愛染ノエル・Reスタート / ―The Revenge of the Black Rose―   作:ノエルイド

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到着

私が白鯨―――モビー・ディックの遺骸を取り込んで、その際の激痛で打っ倒れてから二日。シエルの部屋でしばらく安静にしていたけど、その必要もないほど全快したのでベッドから降りた。

 

「ノエル……もう大丈夫なんですか?どこか痛むところや違和感などもありませんか?」

 

やや過敏に心配してくるシエルに適当に返事をし、しっかり健全な状態よと示す。

第一、これはシエルには黙っているのだけど……実のところ、倒れてから最初に目が覚めた時点で恐ろしいほど快調になっていた。

どう表現すればいいかしら?何か、こう……肉体の感覚が拡張した、というべきでしょうか?あ、こういう例えはしたくないけど、死徒と化した事で肉体の規模がバージョンアップした感覚と同じようなものかしらね。

とにかく遺骸を取り込んだ私は目覚めるまでの自分と比べて、生物としての(ランク)が上がったらしい。それだけは明確に自覚ができるわ。

 

さて、何はともあれ今回もこうして代償に耐えて生き延びる事ができた。それは今ある結果として変わらない。

だったら現状でやるべきなのは、今の自分がどこまで強くなっているかの確認とこの体の性能に慣れることよね。

何しろ人智を越えた神獣の力なんて慣れない内は絶対に持て余すでしょうからね。そうならないよう試行錯誤は繰り返して然るべきだわ。

 

あとは十四の石との完全な適応もそう。少なくともたった今手にしたばかりのモビー・ディックの力よりは遥かに馴染んではいるけど、それでも完全に定着しきれてはいないし、まだまだやらなくちゃいけない事と強くなれる余地はあるわ。

 

つってももう総耶潜入の未来まで残り十ヶ月を切っちゃってるし、時間は刻一刻と迫りつつある。

悠長に時間を持て余していた時なんてただの一度もないけど、こっからはより計画立てて行動していかなきゃね。

 

「シエルさん。改めて言うけど、とりあえず今の状態は快調よ。看てくれて感謝するわ。明日からでも今まで通りに支障なく行動できるからよろしくね」

「はい。それは勿論ですし、快調になったなら何よりですが……何かしら変調を感じ取ったらすぐにわたしに言ってくださいね?」

「ん、分かった。まあ取り込んだモノがモノだから副作用は今回限り、なんて保証はどこにもないんだしねえ」

 

ひとまずはこの力を慣らす事と、十四の石による完全な順応を進める事。ついでにシエルから教わっている数秘紋の雷霆魔術の練度を鍛える事。これらに約半年ぐらい費やそうかしら。

普段通りにシエルとの任務に勤しんで、吸血鬼どもに行使すればいい。うん、決まりね。

 

今のところ依然として雷霆魔術だけしか会得できてないけど、そろそろ他の魔術も習得できるならできてほしいところね。

まぁ、もしも雷霆の練度を上げることしかできなかったとしても、それはそれで出来ることの選択肢が一つだけでも増えるから得である事に変わりはないわ。

 

―――そんじゃあ半年間、いつもと変わらずに死に物狂いで頑張りますか。

 

 

 

 

 

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

 

 

 

……そうして、計画通りに地道に己を鍛えてから半年。

 

まず、私は雷霆魔術の精度を更に練り上げる事ができた。現状としてはもう立派な攻撃手段(ウェポン)の一つに並んでいると言っていいぐらいには、半年前と比べても扱いが上達している。

ただ、それ以外の魔術は教わってはいるものの習得はてんでダメだった。総合的な実力は更に身に付いてはいるから文句はない。が、それはそれとしてこうも雷霆しか覚えられないってどうなのとも思ってしまう。

 

「はぁ~~……どうしてこう、我ながら器用じゃないのかしら」

「? 何がですか、シスター・ノエル?」

「いや、こうして何年にも渡って貴女から魔術を教わってるのに、何で未だに雷霆ぐらいしかマトモにモノにできてないのかしらと思って。

そりゃあ、私には魔術の才能も本来からっきしだってのも分かっちゃいるけどさあ。あーイライラするわあ」

「……こういうとフォローになっているかは怪しいですが、貴女には数秘紋の雷霆以上に強力な力が二つもあるでしょう。それらの力をコントロールする事に同時進行で注力しているのなら、魔術の習得へ向ける時間(リソース)が多少不十分になっても仕方がありませんよ。

