに聞きます。大井さんが指差した先にはお風呂がありそうな建物はありません。

「あれよ、あれ、緑色の丸いやつよ!」

「あれって、ドラム缶ですか?」

 吹雪ちゃんが信じられないといった風に言います。

「そうよ、分遣隊はどこもこんなもんよ、だから自分の艤装を使う艦娘が多いのよ!」

 大井さんは不機嫌そうに答えます。

「いいじゃん、キャンプみたいで楽しそう!」

 深雪ちゃんが目を輝かせながら言います。

「はぁ、わかってないわね、二三日ならいいかもしれないけど何日も続いてみなさい、そうなると只の苦痛よ!」

 大井さんは呆れたように言います。

「大井さんは長いんですか、この分遣隊?」

「二週間といったところよ、荷物が集まったらまた南に行くわ。」

 大井さんに続いてバラック…宿舎に入ります。大井さんは何か荷物を漁っているようです。

「はい、これ。」

 大井さんに長い竿を渡されます。

「あの、これって…」

「司令官の話、聞いてなかったの?今日の晩御飯とってくるのよ!」

「あの、でも釣りなんて始めてで…上手く出来るでしょうか……。」

 みんなの不安を代表して白雪ちゃんが言います。

「知らないわよ、釣れなきゃ晩御飯が減るだけよ、それとも艤装にまだまだ食べ物があるの?」

「それは…」

 確かに保存食はたくさんありますが新鮮な食べ物はここでの滞在と帰りを考えると少し心細いです。

「わかったらすぐ行く、あのへんの防波堤がよく釣れるから!」

「「「「「はい!」」」」」

「ほら、行った行った!」

 大井さんは私達に竿を持たせて建物から私達を追い出します。

「ねえ、みんな、釣りなんかやったことある?」

「...ない」

「私も、釣りはやったことないですね。」

 龍鳳さんも経験はないそうです。

「針に餌をつけて海に落とすんだろ、楽勝だよ。」

「深雪ちゃん、やったことあるんですか!?」

「あはは、ないよ。」

「「「「……」」」」

「と、とりあえず行きましょう。」

 不安は残りますが私達は防波堤に向かって歩き始めます。そして防波堤についた私達は針に思い思いの餌を付けて海に落とします。

「暑い...ひきこもりたい。」

 初雪ちゃん、頑張りましょう、お夕飯がかかっています。

 

 

 

「なかなか釣れないね……」

「餌が悪いんでしょうか?」

 防波堤についてしばらく糸を垂らして待ってみますが釣れる様子はありません。私達の間に静かな時間が流れます。

「あの、龍鳳さん。」

「はい、なんでしょうか?」

「同じ艦隊の誰かを失った事はありますか?」

「…突然ですね、司令官に言われた事を気にしてるんですか?」

「えっと…はい……。」

「そうですね、いつか話そうと思ってたんですが、時間もありそうですし、ちょうどいい機会かもしれませんね、でもあんまりいい話ではないですよ。」

「みんなも聞いて下さい、私が潜水母艦だったのは知ってますね?」

 私達は、はい、と頷きます。

「だいぶ昔のお話になりますが、私が潜水艦隊の旗艦をやっている時、艦隊にイー40という艦娘がいました。」

 龍鳳さんは昔を懐かしむように空を眺めながら話し始めました。

 イー40という潜水艦、みんなからの呼び名はしお、太平洋で作戦終了という通信を最後に行方が分らなくなった。そして指定した集合地点にいつまでたっても現れない。深海棲艦に見つかる危険を顧みずに定期的に電波を飛ばしても応答がない。他の艦隊に捜索の要請もした。そして龍鳳は集合地点に2日間留まった。その間あらゆる手段を使って何とか探そうとした。それでも結局見つけることは出来なかった。そうこうしているうちに偵察機から海域に深海棲艦の接近の緊急の連絡が入って龍鳳は潜水艦娘たちの反対を押し切ってその海域から泣く泣く離脱した、そんな話。

 龍鳳さんの話を聞いて私達は押し黙ってしまいます。

「その場所を離れる時、最初は実感がなくて、夢の中にいるみたいでした、でも…。」

「潜水艦の子の気持が少しでも紛れるようにその日はいつもよりほんの少しご飯を豪華にしたんですが…。」

「それを見たある潜水艦の子が私の袖を引いて言いました。しおちゃんのご飯は今日はいらないよって。」

「変ですよね、私が一番わかっているはずなのに、いない子のご飯まで気付かずに用意していて、その言葉を聞いてやっと本当に起ったことなんだなって実感がわいてきたんです。」

