イージス護衛艦「はぐろ」、がんばります。   作:gotsu

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作戦会議です。

「それでは、作戦会議を始める。」

 

 出撃が翌日に迫った日、私達は本部の作戦室に集められ、司令官から作戦会議を受けます。

 

「まず全般の情勢から、作戦参謀!」

「はっ!」

 

 司令官に指名された作戦参謀という若い男性は大きな机の上に置かれた海図を使って説明を始めます。

 

「昨日のOZ国からの情報です、沿岸部の深海棲艦による爆撃は引き続き散発的に続いている。つまり深海棲艦の機動部隊はOZ国の沿岸海域に引き続き張り付いているものと考えられます。」

 

 作戦室に緊張した空気が流れます。

 

「今後の方針として、我々はOZ国の付近に存在すると見られる空母部隊の誘因を目的として作戦を展開する。ここまでで質問のある者はいるか?」

 

 司令官は私達に向き直ります。

 

「司令官、質問いいかい?」

「隼鷹くん、何かね?」

「仮に誘因に成功したとして、その部隊を止められる力はあるのかい?敵の機動部隊の規模はどれくらいなんだい?」

「敵の規模は正規空母級が3ないし4隻、それに随伴する足の速い部隊だ。」

「じゃあ、なおさら無茶じゃないか!ウチの泊地には今ウチと飛鷹しかいないんだぜ、それに飛行機の補充も受けていないんだ!」

 

 隼鷹さんはお手上げといった風に両手を上げます。

 

「それに関しては、今後、正規空母、第3航空戦隊の増援が予定されている、その戦力と協同して敵戦力の撃破を企図する計画だ。」

「じゃあ、増援が来てからでもいいんじゃないですか?」

「飛鷹くん、確かに作戦で考えればその通りなのだが、これ以上OZ国の港湾施設が破壊されては、今までも蜘蛛の糸のように細い鉄鉱石・ボーキサイトの入手手段が完全に断たれてしまう。そうなれば我々人間の生活にも艦娘の維持・修理にも影響が出るのだ、それは理解してくれるな?」

「それは、分かっていますが……」

「そして、この情報が入ったのだ。作戦参謀」

「はっ!」

 

 司令官に呼ばれた参謀は一枚の写真を壁に貼り付けます。そこには、真っ黒に塗られた輸送艦のようなものがたくさん写っていました。

 

「この写真は1週間前に2式大艇の偵察飛行により、中部太平洋で確認された深海棲艦だ、司令部ではこれを強襲揚陸艦と評価している、そして、OZ国もしくはNZ国への上陸を企図していると考えられる。」

 

 司令官の言葉を聞いて作戦室がざわつきます。

 

「皆、考える事はあるだろう、この兵力がどこに指向されるかの詳しい情報はまだ確定していない。しかし、先週からの偵察の結果、ソロモン諸島に泊地を設営している可能性が示唆されている。」

「つまり、その上陸戦力に圧力をかけられれば空母部隊を引き付けられるという事ですね。」

「オウ、比叡はかしこいですネー!」

「その通りだ、明日出撃する艦隊には、その泊地の捜索および発見した場合には、防衛体制の威力偵察を実施する。」

「作戦参謀、明日出撃する艦隊への作戦ブリーフィングを頼む。」

「了解しました、第11駆逐隊および第27駆逐隊は別室に。」

「「はい!」」

 

 第27駆逐隊は、白露さんの艦隊です。白露さんがこちらを見て、ひらひらと手を振ります。知っている方がいて少し安心します。

 

 

 

「明日の作戦について説明する、君たちの任務は先ほど司令官から説明があったとおり、泊地の捜索および威力偵察となる。」 

 作戦参謀はさらに大きな海図を使って作戦を説明します。

 

「各艦隊は明日、0600に出港し、日没とともにソロモン諸島の敵制空圏内へ侵入、第27駆逐隊は島伝いの北側、第11駆逐隊は島伝いの南側の偵察にあたる。」

「了解、参謀、威力偵察だから敵を見つけたら攻撃していいんだよね!?」

「川内くん、そう早まらないでくれ、今回の作戦は敵の制空圏下での行動だ、速力が落ちれば日の出とともに敵の餌食となる。」

「ちぇっ、せっかくの夜戦なのに。」

 

 川内さんはつまらなさそうに言います。

 

「だから、話は最後まで聞きなさい、戦闘への移行は各艦の旗艦に一任する。ただし、相手の情報、特に揚陸艦がいる泊地の情報、防衛態勢の概略の情報を得たなら速やかに撤退するように。」

「じゃあ、夜戦していんだね!」

 

 川内さんは嬉しそうに言います。

 

「構わんが、言った通り今回の作戦は戦闘が主目的ではない事を忘れないでくれ、脱落艦が出た場合は敵制空圏まで基地航空隊を進出させ撤退を支援する予定だが、日の出以降は常に航空援護を得られる訳ではないからな。」