むしろ、その分だけ雷霆の練度を集中的に上げる事に成功できているのですから、わたしから見ればその方が効率的だと評価に値します。掛け値なしに恥じるところなんてないですよ」

 

苛立つ私を宥めようとしているのか、シエルは理路整然と評価してくる。

皮肉じゃないのは分かるし、コイツなりに本心で讃えている。それはまあ、嬉しいっちゃ嬉しい。絶対に口には出してやらねーけど。

 

「それに実力の方だって、半年前と比べて更に磨きが掛かっているじゃないですか。その確たる証として、この前の討伐任務でわたしとの連携でⅧ階梯(後継者)を斃せたでしょう?」

 

まあ、それはそうねと返す。そして直近にこなした任務での事を思い出す。

最初はてっきりコミュニティの規模と質から考えて上級死徒が元締めかと思ってた。けど、いざ追い詰めてみれば出てきたのはもっとヤバいヤツだった。

 

Ⅷ階梯―――祖の後継者。上級死徒より更に数段上の存在規模を有していて、その強大な力は真祖すら寄せ付けないと言われる特級の化け物。

実際に戦ってみて、その評価が誇張でも何でもないのがイヤってほど思い知らされた。以前にシエルとの連携でアインナッシュを斃せたからってどこか甘く見積もっていたのでしょうね。

油断はしない。さりとて祖よりはスムーズに対応できるだろう。そんな風にイキってた私の小さな慢心をあの化け物は正面から打ち砕いてきた。

今まで殺してきた上級死徒がただの夜魔かそこらかと思い込んでしまうぐらいに強かった。強いなんてものじゃなかった。

シエルと協力して何とか討伐できたから良かったものの、仮に私だけで相手してたら恐らく殺されていたのは私の方だったと認めざるを得ない。改めて、アインナッシュの時は相性と運が信じられないほど良かったんだなと理解させられた。

 

けど……この女との連携ありきってのを考えても、後継者という化け物の中の化け物を斃せちゃうところまできたのは事実。

ここまで来たら流石にA級代行者と名乗っても許されるんじゃないのかしらねぇ?―――などと調子には乗らない。だって、まだコイツの喉元には未だに届いていない。

 

何故ならコイツは私の見ていないところで、その後継者を凌ぐ死徒の頂点である二十七祖を一人で狩ってるんだから。その事実だけで、私とこの化け物の実力が如何に離れているかを示している。

もっとも、祖を単独で討伐できているのは不死身故のゾンビ戦法でゴリ押しているからってのもあるでしょうけど―――コイツのイカれぶりを考えれば、仮に不死身でなくても自前の実力でしっかりと殺し切れるわよね。

 

「ねえ、シエルさん。この後、また稽古試合に付き合ってもらえる?今の私が貴女とどこまでやれるのか試してみたいのよ」

 

ならその実力差を少しでも埋めるべく、ここからはシエルとの直接的な手合わせの頻度も増やしていくとしましょうか。

 

「いいですよ。……と快諾する前に確認しますが、その口ぶりは本気で手合わせしようと?」

「ふふ、逆にそれ以外の意図がある?しばらくは貴女との鍛錬も苛烈にしようかなって思ってるだけよ」

 

そうよ。残りの期間、つまり四ヶ月はコイツとの手合わせも重点的に繰り返してぼちぼちやっていきましょう。こういう全力を出せるだけの対等以上の格上との戦闘なら、十四の石との順応と適合もより早く進むだろうし。

 

「何なら今この場でさっそく始めても構いませんよ。ここはさっきまで死徒の根倉でしたしね」

「へえ。それじゃお言葉に甘えて、改めて対戦よろしくお願いしますシエルさん。あ、勿論うっかり殺さない程度には手加減してくださいね?貴女みたいな非人間が本気出したら私なんか何もできずに死んじゃうし!」

「………それ、本気で言ってます?残念ですが、本気はともかく手加減はもうしてやれません。今の貴女は―――それだけ強いのですから」

 

お互いに一言掛け合い、静かに得物を構える。一瞬の間を置いた直後、私の方から踏み込んで槍斧(ハルバード)を突撃させる。

 

息を漏らさずに数合、数十合と加速度的にぶつけ合う。タイミングにズレはなく、機械的に相手の動きを分析して対応していく。向こうも同じように―――否、それ以上の精度で追い立ててくる。