 龍鳳さんはその日の事を思い出したのか寂しそうに笑います。

「しばらくは何も手に付きませんでした、そんな私を見かねたのか、ある子が言いました、しおちゃんを探しに行くよって、それからみんなに引っ張られて海に出ました、当てもなく探して、それからみんなで泣きました。」

「涙も枯れて、最後にある子が言いました、しおが沈んだのを見たわけじゃない、私はこれからも探しますって。」

「この日に初めて分かりました、私は一人では立ち上がれないくらいに弱いんだって、みんなに支えられて、起こされて、やっと海に戻ることが出来るくらいに。だから、弱くてもいいんです、弱いから私達は艦隊を組むんです。」

「司令官は答えを出せと言いましたけど、いつまでに、とは言ってません。私も答えは見つかってないんです、だからあの日から何も変わっていないのかもしれませんね。」

「あの、もしかして空母になったのはしおちゃんを探す……」

「あ、吹雪さん、引いてますよ!」

「え、あ、本当だ!」

 龍鳳さんの言葉に反応して吹雪ちゃんが竿を引きます。

「つ、釣れたー!」

 ようやく最初の一匹が釣れました。でもこれだけでは私達のご飯にはとても足りません。

「私のお話は終わりです、吹雪ちゃんを見習って頑張りましょう。ご飯も材料がないと作れませんよ!」

 結局龍鳳さんは私の質問には答えてくれませんでした。

「艤装に網を付けて引いたほうが早いかもね。」

 深雪ちゃんがいいアイデアを出します。

「ダメだよ~それは。」

 少し離れた所から声が聞こえます。北上さんがいつの間にか立っていました。

「そんな事したら沢山取れすぎて食べきれないよ~、でもその様子だとボウズみたいだね。」

 私達の様子を見た北上さんが言います。

「違います、一匹釣れました!」

 吹雪ちゃんがどうだ!と言わんばかりに魚の入ったバケツを突き出します。

「うん、でも全然足りないね。」

「うぅ…。」

 吹雪ちゃんは肩を落とします。

「もう夕食の材料はいいよ、大井っちが何とかしてくれたから。」

「「「「「ええ!!」」」」」

 大井さんが何とかしてくれた、と言われてみんな驚きます。あんなに素っ気無かったのに……。

「大井っちはあんなふうだけど本当は感謝してるんだよ、だって多摩姉が大破したって聞いた時はすっごかったんだ。昨日だって多摩姉さんが来るのを港でずっと待ってたんだよ。」

 北上さんは嬉しそうに言います。

「大井っちも素直っじゃない所あるからね、でもそんな所も好きなんだよね。」

 北上さんの大井さんへの愛の告白みたいなセリフを聞いてみんな俯いてしまいます、何だか恥ずかしいです。

「き、北上さん!私を置いてそんな所で何をやってるんですか!」

「ああ、大井っち、何ってちょっと手伝いをね。」

「いいんです、北上さんが手伝いなんてしなくても!行きましょう!」

「あ・な・た・た・ち・も!どうせボウズなんでしょう、今から引き潮だからどうせ釣れないわ、さっさと片付けて来なさい!」

 そう言われて時計を見てみると思ったより時間が経っていました。

 

「あの、北上さんに聞きました、夕食の材料ありがとうございます。」

 白雪ちゃんが一歩前に出て大井さんに言いました、大井さんは一瞬驚いた顔をしますがすぐに元の調子に戻ります。

「ち・が・い・ま・す!このままじゃ北上さんの食べる物が無くなってしまうからよ!」

 大井さんは白雪ちゃんの頭を軽く小突きます。

「うぅ、そ、そうですか…。」

 白雪ちゃんは小突かれた頭を押さえてうずくまります。

 そんな白雪ちゃんを尻目に大井さんは北上さんの後を追うように歩き出します。ですがしばらく歩いてから立ち止まりました。そして…。

「でも…多摩姉さんを助けてくれたことには……感謝してるわよ!」

 大井さんから意外な言葉を言われます。

「だ・け・ど!」

「き・た・か・み・さ・ん・に手を出したら…許さないわよ!」

「「「「「………」」」」」

 振り返って笑顔でそう言われましたが、あまりの大井さんの迫力に私たちは言葉が出ませんでした。

「返事は?」

「「「「は、はい!」」」」

「待って~北上さ~ん!」

 私達の返事を聞くと大井さんは走り出します。

 私達は走っていく大井さんの後姿を見送ります。怖い笑顔がある事を今日初めて知りました。

 




間があいてしまいましたが感想などお待ちしております。

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