「へえ~賑やかですね。」
本部の建物から船で20分の場所に、艦娘御用達の街がありました。そこでは沢山の人が行き来しています。
「出撃から帰ってきた艦娘は、いつもここで遊んでるぴょん!」
そう言って卯月ちゃんは鼻歌を歌いながら私達の前を楽しそうに歩きます。
「あーっ、卯月、何やってんの!?」
私達が歩いていると、金色髪の元気そうな女の子が卯月ちゃんを見つけて走って来ました。
「皐月こそ何やってるぴょん!」
「ボクは輸送任務が終わったところだよ、仕事終わりにちょっと美味しい物でも食べようと思ってね!」
「そうなのぴょん、そういえば他のみんなはどこに行ってるぴょん?」
「何でも、未来から来た軍艦を見に行くんだって、任務が終わったら泊地へ飛び出していったよ。ボクもまあ、気になるけど、狭い拠点だし、きっと嫌でも会えるからね。」
「ふっふっふっ……、皐月はどうやら当たりを引いたようだぴょん。」
「えっ?何の事だい?」
卯月さんは私の手を引いて、ぐいと皐月さんの前に押し出します。
「この子が噂の未来から来た艦娘だぴょん!」
「ふわっ、わっ、わぁ~!?ほっ、ほんとに!?」
「ホントだぴょん、今日の本部への移動もすごかったぴょん、未来を感じさせたぴょん!」
「あっつ、あの、でも怒られてしまいました。」
「ええっ!何をやったの!?」
「飛行機の風で司令官の部屋の窓を吹っ飛ばしたぴょん!」
「ふわぁ~、豪快だねぇ~!」
「あの、卯月さん、恥ずかしいのであまり言わないで下さい……。」
「大丈夫大丈夫、ここにもしょっちゅう悪戯をする卯月という艦娘がいるから!」
「そういう事だぴょん、卯月たちもよく怒られてるから気にする必要ないぴょん!」
今日の出来事を思い出して俯いてしまった私を、二人が慰めます。
「よく怒られてるって、それはそれで……。」
二人のやりとりを見て目が点になった深雪ちゃんが呟きます。
「そうだ、ボク、今から甘味処に行こうと思ってたんだ、よかったら一緒に来ない?」
「いっ、行きます!」
甘味処と聞いて、反射的に答えた吹雪ちゃん。
「じゃあ行こっか、ここからそんなに離れてないから、甘い物でも食べながら、ゆっくりお話ししたいなぁ。」
そうして、私達は皐月さんに誘われて甘味処に行く事になりました。
「甘味処、伊良湖ですか……」
しばらく、賑やかな通りを歩いて到着した場所には、日本風の建物の入り口に大きく伊良湖と書かれていました。
「そうだよ、あの給養艦の伊良湖さんが監修しているんだよ、特に、この暑い南国ではアイス最中が人気なんだ。」
皐月さんはそう言って、手慣れた様子でアイスを人数分注文していきます。
「そうそう、さっきのお話の続きを聞かせてよ、移動だけで未来を感じさせてくれたんでしょ?」
「そうそう、すごかったぴょん、空を飛んで本部の前に乗り付けて来たぴょん!」
「空が飛べるの?水偵か何かなの?」
「水偵とは違うみたいだったぴょん、機体の上でプロペラが回って、すごい風が出てて、うーちゃん感激したぴょん!」
「へえ~、凄かったんだね、今度乗ってみたいなぁ。」
皐月さんは期待を込めた瞳で私の方を見ます。
「あの、もし今から時間があれば、私達と一緒に乗って帰りませんか?」
「ホント!?嬉しいなぁ、ありがとう!」
「うーちゃんも乗せて欲しいぴょん!」
「わかりました、じゃあ帰りは皐月さんと卯月さんを一緒に送りますね。」
「やったぁ、嬉しいぴょん、ありがとうぴょん!」
「お待たせしました、アイス最中です。」
そうこうしているうちに、私達が注文したアイス最中が運ばれて来ました。
「うわぁ、美味しそうです!!」