 

接近戦となれば杭打機(ブレイク)大剣(ブレイド)で対応し、距離を取れば大剣(ブレイド)の形状を伸縮自在の蛇腹剣に変えて追撃してきたり、機関銃(ブレイズ)で滅多射ちにしてくる。

 

「あはっ、ホントに手加減なしに攻めてくるじゃない!!」

 

けど複数の武装を扱えるのは私も同じ事。黒鍵を始めとして蛇腹剣、ライフル銃でシエルの猛撃に真っ向から対処していく。

それだけじゃない。猛撃の隙間を掻い潜りつつ、超高温の炎を放って一掃しに掛かる。シエルは黒甲冑(ペイン)を即時展開するけど―――私はここでもう一つのカードを切る。

 

「―――『白鯨の聖歌(モビーディック・ア・カペラ)』っ!!」

「っ!?」

 

オドと周囲のマナを行使し、超濃度の神秘の伴った『音の衝撃波』を放つ。まるで津波が襲い掛かるかのように音の及ぶ範囲全てを瞬時に破壊し、黒甲冑の表面に罅を走らせる。

 

ただの衝撃波ならどれだけ凄まじい威力だろうと、あの鎧には傷一つ生じない。でも、この衝撃波は神獣たる白鯨の発する超音波そのもの。即ち物理法則を越えた音の波動なんだから、通用しない筈がないのよ!

 

「っ、これは―――白鯨の権能(ちから)ですか!本気でやると言っても、こんなところでそこまで行使すべきではないでしょう……!」

「いいや違うわね!持ちうるカードは使えるだけ使わないと宝の持ち腐れってもんでしょう!?その為の手合わせなんだからっ!!」

 

それにここは街外れの森にあるボロ屋敷の地下空間だから、幾ら騒ごうと『老朽化による自然倒壊』の一言で事足りる。人目につかず存分に暴れる分には都合がいいってもんよ。

 

シエルへの追撃は終わらない。音の衝撃波により動きが鈍くなった瞬間を逃さず、アイツの周囲に十字に煌めく炎を展開させて一斉に狙い撃つ。

放たれた熱線は一つ一つが数千度は下らない熱量。それが何本も一ヶ所に集中して放たれれば必然的に中心温度もより高温に達し、周りの物質を瞬く間に赤熱化させ、そして融解させていく。

 

……が、シエルも流石に無抵抗で晒されるほどバカじゃない。黒甲冑(ペイン)の耐神秘・耐熱性と元々の不死性をフルに活用し、肉体を焼かれた側から再生しながら熱線の包囲網を切り抜け出した。

 

「はぁぁっ!!」

「っ……!!」

 

こちらへと肉薄し、横凪ぎに振られた大剣(ブレイド)を受け止める。

次いで二手、三手、十手二十手と繰り出される鉄塊を何とか捌く―――けど―――相変わらず、バカみたいに重っっっもい―――!!

 

「っらぁ!!!」

 

負けじと槍斧に炎を纏わせ、一撃一撃をぶつけた瞬間に爆発させながら拮抗に持ち込む。

隙を見て後方に跳ぶ―――瞬間に黒鍵を投げてきたので打ち返し―――そして再度白兵戦に持ち込まれる。

この女、私に距離を取らせない算段か!

 

「ねえ、ちょっと―――離れて―――くれ、る―――かしらっ!?」

「なら、貴女の方から―――わたしを―――引き剥がして、みせなさいっ!」

 

大剣(ブレイド)と至近距離で打ち合う合間に言葉を交わすも、どうやら向こうはさらさら離れるつもりはないらしい。

だったら―――望み通り強引に引き剥がしてやる!

 

「そら、もっかい燃えちまえッ!!」

 

その場で再び十字の炎を宙に展開し、熱線を射出する。今度はシエルという中心に集中させるのではなく、後方へと追い立てるように乱射しまくって距離を無理やり開ける。

その間、私は飛び退いて更に距離を置いてから掌に炎を集中・圧縮させていく。先のアインナッシュでの時に決め手となった、膨大な熱量(まりょく)を限界まで圧縮した炎の極点。こいつをシエルにぶっ放す!