 作戦参謀は川内さんの様子を見てあきれたように言います。

「わかってるって、よっし、夜戦夜戦、やってやるぞ~!」

「第11駆逐隊は何か質問はないのかね?」

「えっ!?」

「君たちも出撃するのだ、何か意見や質問は?」

 急に話を振られて少し焦ってしまいます。

「えっと、あの、私達は初めてその海域に行くのですが……」

「わかっている、今回は第11駆逐隊には水先案内として経験豊富な巡洋艦を1隻編入する、入って来てくれ。」

 作戦参謀さんがそう言うと二人の女の子が部屋に入ってきました。

「彼女たちが今回の作戦で第11駆逐隊および第27駆逐隊に臨時編入される艦娘だ。」

「長良型軽巡四番艦の由良です。どうぞ、よろしくお願いいたしますっ!」

「谷風だよ。第27駆逐隊に編入されます、短い間だけど、世話になるね!」

「今回の作戦はこの12隻で実施してもらう。これ以降、作戦の細部を君たちで詰めてくれ、纏まったところで司令官に報告を行う。」

 

 作戦参謀はそう言うと、部屋から出ていきました。

 

「第11駆逐隊のみんな、また会えたね!」

「白露さん!」

 

 昨日初めてあった時と同じように白露さんが元気に挨拶をしてくれます。

 

「なになに、白露の知り合い?」

「川内さん、昨日話した勝負の相手だよ!」

「へぇ~、ふぅ~ん、この子たちがねぇ。」

 

 川内さんは値踏みをするように私達を見ます。

 

「あの、第11駆逐隊の旗艦のはぐろです、よろしくお願いします。」

「そうそう、思い出した、第11駆逐隊にはウチの妹の神通がお世話になったって聞いたぞ!」

「よっ!この間はありがと!」

「えっ、えっと…」

 

 神通さんとの間に先ほど紹介された谷風さんが入ってきます。初対面でこんな風に言われる覚えがありません。

 

「ええっ、忘れたの!?神通さんの艦隊にいた谷風だよ、あのあとすぐに離脱できなかったから、お礼に来たんだよ!」

 

 言われてから思い出します。神通さんの艦隊とは100キロ以上離れていたので、顔を合わせるのは初めてです。

 

「すみません、忘れてしまって」

「あの後、どうやって攻撃したんだって話で盛り上がってさ、噂じゃ未来から来たって言うから潜水艦と船が合体したとか、透明になったとか色んな話が出てさ。」

「あの、透明にもなれませんし潜れません……」

 

 あんまり期待させても申し訳ないので、正直に話すことにします。

 

「あの、ロケット弾のすごくよく飛ぶものを使ってるんです。」

「よく飛ぶってどれくらい、よく当たるの?」

「はいはい、お話はここまでにして、今から作戦の細かいところを決めるので、その中でお話を聞きましょう。」

 

 由良さんがぱんぱんと手を叩いてその場を収めます。それから、地図が置かれた大きな机の周りに皆が集まります。

 

「あの、よろしくお願いします。」

 

 第27駆逐隊の旗艦、川内さんに挨拶をします。

 

「ああ、よろしく、今回の作戦は海域も複雑で、参加する艦艇も多いから、難しい艦隊運動はなしでお願い!」

 

 それから、川内さんは海図をなぞって線を引きます。

 

「最近は潜水艦の活動もおとなしいから、制空権の内側までは簡単に出られると思う、その後だけど……」

「そうですね、制空権外に出るタイミングと日没をあわせて、できるかぎり高速で群島海域に侵入しましょう。」

「おっ、話わかるね、さすが水先案内!」

「冷やかさないで下さい。」

「じゃあ、ウチの艦隊は群島の北航路から東端の島を回って南側から帰るルートにするよ。」

 

 川内さんは慣れた手つきで海図に線を引いていきます。

 

「あの、じゃあ私達は……」

「私達はこの航路で行きましょう。」

 

 由良さんが海図に指を指します。

 

「南側から侵入して、南端の島を1周回って来た道を戻ります。」

「なるほど、経験のない艦隊なら無難な道だね。」

 

 川内さんが言います、確かに来た道を帰るのなら初めて通る航路でも失敗せずに帰れそうです。

 

「そうですね、はぐろさん、この航路にしましょう。」

 

 吹雪ちゃんが言います。確かに未経験の航路には危険がつきもので、航路は単純なほうが安全です。

 

「で、航路も決まったところで、水先人さん、今回の敵の見積もりは?」

「由良です、この群島地域では、沿岸に巧妙に隠された魚雷艇が多数出没しています。」

「なるほどね、じゃあ夜目がとても重要だね!」

 

 谷風さんが言います、確かに船舶の水上レーダーはいまだに海岸線と海岸にある小型ボートを識別できるまでには至っていません。巧妙に隠されていればなおさらです。

 

「ちぇっ、泊地を見つけるまでは魚雷艇かぁ……。」

「まあまあ、敵が少ないほうが怪我しなくていいんですよ。」

「そうです、谷風さん、春雨ちゃんの言う通りです。」

「泊地がなければ、敵がいるとも限りませんから……」

「ええ~、困るよ、夜戦夜戦~!」

 

 第27駆逐隊の五月雨さんと春雨さんが川内さんを押さえて話し合いを進めます。

 

 

 

「ねえ、川内さんってすごく好戦的なのかな……」

「すみません、夜になると頼りになる方なんですが……」

 

 川内さんを後目に、吹雪ちゃんと春雨ちゃんがこそこそ話をしています。

 

「出なきゃ出ないでいいんだけど、戦ってみたいなぁ」

「ん…とりあえず、がんばる。」

「大丈夫でしょうか……」

 

 作戦会議は進んで行きますが、一抹の不安を覚えます。




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