「間宮さんの羊羹は食べましたけど、伊良湖さんの最中は初めて食べます。」
初雪ちゃんが運ばれて来たアイスを見て目を輝かせています。伊良湖アイスはその日によって味が変わるようで、今日はさっぱりしたレモン味だそうです。
「「「「いただきます!」」」」
テーブルの上に人数分のアイスが置かれ、私達はすぐにアイスを食べ始めました。
「うわぁ、美味しい!」
「ただのレモン味のアイスなのに……すごく深い味わい……」
「レモンの味が南国の気候にすごく合いますね、今までの汗が吹き飛びそうです。」
深雪ちゃん、白雪ちゃん、初雪ちゃんがそれぞれ感想を言います。
「そうだね、さっぱりして美味しいね、今日の任務の疲れが吹き飛びそうだよ。」
皐月さんが幸せそうに言います。
そうして、アイスはすぐに私達のお腹の中に入っていったのでした。
アイスを食べ終わって一息ついたあと、皐月さんが思い出したように呟きました。
「前に来た時は苺味だったよ、あれも美味しかったなぁ」
「でも、何と言ってもレアなのがチョコレート味だぴょん、あれこそこの店の伝説の味ぴょん!」
「えっ!卯月はあの伝説のチョコレート味を食べたことがあるの!?」
皐月さんが尊敬した眼差しで卯月さんを見ます、それほどまでチョコレート味は貴重なのでしょう。
「ふふん、ないぴょん!!」
「もぉ、期待したボクがバカだったじゃないか!」
「あの、伝説のチョコレート味って何でしょうか?」
「あのね、このお店は数量限定でチョコレート味のアイスを出す時があるんだ。噂なんだけど、食べた事がある娘がほんとにごく少数いるらしいんだ。」
「まだ卯月も食べた事のある艦娘に会った事はないぴょん、でも確実に存在しているらしいぴょん。」
「食べられる条件はあるんでしょうか?」
「わからないぴょん、ある日突然出されると聞いた事があるぴょん。」
吹雪ちゃんの質問に卯月ちゃんが答えます。
「じゃあ、私達のこの泊地での任務は決まりですね!」
「えっ?」
「「「伝説のチョコレート味のアイスを食べる!!」」」
吹雪ちゃん、深雪ちゃんと白雪ちゃんが明るい声で言います。
「あの、私も食べてみたいです!!」
「私も……」
「いいね、僕もその任務に混ぜてよ!」
「卯月も混ぜるぴょん!」
「甘い、甘いよ!」
突然、深雪ちゃんが立ち上がって言います。
「そう、これは勝負、第11駆逐隊、第22駆逐隊のどっちが先に伝説の味を食べられるかの勝負だ!」
「そういう事かぴょん、負けないぴょん、必ず第11駆逐隊より先にチョコレート味を味わうぴょん!」
「そうだね、勝負事に引いたとなっては艦娘の名が廃る、その勝負受けたよ!」
「あっ、あの……」
急に勝負が始まってしまってどうすればいいかわかりません。
「あと、負けたら何をするか決めないとね!」
皐月さんが面白そうに言います。
「そんなの簡単だよ、1度だけ、勝ったほうが負けたほうの言う事を聞く、簡単だろ。」
「よっし、その勝負乗ったよ、第22駆逐隊の団結を見せてやる。」
深雪ちゃんと皐月ちゃんが火花を散らします。
旗艦はこういう時、勝負を仕切らないといけない気がしますが、どうしたらいいかわかりません。でも、話はどんどん進んで行きます。
「その話、聞き捨てならないよ!」
突然、一人の女の子が割り込んできました。
「白露もその勝負、受けたよ、いっちばんは私なんだから!」
「よっし、じゃあ第27駆逐隊もあわせて勝負だ!!」
深雪ちゃんが言います、どうやら艦娘は軍艦らしく勝負事がとっても好きなようです。
3か月の出張に行って参りました。
忙しく、なかなか感想を返せませんが、皆様の感想が力になっております。ありがとうございます。