 

極点の形成にはそう掛からない。そりゃ時間をかけるほど圧縮する熱量と火力も大きくなるけど、そんな余裕はないから―――そう、10秒。10秒で極点を構築して炸裂させ、

 

「――――――原理血戒(イデアブラッド)、魔力放出」

 

「は?」

 

遠くで聞こえたその言葉に呆ける―――と同時に凄まじい魔力の流れが灼熱の熱線を跳ね除けていく。

コイツ、ここでそれを躊躇いなく使ってくるか!負けず嫌いめ……!!

 

「魔力はより強い魔力に洗い流される―――流石の貴女の手繰る炎でも、世界そのものを汚染する規模の原理血戒(イデアブラッド)には及ばないようですね。

ですが正直に言って、この手まで使う事になるとは想定外でした。やはり今の貴女はとても手加減できる相手などではありませんね」

「……ハ、そいつはどうも。そして奇遇ね、アンタがそう来るとは私も思ってなかったわよ!」

「おや。貴女ならわたしがこうしてくる事も予測していたものと考えていましたが、そうでもないんですか?

それでは、貴女が動揺している内に―――さっさと勝敗を付けるとしましょうか」

「っ―――上等よ!」

 

言い終わるや否や原理血戒(イデアブラッド)の魔力を放出させてミサイルみたいな勢いでかっ飛んでくるが、それを冷静に捉えて迎撃の構えを取る。

確かに予想外の反撃ではあるけど、だからっていちいち焦るほど未熟でもない。寧ろ―――これはこれでアドリブを利かせられるわ。

 

「ふぅ―――『海の化身の憤怒(モビーディック・レイジ)』!!」

「!」

 

極点を形成しながらもう片方の手を前に指し、大量の海水を瞬時に放出する。

ダムの決壊なんて目じゃない勢いの水の奔流が怒濤に押し寄せるワケだけど―――よし、流石に向こうの勢いが大きく削がれたわね。

これでいい。丁度よくチャージも完了した。なら、ここは敢えてゼロ距離でブチかます。

 

津波の射出を止めてシエルへと向かう。アイツは揉みくちゃにされまいと原理血戒(イデアブラッド)の出力を上げて耐え凌ぎ―――直後に私の接近に気づいた。

 

「遅いっ!!!」

 

津波が晴れると同時に目の前まで距離を詰め、そして圧縮した炎の極点をシエルの胸に無理やり押しつけ―――

 

「っ、あ――――――――!!!?」

 

 

―――瞬間、黒い炎が全てを跡形もなく消し飛ばした。

 

 

 

 

 

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

 

 

 

 

………………と、そんな風にシエルを上手い事追い詰めていって勝利の未来を掴もうとしていたのだけど。

 

 

 

 

「ふぅ……ふぅ……っ……やはり、以前に手合わせした時とは段違いに強くなっていますね。ロアをただ殺すだけなら、貴女はもう十分すぎるほど成長していますよ、シスター・ノエル」

「は、はは……それは、嬉しい、わね。あと、本気はともかく、なんて言っておきながら……随分と、全力に近かった、じゃない……」

「ふ、ふふ……それは、そうでしょう……」

 

周囲にはボロクズとなった瓦礫が散乱し、パチパチと音を立てて其処彼処が燃えている。

地下空間は直上のボロ屋敷ごと破壊し尽くされて崩れ去り、私たちはその上で試合を終えていた。

 

結果としては、こうして仰向けに倒れている私の負けだ。敗因は何となく分かる。恐らくは白鯨(モビー・ディック)の力を下手に乱発した事による魔力と集中力の使いすぎでしょう。

そうじゃなくても相手がシエルだからって炎の方も大技を乱用しすぎちゃった。無論、単純な自力の差も大きく影響してるんでしょうけど……節約しながら臨機応変に戦う。その事を疎かにしてしまっていた。

我ながら未熟さが浮き彫りね。恥ずいったらないかしら。

 

でも、その一方でまた一つ良い結果を出すこともできたわ。

なるほどねぇ。これが、この女の手加減抜きの本気に近い実力か。ふふ、ふふふふふ、つまるところ私はこの女に第七聖典をここまで本格的に使わせるところまで成長できているワケだ。

しかもそれに加えて、原理血戒(イデアブラッド)の力すら使わせる事ができた。これは大きな大きな経験となって復讐の進歩に繋がってくれるわよね。いいえ、繋げて見せるわ!

 

「……立てますか?」

「っ…………ごめん。ちょっと、手を貸してもらえるかしら?」

「はい、もちろん。………以前は突っぱねられてしまいましたが、今度は貴女の方からお願いしてくるとは」

「は?―――ああ、あの時ね。アレは………まあ、負けた直後だから気が荒れてただけよ。今回の敗北はいい経験になったから、気分は寧ろ心地いいわ」

「……ふふ、それはとても良かった」

 

そう、この言葉にウソはない。掛け値なしに有意義な勉強になったわ!確かに今回も勝てなかったのは悔しくはあるけど、この敗北は本当に良い経験になったわよ……!

 

待ってなさい。何れ近いうちに、必ずその命にこの炎を届かせてみせるから!!

 

 

 

 

 

 

 

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――◆

 

 

 

―――そんなこんなで四ヶ月。十四の石との適合はまだ五割強といった程度だけど、それでも着実に強くなってはいるから成長の余地自体もまだまだ十分にある。

 

けどその一方でシエルとの手合わせには一向に勝てた試しがない。確かにアイツとの実力がまだ開いているのは十分に理解してる。

でもそうは言っても、こっちだって十四もの石による超火力の炎に加えて幻想種―――それも神獣クラスの遺骸を取り込んでるのよ?それで尚、どうして未だに手合わせの試合すら勝ちに持っていけないの?

 

はぁぁぁぁ~~~……ほんとやんなっちゃう。向こうに本気出させるところまでは出来ても、その先がどうしても超えられない!培ってきた総合的な戦闘経験は私よりも低いクセに、私よりほんの一手先を繰り出してくる!

おかげでイイとこまで行っても毎回毎回寸でのところで負けてしまう!

 

「あーーーーもぉ~~やだぁ!私このままだと気が滅入っちゃうよ~~~!!!」

「うわ!?ど、どうしました?何を急に叫んでいるんですか、ノエル……?」

 

あ、やば。思わず声を大にして叫んでしまった。ええっと、どう言い訳を……いや、もうしなくていいか。考えんのも面倒くさい。

 

「あー、別に?ただ、いつもいつも貴女との稽古で敗けてんなぁって、どうして勝てないんだろうなぁってストレスで叫んじゃっただけよ」

「ああ、そういう……えっと、いいですかシスター・ノエル。貴女の為に言いますが、あまり敗北を気にしすぎるのも良くありませんよ。

それにこういうのは辱しめに聞こえるかもしれませんが、わたしだって稽古の度に貴女の強さにヒヤリとさせられていますからね?」

 

はっ、んなこと言ってるけど実際はどうだか!あの代行者シエルが私の実力にヒヤリとしている?

……顔と声色から察するに100%ウソってワケではないようだけど、それにしたって信じ難いわ。本当はやっぱり相棒(バディ)だからって忖度してるだけで、その気になったら何時でも私を確実に殺せるぐらいには―――。

 

「あら、そうなの?まあ、それが本当なら私も自信が沸くから嬉しい限りね。ふっふふ、こよばゆいフォローをしてくるじゃないの」

 

……いえ、こういう時ぐらいは素直に受け取りましょう。発言一つ一つを変に理由つけて疑うのもハッキリ言って疲れるし、ここは私も相棒(バディ)として信用しておくわ。

 

「そんな、こそばゆいフォローだなんて。わたしは本音を言っているだけに過ぎませんよ」

「本音なら尚更喜ばしいわね。うん、今の貴女の言葉で機嫌もそれなりに良くなったわ!―――で、それはそうと間もなく着くわよ」

 

そうですね、とシエルも肯定する。私たちは今、教会から()()()()()()()ベンツに乗ってとある場所に向かっているワケだけど、目的地はもう目の鼻の先まで見えている。

 

やがて5分足らずでその場所に到達し、ドアを開けて座席から降りる。眼前に広がるその場所は、13年前からずーっと私が『記憶』で視ていたところだ。

 

「―――()()()の何処かに、あのクソ蛇が潜んでいるのよね?」

「―――ええ、間違いなく。この街における身分の高い家庭である遠野家の長男。それが今代のロアです」

 

極東の島国、日本。そこの代表的な地区である東京都内に分布するそこそこの街。

 

とうとう、この街に――――――総耶に、足を踏み入れた。

 

『記憶』の通りに未来が流れるのであれば、この先調査を進める中でヴローヴやロア―――そして、白い真祖とも遭遇する事になるでしょう。

 

 

さあ―――いよいよ私の復讐も、一つの大詰めを迎える時よ………!!

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